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【ithのものづくりと仕事 Vol.6】ithブランド事業部長/吉田貞信

この記事は、結婚指輪工房ith(イズ)のコンセプトムービー制作時に取材した、ithのものづくりにまつわる人たちのインタビューです。

ithブランド事業部長/吉田貞信

『ものづくりを通じて、世の中に豊かさを届ける』を事業コンセプトとするアーツアンドクラフツの創業メンバーの1人。IT、広告・マーケティング領域を中心に、B2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。2016年からジュエリーブランド「ith」の事業部長に就任し、豊富な事業経験を生かしてith全体の戦略設計からオペレーション運営までを統括する。日本国内の優れた技術を次世代へと残すため、側面からものづくりを支える仕組みづくりに取り組む。

 

Q ジュエリーブランド「ith」を通して、アーツアンドクラフツのものづくりの取り組みを教えてください。

 

A ithの始まりは、代表を務めている高橋亜結がアトリエに来たお客様と打ち合わせを重ね、自らオーダーメイドの指輪を手掛けることが原点となっています。今もそのときの『One to Oneのものづくり』を大事にしていきたいという思いから、お店は“お客様と一緒にものを作る場所”として「アトリエ」とし、そこにいるスタッフは販売員ではなく、“お客様をサポートしながら、一緒にものを作っていく存在”でありたいという思いから「つくり手」としています。

 

我々が『One to Oneのものづくり』にこだわるのは、作る側と使う側がダイレクトにコミュニケーションがとれる関係を大事に考えているからです。

ものづくりにおいて、作る側はお客様の想いに応えたいと思っていますし、お客様も出来上がったものに対して喜びや感謝の気持ちを届けたい。作る側はその言葉を聞いて「よし、次の仕事も頑張ろう」と意欲がわいてくる。こういった相互間における喜びや尊敬、感謝といった感情の循環が、残念ながら、今は少ないように感じています。

 

我々はこのような状況を少しでも変えていきたい。そして、ものづくりを通じて、世の中に豊かさを届けることを目指しています。

 

ものづくりに携わる人たちの想いや技術、知識はもちろん、職人たちと直接つながれることは、お客様にとって“+αの価値”になります。ithではその価値は指輪へと繋がってきます。だから、我々はお客様とものづくりに携わる人たちがダイレクトに繋がり、喜びや幸せが互いに循環していくブランドを作っていくことで、世の中全体が豊かになっていくのではないかと思っています。

 

Q 理想とするモノづくりを進めていく中での課題と、それを克服するために取り組んでいることを教えてください。

 

A お客様とつくり手が近い距離で、『一緒に作っている』状態をキープしていくことが理想です。しかし、現実は月間数百本の指輪を作っていかなければいけないですし、しかもそれらはひとつひとつ異なるものです。

このように作る人と使う人がダイレクトにコミュニケーションを育みながら、一方で数多くの生産をこなしていくことは水と油ほどの違いがあり、両方向にまたがって事業を進めていくことは意外と難しいものです。多くの人の力を借りなくてはいけませんし、物理的に場所や作る人が異なる状況も生じてくるでしょう。

ただ、我々はたとえバーチャルな形であっても、なるべくひとつの存在でありたいと思っています。そのためにITを駆使して独自のシステムを構築したり、社内はもちろん、外部の協力工場とも密に情報交換をはかるなど、課題解決に向けて取り組んでいます。

このような取り組みができるのは、アーツアンドクラフツに万全なバックアップ体制が築ける多様な人材が揃っているからで、それが我々の強みだと思っています。

Q つくり手の中には、ジュエリー業界未経験の方もいると思いますが、どのような指導、研修を行っていますか?

A ithのものづくりの想いや考えは、入社後、1カ月ぐらいかけてしっかり研修していきます。ただ、想いがいくらあっても、技術や知識がないとプロとしてお客様に貢献できませんので、接客はもちろん、ジュエリーに関する知識も2、3カ月かけながらしっかり学んでいきます。ときには、実際に指輪づくりに携わり、その難しさを自分自身の経験や知識として習得する研修も行っています。このような研修を繰り返すことで、つくり手として求められるスキルを習得し成長してもらう。それが我々の育成方法ですね。

 

Q これから先も優れた技術を持つ「手仕事」を残していくために、アーツアンドクラフツとして何をしていくべきだと考えていますか?

 

A 我々は、生産者がこだわっている想いやデザインがどのように暮らしの豊かさに繋がっていくのか、そのことをお客様にできる限りお伝えしながら、その先にあるお客様やご家族が求めるものを一緒に考えていきたい。そうすることで、ものづくりに“希望”も生まれてくるのかなと思います。

 

それはジュエリーに限らず、あらゆるものづくりにおいて同じです。

我々は、お客様と作る側がダイレクトに繋いでいきながら、一緒に価値を創造していくことを基本スタンスに、これからもさまざまなものづくりをサポートしていきたい。「世の中の暮らしを豊かにする」ことを忘れることなく、オーダーメイドのジュエリーや家具だけに留まらず、『これはいいね』と思った事業にはトライアルしていきたいと思います。

 

Q 最後に、吉田さんにとってものづくりはどんな魅力がありますか?

 

A 人間の社会というものは、モノや道具を作ることで発展してきました。

そう考えていくと、人間が蓄えてきたさまざまな知恵や苦労などが、ものを通じて我々の人生に大きく影響を与えていることが分かります。ものとの関わりの中で学び経験したことが、世の中をよくしていくことにも繋がっていると思っています。私自身は直接手を動かしてものづくりを行なってはいませんが、その意義を広く伝えていきたい。私の役割は、ものづくりの素晴らしさを伝えるための大きな仕組みづくりだと思っています。

 

参考ムービー/思い巡る結婚指輪