この記事は、結婚指輪工房ith(イズ)のコンセプトムービー制作時に取材した、ithのものづくりにまつわる人たちのインタビューです。
自身のアトリエから生まれたオーダーメイドの結婚指輪工房「ith」のブランド代表。15歳から金属工芸全般(彫金、鋳金、鍛金)を学ぶ。山梨県立宝石美術専門学校卒業後、宝飾メーカーの工房で8年半修業を経て独立、吉祥寺にアトリエを開く。高橋自らデザインし、試作を重ねた結婚指輪のコレクションは、シンプルなものから個性的なものまでバリエーションは幅広く、その数は70種を超える。ブランドコンセプトである「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」という想いをもとに、これまで手掛けた婚約・結婚指輪の数は1000組以上にも上る。現在は、新たにオープンする新宿、福岡、梅田のアトリエ準備のほか、新たに加わったつくり手たちの指導にも関わるなど、ブランドの顔として社内外に向けた活動している。
A 立ち上げ当初はお客様もあまり来なかったのですが、SNSを通じて徐々にお客様が増えていき、2年目以降はオーダーのほうが上回るようになりました。私一人ではもう制作が追い付かなくなったころに石川が入社し、2人で夜遅くまで作業していたこともありました。
今は、自社工房長である石川ら制作スタッフや、生産管理部門長の阿部ら生産管理スタッフらが万全の体制を敷いていてくれるので、私はデザインやつくり手としての業務に専念することができています。
A 私はもともと職人だったので、お客様と相対する『接客』が苦手でした。当初はそのことに不安を感じていましたが、実際にお客様と接してみると、私の話す言葉にお客様が耳を傾けてくれたり、お客様の楽しんでいる様子がアトリエ内に伝わってきて、『ああ、私にもできるんだな』と少しずつ自信を持てるようになっていきました。
同時に、ithでのお客様とのやりとりは『接客』ではなく、よいものを作るために互いの意見を出し合い、本当に求めているものは何かを心の底から話し合う『ものづくり』と何ら変わりはないことに気づいたのです。
私がithで大事にしていきたいのは、お客様が求めるものを正確に作るということです。その思いは立ち上げた当時と全く変わることはありません。
ithを訪れるほとんどのお客様が指輪に詳しいわけではありませんし、好みも要望もスタイルもそれぞれ異なります。その方たちが少しでも安心して、ご自分の理想とする指輪が作れるように、アトリエでコレクション(サンプル)をご覧いただきながら、じっくりとお話させていただいています。
私にとってアトリエでお客様と過ごす時間はとても大切なのです。その時間は私も勉強になるので、どんなに忙しくても、私はアトリエと近い場所にずっといたいと思っています。
A 少し前のことですが、結婚指輪のフルオーダーをいただきました。その指輪は彫りの入ったものだったのですが、お客様のご要望をどのようにデザインしていくか、生産管理部の阿部や外部の職人の方たちとも相談し、半年かけて出来上がりました。
お客様とも何度もお打ち合わせをさせていただきましたし、よりよくするためにスタッフみんなで話し合って出来上がった指輪だったので、とても印象に残っています。
先日、ithがスタートしてから間もないころのお客様がメンテナンスにいらっしゃったのですが、当時はまだご夫婦だけだったのに、今はお子さまが2人いらっしゃるとお聞きして、時の速さを感じました。
ithでは、婚約・結婚指輪をオーダーメイドする「1回だけ」のご縁ではなく、挙式後に写真をもってきてくださる方や、毎年メンテナンスに訪れるお客様もいて、その後のお客様の家族の歴史を見ることができます。それってすごくよい仕事だなと思います。
A ithは「お客様が本当に欲しいと思う指輪をオーダーメイドで作るアトリエ」です。
私たち、つくり手はお客様と向き合い、お話していく中で可能性を探り、お客様の理想とする指輪のイメージを明確にしていきます。お客様はつくり手と話すことでデザインのイメージがどんどん膨らんでいきます。
お客様が本当に欲しいと思う指輪を“一緒に”作っていく。この体験ができるのは、ithだけではないかと思っています。
事業が拡大した今、多くのつくり手がお客様の理想の指輪を作ろうと奮闘しています。誠実にお客様に向き合い、習得した指輪の知識をお客様にしっかりと提案していくことが大切だと思いますので、これからも代表として、つくり手たちのお手本になるように頑張っていきたいと思っています。