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【実践事例】テレワーク時代のタイムマネジメント vol.5(最終)

 

このコラムは連載企画です

<前回コラムはこちら→>【実践事例】テレワーク時代のタイムマネジメント vol.4


前回コラムでは、タイムマネジメントの実践方法のとして、可視化された情報をもとに具体的にどのような視点で改善していくのか述べさせていただきました。本コラムでは、前回に引き続き改善案を追加していきます。

実践②:テレワーク時代に併せた時間管理の改善とは(続き)

「モチベーション等感情面を把握しづらい、喜怒哀楽の感情をつかったコミュニケーションがしづらい」への対処:

テレワークになるとコミュニケーションで交わす情報が成果物ベースになり、それぞれの関係者の感情的な側面が見えにくくなる傾向があります。これは、これで論理的な話がしやすいといった利点もありますが、日本式のマネジメントが特に尊重する「空気感」というものは共有しづらくなり、社員個人個人の感情やモチベーションの状態がどうなっているのか管理者としては不安を抱くことが多くなると思います。

このあたりのテレワークならではのハンディキャップを克服するために様々な取り組みがなされています。ですが、それらは一定の効果はあるものの、リアルの職場でできたことを完全には補完しきれていないのが実情です。集団の帰属意識を高めるために、各社員でチームを組ませて特定の社内イシューについてオンラインで分科会を開かせて発表させたり、またはやはり「飲みの場」を設けようという事でオンライン飲み会を実施した企業も多いと思います。ですが、例えばオンライン飲み会は最初の数回はそれなりに新味もあり楽しめるのですが、やはりどうしても喋りが1対多となってしまい、飲みニケーション特有の個別の隣の人との会話や小さいグループ単位での会話はしづらくはあり、大人数集まってのコミュニケーションには向きません。また、社員個人のモチベーション管理については、対策としてはWeb会議で1on1の頻度を増やすといったことも考えられますが、えてして社員の本当のモチベーション、感情の起伏が垣間見られるのは上司との1on1ではなく、社員同士の交流の場であったりします。

なので、テレワークでの空気感の醸成やモチベーション把握に限界を感じた場合は、特別に一同オフィスに集まるイベントを開催してしまうのも手です。このような考え方は何もこのテレワーク時代になってから登場した目新しい事象ではなく、以前からオンラインゲームのユーザー同士でオフ会を開いていたりしていることも同様の理由からです。これは社員にオフィスに来させることになりますので、今のコロナの時世からすると頻繁にできることではないですが、例えば月の定例会の時だけ、オフィスに集めるなど定期化することで、不足していた感情面でのコミュニケーションを補うことができます。この場合、このオフラインでの会合は普段のテレワーク環境からすると非日常であり、イベントに近い印象になります。合わせて社員の褒賞やセレモニー的なことをしたり、議題を与えてワークショップのような事をすることも有効です。こういったオフランでのイベントを定期化して活用する仕組みは一考の余地はあると思われます。もちろん会社によっては完全リモートであることが求められるケースもありますので、その場合は、上述したようにオンライン分科会やオンライン飲み会で、そしてより細かい1on1等で代用していくこととなります。

 

 

「(自分で意識しないと)オン/オフの境目があいまいに」への対処:

テレワークによって自宅で仕事をしているとどうしてもオン/オフの境目があいまいになりがちで、必要以上に遅い時間まで働いたり、その反動で翌日の勤務開始時間が遅くなったりと様々な事象が発生します。特に勤務形態として裁量労働制をとっているビジネスマンにとっては、始業・終業の時刻がそこまで厳格化されておらず、リモートワークの環境になることで生活サイクルが大きく変容してしまったり、あとは、これは一概に悪い訳ではないですが、夜型の人はより夜型に、朝型の人はより朝型になってしまうケースが散見されます。

これへの対処は一言で申しますと「自己管理をしっかりせよ」と言うしかないのですが、一つ誰でも始めやすい対処法として「ルーティンを作る」というのが挙げられます。ルーティン(routine)とは、「決まっている手順」や「お決まりの所作」「日課」など、繰り返しを意味する言葉です。この生活におけるルーティン・習慣化を定着させることで、自然と体と脳の切り替えができるようになると言われています。ことこのテレワーク環境下でのオン/オフ問題について言えば、朝と夜にルーティンとなる習慣を定着させることで、半ば強制的にオンとオフの切り替えをさせる工夫が考えられます。

例えば、筆者の例で言いますと、このテレワーク環境になってから、通勤時間が浮いたことを活かし、毎日朝にオンライン英会話を設定することにしました。筆者はもともと夜型で朝は弱い体質なのですが、毎日早朝に英会話をセットすることで、比較的スムーズに朝の起床および仕事の取り掛かりが容易になっています。また、オン→オフへの切り替えについては、ジョギングなどの運動を強制的に毎日定刻に設定してしまい、一旦仕事から離れることを習慣化することが有効です。このルーティンを何にするかは、個人の生活環境にもよるので是非各自考えていただければと思います。犬を飼っている方ならペットを連れての散歩でも構いませんし、毎日風呂を定刻に入る、でも構いません。著名な経営者のルーティンとして有名なものとしては、「毎日一時間読書」(ビル・ゲイツ)、「子供に子守唄を歌って聞かせる」(マーク・ザッカーバーグ)といったものがあります。

次に、オン/オフの境目というよりか、勤務中の「オン」の間に、意図的に「オフ」の時間を設けることで生産性を上げる話をしようと思います。すなわち「仮眠」についての話です。勤務中に集中力が切れるとき、前日のプロジェクトの仕事で深夜残業して眠気に襲われるとき、そのように脳が一時休憩をもとめるケースは仕事をしている以上、皆様の少なからず経験されていると思います。そのような就業時間中に眠気に襲われたときに、積極的に仮眠をとることは、Google、Apple、Microsoft、NIKEといった世界的な企業では既に取り組みが行われており、「パワーナップ」と呼ばれています。これらの先進的な企業では、オフィスに仮眠スペースを設けたり、睡眠装置を置くなどしてパワーナップを積極的に推奨しています。そもそもパワーナップの科学的効果を実証したのは、NASA(アメリカ航空宇宙局)であり、1995年頃からと言われていますが、NASA Napsという仮眠の実証実験を行っています。そこでは昼に26分間の仮眠で、認知能力が34%、注意力は54%向上したという結果が出ました。もともと人体のメカニズムとして、昼の午後24時頃に眠気のピークが訪れるように体内時計が設定されていると言われており、確かに昼間に一時的に睡眠をとることは、生理学的にも理にかなっていると言えます。

ここで重要なのはその仮眠の時間です。長ければ良いというものではありません。カリフォルニア大学の神経科学者マシュー・ウォーカーの研究では、人体は入眠20分ほどでノンレム睡眠の「ステージ2」に移り軽い睡眠レベルに到達し、その段階になると脳の情報整理・記憶・優先順位をつけるといった機能がリフレッシュされることが判りました。例えるなら、脳のキャッシュ・メモリがクリアされるような状態です。これが昼間の短時間睡眠で、頭がスッキリ冴える事象の理由であります。ただし、その仮眠が30分以上になると、ノンレム睡眠の「ステージ4」に進み、深い眠りに到達してしまいます。そうなってしまいますと、寝覚めが悪く、起きてから暫く意識朦朧とした状態になります。従って、終業中にパワーナップを行うのであれば、20分前後の短時間で済ませることが最も効果的であると言えます。

パワーナップの有効性はご理解いただいたと思いますが、それをいざ実践となると、先述した仮眠室を設けている先進的企業ならいざ知らず、通常の職場環境でそれを行うには中々勇気のいる行為だと思います。もちろんオフィス勤務時でも就業中に周りを気にせずデスクで仮眠をとる猛者もいるにはいますが、なかなか一般のビジネスマンだと仮眠をしたほうが自身の生産性上良いのは分かっていても周りの目が気になりできません。そのジレンマは、この在宅勤務環境の普及により劇的に改善されることになります。先述したように、眠りすぎるのは反って生産性を落とすことになりますが、そもそも自宅には眠りにつくための最適な環境が少なくとも職場よりは整っています。このテレワークによって生み出された利点を活用しない手はありません。積極的にパワーナップを取り入れ、覚醒時の生産性向上させることができれば、オフィス勤務時よりも高いパフォーマンスを実現できることになります。

 

最後に~テレワーク時代こそ自身の生産性をあげられる好機

前章で取り上げたテレワーク環境を活用した時間管理の改善アイデアをまとめると以下になります。

 

諸々挙げておりますが、やはりこのテレワーク時代における時間管理の要諦は一言で言うと

 

「自由は増えた。だが、自分で能動的に管理しないといけない。」

 

これに尽きると思います。

時間管理という側面で見たら、テレワーク環境は従来のオフィス勤務環境に比べて圧倒的に自由度は高まります。そもそも移動時間の削減という一点だけを取って見ても、テレワークは余剰時間を生み出す効果があることは明白です。ただ、それを活かすも殺すも自分次第です。この自由を活かすものは自身のパフォーマンスを劇的に向上させますし、この自由を自身の甘えに使う者は何も変わらず、ビジネスの競争環境の中での劣位に甘んじるか、もしくは淘汰される運命を甘受することになります。このコロナ禍による半ば強制的なテレワーク環境への移行を一時的なものとみなすか、むしろ新しい「働き方改革」の好機ととらえ、ワークライフバランスをとりつつも自らの生産性を向上させるチャンスとして活用するのか、それは個人の選択の自由ではありますが、筆者としてはより多くのビジネスパーソンが、このテレワーク環境を自らの競争力向上に活かすことを望んでやみません。

 

 

出所:

 

平田

平田久郎

米国戦略系ファームBooz & Company(現PwCネットワークStrategy&)を経て2010年当社設立に参画。コンサルタントとしての経験と知見をもとに、当社のB2B領域における事業開発及び業務運営を一手に担う。独自の社会観と戦略眼に基づき、次世代型のコンサルタントとエンジニアの育成に従事。ペンシルバニア大学(米国)卒業、東京工業大学大学院修士課程修了。

 

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