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経営コンサルタント/戦略コンサルタントになるための資質 ~新卒/第二新卒の学生志望者に向けて (第2回)

このコラムは、下記コラムの続きになります。

経営コンサルタント/戦略コンサルタントになるための資質~新卒/第二新卒の学生志望者に向けて (第1回

このコラムを読んで、経営コンサルタントという職業に興味を持たれた方は、下記にアーツアンドクラフツの採用サイトのリンクがありますので、是非詳細を確認していただけたらと思います。

アーツアンドクラフツ株式会社コンサルティング&ソリューション事業部 採用サイト

 

 

資質の分類

前回までは、経営コンサルタントという仕事の特徴について抽象度を上げて説明いたしました。本コラムでは、それらの特徴を踏まえて、経営コンサルタントに成る/続けるための資質について述べていきます。筆者自身は大学を卒業し新卒としてコンサル業界に飛び込み、以降20年この仕事を続けています。また現在ではコンサル事業部の責任者として、数多くの新卒/第二新卒、そして未経験からの中途採用を手掛け、後進の育成に努めています。自身の経験も含め、数多くのコンサル志望者の成長を見てきた経緯から、経営コンサル業で立身する方がどのような資質を携えているか、もしくは携えるべきか幾つか共通項があるように見受けられます。前回のコラムでもお伝えしましたが、ここで言う「経営コンサルタント」のキャリアは比較的若手のレベルを指します。マネージャー以降のキャリアについては、また別の資質が求められることになりますがここでは割愛いたします。

最初に、やはり「資質」についてまずは分解していきたいと思います。ネット上で「コンサルタント 資質」と検索すると、それこそ雨後の筍のように沢山の情報が出てきます。「論理的思考能力」「コミュニケーション能力」「語学」「財務会計知識」等々です。もちろん、これらの要素も当たってはいますが、今回は筆者なりの言葉で体系化していこうと思います。

 経営コンサルタントに求められる資質

まず分かりやすいものから挙げると「知識・経験」があります。医療業界に詳しかったり中国市場に詳しかったりといった知識面の深さは、特定領域に焦点を当てた専門コンサルタントにおいては非常に優位に働きます。大学で財務会計や統計学の知識を一程度積んでいることも同様です。またデューデリジェンスの経験や、経理業務のBPR経験、SAPに代表されるERPシステムの導入経験などプロジェクトを通じて段取りや用語、進め方に知見がある人も重宝されます。ただ、これらは主にコンサルタントになってからでも取得していくことは可能ですので、即戦力を求めるファームでない限りは新人コンサルタントに過度に期待するものではありません。

次に、知識・経験と類似はしていますが「スキル」が挙げられます。一般的には「知識・経験」が取得したもの/蓄えたものを指すのに対し、「スキル」はより応用力があり様々なシーンで対外的に発揮する能力を指します。ただここでは敢えて先天的な能力というよりも個人の後天的な環境や努力により習得したものに限るとします。例をあげると、英語や中国語といった語学力や、物怖じせず理路整然に話せるプレゼン能力、あとは分析時に役に立つエクセルスキル等です。こちらも「知識・経験」と同様、新人にとっては有るには越したことはないですが、コンサル業務と並行で習得できることも可能ですので最重要までとはいきません。

3つ目は「地頭」です。一般的には先天的に持ったもの、頭の回転の速さや記憶力、IQの高さなどが想起されます。ただ、便利な言葉である一方、正直、実際のところ表面上は上記2つの要素と完全に区別して評価できるかというと難しいかもしれません。あるとすれば、誰もやったことのない新しい業界の新しいテーマでのプロジェクトに取り組んだ時に、この要素が一番効いてきます。ただこの「地頭」と呼ばれるものも、長期的な記憶力が得意な人がいれば一夜漬けのような短期的な記憶力に秀でている人もいますし、数字に対する理解力が高い人もいれば、人名や人間関係面の洞察・記憶に優れている人もいます。本コラムでは「地頭」と一緒くたに括ってしまいましたが、より細かく分解して考えないと言葉だけが独り歩きしてしまう危険があります。特にコンサルタントという職業の場合、理解力や記憶力もありますが特徴的なのは「抽象度を上げて物事と構造化して考える」力が求められます。複数の雑多な事象から類似点を見出したり、企業情報をニュース記事等で読んで成功要因を3つに絞って抽出したりといったことが求められますので、そのような抽象化力・構造化力は特にこの仕事で必要とされる能力となります。

4つ目は「タフネス」になります。これは体力的な面と精神的な面の両方がありますが、この二つは多分に密接して互いに影響するものです。ここでは無理に分けずに、特にコンサルと言う仕事で必要な「ストレス下で仕事を一定期間続けて同じパフォーマンスを維持できる力」として認識していただければと思います。この「ストレス下」×「一定期間」×「同パフォーマンス」のいう掛け算を為すには精神面だけでなく肉体の頑健性が求められることは分かると思います。アスリートほどではないにしてもやはり「体が資本」です。このタフネスさですが、多くの新人を見てきた経験からすると、もちろん努力で多少の向上はできますが、そのほとんどのポテンシャルは成人後に各人で予め定められているように見受けられます。従って仕事をする上でまず重要なのは、己を過信せずに「自分の許容量を見定める」ところから始めるのをお勧めします。どこまでなら自分は頑張れるのか、どれ以上になると不調になり通常のパフォーマンスが出せなくなるのか、自分自身を冷静に診断するのです。それが分かれば、自分の中で、もしくは上司や同僚と相談して仕事の仕方をコントロールすることで、自分のポテンシャルにあった最大パフォーマンスを発揮し続けることができます。プロと呼ばれている一流の方は、変に聞こえるかもしれませんがある意味サボるのも一流です。もともとのタフネスさもありますがオン・オフを自分の中で適性化させているからこそ素晴らしいパフォーマンスを継続できているのです。この「キャパシティの自己診断」はコンサル云々だけでなく全社会人各々の義務とすら言えるでしょう。

最後に「マインド」です。これも中々あいまいな言葉で、掴みどころがないかもしれません。社交性や責任感、真面目さ等、様々な要素が思い付きます。これも一見、タフネスさと同様に成人後は変化し難いように思われますが、そうとも言い切れないのではないかと筆者は考えています。社会学の用語に「ドラマツルギー」という言葉があります。カナダの社会学者であるゴッフマンが提唱した考え方ですが、もともと演劇用語で「作劇法」「上演法」を指します。社会学におけるドラマツルギーの概念では、人の行動は、時間・場所およびオーディエンスに依存しているとされ、文化的な価値、規範や期待に基づいて人間が自身と別のものを演じているとされています。例えば一人の中年男性コンサルタントにおいても、客前では「コンサルタント」を演じていますが、社内では「上司」を演じ、家庭内では「夫」や「父親」を演じ、ご近所では「マンション管理委員」「世帯主」を演じています。これらの環境から求められる役が変われば、それに付随して「マインド」も変容するのではないか、というが私の持論です。このあたりを感覚的に理解するための一例として、中学校の部活経験を想像してもらえたらと思います。例えば、一人っ子で今まで弟や妹もいなかった人が中学2年生になって生まれて初めて「先輩」となる。後輩に偉そうに色々と指導しないといけない立場になり、先輩としての威厳とやらにも気に掛けるようになる。その新しい役を与えられたことにより、今までの一人っ子としての立ち居振る舞いをしていた自分とは、また別の人格が表出したりするものです。また別の例で昆虫の話になりますが、アリの世界でも巣の中で働きもせずにゴロゴロしているだけの働きアリの存在が観察されています。その怠け者がいる巣から働き者のアリを除いてみると、今まで怠けていたアリたちが働き者に変化して真面目と働き出すことが分かっています。アリなので遺伝子レベルでのプログラムだと思いますが、環境により求められる役が変化することにより、気質や性格といったものも変容することはよくあることなのです。

ましてや学生から社会人になったら、それこそ環境は激変し求められる役は変わります。さらに、仮に中途採用だとしても、未経験からコンサルタントという職業に就いたら、顧客前で自らの価値を証明しなければなりませんし、成果に対する個人の責任も他職業と比べて重くなります。自分の責任が重い分、上司やチームメンバーに対してもしっかりと意見をもって主張することが求められます。私が数多の新人コンサルタントを見てきた経験からしても、プライベートでは全然社交的では無い人が客前ではいきなり饒舌になったり、プライベートでは軽薄感を出している人が仕事では几帳面で真面目に一字一句気にしだしたり、あまり人前で目立たたない役回りを好んでいた人が顧客から評価され自信をつけることで性格が変わったように社内で積極的に発言し後輩や同僚に発信していくのを見たりしています。もちろん生来変わらない気質というものもあると思うのですが、一概に現時点の状態が不変とは言えず、コンサル業界を志望する側も採用する側も双方にとってかなり見極め難い資質に挙げられます。

そして、本コラムではこれよりこの見極め難い「マインド」について深堀しようと思います。何より、これまで挙げてきた資質の中でも、本質的に一番重要なのはここではないかと考えているからです。「知識・経験」や「スキル」は、正直コンサル業界に入ってからでも伸ばせます。「地頭」や「タフネス」は確かに重要な項目ではありますが、これはコンサル以外でも普遍的に重宝される資質でもあり、これだけだとその方は長くコンサル業界で働く理由づけにはならない。新しくコンサル業界に飛び込まれるその方が、「自分はこの仕事が向いている」と長く楽しく働くためには、やはり最後の「マインド」についての考察は外せないと考えています。

 

 

「マインド」の研究

 「マインド」と言っても、茫洋としており捉えどころのない印象をお持ちの方もいるかと思います。そこでまず、世の中の文献を頼りに、このマインドについてどのような研究が為されてきたかを例示していこうと思います。本コラムでは「マインド」で統一していますが、文献によっては「タイプ」や「価値観」「性格」というようにその呼び方も千差万別です。

 

ケース1:コーチングにおけるタイプ分け

 まず簡単な例としてご紹介したいのが、コーチングの分野でよく知られるタイプ分け診断についてです。代表的なのが、コーチ・エィ社が開発した4つのコミュニケーションタイプに基づいた分類です。

タイプ分け
コーチ・エィ社「タイプ分け™」

この「タイプ分け™」は、有名ですので多くの読者も見たことがあるかと思います。他者とのコミュニケーションという切り口を基に、臨床心理学、組織行動学等をベースにつくられています。「感情表出」と「自己主張」という2つの軸で、コミュニケーションのタイプを「コントローラー」「プロモーター」「アナライザー」「サポーター」の4つに分けて考えます。この「タイプ分け™」は他者とのコミュニケーションという切り口に絞っているため、非常に簡易的で扱いやすいツールとなっています。ただ、分かりやすく扱いやすいことの反動で、対外的なコミュニケーション以外の、より内面の性質までは分解されてはいません。

 

 

ケース2:適性診断

適性診断

次にもう少し複雑な例をお見せします。こちらは、就職活動をする際にお馴染みの「適性診断テスト」の結果です。スコアは筆者自身のものですが、大事なのは各構成要素にあります。【性格】のカテゴリでは、「活動性」「慎重性」「固執性」「主体性」などの項目が並び、【意欲】のカテゴリでは「向上欲求」「自律欲求」「承認欲求」などがあり、最後の【価値観】カテゴリでは「公益志向」「成長志向」「金権志向」などがあります。静的な平常の性格から動的な志向性まで含まれていることが分かります。先述したコーチ・エィ社の「タイプ分け™」と比べ、より内面的な欲求まで掘り下げて項目が細分化されています。

これは余談になりますが、この「適性診断テスト」のスコアですが所詮は回答者が選択したテキスト情報からの判断になるので正直信用度は低いです。筆者自身、採用者として数多くの応募者のテスト結果と実際入社後の振る舞いを見比べて分析したことがあるのですが、一面では合ってはいるものの違うと感じる部分も多い。結局、回答者の自己認識、自分自身へのステレオタイプがそのまま反映されるので、自分自身すら認識していない本当の資質・志向性というものまでは判らないというのが印象です。

 

 

ケース3:ストレングス・ファインダー

最後にさらに複雑な例をお見せします。トム・ラス氏のベストセラー著作「ストレングス・ファインダー」です。氏はこの中で、資質の種類を34に分けて説明しています。各個人それぞれ強みとなる資質が異なるということで、診断テストを通じて自分の本当の強みが分かる、という仕掛けです。

トム・ラス「ストレングス・ファインダー」

有名な書籍ですから、手に取られて実際に自己診断をした諸兄も多い事でしょう。資質を指す34の項目には、添付のようになっています。

ストレングス・ファインダー

項目数が34も有るので類似する概念があるようにも見えるのですが、ポイントはそれぞれの項目にはポジティブな面もあればネガティブに働く面もあるということです。こちらを見ても分かるように静的な気質を指すものから動的な志向性や欲求を示すものまで含まれています。

 

以上、3つのケースを見てきましたが、ご覧のとおりマインドに関する分類の仕方は非常に百家争鳴、多種多様です。この分野に関する整理だけでも恐らく一冊の本ができるほどだと思います。ただ、今回はあくまで経営コンサルタントに求められるマインドについて論じていきますので、先述した事例の全項目を網羅するのではなくその中でも有意義なものだけを取り出していこうと思います。詳細は次章に続きます。

 

経営コンサルタント/戦略コンサルタントになるための資質~新卒/第二新卒の学生志望者に向けて (第3回)

 

また冒頭でもお伝えしましたが、本コラムを読んで「経営コンサルタント」に興味を持った、もっと色々と質問をしてみたいという方は、下記に弊社の採用サイトのリンクがありますので是非ご一読いただけたらと思います。

アーツアンドクラフツ株式会社コンサルティング&ソリューション事業部 採用サイト

 

平田久郎 取締役 兼 コンサルティング&ソリューション事業部長

米国戦略系ファームBooz & Company(現PwCネットワークStrategy&)を経て2010年当社設立に参画。経営コンサルタントとしての経験と知見をもとに、当社のB2B領域における事業開発及び業務運営を一手に担う。独自の社会観と戦略眼に基づき、次世代型のコンサルタントの育成に従事。ペンシルバニア大学(米国)卒業、東京工業大学大学院修士課程修了。