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2023.07.31

中小企業でもできるWebマーケティングにおけるSEO

はじめに(SEOの必要性について)

現代のビジネス環境では、インターネットが企業の成功において重要な役割を果たしており、特に中小企業にとって、オンラインでのプレゼンスを確立し、競争力を高めることは不可欠です。そのため、検索エンジン最適化(SEO)の重要性を理解し、積極的に取り組むことが求められています。

 SEOは、ウェブサイトやコンテンツを検索エンジンの上位に表示させるための戦略的な手法のことです。検索エンジンは、ユーザーが情報を探し求める際に頻繁に利用されるため、自社のウェブサイトが上位に表示されることは、多くの利益をもたらします。そのため、中小企業にとって、SEOの導入は、顧客獲得の増加、市場での知名度向上、信頼性の確立など、数多くのメリットをもたらすことが期待できます。

 例えば、良好なSEO戦略により、競合他社よりも上位に表示されることで、ウェブサイトへの訪問者数が増加し、中小企業は新たな顧客を獲得する機会を広げることができます。

また、SEOはターゲット市場へのアプローチを最適化するため、顧客ニーズに適切に応えることもできます。さらに、信頼性や専門性の高いウェブサイトは、顧客の信頼を獲得し、ブランド価値の向上にもつながります。

本記事では、中小企業がSEOを活用することの重要性と、その具体的なメリットについて詳しく解説します。さらに、効果的なSEO対策の手順、観測すべき指標についてもご紹介します。中小企業の皆様にとって、SEOの導入が事業の成長と競争力の向上につながる重要な要素であることを、お伝えできれば幸いです。

参考として、「中小企業が取り組めるBtoBデジタルマーケティング」について、過去に弊社が執筆した記事もご紹介します

【初めての方へ】中小企業が取り組めるBtoBデジタルマーケティングについて

 

SEOとは何か

SEOの概念

本項では、SEOの概念・定義・メリット&デメリットなどをご紹介いたします。そのためにも、まずはSEOがマーケティングの中でどの領域に該当するかを確認します。大枠から整理すると、マーケティングの1手法にデジタルマーケティングがあり、デジタルマーケティングの中にWebマーケティング(SEOなど)があるイメージです。

 デジタルマーケティングとは、「インターネットやIT技術を用いたマーケティング手法の総称」のことであり、WEBサイトに限らずにユーザー属性/動向(アプリの利用履歴、動画の視聴履歴など)を分析します。

 一方、Webマーケティングは「広告/SNS/SEOなどのWebサイトを中心に行うマーケティング手法」のことであり、「Webサイトへのユーザーの誘致」を最終目的にしています。ゆえに、「Webサイトを訪れるユーザーの属性/動向」に絞った分析を行い、当分析結果をもとにサイトの改善施策を実行していきます。

SEOの定義

SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、検索エンジンを利用したWebマーケティング手法のことです。当手法は、自社Webサイトの内容を、Googleなどの検索エンジンが理解しやすいように最適化することで、「自然流入数*を増加させて、獲得リード数の向上を狙う」ことを目的にしています。また、以下のようなメリット/デメリットがあるので、SEOの効果を最大化するためには、①検索エンジンの仕組み、②SEOの具体的な実施内容(第3章に記載)を理解する必要があります。

*自然流入数(別名:オーガニック検索数)とは、検索結果画面に表示される中で、広告枠でない部分からの流入数のこと。

SEOのメリット/デメリットは、以下のように整理されます。

(メリット)

  • 各種広告と比べて費用対効果が高い
    • 検索結果の1ページ目に表示するWEB広告などがあるが、これらは1クリックごとに費用が発生する
  • 購買意欲の高い顧客を集客できる
  • 上位表示に成功すると、中長期的なアクセスを見込める。また、ユーザーからの信用を獲得でき、サイトの権威性も上がる

(デメリット)

  • 新製品/新サービスなど、検索ワードが存在しないものには適さない
  • 改善策の反映に時間を要する
    • 検索エンジンに評価され順位や流入に好影響が見られるまでには時間がかかる
    • サイトの規模次第だが、施策を行ったページが多ければ多いほど検索エンジンがページを認識して順位付けするまでに時間が必要
  • 外部要因による変動も大きい
    • アルゴリズムの変更など

 

■検索エンジンの仕組み

ここでは、Googleが提供する検索エンジンの仕組みをご紹介します。

Googleの検索エンジンは、インターネット上の情報を効果的に収集し、「ユーザーの検索クエリ(ユーザーが検索窓に入力する語句のこと)に対して最適な結果を提供するための仕組み」を構築しています。

大まかには、「クローリング→データベースへのインデックス→ランキング付け」を行っています。

  • まず、クローラと呼ばれるプログラムがウェブ上の情報(テキスト/画像/動画ファイルなど)を収集し、インデックスと呼ばれるデータベースに格納する
    • このインデックスは巨大なウェブページのコレクションであり、各ページのコンテンツやキーワードの情報が含まれる
  • インデックスされた情報を様々な要素で評価し、そのページの検索順位を決定する
  • 検索エンジンは、ユーザーが入力した検索クエリを解析し、関連するウェブページを検索。その後、関連性の高いウェブページを順位付けし、検索結果ページに表示する
    • 検索エンジンは、キーワードの一致度やページのランキングなどのアルゴリズムを使用して、最も関連性の高い結果を見つけ出す
    • 上位に表示される結果は、より関連性が高いと判断されたウェブページであり、当仕組みにより、ユーザーは高品質で役立つ情報を効率的に発見できる

 

なぜSEOが求められるのか

ここでは、SEOが必要な背景、またSEOの成功事例をご紹介します。 

普段の生活からも分かる通り、現代ではインターネット経由での情報収集は日常生活の一部になっており、インターネット上にも膨大な量の情報が点在しています。そのような中で、我々は、自身に必要な情報を見つけ出し、取捨選択する必要があります。

裏返すと、個人/法人の情報発信者は、ユーザーに発見されやすくすること、また発見後に各種コンテンツが有用と判断され、彼らの購買行動に訴求する必要があります。

  • 上位表示されない検索結果は、顧客に認知されない。そのため、自社ページへの訪問数を確保するためには、関連キーワードでの自社ページの検索結果を上位表示させることが必要
    • 自然検索結果で最もクリック率が高いのは、検索1位で表示されるページと言われており、自社ページの検索結果が3ページ目などでは、ユーザーに認知すらされないのが現状
    • 21年に「SEO Clarity」が調査したデータでは、検索順位が1位(94%)、2位(7.52%)、3位(4.68%)、4位(3.91%)、5位(2.98%)
  • 検索結果が上位かつ顧客の求めるキーワードに訴求できる場合は、購買意欲の高い顧客を集客できる(自然検索なので、無料で可能)
    • 自社サイトのコンテンツが充実していれば、ページごとにキーワードを設定することで、自社のサービス/商品に興味がありそうな顧客を色々なキーワードで集客できる
      • 検索順位ごとのクリック率は、キーワードの種類や性質によって異なる傾向あり。
      • 例えば、ブランドキーワード(特定の会社名や商品名を含むキーワードのこと)のクリック率は、35%程と高水準。また、ロングテールキーワード(不動産 恵比寿 空室のようなキーワード)の方が、クリック率が高いなど

また、現代において、消費者は検索エンジンを活用した情報収集からの購買活動への流れはB2Bでも同様であり、顧客/顧客企業は、御社の営業マンとコンタクトを取る以前に、能動的にインターネットでの情報収集を行っています。さらに、ユーザー/顧客は各種CMをスキップする、DM/メルマガは読まない、広告にいたってはブラウザでのブロック機能を利用する人も増えています。そのため、ユーザー/顧客へのアプローチでは、PULL型とPUSH型の両手法を活用することで、購買意欲をもつ見込み客への訴求確度を高めていく必要があります。

  • PUSH型アプローチとは、企業が特定の見込み顧客に直接的にアプローチする方法のこと
    • 具体的には、DM/メルマガ/電話営業/訪問営業/各種広告(CM/新聞広告/雑誌広告/折込チラシ)などがある
  • PULL型アプローチとは、企業が市場(不特定多数の見込み顧客群)にアプローチして顧客のほうから企業に接触してくれるのを待つ方法のこと
    •  具体的には、メディア活用/SEO/広告(リスティング広告/バナー広告/テキスト広告)/営業活動(紹介/口コミ/展示会/セミナー)など

 

SEOはPULL型アプローチの一手法として多様な業界で活用されており、以下のような成功事例が多々あります。

  • 事例①:ECサイト
    • 中古車買取ECサイトを運営するA社は、自社の買取実績データを活かし、SEO対策をECサイトにリニューアル。本取組により、4ヶ月後の検索流入数はリリース前月比で2倍、査定申込数は85%増となった
  • 事例②:動画配信サービス
    • 動画配信サービスを提供するB社は、SEO対策を反映した自社サイトをリニューアル。本取組により、半年後の検索流入数は約6倍、新規会員登録者数が約5倍に増加

 

SEOに関する計画の策定基準

 ここまでは「SEOの仕組み/重要性」をお伝えしたので、ここからは「具体的な実施事項」をご紹介いたします。ここで重要なことは「顧客層ではなく顧客“像“を定義する」ことです。具体的には、30代から40代の人に訴求するコンテンツではなく、「30代の男性×新規顧客(リピーター)に刺さるコンテンツ」のようなものです。このように、具体的な顧客像を定義することで、同じ商品をアピールするにしても、伝えるべき情報に差異がある点をご理解頂けると思います。

 また、顧客像の定義後に彼ら/彼女らの「検索意図(何を知りたいのか?なぜ検索しているのか?)」を整理する点も重要です。整体院を例にすると、「家の近所にある店舗、仕事帰りに立ち寄れる店舗、腰痛の治療が得意な店舗」のように様々な検索意図が考えられます。このように「顧客が求める情報」を整理することが、次にご紹介する「検索キーワード(検索量)/コンテンツ」の効果を最大化することに繋がります。

中小企業の方々向けに、貴社事業/顧客の理解を深めるナレッジをまとめていますので、以下の記事もご覧下さい。

 

「検索キーワード」には、ビッグキーワード/スモールキーワードがあります。ビッグキーワードとは検索での利用回数が多いもの(例えば東京/整体院/パソコンなど)であり、スモールキーワードは検索の利用回数が少なく、2~3個の言葉が組み合わさった言葉(恵比寿 整体 おすすめ)になります。このように、ビッグキーワードは検索回数が多いため、競合製品でもヒットする可能性が上がるため、ビッグワードのみでの上位表示は競争が激しいのが現状です。だからこそ、「顧客像/検索意図を明確に定義し、スモールキーワードでの上位表示を狙う方が、競争を回避できる、かつ高確度の顧客を呼び込むことが可能です。また、「キーワードプランナー」を活用することで、貴社の商品/サービスとの関連性が高いキーワード、キーワードの組みわせを選定することも可能です。これは、より低コストで最大効果を狙いたい中小企業の方々にとっても最適な戦略/戦法だと考えております。

このような、効果的なキーワード選定に関するメソッド/ナレッジについては、また別の機会にご紹介できますと幸いです。

 ただ、一方で、上記のように自社サービス/自社顧客にとって最適なキーワードを選定するだけでは、顧客獲得には不十分です。なぜならば、SEOは検索ニーズと意図を把握したコンテンツを充実させることで検索流入を稼ぐ手法であるためです。ゆえに、SEO対策で流入顧客を購買につなげるには「コンテンツマーケティング」と連携が必要になってきます。

具体的には、コンテンツマーケティングとは、コンテンツ(情報)を用いてコミュニケーションを行うマーケティング活動であり、「顧客に価値あるコンテンツを作成・配信することで見込み顧客を醸成し、購買に繋げるためのマーケティング手法」のことです

コンテンツマーケティングの詳細は、弊社が作成した以下の記事をご覧ください。

 

SEOにおいて継続的に観測すべき指標

最後に、SEOの効果測定で観測すべき指標を紹介し、本稿を閉じたいと思います。SEOの効果測定では、主に「①検索エンジンからの自然流入数(オーガニック検索数)、②キーワード検索順位の推移、③検索エンジンからのコンバージョン数(CV数)」があり、これらは各種ツールを活用することで容易に観測可能です。

  • 検索エンジンからの自然流入数は、Google アナリティクスにて可視化できます。これは、Gmailのアカウント登録/各種条件に同意すれば利用可能なツールであり、運営するWebサイトのアドレスを入力だけで「検索エンジンからの自然流入数」を観測(毎月のアクセス数などを可視化)できます。
  • キーワード検索順位の推移は、検索順位チェックツール(キーワードプランナー/BULLなど)を使用することで確認できます。当ツールは、任意キーワードにおける自社サイトの検索順位を容易に把握でき、検索アルゴリズムの変化やサイトの評価傾向などの現状把握に有用です。
  • 検索エンジンからのコンバージョン数(CV数)とは、サイトの最終的な目的に達する数のことであり、資料ダウンロード数/サービスの問い合わせ数/商品の購入数などのことです。当指標を観測することで、ネットユーザーが自然流入数からサービス/商品を購入するまでの経過をデータ化し、CV数の良いコンテンツ/悪いコンテンツを可視化できます。これにより、流入顧客への訴求確度が高いコンテンツの作成計画などに活用し、コンテンツマーケティングの訴求度向上も狙えます。

このように、様々なSEOの効果測定指標がありますが、実施施策のカバー範囲によって、適切な測定期間が異なる点に留意する必要があります。例えば、サイト全体に係る施策では3ヶ月間、新規ページの追加時は1ヶ月間、既存ページの修正時は1~2週間などです。これは、サイト全体の場合はコアアルゴリズムのアップデートタイミングで効果が反映されるなどの仕組みがあることが背景です。

短期間で成果がでないことを背景に、様々な取組を実施することは、結果的に各施策の効果を正しく評価できないことに繋がります。

それゆえ、施策実施後は順位変動に一喜一憂せず、施策前の数値、施策実施後の数値を記録し続け、真に訴求できる施策であるかを検証し続けることが重要です。

SEOの効果測定に限らずデジタルマーケティング自体のKPI設計方法をまとめた記事もありますので、当記事もご覧ください。

 

おわりに

本稿では、SEOの仕組み、メリット/デメリットに始まり、SEOの重要性、SEOの計画策定基準、SEOの効果測定で用いるべき指標について、ご紹介してきました。また、あくまでSEOは流入数の拡大を目指した施策であり、流入顧客への訴求向上には「コンテンツマーケティング」も必要である点もお伝えできたかと思います。

弊社はコンサルティングサービスを提供しており、経営戦略/マーケティング戦略/デジタルマーケティング戦略の立案から実行において、様々なプロジェクトの実績を有しております。

 業界・業種問わずに様々なご支援をさせて頂いておりますので、経営/マーケティングにお悩みなどございましたら、是非ともお問い合わせください。

 

【参考】

増田森一

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト