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2020.10.07

中小企業が取り組めるBtoBデジタルマーケティングについて

Webマーケティングとデジタルマーケティングの違い

デジタルマーケティングとは、サイトのSEO、アクセル数、CV(コンバージョン)率を重視するWebマーケティングに加えて、SNSTwitterFacebook)、メール配信、リアル店舗での顧客との接点も活用しながら、新規顧客と既存顧客に対してマーケティングを行っていく手法である。

BtoB企業がWebマーケティングだけでなく、デジタルマーケティングも取り組むべき理由は、大きく2つのことが挙げられる。

一つは、デジタルコンテンツの増加により、一般消費者のみではなく、企業の購買担当者の情報取集もよりインターネットに依存するようになってきたことだ。加えて、今年の新型コロナウィルスによる影響で企業は、インターネットを活用した自社製品やサービスのアピール活動が加速した。こうした環境の変化の中で企業は、従来よりも多くのチャネルで顧客へのアプローチが求められている。

もう一つの理由は、Webマーケティングでは、新規顧客獲得のアクイジション施策に優れているが、既存顧客へのリテンション施策では十分な効力を発揮できないことである。BtoB企業のコーポレートサイトは、その企業を知らない新規顧客(潜在顧客)に対して、自社の技術や製品を紹介するサイトになっていることが多い。サイトに注力するWebマーケティングは、サイトにアクセスした顧客に対してアプローチできるが、その後も継続的にアプローチする手段を持っていない。その一方で、デジタルマーケティングは、顧客データをもとに最適化されたメール配信を通して、既存顧客にもう一度商品やサービスの購入させることができる。

 

BtoBで実施されているマーケティングとは

法人向けマーケティングは、アプローチ方法、購買意思決定のプロセス、期待されているコンテンツにおいて、個人向けのマーケティングと大きな違いがある。

表1 BtoB企業とBtoC企業のデジタルマーケティングの違い

法人向けのアプローチが電話やメールのアウトバンド、セミナーや展示会のインバウンドが中心となっているのは、アプローチの対象が、特定業界にある企業の中でも決裁権限をもつ部長や社長といった人であり、個人向けと違って対象者が限定されているからだ。個人の場合は、趣味嗜好や衝動的な購買意欲によって必ずしも合理的でない購入プロセスをたどるが、法人の場合には、社内で決裁権限を持つ人への説明を必要とされるため、合理的な購買プロセスをたどることになる。

アプローチ対象の違いと購買意思決定の違いによって、BtoBマーケティングは、新技術の製品情報、製品の価格やサービスの仕様、導入事例や導入後の成果といった情報が求められている。

上記を踏まえて、具体的なBtoBマーケティング手法を検討していく。

BtoBマーケティングには、新規顧客を獲得するためのリードジェネレーション・マーケティングと企業への関心度が高い顧客を営業チームにつなげるリードナーチャリング・マーケティングに分けることができる。

2 デジタルマーケティングの施策

1にあるように、リードジェネレーション・マーケティングは、交流会やコーポレートサイトを通して顧客に製品やサービスを知ってもらうことに重点を置いている。一方で、リードナーチャリング・マーケティングは、インバウンドセールス、MA(マーケティング・オートメーション)によるメール配信を通して企業に関心を持った顧客の購買意欲を高めることに重点を置いている。

 

中小企業のBtoBデジタルマーケティングにおける課題

2018年にRICOHが行った中小企業のデジタルマーケティング実態調査の資料によると、中小企業のデジタルマーケティングの課題としては、3つ挙げられる。

 

3 中小企業の年間マーケティング予算

一つ目は、中小企業のマーケティング予算が少なく、高価なデジタルマーケティングツールを導入することが難しいことだ。従業員数が30人以上500人以下の中小企業では、年間のマーケティング予算が平均318万であり、30人未満の企業での年間平均のマーケティング予算が95万と低い状態にある。

4 中小企業の活用しているツール

二つ目の課題は、中小企業においてMAといったデジタルマーケティングツールを導入している割合が低い点である。従業員数が30人以上500人以下の中小企業では、SFACMSCRMといったツールの活用が多く、MAの導入割合が15%程度に留まっている。さらに、従業員数が30人未満の中小企業では、マーケティングツールをそもそも活用していない企業が半分以上となっている。

5 中小企業のマーケティング施策

三つ目の課題は、中小企業のマーケティング施策においてサイト活用が中心であり、SNSDM、メルマガなどといったデジタルマーケティング施策を行っていない企業がほとんどであることだ。従業員数が500人以下の中小企業のマーケティング施策は、サイトを活用している企業が半数以上であるが、SNSDMなどといった取り組みは全体の2割以下となっている。

 

初めてデジタルマーケティングを行うにあたって

中小企業がデジタルマーケティングを行うにあった予算やツールなどのリソースが足りないという課題を考慮して、業務の見える化、デジタルマーケティングの施策という二つの観点から検討していく。 

まず、中小企業に限らず企業がデジタルマーケティングを行う前に業務の見える化をする必要がある。デジタルマーケティングは、サイトのアクセス情報、顧客の購買情報・登録情報といった一般的に複数部門に渡って管理されているデータを扱うことになる。部門間での情報のやり取りを正確かつ効率的に行うためにも業務の見える化を行う必要があると考えられる。また、マーケティング部門のみで集客施策を行うと、顧客を見つけたとしても、実際販売を行う営業部との連携が不十分で失注する可能がある。その他にも、IT部門との連携が不十分で自社が保有するITツールを十分に活用出来なかったり、事業戦略部門との連携が不十分でターゲットでない顧客に対してアプローチしたりすることが考えられる。

業務の見える化には、連携する各部門の業務を棚卸し、そこから各部門のもつケイパビリティに合わせて、部門を超えた業務の取り組み方を再構築する必要がある。リソースが限られている中小企業では、新しく部門を作るのではなく、企業において司令塔的役割を果たしている事業戦略部門が連携すべき部門を取りまとめながら進めていくことが効率的と考えられる。

予算も限られている中小企業では、デジタルマーケティングの施策を最初から有料SEOツール、MADMPなどといったシステム導入を考えるのではなく、どのようにして現在利用できるITツールでデジタルマーケティングを効率的に行うかを考えていく方が良いと思われる。例えば、SEOツールは、自動化されたシステムではなく、無料で利用できるGoogleアナリティクスの機能や自社内のSEO学習を通して行うことも考えられる。 MAは、顧客へのメール配信をシステムではなく、エクセルで顧客リストをまとめて、RFMといった簡単な分析を行って、手動でメール配信を行うことも考えられる。また、MABowNowDMPjuicerなどといった一部の機能を無料利用できるデジタルマーケティングツールを導入することも考えられる。最初から高価なシステムを導入するよりも、社内にデジタルマーケティングの考えを浸透させることも目的の一つと考え、完全自動化システムに頼らない半自動化のデジタルマーケティングを行うこともBtoB中小企業の選択の一つである。そうして取り組んでいく中で、デジタルマーケティングにおける自社のボトムネックを見つけ、段階的に必要なシステムを導入していくことでデジタルマーケティングを効率的に進められる。

 

 

【参考】

  • 竹内哲也著「デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』「潜在リード」から効率的に売り上げをつくる新しいルール」志水哲也監修,株式会社翔泳社
  • RICHO 「中小企業のデジタルマーケティング実態調査結果」
  • BowNow HP
  • juicer HP

 

佐藤健

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。

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