この記事は、結婚指輪工房ith(イズ)のコンセプトムービー制作時に取材した、ithのものづくりにまつわる人たちのインタビューです。
ithの生産管理を取りまとめる責任者。有名ジュエリーブランドでオーダーメイドの職人として腕を磨いた経歴を持ち、その実績と知識をithの品質向上のために如何なく発揮している。納期、コスト、素材選びなど、オーダーメイドジュエリーに関わる多くのプロセスをチェックしながら、つくり手からのオーダーに対して職人目線で指示書に落とし込む。そして、最善の仕上がりを実現するため、自社工房もしくは外部パートナーの工場の適性を見極めながら制作を発注し、最終的な検品作業までを担うithの要である。
A 当然、オーダーメイドは量産と違い、一点一点の仕様が異なります。
私たち生産管理部は、つくり手がお客様と一緒に考えた指輪のオーダー内容を見て、デザインだけではなくて、強度やつけ心地、プロダクトとしての完成度の高さなど、どこまでバランスよく担保できるのか? を考えなくてはいけません。
そのために必要なことは立体として把握できるかということ。正面から見た指輪の絵が横から見ても成立しているか、矛盾はないかを確認する必要があります。また、加工技術においても、テクスチャーの入れ方や宝石の止め方、アレンジの内容によって必要な工具も変わりますし、加工技術も変わってきます。そういった指輪を作るうえでの技術的な知識もないと、出来る・出来ないの判断も含めて、どのような完成度になるかも想像できません。私たちはつくり手と職人、双方のバックアップをしなければいけないのですが、そこが難しいところだと思います。
A 私たちの仕事は、つくり手からの仕様書やデザイン画から、お客様が求めていることとつくり手が求めていることを拾い上げていくことです。そして、それを形にしていくために、どのように職人に伝えていくかを考える。極端にいうと、私たち生産管理の仕事はつくり手と職人を繋ぐための翻訳作業といえます。
たとえば、職人にはふんわりしたイメージで伝えるよりも、「ここは0.2mm」「こちらは5mm」など具体的に伝えた方が分かりやすい。つまり、具体的な指示を噛み砕くように入れていくことで、思ったとおりの絵が仕上がっていくのです。そういった作業を行うことで、つくり手とお客様、そして職人を繋ぐことができる。それが生産管理の業務において大事な作業になっています。
A 生産管理はオーダーの内容に応じて、どの工程をどの加工先に依頼するかという計画を立てます。最初から最後まで依頼する指輪もあれば、ある工程まではAの工場に依頼し、その先はBの工場、最後の仕上げは自社で行うなど、どういう工程を組むともっともクオリティの高い指輪が作れるかを考えるわけです。私たちはこの工程を「プロセス」といっていますが、それぞれの加工に必要となるプロセスに対して、適正な納期、適正な工賃となるようにも気を配らなければなりません。最終的にお客様の満足度にも繋がっていくことなので、これも大切な仕事のひとつです。
A オーダーメイドだから、ある程度の品質のバラツキはOKという考えでは、とめどもなく品質が下がってしまうので、弊社独自のレギュレーションを持っています。その基準はithのこれまでのオーダーを参考にしていますし、私たちの中にオーダー内容に対する仕上がりや完成に至る技術的な知識があります。万が一、その基準を下回る指輪が納品された場合は、加工先へ再制作の依頼することもありますし、自社の職人に完成度を高めるためのひと手間を依頼することもあります。お客様との距離がとても近いithは、全てのスタッフが責任を持って指輪づくりに関わっています。
ithのオーダーメイドブライダルジュエリーは、お客様が「自分たちのリングを自分たちで作っている」という価値の提供だと思っています。ithのものづくりは、そのための課題を解決していくこと。つくり手との関係性、職人との関係性を適正化させていくことで、お客様の想像を一歩超える、完成度のより高い指輪をご提供できる。私たちはそこを目指し、旗を振っていくのが仕事。そうすることで、お客様に素敵な指輪をお渡しできることがとても嬉しく、私にとっての仕事の醍醐味になっています。