目次
日本の消費額に占めるキャッシュレス決済割合は年々増加しています。主にクレジットカードやQRコードの利用が伸び、2019年には約27%にも上りました。その数字は、前年比3ポイントも増えた結果となります。
キャッシュレス決済の割合が伸びた背景として、政府の後押しが大きな要因として考えられます。実際に、経済産業省による「キャッシュレス検討会」が実施されており、消費税率引き上げに伴う政府のポイント還元等が施策として打たれました。
さらに、コロナの影響でキャッシュレスがより注目を集めています。外出自粛の影響によりEC利用率が大幅に上がり、それに伴ってキャッシュレス利用も急激な増加を見せました。
※ECに関しては「オンラインコマースと自社について考える」を参照ください
事実、2020年2月から2020年5月までのキャッシュレス比率をみると、2月・3月で大きくキャッシュレス決済の割合が伸びていました。
キャッシュレスは一般的な言葉として広まっていますが、具体的な定義が定まっていないため、経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」を参考に「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態」をキャッシュレスとします。
キャッシュレスの意義としては大まかに消費者の利便性、小売の効率化・売上拡大があります。特に着目したいのは、コロナ状況下で混雑緩和による密集空間の防止効果です。キャッシュレスを取り入れることでスピーディに接客できるようになる為、混雑緩和を実現できます。反対にデメリットもあり、手元にキャッシュがないことで起こる認識や時間のズレ、決済時以外での損失リスク(手数料やデータの紛失)が挙げられます。
キャッシュレス決済の方法としては4つに分かれています。
利用料は決済の時に新しい機械やシステムを用いるかによってコストが大きく違うので、事業規模と必要性に応じて選択することが大切です。その中でも、2020年6月現在で一番手数料が安いのはアプリ決済となっています。
導入方法に関しては、それぞれの決済方法で導入の方法に違いがあります。スピードを意識した導入を行いたい場合はシステム構築が成されているアプリ決済やキャリア決済が最も早いと思われます。また、決済方法ごとに顧客層が異なるので、ターゲット層のニーズを考えて導入するのも重要です。以上の事から、コスト・スピード・ターゲット層が決済方法を導入するにあたり重要な観点だと考えられます。
キャッシュレスを導入するにあたり、決済代行サービスを利用するのが一般的です。キャッシュレス化に伴い決済時に多様な決算手段を用いるのが当たり前となっているため、決済の種類を増やすためにクレジット会社等と一社ずつ契約を交わそうとすると、管理しなければならない情報が増えてしまいます。つまり、業務負担や人件費に大きな負担がかかります。それらを解消するために決済代行会社が契約手続き・システムの構築・決算処理や入金の実行などを助けてくれます。
キャッシュレス化ではECサイトの導入、活用も欠かせないポイントとなります。そこで、ECも含めた決済代行サービスの主要企業を押さえ、決済代行サービスを選ぶポイントをまとめました。
代行元を選ぶポイントとして重要なのは、主に決済種類です。決済種類ごとにターゲットも変わってくるため、それらを見極めた選択が必要になってくるでしょう。例として、人口が多い中国人をターゲットにする場合、ネット銀聯などの中国系サービスに対応しているかどうかなどが重要な観点になってきます。しかしながら、決済の種類によって利用料が高くなる可能性があります。したがって、決済種類に応じた利用料との兼ね合いを検討する必要があります。
コロナの広がりに伴い、人との接触軽減が重要な要素となってきています。それはキャッシュレス決済が注目されてきている一つの要因となっているわけですが、そのキャッシュレス化が本格的に進み、人との接触を抑える究極的な方法が考えられた場合、「無人店舗」に注目が集まるのは想像に難くありません。
アメリカのシアトルでは、2018年1月22日にAmazon Goの1号店がオープンしました。Amazon Goとは「レジの要らない無人コンビニ」です。店舗入り口に駅の改札のようなコード読み取り機が設置されており、そこにスマホをかざして入店し、商品を手に取ってお店を後にするだけで決済が終わっているというシステムです。このAmazon Goは多店舗展開もすでに行っており、シアトルだけではなくサンフランシスコ・シカゴ等に店舗を構えています。
日本でも無人コンビニが実際に展開されています。JR山手線に新しい駅が誕生すると話題にもなった、2020年3月14日開業の高輪ゲートウェイ駅に無人コンビニ「TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー)」がオープンしました。手に取った商品をセルフレジで選択し、ICカードで決済すると、店舗を後にできます。ただし、店頭に設置されているゲートがあり、システムのキャパシティー上同時に7人までの入場に制限されています。
店舗の無人化は将来の夢の技術のように感じられますが、実際に今回記載している以外の事例もたくさんあります。将来を見据えて、キャッシュレスの一般化を一歩超えた戦略も視野に入れる必要があるのかもしれません。
コロナの影響が追い風となり、いよいよ本格的なキャッシュレス化が始まろうとしています。そのための対応として、まずはキャッシュレス決済の理解、そしてその種類、最後に具体的な導入方法を検討する必要があります。それぞれに共通して考えねばならないポイントは、自社の目的に合ったサービスの選択です。それらをしっかりと見極め、対応していくことが最も大切な事でしょう。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。