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【ithのものづくりと仕事 Vol.2】ith 工房長・石川雅基

この記事は、結婚指輪工房ith(イズ)のコンセプトムービー制作時に取材した、ithのものづくりにまつわる人たちのインタビューです。

ith 工房長・石川雅基

ithの工房長として、社内はもちろん、外部パートナー工場の職人たちにも技術的指南を行う。ジュエリー職人として宝飾店を営んでいた父の影響もあり、幼いころからものづくりの世界に慣れ親しみ、自然と職人の道へ。専門学校でジュエリー製作を学び、ハイジュエリーのメーカーに就職。大手メーカーに転職をした後は、マリッジ・エンゲージ商品の製作、原型製作、修理、チーム管理などに携わる。ithに入社したきっかけは、父が長年オーダーメイドにこだわってきたものづくりの姿勢と、ithの代表である高橋亜結のものづくりの考え方が重なったため。まだithのアトリエが吉祥寺のみのときに入社し、それ以降、ブランドのクオリティを支えている。

Q  婚約・結婚指輪はお客様の期待値も高いと思いますが、その中で大切にしていること、心がけていることを教えてください。

A  ジュエリー業界は大量生産品が多く、どんな方が使うかは分からずに作るのが通常ですが、ithはお客様のつけたいものが決まってから作る「オーダーメイド」です。さまざまな可能性がある中で、つくり手はお客様が理想とするものがどんなものか、具体的なデザインになるまでヒアリングし、それを私たち職人に伝えてくれます。そこからリングを作っていく中で、私たち職人は「自分で身につけるなら」「自分の想う人につけてもらうなら」と、妥協することなく、可能な限り手を入れて制作することを常に心がけています。

 

当然、生産管理スタッフが全てのリングの最終チェックをしますし、担当のつくり手たちもチェックしてくれるのですが、実際に作っている職人でなければわからないところもあるので、これ以上手をかけることができないところまで突き詰めて仕事をしていく意識でいます。また、この世の中にないものを形あるものに作ることができるのが、私たちの仕事ともいえます。常にクオリティを維持しながらひとつひとつ異なる指輪を作ることにプレッシャーもありますが、それがやりがいとなり、だからこそ、モチベーション高く仕事ができているのだと思います。

 

Q これまでithで作ってきた指輪の中で、特に印象に残っているものがあれば教えてください。

A ithに勤め始めたばかりのころは、代表の高橋と私のたった2人で指輪を制作していました。そのとき、ほぼ完成間近ではある指輪に満足ができず、「これはお客様にお渡しできない」と思うことがありました。職人として、ブランドとして、胸を張っていくために、納期まで時間がなくても一から作り直したり、徹夜で修正をしたり、夜中に甲府の協力工場まで車を走らせたりしました。当時は、お客様に納得できるものをお渡しするには、自分たちでなんとかしなければならず、そのための苦労はあったかもしれません。

今は一緒に悩みながら問題を解決してくれる仲間がたくさんいます。よい商品をスムーズに作れる環境になったことがとても嬉しいです。アトリエも増え、月に何百本と指輪を生産するブランドになりましたが、今もものづくりへの気持ちは当時と変わっていません。

 

Q ithがジュエリーブランドとして育ってきた今、工房長である石川さんが若い職人たちに期待することはどんなことでしょうか?

A  ジュエリー業界は、60歳以上の現役の職人の方もたくさんいますが、30代、40代の職人が本当に少ないのです。それは国内の多くの企業が価格競争に陥り、海外に生産の拠点を移したことが影響しています。海外の職人を国内に誘致していた企業もありましたが、それも長くは続かず。そういった経緯もあり、ジュエリー業界全体で若い職人が減少しています。ithにも若いスタッフが数名いますが、彼らを大切に育てていき、これからの世代に日本の優れた技術を継承していくことが大事だと思っています。

 

Q 外部パートナーである工場に対して、ithではどのような技術指導をしていますか?

A  基本的に職人の世界は狭く、自分の技術や創意工夫をほかの職人と共有することはほぼありません。ましてや、企業間で共有することはまずないでしょう。しかし、ithでは、協力工場の職人たちと直接話をする機会を持ち、技術やデザインに関するノウハウも事細かに伝えています。それは、ith内だけではなく、業界全体の職人のスキルを上げていきたいという思いがあるからで、会社のミッションとして技術共有の輪を広げているところです。

 

指輪は全て同じ手法で作られるわけではなく、その作り方は職人によってさまざまです。使用する工具も1000種類以上あり、それらを駆使してひとつひとつが作られていきます。 私たちがその取り組みの中で気づいたことは惜しみなく提供しますし、反対に外部工場の職人たちから教えてもらうこともたくさんあります。

 

Q  アトリエ数が増えたことで、生産量もアップしています。それでも、1人一人のお客様のために、ひとつひとつの指輪を丁寧に作っていく。そのために、今後、石川さんが取り組むべきことを教えてください。

A オーダーメイドのジュエリーブランドはほかにもありますが、どちらも規模はそれほど大きくはありません。なぜなら、大量に作れるものではないからです。これはオーダーメイドに取り組むジュエリー業界全体の課題だと思います。しかし、ithでは外部パートナーの工場の職人たちとしっかりコミュニケーションをとり、ものづくりに対する想いや優れた技術を共有していくことで可能になると信じています。社内の職人はもちろん、外部パートナーの工場の職人にも想いを理解してもらって、その同じ想いのもとで指輪を作っていくこと。それは忘れずに続けていこうと思っています。

 

 

 

参考ムービー/思い巡る結婚指輪

5F, 1-3-18 Hiroo, Shibuya-ku, Tokyo
150-0012 Japan

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