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現在も猛威を振るう新型コロナウイルス。未だに収束の目処はたっておらず日本全国で感染者数が増加しています。コロナのダメージを受けた業種はリアル店舗での接客を中心とした小売業やサービス業であり、その中でも特に飲食店はお客様が来店しないと売上が立たないため早急な対策が必要でした。営業自粛や時短営業を強いられ、各企業がECなどのオンライン化に着手する中で、テイクアウトやデリバリーサービスでなんとか打開策を見出したい飲食店ですが、それも頭打ちの策でありさらなる対応策が必要となります。本記事では飲食店にフォーカスし、コロナ禍における店内での業務用サービスロボット活用について取り上げます。
現在さまざまな業界でロボットが活用されており、人との協働が当たり前の時代となっています。このように人と協働して行うロボットを「産業用ロボット(協働ロボット)」と呼びますが、生産工程での使用を前提とする産業用ロボットを除く業務上のサービスを提供するロボットのことを「業務用サービスロボット」といいます。
業務用サービスロボットの世界市場はこの数年、急速な成長を遂げています。国際ロボット連盟(IFR)の「World Robotics Report 2019」によると、2018年から2022年にかけて、台数ベースでは約3.8倍、金額ベースでは約4.1倍まで拡大すると予想されています。
経済産業省・NEDO「ロボット産業将来市場調査」によると、日本国内において2035年にはサービスロボットの市場規模は産業用ロボットの約1.8倍に拡大すると予測されています。国内でも今後、ロボット産業の成長の主役はサービスロボットになると見込まれています。
飲食店における業務用サービスロボットは主に料理の配膳・回収ロボットや食器洗いロボットなどが挙げられます。日本でも今回のコロナを機に飲食店で配膳ロボットを導入した事例が散見されます。例えば、「居酒屋 土間土間赤坂店」ではAI配膳ロボット「PEANUT」の運用実験を開始し、コロナ対策である3密防止やお客様との濃厚接触回避などに取り組んでいます。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01382/073000002/
海外ではさらに開発が進んでおり、アメリカでは丼物などを調理するロボットや中国では料理の注文受注から調理、配膳、会計をすべてロボットで自動化したレストラン「京東X未来レストラン」も存在します。
https://robotstart.info/2019/01/21/china-robot-restraunt.html
コロナ禍において苦境に立たされている飲食店において、現状抱えている課題は大きく3つあると考えます。
そもそも配膳ロボットとは、簡単に言うと料理をお客様のテーブルへ配膳(または回収も含む)するロボットです。コロナ禍において配膳ロボットが注目されている背景にはやはり人と人の濃厚接触回避(非接触)や対面接客がない(非対面)ということが考えられます。すなわち、お客様に安心安全を提供することにつながります。
コロナ禍においてできるだけ来店して料理を食べてもらいたいお店側とたまには外でご飯を食べたいというお客様側の両者のニーズを満たすためには”安心安全の徹底”が最重要項目となります。ただし、配膳ロボットはあくまで料理の配膳・回収のみを実行するため、それ以外のオーダーや会計の際にはスタッフとお客様の接触は基本的に避けられません。そのため、すべての安心安全が補完されたとは考えず、あくまで配膳業務の自動化という認識をもつことが必要です。
配膳業務を自動化することで飲食店が抱えている課題の一部を解消することが期待できます。それは”人手不足”と”衛生管理”です。
人手不足に関しては、ロボットが配膳業務をしてくれるおかげで、その分全体の業務量が減り人的リソースの補完に寄与しています。もちろん導入する台数や店舗規模、来店客数によってはすべての配膳業務を自動化できるとは限りませんが、人が行っていた業務をロボットが代替していることに変わりはないため、少しでも貢献していると言えます。
また、衛生管理の面では料理を渡す際のお客様と店舗スタッフの接触を回避できるというところに寄与しています。たったその瞬間だけだと思う方もいると思いますが、コロナはいつどこで誰からどのようにもらうのかは誰も予測できないため、常に気を配る必要があります。このような小さな取り組みを継続することでお客様から再び信頼を得ることができるのではないでしょうか。そしてそれはコロナが収束したあとの大きな財産になりうると考えます。
国内外の様々な企業がロボット開発研究を進めており、その中には言語機能を搭載する配膳ロボットも研究されています。軽快な音楽を流しながら来店客が待つ席へ向かい、「ご注文の商品が到着しました」などと音声を発して注文の品を届けます。シェフの代わりにロボットが料理を説明したり、お客様と対話して「お味はいかがですか?」と感想を収集したり、おすすめ料理をPRして追加注文を受けるような役割を担います。
さらに、中国ではジェスチャー認識機能も備えたロボット研究が進んでいます。お客様がAIカメラに向かって手を動かしジェスチャーすることで、AI カメラがその動作を認識できます。ボタンに触る必要がなく自由にロボットを動かせるため効率的かつ衛生的です。
国内でのロボット産業市場規模は拡大傾向にあり、その中でも特にサービスロボットの成長が予測されています。今回のコロナを機に配膳ロボットの導入を決めた飲食店もあるように、今後さらに導入が進んでいくと思われます。もちろん導入の際には導入コストやランニングコスト、事業規模に合わせた導入台数など検討することは大事ですが、未だコロナが収束していない状況の中でいかにしてお客さんを店舗へ呼び込むかが直近で重要なことであると考えます。様々な対策が考えられますがその策のひとつとして配膳ロボットの導入は有効であり、お客様に安心安全を提供する上では強い武器となるのではないでしょうか。また、目先のコロナ対策だけでなく長期的に考えたとき、配膳ロボット導入は人的リソースの補完や他業務への注力による顧客満足度向上の実現など様々なメリットに寄与できるのではないでしょうか。
人がすべきことは人がする。ロボットができることは自動化する。そのように役割分担をすることでお互いに強みを最大限活かした業務を行うことができ、結果としてお客様に満足していただけるのだと思います。人とロボットが協働する時代はもう目の前まで来ているのかしれません。
全国に飲食店を展開するフードサービス企業のStyle社はロボットの介入によるコロナ感染予防策として普段の注文数が他店舗と比べ特に多い「定楽屋」に自動配膳ロボットを導入しました。
自動配膳ロボットはパレットに載せた料理を自動でお客の席まで配膳します。音声によるコミュニケーションで料理の到着を案内し、料理の受け取りを認識したら次のテーブルへ素早く移動します。背面のタッチパネルから複数のテーブル選択も迷わず操作できて、バッシングした食器類を載せたら、手をかざすだけでキッチンに戻る機能も搭載しています。
https://robotstart.info/2020/04/09/style-peanut.html
静かな庭園の中でゆっくりと美味しい料理を食べるのをコンセプトとしたがんこフードサービス社は、付加価値を上げるために接客に専念したいというスタッフからの要望に応えて2年前から配膳ロボットの導入を始めました。接客以外のプロセスを自動化にして、スタッフはより技術力が要求される仕事に集中すべきという考えのもとお客様の満足度向上を実現するため取り組んでいます。
費用の面では、ロボット一台の価格が約230万かかっており、稼働年数20年と想定すると実質の年間費用は約11万円程度となります。業務量や導入後の効果を考慮すると非常にリーズナブルな価格であることがわかります。
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/mag/15/00148/00025/
【参考】
・DIG-IN「アフターコロナの飲食店が抱える3つの課題とその解決策。キーワードは“効率化”?」
・ビジネス+IT「現場の反応は?人手不足の外食店舗救う「配膳ロボット」最前線」
・ロボスタ「【飲食店の新型コロナ対策】居酒屋に配膳ロボットを導入 調理・配膳ロボットが人との接触を減らし、業務の自動化を推進」
・日経XTECH「AI配膳ロボットで「密」を回避、コロナ禍にあえぐ飲食店を救うか」
・日本サポートシステム株式会社「企業で活躍する注目のロボットとは?ロボットの種類や業界を紹介!」
・ロボスタ「中国の最新ロボットレストラン、オープン51日目で来店者3万5千人を突破! 調理から配膳までを自動化」
・日経XTECH「《日経Robo》がんこフードが京都の料亭風店舗に配膳ロボ4台導入」
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。