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【基礎から学ぶ】デジタルマーケティングにおけるKPIの設計方法

初めに

 マーケティング戦略目標達成の手段である「デジタルマーケティング」は今の時代に欠かせないマーケティング手法であるといえます。しかし、SNSでの商品情報の投稿や、公式サイトの充実化など複数ある手段をやみくもに試していくだけで、充分な成果を得られるわけではありません。オンラインでのプロモーションを推進していく為には、実施前に「KPI」の設定を行うことが一般的です。「ページビュー(PV)」や「シェア」といった各項目の数値的な測定は各SNSのツールにおいて簡単に把握できますが、これだけでは効果的なプロモーションには繋がりません。

 デジタルマーケティングを効果的に活用するためには、導入前の戦略ストーリーが重要となります。戦略ストーリーには「KGI設定(最終ゴールを立てる)」、「KPIツリー作成(ゴールへの作用点を洗い出す)」、「KPIの設定(各作用点に目標値を設定する)」の3ステップが含まれます。この3ステップの戦略立てがデジタルマーケティングを効果的に活用するために重要な鍵となっていきます。

 本稿では、上記3ステップに関して、具体的な作成(設定)方法を述べていきます

 

KPIKGIの違い

 デジタルマーケティングを活用し効果を高めていくためには「KGI」と「KPI」の設計をしっかりと行うことが大切です。

・「KGI」とは「Key Goal Indicator」の略で、「重要目標達成指標」を指します。

・「KPI」は「Key Performance Indicator」の略で、『重要業績評価指標』を指します。

 「KGI」は「目的」であり、「KPI」は「目標」であると考えると分かりやすいです。「目的」は最終的なゴールであり、「目標」はその目的を達成させるための通過点です。つまり、最終的なゴールであるKGIを達成させるために目標としてのKPIを設定することになります。

 仮に、KPI設定がなくKGIのみの設定を行った場合は、目の前にある売上などの数値で現状把握することになり、具体的な中間指標が抜けてしまうため、KGI達成までの正しい道筋を通れているのか把握することが困難です。KPI設定をすることで中期的な目標指数を持ち、途中の過程において進捗を見える化できる事で、明確な道筋の立てやすさに繋がります。また、目的が異なることでターゲットやタッチポイントは大きく変わります。不明確なKGIKGIに繋がる中間指標のKPIの割り出しに影響を与えるため、KGIKPIの相関性を忘れてはいけません。

 

KGIの設定方法

 KGIの設定において気を付けるべき点が3つあります。

1.Achievable:高すぎる目標設定をしない

 目標設定が高すぎると、達成できないのではないかという空気が組織内で流れてしまいます。目標がかなり高い場合でも達成までのKPIをしっかり共有する意思疎通が行えればやる気向上につながるかもしれませんが、無理な目標設定は計画の破綻にもつながるので注意が必要です。

2.Measurabel:目標は数値で表す

 明確な目標は目標に対するアクションも明確になりますが、曖昧な目標はアクションを立てる事が困難です。

 例えば、売上目標を100万円から150万円にするという目標に対しては、それぞれが取る行動が明確化できます。しかし具体的な数字がなく100万円よりもう少し増やすという目標であると立てるべき戦略が分からなくなります。また、曖昧な目標設定はやる気を下げることにもつながりかねません。組織内の各人の意欲向上のためにも、するべきことを明確化できるように数字での目標設定をする必要があります。

3.Time-Bound:期限を設定する

 期限の設定は組織内のやる気の向上に繋がります。反対に、期限のないゴールはその実行がどんどん先延ばしにされてしまう可能性が高い為、いつまでもゴールを達成できないという事になりかねません。「50万円の売上アップ」という目標に対して「6か月間で売上を50万円アップ」という目標とでは期限がついている目標に対しては焦燥感を感じます。また、期限の設定は業務における進行度合いを把握しやすくなるため、いつまでに達成させるべき目標であるかを必ず設定するべきでしょう。

 

KPIの設定方法 

KPIツリーとは

 KPIツリーはKGIKPIで構成され、KGIが頂点に位置したツリー状のものです。KPIKGIを分解して定義し、どのKPIを上げればKGIが上がるかを考えていきます。

 KPIツリーはボトルネックの発見、具体的な施策の考案、施策の効果検証などに役立ちます。もしKPIツリーを作成していなければ、問題を整理できずにボトルネックが見つけられません。また、目標とアクションプランにおいての関係性が理解不足となり具体的施策の組み立てもできなくなります。さらに、具体的施策が目標達成に対してどのような効果を生み出したかという効果も検証できなくなります。

KPIツリーの作成方法

  頂点にあるKGIから要素分解を行うことでKPIを求める事ができます。

 KPIツリー作成にあたり気を付けるべきポイントが4点あります。

1.四則演算できる要素で組み立てる

 「足す」「引く」「掛ける」「割る」の四則演算で組み立てることにより、KGIを達成させるためのKPI達成をどのように進めるべきか把握することができます。

2.単位の設定

 単位設定と同時に、KGIの単位と分解したKPIの単位のロジックもそろえる必要があります。理由としては、KPIツリーがKGIを頂点として構成されたものであり、KPIは数値での管理が必要だからです。各要素はその下の要素をかけ合わせて出来たものであり、数値を入れて計算することで単位が正しいかが分かります。KPIの具体的内容とともに単位の記載も行うことにより、最後に数値を入れて確かめ算を行うことで、ロジックの整理が可能となります。

3.分解する要素を遅行指標から先行指標にする

 先行指標とは、過去の結果である遅行数値(売上や利益などの数値)が将来どのように反応するかを示唆する数値です。つまり、将来的な結果であるKGIに近ければ遅行指標であり、結果の作用点となるKPIに近ければ先行指標である必要があります。

4.要素を重複しない

KPI作成の原則として同じ要素は使用できず、KPIツリーの効果を最大限にするには同じ意味または類似のKPI設定を避けなければなりません。しかし例外も存在し、複雑なKGI達成の手段や経路になる場合は先行指標に重複する要素の取入れになるパターンもあります。              

KPIの目標値設定方法

 KPIツリーの作成により各KPI要素の洗い出しが出来たため、次に各KPIの具体的な目標数値を設定する事が求められます。

 目標値はただ漠然と数値を上げれば良いというものではありません。ここではその目標値設定の基準としてフレームワークSMARTの活用を勧めます。

 SMARTは、企業と従業員が成長するための方向性として適切な目標設定の実現のためのフレームワークです。成功につながる5つの因子を基礎とし検討することが可能で、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連)、Time-Bound(制限時間)で構成されています。

・Specific(具体的):誰が読んでもわかり、明確かつ具体的な表現や言葉で書き表します。

・Measurable(測定可能):目標達成度合いを誰が見ても判断できるように内容を定量化して表します。

・Achievable(達成可能):は願望などではなく、目標が達成可能な現実的な内容であるかを確認します。

・Relevant(関連):設定した目標がゴールまでのマイルストーンとなり、各目標がゴールとの強い関係性があるかを確認します。

・Time-Bound(制限時間):月日や時刻で明確な期限を設けます。

 SMARTの目的は目標設定において、精神論が根拠になったり所要時間を見誤っていたりする問題を払拭し目標のクオリティを向上させることです。理解しやすい目標設定で従業員に浸透させる事でやる気の向上に繋がります。また、従業員のレベルでも挑戦できそうな目標設定にすることで挑戦したいと思わせるハードル設計が可能です。

 

終わりに

 現在、様々なデジタルを媒介としたマーケティング手法が存在し、その分析を可能とするツールなども多数ございます。しかしながら、それのどれを活用していくにしても、本当の意味で「有効活用」をしていくにはKGIとKPIの設定が必須となります。

 本稿を参考にし、最終的なゴール(KGI)から逆算したマイルストーン(KPI)を描いていくという、ストーリーの構成を重要視したデジタルマーケティングに取り組まれてはいかがでしょうか。

 

【参考】

吉田暁壮

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。