私たちアーツアンドクラフツが自分たちの事業を通じて実現したいことを表現した言葉です。
「”つくる”の力って?」「世界を豊かにするってどういうこと?」
抽象的な言葉に捉えられるかもしれませんが、私たち自身はこの言葉に私たちなりの明確なイメージをもって事業に取り組んでいます。私たちの活動や発信する情報、行動のひとつひとつはそのイメージと紐づいています。
私たちは日本のものづくりを活性化させるための方法論として、テクノロジーを活用したものづくりのブランド化(Brand×Tech)という切り口で事業に取り組んでいますが、そんな私たちの考え方をご理解頂くために、私たちが「つくる」「世界を豊かに」ということについてどのように考えているのか、そこからどういうことに取り組み、取り組んでいこうとしているのかについてご紹介していきたいと思います。
まず最初に「つくる」とは何か。
誰もが日常的によく使う言葉ですが、漢字を当ててみると「作る」「造る」「創る」、英語でも「make」「build」「produce」「create」と幅広い意味と用途があることがわかります。
有形/無形のものなのか、前例のあるものか/ないものか(世界を創る!とか)といった区分けがされるようですが、私たちの解釈では諸々をひっくるめて、
というような意味合いで捉えています。
私たち人間は大昔から生きていくために、道具をつくり、狩りをしたり、食べ物を栽培したりしながら、仲間と集団で生活する仕組みをつくり、さらに拡大していくために国や宗教をつくり、という行為を重ねてきました。
昔から様々な研究者や哲学者が「つくる」という行為に着目し、つくるという行為が人間そのものである、という理論や学術研究もあります。
私たちは、消費者向けにオーダーメイドの結婚指輪の製造販売事業や九州野菜の通販事業を、法人向けに経営コンサルティングやITソリューション事業を行なっていますが、それぞれのかたちで「つくる」という行為に携わっています。
九州野菜の通販では、直接的に人の命をつなぐ食べ物を届ける仕組みをつくっています。
結婚指輪のオーダーメイドでは、カタチのあるジュエリーを作ることで、幸せに生きていくための思い出や喜びをつくっています。
コンサルティングでは、自分が持っている能力やスキルを発揮しクライアントに貢献することで、間接的なかたちで世の中に何らかの価値を生み出していると言えます。
またお客様に喜びや価値を届けることで、自分たち自身は報酬を得ると同時に満足ややり甲斐を感じています。
このように自分たちが携わっている仕事を通じて、「つくる」という行為が直接的か間接的かによらず生きていくための糧に関わる行為なんだということに気付かされます。
つくるということ。つくられたモノやコト。そこから生み出された感情。そのそれぞれに、
が備わっているんだと思います。
それが私たちが考える「”つくる”の力」の定義です。
では、”つくる”の力で世界をより豊かに、とはどういうことなのか。
私たちは、三つの視点から”つくる”の力によって世の中を豊かにする、という行為を定義しています。
一つ目は世の消費者に向けた豊かさ、具体的にいうとお客様に対して私たちがつくるモノとそのものづくりから生まれる魅力や価値と伝え、そこからお客様自身の幸せや満足を生み出していくということです。
それは、自分たちのために作られたジュエリーを着けて「可愛い!」「嬉しい!!」と思う気持ちだったり、職人の技術の素晴らしさを知ってその重みに深く感動したりという気持ちです。
コンサルティングで言えば、ロジカルシンキングや様々なビジネスメソッドを活用して、クライアントだけでは到達できなかったゴールや問題解決に導くといったことになるでしょう。
細かな説明をせずとも、思いを持って作られた優れたものや、卓越したプロの芸や仕事が私たちに感動を与えてくれるということは多くの方が理解されていると思います。
二つ目は生産者、私たち働く人間一人一人に向けた豊かさです。
それは、仕事(=何かの価値をつくること)を通じて生きていくために必要な金銭や報酬を得ることはもちろんのこと、それだけでない喜びや充実、達成感、さらにいうならば自分自身の存在価値を感じられる、というようなことです。
価値をもつ素晴らしいモノやサービスをつくることは簡単なことではありません。そのためには、努力を重ね才能を磨きながら、誰かに貢献できる状態にならなければなりません。
その努力の結果として誰かに認められたときにそこに喜びや充実感が生まれる。そしてさらに自分を磨き、高みへと登っていきたいという意欲が生まれてきます。
なんだか難しそうなことのように思えますが、例えば使うお客さんのことを想像して、ちょっとここを改良してみようか!」とか「外国のお客様が来ても対応できるように英語勉強しよう!」とかそんな気持ちの延長や積み重ねのようなものなんだと思います。
そういう状態で日々を過ごしていけるということ自体がとても豊かな人生だと思いますが、”ものづくり”というものに関わることで、私たちはそのことを感じたり、理解するきっかけを得ることができるように思うのです。
三つ目は、社会全体のあり方に向けた豊かさです。
どんなモノであっても原材料となるものがあり、材料の採集や精製、加工など様々な過程を通じて、モノやサービスとなり私たちのもとに届けられています。そしてほぼすべての原材料は地球上のどこかにある資源を源にしています。
私たちは自分自身が直接ものづくりに関わっているいない関わらず何らかのモノに囲まれて生活していますから、ごく当たり前の生活をしているだけで、なんらかの資源を消費して生きているわけです。
そして資源には限りがあっていつか枯渇してしまう可能性もあるというところから、サステイナブル(持続可能)な社会という考え方が生まれ、循環や共生をコンセプトにした取り組みが始められています。
私たちはオーダーメイドでの指輪づくりを行なっていますが、オーダーメイド(受注生産)というものづくりのあり方は大量生産/大量廃棄に基づく社会のあり方に一石を投ずることができるではと考えています。
受注生産で無駄のないものづくりを基本に、必要なものが必要な人に届くオンデマンド型の消費社会というのが私たちの描く社会イメージのひとつでもあります。
そしてもうひとつ大事な役割と考えているのが社会への情報発信です。
私たちはサステイナブルに行動していくためにはまず状況を知ること、知ってもらうことが大事だと考えています。知らなければ、何かを変えようという思いも行動も起こりようがないからです。
私たちはものづくりを通じて生きる糧を得ているわけですが、サステイナブルに考えるならば自分たちだけが満たされるのではなく、その業界を誰よりもよく知るプロとして、ものづくりの取り巻く状況やそこから生まれる問題点などについて伝え、世の中全体がどうあるべきかを導いていく責任も追っているんだと思います。
逆にいうと、自分たちが伝えていくメッセージで、世の中を豊かにしていくことができるということです。
話が少し大袈裟になってしまいましたが、理念や概念だけでなく、自分たちが取り扱う商品やサービスであったり、ちょっとした読み物であったり、スタッフがお客様に伝える言葉であったり、そういった小さなこと、でも具体的なことを通じて、社会の皆さんになんらかの気づきを与えていくことで、消費の仕方やものとのつきあい方が変わり、サステイナブルな方向へと向かっていけば良いなと思っています。
※ith(イズ)のブランドカタログから抜粋。指輪をつくるプロセスを理解してもらうことで、指輪への愛着をもっと深く感じてもらえたらと考えています。
2020年代はパンデミックという人類全体に対する大きな脅威と共に幕をあけました。
地球環境の視点に立てば、環境と経済を両立するサステイナブルな社会というものの実現を迫られています。
国と国の関係に視点を移すと、アメリカと中国という二大大国が凌ぎをけずりあい、その狭間で様々な国や地域が自分たちの存在の仕方を模索しています。
人種や国籍の問題は、再び避けて考えることのできない大きな社会的なうねりとなるでしょう。
メディアや有識者が喧伝するように、まさしく大きな転換点となる時でもあり、変革の時代なんだろうなと感じます。
そんななかで、お客様や社員、取引先など様々な人と関わりながらふと思うのは、「誰もが不安を抱えながら、なんとか不安というものに向き合って一生懸命生きているんだな」ということです。
明日がどうなるかわからない不安。変化しなければならない不安。
みんな口には出さないけれど、不安のなかでどうにか前を向いて毎日を進んでいこうと頑張っている。
そんななかで、豊かでありたい、幸せでありたい、と思う気持ちは、私たちの日々の心の支えでもあり、私たちを行動へと導いてくれるものでもあると思います。
”つくる”の力で世界を豊かにするということは、ものづくりに関わって生きる私たちの身近な日常の中にも存在しています。
ブランドとデジタルの力で、日本のものづくりをアップデートする。アーツアンドクラフツの実践的ノウハウを余すところなく紹介した一冊です。
アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。