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2023.06.02

コンテンツマーケティングの最適な実践方法

はじめに:コンテンツマーケティング

企業が顧客に自社の製品を購入してもらうためには、顧客のニーズを的確にとらえた製品開発をする必要があります。しかし、どれだけ良い製品ができても、適切な販売方法を取らないことには、収益に繋げることはもちろん、商品を顧客に認知してもらうことも困難となります。

そこで重要となってくるのが「マーケティング活動」です。顧客に対して商品やサービスをどのように販売するのかという販売経路や販売方法を検討、実行する活動を指し、商品・サービスの認知度向上や販売数増加には欠かせない活動になります。

近年では、オムニチャネルやOMOの概念が広く浸透していく中で、商品やサービスの流通経路は多様化しており、流通経路の多様化に合わせてマーケティング手法もあらゆる角度からのアプローチが増えています。

インターネット・SNSなどを使った「Webマーケティング」や、記事やホワイトペーパー、動画などで情報を発信し、消費者が能動的に情報を見つけて興味・関心を引き上げていく手法である「インバウンドマーケティング」、インフルエンサーとタイアップして自社商材を紹介してもらい、認知拡大やリード獲得につなげる「インフルエンサーマーケティング」など様々な手法が存在しています。

このようにマーケティング手法も多様化しており、企業としては、どの手法によりマーケティングを実施することが最適なのかを考えることも、非常に重要なこととなってきております。

そこで、本稿では、近年広く普及しており、注目を集めているマーケティング手法の1つである、「コンテンツマーケティング」というものをご紹介するとともに、その最適な実践方法についてもお話ししていきます。

 

コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティングとは、コンテンツ(情報)を用いてコミュニケーションを行うマーケティング活動であり、顧客に価値あるコンテンツを作成・配信することで見込み顧客を醸成し、購買に繋げるためのマーケティング手法です。

コンテンツマーケティングが普及した背景には、一方的な売り込み型の広告への違和感や不満が挙げられます。テレビや新聞などの媒体を通してしか情報を得られなかった時代には、売り込み型(プッシュ型)の広告はとても有効な方法でしたが、近年は、自らのパソコンやスマートフォンなどの情報端末で、必要な情報を必要な時にダイレクトに検索することができます。

そして、消費者は、自分の意思で情報を見つけて、自らの意思でサービスや商品を比較し、決定したいという欲求があります。

このように自ら情報収集をする時代では、一方向のコミュニケーションである従来型のプッシュ型広告で集客するよりも、「コンテンツマーケティング」のようなプル型の、顧客に見つけてもらうマーケティング手法のほうがマッチしており、集客に効果を発揮します。

また、コンテンツマーケティングが注目される理由は他にもあり、1つはインターネット広告費の高騰が挙げられます。企業は、広告によるコミュニケーションだけでは費用対効果が見合わないと考え、本当に買ってくれる人にだけ広告を出したいと志向が変化してきました。

更に、スマートフォンの普及で消費者が触れられる情報も圧倒的に増えました。購入の決断を下す前に、様々のコンテンツに触れながら選定していく過程が存在するため、企業側もコンテンツを使ったマーケティング活動が必須になります。

潜在顧客が顧客化してからも、継続的に商品・サービスを使ってもらえるよう関係を維持するためには、やはりコンテンツが必要です。

このように、近年では、どのようなマーケティング施策を行うにも、そのほとんどに「コンテンツ」が必要な時代であると言っても過言ではありません。

 

用いられるコンテンツの種類と用途

コンテンツマーケティングで扱うコンテンツには様々なものがあり、表はおもなコンテンツを特徴ごとに整理したものです。

  

横軸は「顧客の購買フェーズ」で、左から右にいくにしたがって購買へと近づいていきます。縦軸は「感情訴求かロジック訴求か」を整理したものです。以下に、いくつか例を挙げます。

  • インフォグラフィックス: 「認知段階」の顧客に対して「ロジック訴求」でアプローチするときに適したコンテンツ
  • 導入事例: 「ロジック訴求」ではあるものの、より購買に近い顧客に対して最後のひと押しをする場面で有効なコンテンツ
  • バイラルコンテンツ: 「認知段階」の顧客に対して「感情訴求」でアプローチするときに適したコンテンツ
  • 商品レビュー: 「感情訴求」ではあるものの、より購買に近い顧客に対して最後のひと押しをする場面で有効なコンテンツ

このように「顧客の購買フェーズ×訴求方法」を適切に選択・実行することで、ターゲット顧客に対して最適なコンテンツを提供することができます。

結果として、企業側としても、認知度の向上や購買数の増加など、目的を達成できる可能性を高めることにもつながります。

 

コンテンツの作成における注意点

実際にコンテンツを作成する際の注意点としては、いかに顧客の気持ちに寄り添うことができるかという点です。

まずは、コンテンツを作成する目的・ターゲットが明確にする必要があります。認知度アップを目的とするのか、購入者数アップを目的とするのか、ターゲットは若い女性なのか、年配の男性なのかによっても最適なコンテンツは異なります。

目的・ターゲットを明確にしないままコンテンツ作成に取り掛かってしまうと、期待する効果が出にくくなってしまいます

また、目的・ターゲットが明確な場合でも、自社の商品・サービスのアピールが中心となっており、顧客の気持ちになり切れていないと、本当に求められているコンテンツを提供できない場合があります。

SEO(検索エンジン最適化)だけの観点だけに目がいってしまい、実際のコンテンツの中身が読み物になっておらず、顧客が離れてしまうことも少なくありません。結果として、PV数だけは増えるが、問い合わせ数が伴わないなんてこと多々あります。

そこで重要となってくるのが、ユースケースです。ユースケースを用いることで、顧客の本当に求めるモノ(コンテンツ)を明確にすることができ、期待する効果が得られる可能性を高めます。

 

ユースケースの設計

ユースケースの設計において重要な点は、課題やニーズを断面的に捉えるのではなく、ストーリーとして考えることです。

顧客タイプごとに、どのステージにどのような感情で、どのようなコンテンツを見て、問い合わせや購入に至るかを、整理することで、最適なコンテンツの設定をすることが可能となります。

まずは、ペルソナの設定として、どのような顧客がいるのか、また、顧客のペイン・ニーズに合わせて、セグメンテーションを行います。

顧客のセグメンテーションにより、ペルソナの設定が完了したら、次は顧客タイプごとの求めるコンテンツを明確化します。

ステージごとのニーズを分解し、各ニーズにおける顧客便益とユースケースを整理します。それを踏まえて、どのステージにどのコンテンツを提供すべきか、それによりどのような提供価値を生み出すことができるかを整理することで、提供すべきコンテンツを明確にします。

 

 

ユースケースの設計手順

ユースケースの設計は、0から頭だけで考えて整理することは非常に困難です。実際に顧客の求めているモノは何なのか、それを明確にするにはやはり、顧客に聞くのが最適な方法と言えます。

設計の手順は、大きく2ステップであり、「消費者調査」と「ヒアリング」になります。

 

消費者調査

Webアンケートやソーシャルリスニング(口コミサイトやSNS等で発信された消費者の声の収集)などにより、広くニーズを集めるとともに、ヒアリングの対象とすべき顧客層を選定する。

ヒアリング

消費者調査によって選定した顧客層に対して実施。より深いニーズを引き出すために、ヒアリング項目を設計し、グループヒアリングやデプスヒアリング(1対1のインタビュー)を行う。

ヒアリングによって得られたペイン・ニーズを踏まえて、ユースケースのストーリーを形成する。

ヒアリング項目の例としては、以下のようなものが考えられます。

 

 

ヒアリング項目を作成する際には、まずそのヒアリングの目的を明確にすることが重要です。ヒアリングによってどのような情報を得たいのか、「購買実態」なのか「製品開発に資する情報」なのか、その両方なのかによっても、確認すべき質問も変わってきます。

例えば、「購買実態を把握したい」という目的の場合、ヒアリング相手の基本情報に関する項目に加え、商品の使用方法や競合情報、情報収集方法などに関する項目を入れることで、ヒアリングの目的を達成することができます。

ヒアリングを実施した後は、その結果を基に、ユースケースのストーリーを形成します。また、メールでの配信等が可能であれば、満足度調査や製品開発に必要な情報を後から取得することも可能です。

 

効果測定の実施

コンテンツマーケティングに限らず、全てのマーケティング活動においても重要と言われているのが、効果測定です。マーケティング活動は、コンテンツ公開などをして終わりではありません。むしろ効果測定をしてブラッシュアップしていくことが重要であり、時間をかけるべき点ともいえるでしょう。

コンテンツマーケティングにおける効果測定とは、訪問者数・閲覧数・平均滞在時間・離脱率・会員登録数・問い合わせ件数などを測定して、マーケティング効果を調べることをいいます。設定した目的に対し、各コンテンツがいかに貢献できているかを調べる必要があります。

各コンテンツの貢献度を調査・分析し、改善の必要性の有無を判断、必要のある場合は、改善を行う必要があります。効果測定はアナリティクスやサーチコンソールといったサービスを利用することで、コンテンツの貢献度を調べることが可能です。

効果測定を定期的に行うことで、飽きられず、ターゲット顧客のニーズに応えたコンテンツを継続して提供することが可能となります。

 

コンテンツ一覧

目的の明確化

認知度向上や購入者数アップなど、目的・ゴールの設定を行います。コンテンツマーケティングにより得たい効果により、コンテンツの内容も変わってくるため、重要なステップとなります。

ペルソナの設定

実際にコンテンツを目にする顧客像を設定します。年齢や性別のみでなく、その人の職業や置かれている状況、悩みなども含めて設定することで、適切なコンテンツ作成が可能になります。

ユースケースの設計・作成

消費者調査、ヒアリングなどを実施し、ユースケースを作成します。そこから各顧客タイプが本当に求めているニーズを把握し、コンテンツを選定します。

コンテンツの設計・作成

コンテンツを選定したら、実際にコンテンツ作成を行います。コンテンツの大まかなイメージを固め、タイトルや見出しを作っていきます。

効果測定

コンテンツは公開して終わりではありません。公開後は実際にどのくらいの効果があったのか効果測定やそれに伴う改善に取り組む必要があります。場合によっては、情報のアップデートやタイトルの変更をすることもあるでしょう。効果測定はアナリティクスやサーチコンソールといったサービスを利用します。

 

おわりに

本稿では、コンテンツマーケティングの最適な実践方法を見てきました。適切な調査・分析を基に実践することで、コンテンツマーケティングでも効果を期待できることをご理解いただけたかと思います。

適切なマーケティング手法の検討に頭を悩ませている方や、コンテンツマーケティングの実施を検討されている方にとって、少しでも役に立つ情報となれば幸いです。

また、弊社では、業界・業種問わず各種マーケティングのご支援もさせていただいておりますので、マーケティングにお悩みなどございましたら、是非ともお問い合わせください。

 

【参考】

笠川和哉

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト


中小企業の売上に直結するデジタルマーケティング