KNOWLEDGE & INSIGHTS

2021.01.12

【基礎からわかるブランド&DX】顧客のためにこそこだわる

 

アーツアンドクラフツの10周年を機に、<つくるの力で世界を豊かに>というヴィジョンを表現する取り組みを行なっています。

Craftsmanship for You

オーダーメイドの結婚指輪工房ith(イズ)では、お客様それぞれのためにオンリーワンの指輪づくりを続けています。

それぞれの指輪の個性やこだわり、指輪としての美しさや永く使っていくために必要な品質。

お客様からオーダーを受けた一本一本に求められる基準を満たすために、職人たちの並々ならぬ技術やこだわりが込められているのですが、私たちのこだわりや技術は、すべて身に着けるお客様に価値を生み出すためにあるという思いを込めて、<Craftsmanship for you>と題したショートムービーを制作しました。

こだわりがもたらす罠

「ものづくりを大事にする」「ものづくりの価値を世の中に伝える」と謳い事業を進める私たちですが、「つくる」という行為に力点を置くからこそ特に気をつけ、忘れてはならない視点があります。

それは、自分たちのこだわりや技術が、誰に価値をもたらすものなのか、という視点です。

どんなに優れた技術や高邁な思想があったとしても、そしてそのためにどれだけ修練や努力を費やそうとも、それが受け取る側(顧客や社会)にきちんと受けて止めてもらい評価してもらわなければ、なんら価値を生み出せません。

けれどもつくる側の人間たちは、自分たちの仕事に対するこだわりや自信があればあるほど、受け取る側に自分たちと自分たちの仕事を理解してもらわなければ価値が生まれないということを忘れてしまいそうになります。

様々なものづくりに携わる職人やアーティストと関わりあうなかで、「自分がやっていることが絶対にいい」「自分が進んでいる道に間違いはないはずだ」という強烈な自我や自尊心がなければ優れたものづくりはできないのだろうという気持ちもある反面、つくり手が「こだわり」というものに傾倒しすぎることで、顧客のためにという視点が欠落してしまう。

顧客のためにという視点がなければ、優れた能力や技術も十分な価値を生み出すことができない。

こういったことが「こだわりがもらたす罠」だと思います。

 

共創のものづくりの有用性

ものが溢れ、好きなものがすぐに手に入るこの時代において、どんなに優れたもの、こだわりがつまったものであっても、それがその顧客にとって意味をもたらすものでなければまったく必要とされないという状況が顕著になりつつあります。

裏を返せば、自分たちが向き合う顧客にとっての意味を生み出すために、つくり手が何をできるか、という捉え方が今まで以上に大切になっているということです。

そのための有効なアプローチ手段として、「共創のものづくり=一緒につくるものづくり」を提唱しています。

誰かに価値をもたらす力を持っているつくり手と、使う側となる顧客がコミュニケーションをとりながらものづくりを進めることで、その人にとっての価値を持つものを生み出すことができる、という考え方です。

伝えること、聞くこと

ひとくちに共創のものづくりといっても、商品やサービスの違いなどによって様々な方法やパターンがあるかと思いますが、つくり手とつかい手の共創を導くためのステップをエッセンスとして抽出するならば、「伝えること」「聞くこと」に集約されるのではないかと考えています。

その商品やサービスに関わるプロとして、その顧客がどういう観点で、何を選んでいくべきか。自分たちのものづくりやサービスが顧客のためにどんな役割を果たし、価値を生み出すことができるか、顧客に理解できるように伝える。<伝える

顧客に理解して頂き共通認識を築いたうえで顧客の思いやニーズやウォンツを導き出す。<聞く

伝え、聞く。このプロセスを通じて双方の意思を通わすことができれば、ここから先はプロフェッショナルとしての技術やこだわりを思う存分ふるってものづくりに取り組むことができる。

私たちは、結婚指輪のオーダーメイドに取り組む中でこの方法論を導き出し磨いてきましたが、他の商品・サービスにおいてもこのエッセンスに基づいた新しい取り組みを始めています。

 

つくり手のこだわりを誰かのために

様々なかたちで社会にテクノロジーが浸透していくなかで、良いものづくりをできるつくり手の価値、世の中に優れた何かを生み出せる才能を持つ人たちの価値が、今まで以上にクローズアップされる世の中が近い将来訪れるでしょう。

日本には優れた技術や技能、こだわりを持つ職人や工場がまだまだあります。その力を遺憾なく発揮し世の中を豊かにする価値づくりのために、自己満足に陥ることなく誰にとってのこだわりかという視座と、つくり手と使い手の価値を結ぶ方法論の開発が極めて大切になると考えています。

 

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ブランドとデジタルの力で、日本のものづくりをアップデートする。アーツアンドクラフツの実践的ノウハウを余すところなく紹介した一冊です。

 

吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。