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【実践事例】カウンセリングのオンライン化によって拓けた可能性

※この記事は、【【実践事例】ジュエリー会社がオンライン接客に取り組んで見えたこと】の連載記事となっております。こちらを読んでいない方は、ぜひお読みください。

 

カウンセリングの目的は顧客体験の質向上

弊社のオーダーメイドのブライダルジュエリー工房「ith」では接客の際にカウンセリングシートというものを用いてヒアリングを行っています。主に内容は大きく分けて二種類あり、リングの種類や好みのデザインなどのリングに関する質問と、ithを知ったきっかけや来店動機などについてお伺いしています。

 

ブランド全体として大切にしている“顧客体験の質”を上げることを目的としてカウンセリングシートを導入していますが、より具体的には「オーダーメイドを行うために具体的な内容を把握すること」と「コミュニケーションをとる呼び水」としてのの二つの役割を担っています。

<オーダーメイド概要の把握>

ithではオーダーメイドで指輪をおつくりしています。指輪の細かな仕様については、試着を通じてヒアリングしながら必要な情報を把握していきますが、前提としてお客様のリングの好みや予算、納期などの必要情報を確実に聞いておくところから始まります。

<コミュニケーションの促進>

具体的な仕様を詰めていくスタートとしての意味合いもありますが、実はそれに以上に重要視しているのがアイスブレイクとしてのカウンセリングです。お客様が本当に望み通りの指輪をつくっていくためには、お客様とつくり手の間にできるだけ溝がなく、適度な信頼感をもつ空気感が大切になります。会話の内容自体よりもカウンセリングを通じて会話をするという行為自体が、全体的な顧客体験を実りあるものにするスタートとして大切な役割を担っています。

 

コロナ対応としてカウンセリングをオンライン化

前回の記事でご紹介したようにithではコロナでの営業自粛に対応するためにオンライン接客をはじめました。

【実践事例】ジュエリー会社がオンライン接客に取り組んで見えたこと

私たちが大事にしているのは「ぬくもりのある顧客体験」です。それはリアルであってもオンライン出会っても変わりません。その観点からオンラインでもできるだけリアルの接客に近づけように仕組みと業務を整備しました。そしてそこから生まれたのが「オンラインカウンセリング」の仕組みです。

単純にいうと、冒頭に紹介した店頭でのカウンセリングをWebアンケート化しセルフで回答いただけるようにしたものになります。ithでは従来より接客のフローを4つのステップに分けていますが、そのうちの1stステップ、2ndステップを中心にオンライン化したことになります。

オンラインであっても、できるだけ私たちのことを理解してもらう、お客様のことを理解する、これまでは対面コミュニケーションで行なっていた部分をデジタルに置き換えて、かつデジタル特有の制約を考慮したうえでシステム化しました。

 

オンラインカウンセリングをリアル接客にも展開

オンライン接客のためにつくったカウンセリング機能ですが、実際に業務のなかでつかっていくなかで二つの効果があることに気づきました。

ひとつ目は、全体として接客時間が短縮されるという点です。これまではご来店頂いてから行なっていた1st、2ndステップですが、お客様に事前にカウンセリングを行なっていただけることで20分から、場合によっては1時間以上も接客時間が短縮できる場合があるということに気づきました。

すでに好みが固まっている方、一から指輪について学びたい方、ニーズは様々ですが、全体としてかなりの効率性アップにつながるということです。

リアルの接客にもカウンセリングシステムを展開

私たちはこの利点をコロナ対策と結びつけて活用しました。いわゆる「3密の防止」を基本として様々な対策をとり店舗の再開を行ったのですが、そのひとつとして「店内でのお客様滞留時間を短くする」ということが必要でした。

アトリエを再開しました

従来は店頭でたっぷりと時間をかけて接客を行なっていましたが、コロナの感染リスクを下げるためには接触時間を少しでも短くしなければなりません。そこで活きてきたのがこのカウセリングシステムでした。

カウンセリングシステムを通じて事前に条件やお好みを回答頂ければ、お客様が気になっている指輪をピックアップしそれを中心にご案内したり、最初から好みを活かしたアレンジの話をしたり、ということができます。

お客様も私たちスタッフも、お互いに感染のリスクに不安を抱えながらという状況のなかでは、できるだけシンプルかつスピーディに目的を達することができるということは、安心して指輪作りを楽しむという考え方に照らしても根本的には間違い無いのではと判断し、リアルでの接客においてもすべてのお客様にカウンセリング実施をお願いするようにフロー化しました。

提案の質の改善効果も

コロナ対策として接客時間の短縮という観点よりはじめたオンラインカンセリングですが、さらに実施を進めていくなかで、効率性の向上以外にも、実は提案の質自体を高めることにも繋がるのではという見地に達しました。

ご来店前にお客様に色々な情報をいただけるということは、すなわち事前にお客様のための提案の準備ができるということです。法人営業をされている方などはよくお判りだと思いますが、良い提案をするためにかならず一度はお客様に対してヒアリングのMTGを行ったりすると思います。

例えばまだ接客に慣れていない経験のつくり手でも、お客様のカウンセリング情報に基づき、先輩スタッフから接客のアドバイスをもらうということができます。またお客様のお好みに近いアレンジ例を集めておいたり、ということもできます。法人営業であれば頻繁に行われているこういった行為が、消費者向けのサービスのなかでも実現できるということです。

よりよい提案をできれば成約率があがります。このことは私たちの事業にとって極めて大きな価値をもたらします。

擦り合わせとチューニングが課題

オンラインカウンセリングの実践は今のところ全体として良い結果をもたらしていますが、課題も浮かび上がってきました。

一つは、カウセリング情報の精度という問題です。お客様が自宅でカウセリングを実施することができるようになりましたが、なかには適当に入力して済ませてしまうお客様もおられますし、お客様の回答に対する真剣さをはかるのも容易ではありません。そういった場合来店後再度カウンセリングをし直さなければならないといったこともあります。お客様のために、という意図があだになるケースもあるためさらなる改善が必要だと考えています。

二つ目は、つくり手(現場スタッフ)へのすり合わせと教育という課題です。業務フローが変わる、新しい仕組みが導入されるということは軽微なものであっても、実際に目の前でお客様に対面しているスタッフからすると極めて大きな問題になることがあります。お題目でなく「お客様に寄り添う」という気持ちをなにより大事なモチベーションとして働いている現場のスタッフからすると、デジタルな部分で少しでも使いにくい部分があったり、わかりづらい部分があってお客様に面倒をかけてしまうようなことは、それが事業全体として意義のあるものだと伝えられ頭でわかっていたとしても、受け入れ難いところがあります。これは理屈というよりも、皮膚感覚に近い部分だと思います。

そしてお客様の側でもそれぞによってデジタルに関する受容度は異なります。そういったことのバランスを考えながら、現場に導入し、実行したうえでのヒアリングなどを通じ最適な落とし所を探る。また研修やマニュアル修正などを繰り返し現場への浸透を図っていくという継続的な努力が、なによりも重要なのだと改めて感じています。

思い切って実行してみる、そこから丁寧に擦り合わせ、チューニングしていく、この姿勢が大事なのだと思います。

 

OMOとはオンラインとオフラインの調和

すでに喧伝されているとおり、これまでも、これからも、オンラインとオフラインのどちらかを使えばOKということはなく、オンラインとオフラインをいかにうまく組み合わせるか、調和させるかがなによりも大事なことだと思います。

私たちは、OMOという言葉を「オンとオフの調和」という風に理解しています。よく言われる「融合」でなくなぜ「調和」という言葉を使うかというと、オンとオフ、デジタル的なものとフィジカルなものとの間には原理的に異質なものが存在するという理解を前提にしているからです。

異質のものは、原理的にひとつになることはないが、異質であってもそれらが共生し、その共生という関係がさらなる価値を生み出すことはできるのではないか、という考え方に基づいています。

これからも私たちなりの解釈のもとに、より良い顧客体験を提供するための取り組みを行なっていきます。

 

吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。

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