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【実践事例】テレワーク時代のタイムマネジメント vol.1

テレワーク画像1

テレワーク時代に新たに求められるタイムマネジメントの在り方

この昨今のコロナの影響を受け、日本国内でも多くの企業がテレワーク制の導入に踏み切っています。このコラムを読んでいる方の中にも自身が今現在在宅で働くことになったビジネスマンも多いかと思います。このコラムでは、この新しく迎えたテレワーク時代に備え、むしろオフィス勤務の時よりか生産性を上げられる機会が眠っていること示し、具体的にそのためにはどのようなタイムマネジメントができるかピーター・ドラッガーの提言を参考にしながら紐解いていこうと考えています。

 まず、日本のテレワーク導入率の推移をおさらいしてみましょう。下にあるグラフはパーソル総合研究所が波発表した国内正社員約20,000人におけるテレワーク実施率の推移になります。

 日本におけるテレワーク実施率の推移 

  このグラフから明らかなように、国内のテレワーク従事者の比率は、4月の7都道府県自治体による緊急時事態宣言を受けて、大幅に上昇しています。緊急事態宣言の解除後で一旦、揺り戻しがありますが、それでも国内正社員の約1/4がテレワーク勤務をしている実情が分かると思います。

このテレワーク、つまり作業者同士がリモート環境にいながら業務を遂行していくスタイルは、国内のみならず目下グローバルの潮流となっています。Newsweekの記事によれば、無料音声会議を提供するフリーカンファレンスコールは、このコロナの影響でアメリカでの利用が20倍に増え、イタリアでは43倍、スペインでは9倍に増えたというデータがあります。ネットワーク分析会社ケンティクの調べでも、北米とアジアではビデオ会議のデータ量が約2倍に増えたという報告があります。

このテレワーク導入傾向ですが、さらに職種別に分解したのが下のグラフになります。こちらを見ると、このテレワークの実施が職種によって大きく異なり、二極化していることが分かるかと思います。

 日本における職種別のテレワーク実施率推移

 

 対面接客が必須の医療系や理美容師、販売職といった職種や、物理的に作業が特定の場所に縛られるビル管理・メンテや物流業の職種は、もともとテレワーク導入率が低い傾向でしたが、5月の緊急事態宣言解除後にまた現場での作業を復活させる傾向にあります。一方、経企やコンサル、R&D、営業・マーケ、ITといったオフィスでのデスク業務がメインの職種については、むしろテレワークの導入が5月以降も進んでいることが分かります。このような「二極化」の傾向は、肌感覚としても合うものではないでしょうか。もちろん接客業や物流・メンテ業務でもテレワーク拡大の余地は残されているものですが、オフィスでのデスク業務がメインの職種と比べてやはり難易度は高いと言わざるをえません。

今回のコラムでは、この上記のグラフで言うとことの「テレワークとの相性の良い職種」を念頭にタイムマネジメントの在り方について論じていきます。従って、接客業や物流、警備をされている方々には適用の難しい内容が含まれてしまいますがご容赦いただけたらと思います。ただ、上記グラフで「相性の悪い」に分類された職種であったとしても、必ずしも結局今までと何も変わらない/変えられないという訳ではありません。自身の業務を細分化するタイムマネジメントの手法を実践することにより100%では無いにしても部分的にテレワークの導入を図ることができます。

 

テレワーク時代の働き方の特徴

さて、このテレワークですが、国内外よりそのメリット・デメリットが各方面から指摘されています。そのテレワーク時代の働き方の特徴を下記の表にて示してみました。

 テレワーク時代の働き方の特徴

 

  まず、前提として申し上げますが、すべての変化にはメリット/デメリットが存在するものです。このテレワークによる環境の変化も例外ではありません。従ってビジネスマンが人事を尽くして挑戦すべきことは、その変化に合わせてメリットを最大化し、そしてデメリットを最小化する工夫をこらすことに他なりません。従って、後述することになりますが、ここで挙げられているデメリットも工夫次第で対処することは可能です。その前提の上で、各変化について詳述していきたいと思います。

 

特徴1:物理的な距離の制約が無くなる

テレワークの普及により、互いがリモート環境で会議体をすることになり、今まで発生していた移動時間がなくなります。これは単に出社/帰宅の通勤時間の削減にとどまらず、客先への訪問も含まれるため、その時間創出効果は膨大になります。仮に、出社/帰宅の通勤時間に限っただけでも、2016年に行なわれた総務省統計局の調査によると日本の通勤時間の全国平均は片道39.5分、往復で79分と試算されています。1日のうち約1時間20分が通勤に使われており、月の営業日が20日だとすると毎月26時間20分が通勤で時間が消費されていることになります。これに担当エリア内の客先訪問や遠出の出張を含めるとその消耗時間は更に跳ね上がることになります。

この「移動時間の削減」はテレワークの最大最強のメリットであると言えます。このことは単にワークライフバランスの充実や、作業時間の確保が容易になることに加え、必然、会議の増加による生産性向上の恩恵をもたらします。ここで「会議」と一括りにしていますが、この中には社内の意思決定の会議体もあれば、簡単なインターナルの打ち合わせ、採用面接、そして客先での商談など諸々の「ミーティング」が含まれます。例えば、今まで客先に訪問していた時は、商談数は日平均2件がやっとだったのがテレワークになり56件回せるようなことが可能になります。

また、この移動時間の制約が無くなることは、会議体の時間調整をさらにしやすくなることに繋がります。今まで、例えばクライアントからミーティングの日時候補がきたとしても、物理的に移動時間が制約となりそのミーティングを請けられず、リスケの依頼をするようなケースは多発していたかと思います。それがこのテレワークになりますと、移動時間の概念がなくなる為、例えば1314時は事業部内の会議に参加するが、その直後の1415時から顧客との商談予定を入れる、といったことが可能になります。これは「打ち合わせ間の息抜きができない」という弊害もありますが、今まで悩んでいた時間調整の選択肢の幅は格段に広がることは実感されている方も多いのではないのでしょうか。

ただ一方、物事にはメリットもあればその裏返しでデメリットもあるものです。この移動時間の制約が無くなったことで、昔よりも会議の頻度・負荷が増えたという声もよく聞かれます。今までは、物理的な制約を理由に参加できず、他のメンバーに任せあとで議事録を確認する程度で済んでいたものが、テレワークになり都合をつけようと思えば付けられるので参加することになり、結果あまり参加価値のない会議体にも顔を出し、徒に消耗するケースもあります。これは、自由度が増えたことの代償とも言えますが、ここで新しいテレワーク時代に求められることは、「自ら能動的に参加する会議体を取捨選択していく技術」になります。それは自分にとってそのミーティングは意味があるか、という視点もありますが、それとは別に自分がそのミーティングに価値貢献できているのか、という視点も重要になってきます。

 

特徴2:作業風景が見えなくなる

テレワークの環境では、自らが能動的にアクションを起こさなければ、同僚や部下がどの様に作業しているのか把握することはできません。リモートワークの環境下では基本、個と個は別空間で作業しており、断絶しています。従って、オフィス勤務の時は可能であった、作業風景を遠目に眺めるような管理スタイルが通用しなくなっています。これは管理職にあるビジネスマンにとって大きな変革、パラダイムシフトを余儀なくされる事象と言えます。

この「作業風景が見えない」という事により、例えば部下に対して作業の合間に声かけて進捗把握していた従来の方法ではなく、よりアウトプット思考の管理が求められることになります。つまり、やるべきタスクを細分化しアクション項目に落とした後は、各自社員にその作業の仕方は任せ、マネージャーはその結果をもってチェックするような管理方法になります。この方法は弊害もありますが、しっかり確立されればメリットも大きく享受することができます。まず、管理者としては作業の途中途中に介入する必要がないのでそのための時間を奪われる必要がなく、管理効率が向上します。次に、これは制度設計を従来からしっかりと変える必要はありますが、このアウトプット思考の管理は、社員の評価も成果物単位で行われることになり、誰にとっても「分かりやすく」「公平な」評価制度を自然と促すことになります。一方、今まで「頑張っていた」とか「根性がある」といった作業過程上の視点での評価(えてしてそれは客観的ではなく主観的な評価になりますが)が排除される傾向になります。これは一見、ネガティブに見えますが、一概にそうとは言えず、今まで成果を出さずとも「頑張りアピール」で評価を補填していた社員も純粋に成果物でチェックされることになるため、より成果物の品質・精度へのコミットが強くなるという利点があります。

ただ、やはりデメリットもあります。この「作業風景が見えない」という点は、多くのテレワーク初心者の管理者にとってまず不安を抱かせるポイントです。よく言われるのが「部下がサボっていても分からない」というような指摘です。これは後述しますが、テレワークでも回避する策はあるのですが、始めてテレワークで複数社員を管理する立場の方にとっては、非常に不安を感じて疑心暗鬼になってしまう事象のようです。上司にとっては、自分の部や課の社員と言えども性悪説で考えなくてはならない局面は確かに存在するので、この気持ちが湧いてしまうのは理解できます。

 

特徴3:空気感を共有しづらい

これは上司・部下という立場の問題というよりか、その人間の個性によるところが多いのですが、ビジネスマンの中には喜怒哀楽といった感情を主軸においたコミュニケーションを好む方々がかなりの割合で存在します。また普段はあまり感情を前面に押し出すスタイルではない方でも、一体感を醸成するときや、相手を叱ったりクレームを言わないといけないとき等、シーンによっては感情ソリューションが必要となる局面に出くわすことは多いはずです。テレワークでもライブで会話するので、感情を出そうと思えば出せるのですが、やはりこの感情を伝える/共有するという行為については物理的に一か所に集まったほうが有効なのは事実だと思います。

この「空気感を共有しづらい」というテレワークの特徴は、やはりメリット・デメリットそれぞれあります。まずメリットについて言えば、仕事の目的に沿って(淡々と)合理的に意思決定を進めることが挙げられます。もちろんテレワークでも「空気を読む」みたいな事は行われますが、「怒ることで場を制しよう」といった極端な感情ソリューションは抑制される傾向にあります。これは、やはり物理的に一か所にいるときよりか、テレワークの画面からでは相手の表情を読みづらいことが起因していると思われます。受け手のほうも感情を出そうとしている方の表情がそもそもテレワークだと見えていなかったり、もしくは画素が落ちるため感化されづらく、また発信側としても自分が感情を発信した後の相手の反応が伺いにくいので敬遠される傾向にあります。テレワーク時代では、そのような極端な感情要因によるバイアスを比較的回避できるため、より仕事の目的に沿った合理的な議論に集中できる傾向にあります。

また、この変に空気を読む必要が無いという点は、会議の途中参加/離脱のしやすさを上げる効果もあります。物理的に一か所に集まった会議の場合、小学生の頃に授業中に手を挙げてトイレに行くのが憚れる心理と同様に、途中から参加したり/退出したりする心理的ハードルは高まります。一方、テレワークの場合、そのような空気感を推し量る傾向が弱くなるため、より重要な仕事を優先したあとに会議に途中参加したり、会議の後半に発生した生産性のない与太話から離脱したりすることが比較的容易になります。

このようにメリットもある一方、「帰属意識」や「モチベーション」といった組織マネジメントにとって必要な空気感も確かにテレワークだと共有し難いという側面も確かにあります。コロナ前において、日本の企業がやたらと飲み会を奨励し、隙あらば会社補填までしていたのもあながち根拠が無い訳ではありません。比喩になりますが、オンラインゲームで知り合った他人同士が、団結や親睦を深めるためにわざわざオフ会と呼ばれるリアルの接点を企画するのも、やはり物理的に一か所に集まるということはリモートでは成しえない意味があるということの証左なのだと思います。

 

特徴4:自宅が職場となる

現在テレワークを実践している方の多くは在宅勤務という形を採っていると思われます。それは、仕事場の空間とプライベートの空間が混然となることとなり、様々な影響を与えています。

テレワークで働きたい/働きたくない理由

こちらは2017年のアンケートなのでこのコロナ状況下での話ではないですが、エン・ジャパンが社会人に対しテレワークで働きたい、働きたくない理由をアンケート調査で聞いています。こちらの結果をみると左右のグラフともトップはプライベートの時間に関する論点であることが分かります。

在宅ワークのメリットの一つとして、物理的にも時間的にもプライベートの事柄に従事しやすくなり、かつ仕事の合間であっても柔軟に対応しやすいことが挙げられます。上記グラフの「テレワークで働きたい理由」の1位以外の項目もよく見てみると、出産や育児、介護といったプライベートでの事柄に従事しやすくなることを理由として挙げている方が多いことが分かります。また、このコラムの読者でいる皆様でも、このコロナの影響で在宅勤務をしていた時に、夫婦間や子供といった家族とのコミュニケーションが充実した/増えたという感想をお持ちの方も多いと思います。

もちろん、これはコインの裏表と同じでデメリットもあります。オン/オフの切り替えが容易にできるということは裏を返すと、仕事とプライベートの境界線があいまいになることに繋がります。日本のビジネスマンの中でも、ご自身のオン/オフの切り替えを、職場/家という物的な場所に紐づけて行う方は多いと思います。そのような方にとって、この在宅ワークで「職場≒家」となってしまうと今までのルーティンが崩れることになります。その結果、仕事の区切りがつかず、遅い時間まで断続的に働いてしまうようなケースが発生します。


以上が、このテレワークによるビジネス環境の変化の特徴になります。次コラムでは実際にスケジュールがテレワーク前/後でどのように変わったか、実例をお見せしていきたいと思います。

<次コラムはこちら→>【実践事例】テレワーク時代のタイムマネジメント vol.2

平田

平田久郎

米国戦略系ファームBooz & Company(現PwCネットワークStrategy&)を経て2010年当社設立に参画。コンサルタントとしての経験と知見をもとに、当社のB2B領域における事業開発及び業務運営を一手に担う。独自の社会観と戦略眼に基づき、次世代型のコンサルタントとエンジニアの育成に従事。ペンシルバニア大学(米国)卒業、東京工業大学大学院修士課程修了。

 

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