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【サービス紹介】ビジネスデューデリジェンス概論

M&A市場の概況

新型コロナウィルスの流行を端緒とする企業活動の停滞により、当然投資シーンも顕著に影響を受けています。この長引く特殊要因によって傷ついた企業の財務状態や売りの回復・治癒には相応の時間が必要で、そうした環境下におけるM&Aにおいては、企業の将来性をポジティブかつアグレッシブに説明することは難しく、Beforeコロナ時のような高いバリュエーションM&Aは、一定数減少するとみられています。

: 投資の価値計算や事業の経済性評価のこと。M&Aでは企業価値評価を指す。買収金額の算定に必須

 

他方では、コロナクライシスの影響をさほど受けなかった体力のある企業による成長戦略としての救済型のM&Aが増加するとみられており、このような先行き不透明な投資シーンにおいて、ますますビジネスデューデリジェンスを担うセクションの役割は大きく、そして重要なものになっているといいでしょう。

今回は、これから自社内でM&Aを進めていく必要のある企業担当者様に向けて、ビジネスデューデリジェンスの概論を押さえつつ、その要検証事項について弊社のご支援実績を踏まえまとめてみたいと思います。本来であれば、こうしたM&Aを検討する際は、買収候補対象を探索・選定、そして交渉に持ち込むソーシング方法を検討する必要がありますが、ビジネスデューデリジェンスは、初期的な企業研究の折にも登場する一般的な概念のため、その参考にしていただければ幸いです。

 

デューデリジェンスの類型

まずは、ビジネスデューデリジェンスが担う役割について押さえましょう。

そもそもデューデリジェンスとは、一般的にM&Aをはじめとする投資判断をする際に投資対象の企業価値や事業上のリスクを調査することを目的としています。その結果次第で投資可否が決まるばかりか、その価値算定によっては買収価格も大きく上下してしまいます。よって、非常に重要なセクションを担っていることはお分かりいただけるかと存じます。

 

ビジネスデューデリジェンスには主に3つの観点から進められ、ビジネスの他に財務・税務、法務観点での調査・検証が進められます。いずれも専門性が高く、十分なリソースがない中では自社内で完結することは困難です。また、M&Aの取引に重大な影響を及ぼすため、いざ買収交渉のフェーズになるのであれば、外部専門人材の活用を前提としたデューデリジェンスチームを組成することから検討することになるでしょう。

 

ビジネスデューデリジェンスの論点

ことビジネスデューデリジェンスは、その名の通り、事業活動や企業の属する市場環境の分析から、その事業の価値判定を行っていくことになります。最終的には、対象会社の事業モデルを基にしたプロジェクション(=事業計画・収益予測)を作成し、将来的に得られるキャッシュ・フローから企業価値を算定、買収金額の算出に結び付けられます。イメージとしては、

  1. これまでの業績状況から事業ごとに将来的なP/Lを作成
  2. 事業ごとに収益性を精査し将来計画に反映
  3. 自社とのシナジーを定量化し将来計画に反映
  4. 将来のキャッシュ・フローを算出

と進めていくのがセオリーです。これに定性的な情報を加え、ビジネス観点の投資可否を判断する検証報告をまとめることになります。

なお、実際の企業価値・株式価値および買収価格の算定は、専門的な知識と経験によるタクティカルな要素が絡みますので、財務・税務担当セクションや経験豊富なM&Aアドバイザーのアサインを検討する場合もあります。

ビジネスデューデリジェンスの主要論点については、以下の通りです。 

 

主要な論点としては、大きく事業環境分析と業績構造分析があり、事業環境分析は、外部環境分析と事業基盤・事業構造分析とに細分できます。

 

事業環境分析

外部環境分析は、その名の通り対象会社が属する市場環境の分析です。一般的な市場分析と同様に競合の存在、競合対比の優位性、差別化要素、市場動向とシェアを算出し、当該事業が市場として明るいか否か判断することになります。外部環境にけん引されて自然と伸びていくのか、や、将来的に20XX年に起こるであろうイノベーションにより、ニーズの著しい減少を見込んでいる、など、定性的な環境要因も可能な限り洗い出し、それらの材料をもってロジカルかつ客観性の高い事業計画を引いて、収益を見積もるのです。

当該市場がシュリンクしていく予測であれば、当然対象会社の事業計画はシビアなものになり、軽やかな成長戦略を描くことはできないでしょう。結果、将来の収益性も薄まるので、企業価値も相対的に割安になる可能性があります。

 

事業基盤・事業構造分析は、人材・顧客構造・営業体制の分析を軸として展開します。

人材は事業活動上なくてはならないリソースですが、事業部ごと主要人材のスキルを可視化した上で、必要な機能やポジションを洗い出します。対象会社の立てる事業計画は、その前提条件として、現在のリソースをベースとした人員計画を立案していることが多いですが、当然ながら、特定人材がいなくなってしまうと、途端に立ち行かなくなるケースも多々あります。加えて、顧客そのもの・業務そのものが個人に結びついているケースでは、その属人性の高い体制をいかに標準化していくなど、何かしらの打ち手を考える必要が出てくるでしょう。そういったリスクを洗い出していくことが多いです。

 

顧客構造は、事業別の取引先一覧とその取引額の分析が主です。各年で各社が売上全体額に占める割合は、顧客の分散状況を把握するのに役立ちますし、各年の新規受注額・失注額の推移をみることで、その要因を探る手がかりとなります。全体のボリュームゾーンを推測するには、この顧客分析が一番の要です。この分析から得られた仮説を基に、対象会社へのQ&Aを繰り返し、その事業の持続性を検証していくことが必須です。

 

業績構造分析

業績構造分析に関しては、まず、単純な現状把握方法として各年の業績推移を追っていくことが定石です。事業部ごとの収益性を検証し、各年の売上増減、利益(売上総利益・営業利益)増減のトレンドを把握することで、企業本来の平時の収益力を算出していきます。

この収益性の増減は、前述の事業環境分析で抽出された定性情報を踏まえて、その関係性を紐解いていくことが肝要です。例えば、ある年に減収減益となっている要因について、主要社員の退職によるものなのか、主要顧客が離れてしまったからか、あるいは競合に競り負けてしまっているのか、説明がつくようにしなければなりません。このような検証をすることによって、事業上でのリスクを抽出・回避策の検討といったステップを踏んで対応することが可能になるわけです。これは、プロジェクションを作成する際の定量的な情報をつかむ上で、最重要な位置を占めている分析であり、バリュエーションの前提条件となります。

ビジネスデューデリジェンスは、これらの論点を基に広く企業調査を進めていく重要なセクションです。

 

アーツアンドクラフツのM&Aサポート

今回は、ビジネスデューデリジェンスの初歩的な検証方法、アプローチ方法にスコープを充てて展開させていただきました。弊社では、M&Aを検討される企業様に対し、対象会社探索のご支援、ビジネスデューデリジェンスのご支援をさせていただいております。

業種を問わず、あらゆるセクターにおけるコンサルティング実績を背景としたノウハウを駆使し、最適な投資判断に資するインプットをご提供させていただきます。

まずはお気軽にお問い合わせください。

 

日下部峻

アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
新卒で大手飲食チェーンに入社。2018年当社に入社し、C&S事業部に参画。主に、M&Aサポートやビジネスデューデリジェンス、新規事業の事業性検証や事業モデル策定といった戦略コンサルティング案件、BPRをはじめとする業務コンサルティング案件においてセクターを問わず多数実績を有する。クライアントへの価値創出に全身全霊をかけて取り組み、最大のパフォーマンスを発揮することをモットーとしている。