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Webマーケティングにおいて「いかに広告を見てもらえるか」、また「いかに商品・サービスの購入まで結び付けられるか」といった「消費者の検索や購入」に至るまでの導線の整備が求められます。以上の指標としてCTR(Click Through Rate:広告やコンテンツがユーザーに表示された回数のうち、ユーザーがクリックした回数の割合)やCVR(Conversion Rate:広告やコンテンツにアクセスしてきたユーザーのうち、どのくらいが購入や申し込みに至ったかを示す割合)、検索ボリューム(どのくらい特定のキーワードが検索されているか)などあげられ、マーケターは日々これらの数値を分析し、上昇させる戦略を練っているのではないでしょうか。
しかし、近年の消費者のニーズの変遷・多様化や、ありふれている商品・サービスとの差別化に苦戦を強いられ、数値の分析による手法だけではなかなか成果(売上)を上げられずに時間とコストのみを消費している企業様も多くいると思います。
そこで、本テーマではWebマーケティングにおいて、「広告会社に多く活用されている従来のWebマーケティング手法」をご説明したうえで、「目指すべきマーケティング」と題して、数値の分析以外に考えなければならないポイントをご紹介できればと思います。読者の皆様のWebマーケティング施策におけるヒントになれば幸いです。
従来の広告代理店におけるWebマーケティング施策では、テクニカルマーケティングという手法が一般的であると思います。「テクニカル」というのは従来、株式投資をする人の中で使われている用語で、株価の過去の値動きからパターン化し、将来の値動きの予測を立てる分析手法になります。テクニカルマーケティングも同じく、CTRやCVR、特定のキーワードの検索数など、実際の数値の結果を基にフィードバックを重ねていく技術的なマーケティング方法を指します。
数値主義のマーケティングにおいて、数値を分析してより良い改善につなげるというのは、ごく自然であり、特定ツールを使うことで様々な数値を把握することができ、効率的に分析することができるため、多くのマーケターが活用している手法ではないでしょうか。
テクニカルマーケティングでは、消費者ベースの結果を基に特定にツールを用いて数値を分析して効率的に見直し、改善を検討することができます。言い換えると、マーケターが商品・サービスについての情報がない場合であっても、数値の動きを見て顧客企業の求める結果を出すことが可能です。このように、テクニカルマーケティングは商品・サービスや消費者の行動心理までは把握せずとも成果の出すことができる、テクニックに頼ったマーケティング手法となります。
一見、効率的に成果を出すことが可能なので、最適なマーケティング手法と思われがちですが、近年の複雑化する消費者ニーズや、競合の商品・サービスとの差別化をするためには、もう一歩踏み込み、成果が出る背景まで理解することが求められてきます。そのような仕組化をしていかないと、なぜ消費者がその広告までたどり着き、購買まで至ったのかが分からないまま、別の商品・サービスへと離れていく可能性が高くなってしまいます。
では、目指すべきマーケティングとはどのような手法なのでしょうか?確実な成果を上げるには数値の分析だけでなく、背景の消費者の行動心理を把握し、しっかりと狙い定めた(ターゲティングした)消費者に刺さるWebマーケティング施策を展開していく必要があります。言い換えると、消費者が目的の広告までたどり着くまでにどのような検索をするのかを確実に把握していく必要があります。
以降では、数値分析を基に展開するテクニカルマーケティングと両軸で考えるべき、消費者の行動心理(検索まで至る過程と要因)を読み解く際のポイントをご紹介します。
ペルソナとは仮想の「自社商品・サービスの顧客」のこと事を指します。効果的なマーケティングを実施するためには、自社の「商品・サービスの顧客」となり得る人はどのような人なのかを設計する必要があります。具体的には、性別・年齢層・住居・世帯構成などの項目を設定した仮想の人物像を顧客として設定し、企業はこのペルソナに狙いを定めて商品・サービスを提供していきます。
「ペルソナ」の参考として、過去に弊社が執筆した記事もご紹介します。
中小企業のデジタルマーケティングにおけるペルソナの設計方法について
ここで重要なのはペルソナの設定を上記のような単なる属性だけで終わらせないことです。消費者がどのような状態でどのような商品・サービスを求めているのかまで詳細に把握することが重要になります。
例えば、消費者がある悩みを抱えているとします。消費者がその悩みについて、「気づいているけど何も対策していない」「気づいたうえで色々と対策を打っている」「そもそも気づいていない」など、同じ悩みを抱えているとしても悩みの程度が異なります。また、提案する商品・サービスについても「全く知らない」「知っているけど興味がない」「興味があるけど他の商品・サービス迷っている」とでは、訴求すべきポイントが変わってきます。そのため、安易に属性のみでペルソナの設定を終わらせずに、どのような状態の人に向けて商品・サービスの価値を届けていくのかをしっかりとカテゴライズし、それぞれに適したメッセージを訴求していく必要があります。
商品・サービスの紹介についても工夫が必要です。Webマーケティングにおいて、ネット上にありとあらゆる世界中の商品・サービスの広告が並ぶ中で、特に意識しなければならないことが「その商品・サービスならではの強み」を提示することです。おそらく意識しているマーケターの方々も多くいると思いますが、本当に「その商品・サービスならではの強み」を消費者に向けて発信できているのでしょうか?
外車の広告を例として挙げてみます。加速性能が高い自動車を買いたいと思ってインターネット検索で調べる消費者は、自動車全般ではなく外車に絞る可能性が高く、その中で購入する自動車を選択したいという感情が働いています。そのような消費者に対して、国産車と比較した際の強みをいくら提示しても購入まで至る興味を持たせるのは難しいでしょう。その場合あくまで競合の商品は「外車」となり、その中での特長を知りたいと思うはずです。自社商品の強みは何か、何が優れているのか、どのような便益を与えられるのかといった、他の外車と比較した際の差別化を把握しておく必要があります。
もちろん自動車全般を比較対象にして購入を決めたいという消費者や車種を絞っている状態で検討したいという消費者もいるため、それぞれに刺さるメッセージを適切に使い分けなければなりません。その車の購買に至る消費者が求めているのは「外見/内見のデザイン」「最高速度」「操作性」、などのどれに該当するのか考えていく必要があります。
では、上記の「ペルソナ」「提供価値」をどのような手順でターゲティングしていけばいいのでしょうか。有効的な一つの案としてカスタマージャーニーを起点に考える手法があります。
カスタマージャーニーというのは、顧客が商品やサービスを認知した後、実際に購入(ゴール)するまでの間にどのような行動をするのかを旅(journey)に例えて追うものです。また、それを実際に図式化したものをカスタマージャーニーマップといいます。つまり、カスタマージャーニー及びカスタマージャーニーマップを作成することで、ペルソナがどのようなプロセスを追って、認知~購買を行っているのかを具体化する事ができます。(カスタマージャーニーの重要性や詳細については弊社が執筆した記事「B to Bマーケティングにおけるカスタマージャーニー」にて記載しております)
このカスタマージャーニーマップを認知~購買ではなく、日々のシーンに置き換えることも可能です。例えば車を例で見てみると、車の利用シーンとして「乗車する」「運転する」「駐車する」などが考えられると思います。
シーン別にニーズを書き出していくと、「デザインがカッコいい/かわいい車に乗りたい」「加速性能の高い車に乗りたい」「小回りが利きやすく運転操作がしやすい車に乗りたい」「駐車が簡単にできるアシスト機能のある車に乗りたい」などといったニーズが考えられます。それらのニーズをペルソナに落とし込んでいくと、それぞれのペルソナに対して訴求していくべき商品・サービスの価値が変わっていくことが分かります。
こうして書き起こしていくと、「どのような消費者(ペルソナ)」が、「日常的にどのような悩み/課題」を持っていて、「どのようなシーン」で、「どのようなモノ(商品・サービス)を求めている」のかが明確になってくると思います。また、そのような消費者のニーズを見える化していくことで、消費者目線でどのような意識・行動で、どのようなキーワードを検索かけて商品・サービスを比較・検討していくのかを理解していくことが容易となってくるのではないでしょうか。
以上の手法のような「商品そのものやユーザーのペルソナ、インサイトを分析してコミュニケーションを設計」する手法を、株式会社北の達人コーポレーションの代表は「ファンダメンタルズマーケティング」と称しています。「ファンダメンタルズ」も「テクニカル」と同じく株式投資をする人の中で使われている用語で、対象企業の事業内容や業績など分析して将来性を検討し、投資判断をする手法のことを指します。
Webマーケティングの全体像を細分化し、「情報収集による3C分析(Customer:顧客(・市場)、Company:自社、Competitor:競合)より仮説の立案」、「コンセプトワーク(どんなターゲットユーザーに対してどんなUSP(Unique Selling Proposition:商品やサービスが持っている独自の強みを伝えるかを設計))を伝えるか」、「Web用のクリエイティブ作成」、「広告運用」、フィードバックに基づいたクリエイティブの「チューニング(修正)・再出稿」の5つのステップに区分しています。テクニカル領域において、広告出稿後に得られる配信結果のフィードバックデータを基にクリエイティブをチューニング(修正)し再度出稿します。チューニングを行っても効果が表れなくなった場合、ファンダメンタルズ領域のコンセプトワークに戻り、作成しなおします。これは競合環境や、ユーザーのトレンドが変わることがあるためです。
また、広告表現を考える前に必要となるのが「誰に」、「何を」、「どのように伝えるか」を明確化することです。ここで、「誰に」というのは、前述の「どのような悩みを持つ消費者(ペルソナ)に」に該当し、「何を」というのは「どのような商品・サービスの提供価値を」にリンクしています。
以上のような消費者の行動心理について、コンサルティングファームでは業界・業種問わずノウハウを蓄積しており、そのような背景を踏まえたソリューション提供を強みとしています。弊社でもそのナレッジを有しており、デジタルマーケティング関連の戦略立案支援をはじめとして様々なプロジェクト実績があります。
また、自社ブランドも展開しており、広告運用も自社で行っているため、消費者目線での最適なソリューションをご提案することが可能です。
テクニックだけに頼らないマーケティング手法についてご紹介いたしましたがいかがだったでしょうか?マーケティングにおいては数値主義の側面があるため、成果が出れば良いという考え方もあります。しかし、近年の複雑化するニーズや商品・サービスとの差別化のためには、今後数字だけでの分析は難しくなっていくことが予想されるため、消費者の行動や商品・サービスの背景まで理解したうえで、確実にターゲティングして狙っていく必要があるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。マーケティング戦略においてお悩みなどございましたら、ぜひともお問い合わせください。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト