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【実践事例】DX化を通じて浮かび上がるリアル店舗と人の価値

※この記事は、【【実践事例】リアルからこそ生まれるブランドストーリー」】の連載記事となっております。

コロナが促すDo or DieのDX(デジタル・トランスフォーメーション)

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの拡大により、世界中のさまざまな業種、業界が大きな影響を受けました。事業継続が危ぶまれるような打撃を被った企業も少なくありませんが、当社で取り組んでいるジュエリー事業「ith」においても一時的な事業休止や業務の自粛などによる危機的な状況を経験しました。

そのような状況を打開するために、業種や企業規模を問わずDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が喧伝されていますが、私たちも「Do or Die」の危機意識のもとデジタル化を中心とした施策を実施しました。

オンラインアトリエの開設

一つ目の取り組みがオンラインアトリエの開設です。私たちは店舗のことをアトリエと呼んでいるのでこのような呼称を用いていますが、一般的な言い方をするとビデオ通話機能を活用したオンラインの接客相談です。

【実践事例】ジュエリー会社がオンライン接客に取り組んで見えたこと
【実践事例】カウンセリングのオンライン化によって拓けた可能性

以前の記事でも紹介しましたが、従来店舗で行なってきた接客フローに基づき、その一部分をシステム化することでオンラインでのサービスを実現しました。これにより来店して頂かなくてもオーダーメイドでの指輪づくりができるようになりました。

リアル店舗の接客のデジタル化

二つ目の取り組みは、リアルを含めた全ての接客でのオンラインカウンセリングの実施です。これは、オンラインアトリエでの取り組みから生まれたバイプロダクトのようなものですが、いわゆるOMO(Online Merges Offline)とも呼べる取り組みです。

具体的にいうと、それまでリアルで行なっていた接客のうち、ithの世界観を理解していただく説明部分を動画化して配信したり、お客様に状況をヒアリングしたり、デザインのお好みやオーダーメイドを行ううえでの要望を伺うというプロセスを、来店前にWeb上で完結できるようにしました。

これによって、店舗で接客を行う担当者(つくり手)はお客様から頂いた情報に基づき事前に様々な準備ができます。事前の準備ができればお客様を無駄にお待たせすることもなく、より質の高いご提案を行うことができます。

急な来店やお客様側の環境や嗜好もありますので100%実施とはいきませんが、事前にご協力頂ける方が増えれば増えるほど良い提案が生まれる、良い提案ができれば自ずと成約率も上がり業績に連動する、という寸法です。

 

デジタル化の中で気づいたリアルの価値

このようにコロナという荒波を契機として事業のデジタル化に着手し実践しだしたわけですが、その取り組みのなかで見えてきたことが、デジタル化を進めれば進めるほどリアルの価値が重要になるということです。

何度かご紹介させて頂いていますが、ithでは単なるモノとしてのジュエリーを売るのではなく、モノに付随してくるお客様の思いや、最終的な商品に至るまでのプロセスを含めた顧客体験全体と特別なものにする、ということを大切にしています。

上記にてご説明したオンラインアトリエも、オンラインカウンセリングも、すべて顧客体験を充足させるためにこれまで磨いてきたリアルの接客が前提にあるからこそ実現できたものです。

また実際にサービスを行う人的な部分においても、デジタル化以前に理念から行動レベルまで統一的な理解のもとに業務をおこなえるよう努力を行なってきたことがあって、デジタルのフィールドでも同じ目的のもとに、水準を落とさずスピーディに実践できたといえます。

ithの起源であるアトリエからの情報発信

またもう一つの取り組みとして、私たちの世界観の舞台であるアトリエの情報を、ブログやSNSといったデジタルメディアで情報発信するという取り組みにも力を入れています。

Welcome back to Instagram. Sign in to check out what your friends, family & interests have been capturing & sharing around the world.

ithの世界観の原点になっている吉祥寺アトリエは駅から徒歩10分ちょっと離れていて、中道通り商店街という小さなお店が軒を連ねる商店街を抜けた場所にあります。あえて足を運ばなければたどり着かない隠れ家的な立地が、初めてお越しになるお客様にちょっとしたワクワク感をもたらしてくれます。

アトリエ内は、高橋のアトリエに自分たちでDIYして少しづつ形を変えながらも、できるだけアットホームで居心地よく、かつどこか可愛らしい雰囲気の内装になっています。

私たちが大切にしている価値感を理解していただくという意味と同時に、お客様側の目線としても一生に一度の結婚指輪ですから、選ぶ指輪と同じくらい、素敵なお店で買いたいという気持ちを抱かれるのも当然のことだと思います。

自分たちがいかに大事にしていることも、見て頂き知って頂き、お客様に響いて初めて価値を生み出しますから、私たちは相応の労力をかけてデジタルな情報発信に励んでいるわけですが、実際の店舗があってこそ、今的な言葉でいえば、「映える」環境があるからこそ、それをデジタルに乗せて発信することができるわけです。

またithのつくり手がいかにお客様に寄り添って指輪づくりに取り組んでいるかということをまとめて配信した動画がありますが、これも実際のつくり手たちの実際の取り組みがあってこそ生まれたコンテンツです。

リアルの価値こそがデジタルの価値も決める

オンラインアトリエを設けたことにより、外出自粛と営業制限期間中は1店舗分程度の売上をあげることができました。これは一生に一度の大切な買い物であり、単価が30万円近くもする結婚指輪という商材の特性を考えると特筆すべき成果ではないかと考えています。

またオンライン接客から生まれたオンラインカウセリングもリアルの接客の可能性を広げたという意味で極めて重要な価値をもたらすだろうと考えています。

しかしながら制限が解けるにつれ、やはりリアルの店舗で接客を受けて、試着をして買いたいというお客様が従来同様に増えてきていますし、今後もジュエリーという商材においては店舗というチャネルが大事な役割を担うであろうと思っています。

また情報発信においても、再現性や拡散性に優れるデジタルとうまく付き合えるかが事業者にとって大きなインパクトを生み出すことは間違いありませんが、手法という意味において皆のレベルがあがってくればくるほど、絶対に真似できない個人や場所の個性が、デジタルに乗っかるコンテンツの優劣を決めていくでしょう。

 

生身の人の感覚に何を伝えられるかがゴール

デジタルが発達し続けている今日、多くの物事がデジタルで完結する時代が到来するかもしれません。しかし、そのような時代だからこそリアルが生み出す体験の独自性や質が重要視される。利便性が高まれば高まるほど、つくり手との繋がりや実際に触れて感じる温かみ、店舗に行ってわかる世界観などリアルで特別な体験が際立つ。

何より大事なことは、デジタルフォーマットに乗せた情報であっても、最終的にそれを受け取り、解釈するのは生身の人間であるということです。私たちはは「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」という価値観のもとに、よりお客様に寄り添う人間味に満ちた体験を届けることを価値の源泉とすべきと考えています。

 

吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。

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