KNOWLEDGE & INSIGHTS

グレート・リセットのなかでの「ブランド」の意義

コロナ禍の中の今までとこれから

世界中で猛威を振るうコロナ禍のなか、我々はいまだ明確な出口を見いだすことができないながら、社会全体でなんとか苦境を耐え凌ぐ日々が続いています。

人命にも関わる病気への対応、見えない敵に晒される恐怖、対策から生じる様々な活動制限、そしてそれらが引き起こす経済的停滞や社会的な断絶。

年は明けて新しい一年を迎えましたが、2021年もコロナが引き起こす様々な波に晒されながらなんとか生きて行かねばなりません。

私たちの会社でも、昨年の非常事態宣言終了直後から、それ以降のコロナが企業活動に及ぼす影響やその打開策を考え実践しながら、社内外にメッセージを発信してきました。

2020年6月頃の予測とそれに対する取り組み提言

  ※弊社資料より抜粋/2020年6月頃の予測とそれに対する当社の取り組み提言

 

生き残りのファーストステップ/顧客接点のDX

感染者数が急増し緊急事態宣言が再び発令されようとする2021年1月の現時点は、この資料でいうところの第二波(断続的活動制限)の真っ只中というところでしょう。

ここに至るまでのところで、盛んに喧伝・推進されたのがDX(デジタルトランスフォーメーション)という概念とその取り組みです。

私たちの提言によれば、eチャネルの備え、OMOの推進というところがそれに該当するかと思います。

コロナ禍による外出制限などを経て、人々の暮らしが大きくデジタルにシフトするなか、店舗や対面営業などのリアルの顧客接点が機能しない、もしくはその役割を変えざるをえないという状況が生まれてきました。

様々な企業においてこのような取り組みが現在進行形で進められているものと思いますが、その中心軸は急速に移りかわる顧客行動に対する取り組み改革、つまり「顧客接点のDX(デジタル化)」にあると考えています。

D2Cという言葉もこの流れの一つとして世の中から注目されています。メーカーや流通がWebやSNSを用いて低コストかつ、ダイレクトに消費者と結びつこうとする動きです。

昨年末に「伊勢丹新宿店が全商品をアプリで販売へ オンライン接客サービスを導入」というニュースが出ましたが、OMOの取り組み事例もさらに増えてくることでしょう。

ほとんどの人間が常にスマホを見ながらあらゆる生活を送っている世の中で、デジタル技術を通じてオンラインの世界とオフラインの世界を結びつけながら顧客体験の充足を図る取り組みは、顧客視点で考えればあって当然の当たり前のものではあります。

私たちが自社で取り扱うオーダーメイドの結婚指輪工房ith(イズ)でも、このような観点からオンラインチャネルの充足やオンラインカウンセリングという形でのOMO等を行ってきました。

 

【実践事例】ジュエリー会社がオンライン接客に取り組んで見えたこと

【実践事例】カウンセリングのオンライン化によって拓けた可能性

 

 

未来につながるセカンドステップ

繰り返しになりますが、いま進んでいるDXの多くは、コロナ禍という環境下で急速に変わりつつある顧客の行動変容に対応するものとして必須のものです。Webというチャネルがなければビジネスを展開するための最低限必要な顧客接点すら確保できない、もしくは利便性という観点から顧客体験を著しく損なう可能性がある。そのような状況をなんとか打開するための策として、顧客接点のDXが進められているように思います。

その重要性を改めて認識したうえで、さらにその先に、より本質的な変革を求められる局面がやってくると考えています。冒頭の資料において第三波(競争環境の根本的変化)と表現する状況です。

現在我々はコロナによって強制的に行動を変化させられていますが、その行動を続けるうちに物事の捉え方自体が変わっていることに気づかされることがあると思います。

例えばコロナの前は外食が好きだったけれど、コロナ禍の生活を通じて自分自身でご飯を作って家族と食べることが楽しくなってしまって外食しようという意欲自体がめっきり減ってしまった、というようなことです。

このように、制限された行動を続けているうちに、身の回りの様々な物事との接し方や感じ方、選択の基準自体が変わっていってしまっているということ。このことが価値観の変化、変容です。

社会の行動の変化とそこへの対応が現在進行中のファーストステップだとすれば、行動の変容に加え価値観の変化とそこへの対応が、企業として取り組むべきセカンドステップであり、この価値観の変化こそがコロナが収束した後も、社会全体の変容として中長期に渡って継続的な影響を及ぼしていくだろうということです。

 

価値変容を導くグレート・リセット

多くの専門家や有識者によって、コロナ禍を契機とした未来への社会変容についての提言がなされていますが、そのひとつに「グレート・リセット」という考え方があります。

世界経済フォーラムの創設者であり会長のクラウス・シュワブ氏により提唱され、世界的な視点で政治、経済、学問など様々な領域で世界のトップリーダーが集うダボス会議の2021年度のテーマにもなっています。

社会全体を俯瞰的に見るマクロの視点、産業や企業レベルでのミクロの視点、そして個人の視点、それぞれにおいてコロナを経験した後の社会がどのように変わっていくか、変わっていくべきかという予測と提言がなされていますが、コロナによって多くの人命が危機に晒されるとともに既存の世の中の仕組みが破壊されていくことを前提に、その中から未来につながる新しい芽を息吹かせよう(リセットさせる)という主張がなされています。

 

この本のなかでも、アフターコロナの時代に訪れる消費者としての価値観の変容が予測されています。

この強制的ともいえる集団的反省期間はきっと、人々の行動を変え、それがやがて主義や信条を根本から見直すきっかけとなるだろう。もしかしたらそれが、何を優先するかの順番を変え、日々の生活のさまざまな場面で人々の行動を変えるかもしれない。

 

厳選して少ないモノを所有するメリット、一生をかけた人生の意義や目的(「生きがい」)探し、自然の大切さや森林浴の習慣などが、世界各国で真似されている。

 

派手な消費や大量消費は人にも地球にもプラスにはならない。そうすることで得る気づき、人としての達成感や満足感は、とめどない消費からは生まれない。おそらくはその逆なのである

 

アフターコロナの世界では、人々は今までとは違う意味で時間を大切にし、より大きな幸福感が得られることのために時間を割こうとする

 

世界各地で「よりよい未来」を求める運動や、GDPの成長よりも人類全体の健やかな生活を優先させる経済システムへの移行を求める声が高まっているのである

 

引用/クラウス・シュワブ,ティエリ・マルレ. グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界 (Japanese Edition)  Kindle 版.

 

グレート・リセットにおいては、新しい消費社会、従来の資本主義の枠組みを超えた変容の可能性と兆しが述べられていますが、さらにミクロに自分たち自身に周辺の活動や顧客行動においても、

他と比べて良いかどうかでなく、自分たちにとって良いか、ぴったり相応しいものかどうか。

モノとして基本的な品質がよいことを前提として、さらに精神的な面での意味や関係性において必要と思えるものかどうか。その結果として、丁寧に、長くつきあっていけるものかどうか。

自分が享受している商品やサービスは、自分の知らないところで地球や社会に過度な負担や迷惑をかけるものになってはいないか。

というように、総じて自分たち自身が物質的な意味を超えて精神的な意味で充足しているかどうか、より端的に表現すると幸せかどうか、という感覚で何かを求める人たちが徐々に増えており、その点に対して応える提案やサービスがお客様に選ばれているということを、自分たちの事業活動のなかでも強く感じています。

 

精神的な充足を満たすかどうかという観点から考えると、例えばOMOに関する取り組みも「利便性」という観点だけでなく、「満足や感動を深める」という観点からの取り組みに変換していくことができます。

私たちが結婚指輪工房ith(イズ)で取り組んでいるOMOのポイントは、利便性よりも満足度や感動の深さに力点を置いています。どうすれば顧客をより深く理解しより良いご提案をできるか、何があれば商品やサービスにもっと満足を感じてもらえるか、その観点から設計した仕組みは、成約率などの主要KPIにおいても高い成果を生み出しています。

 

 

 

新しいブランドづくりの必要性

この段階に至っては、顧客接点の変革というだけでは十分ではなく、改めて顧客の価値観理解(マーケティング改革)に基づく、ものづくりやサービスづくり(マニュファクチャ改革)、そしてそれら全体を包括的に実践していくマネジメント改革が求められます。

顧客接点や広告だけの改善といった一部分を変革する、最適化するといったことだけでなく、企業活動全体において一貫した取り組みを行い、それを消費者や社会に理解してもらう必要性、つまりブランディングという視点での変革が必要になるといういうことです。

こういったながれのうえで、私たちは世の中に豊かさ(幸せ)を創り出すブランドをつくる会社として活動を行なっていきます。自社ブランドで実践していくと同時に、他の企業様とのパートナリングを通じて社会全体に豊かさをもたらす活動を進めていきます。

私たちが目指すブランドのあり方

 

企業の思いと行動が新しい社会の様相を導く

一般的なマーケティング理論等においては、企業は消費者の変容に追従するかたちで変化を迫られるように描かれることが多いのですが、反面、一人一人の個よりも大きな力を持つ企業の理念や行動が消費者の価値観を形成し導いているという側面を、世の中がリセットされるようとしている今こそより強く受け止め、社会に向けて発信したり、行動していくことが企業の取り組みにおいても重要になります。

この苦しい時間に耐えながら、それでも近い未来の世の中に希望をつないでいくための道しるべとして「ブランディング」という概念に向き合うことは、規模に関わらずすべての企業にとって極めて意味のあることだと思っています。

 

吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。


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