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ith10周年の取り組みを通じて(2)モノガタリーコラボ ith × yama賞

今回は、10周年の記念のひとつとして実施しているSONY Musicが運営する小説投稿サイト monogatary.com とのコラボレーションについてお伝えします。

結婚指輪と音楽?yamaとのコラボレーション?

このプロジェクトってどういう意味や目的があるのだろうと思う方も少なくないかもしれませんが、元々の問題意識は、これからどうやってithという存在をもっと広めていくためにどうしたらいいだろうかというところにありました。

その手段のひとつとして、アーティストの力を借りてithの知名度を高めることができないかということで、SME(SonyMusicEntertainment)で働く友人に声を掛けたのが今回の発端。そこで紹介されたのがmonogatary.com

小説を元にした楽曲制作で有名なYOASOBIを世に輩出したサイトです。

ストーリーある指輪、ストーリーある音楽

前回の記事(ith10周年の取り組みを通じて (1)記念リング)のとおり、ithはお客様と指輪のストーリーを大切にしてきました。

ではストーリーとは何か。少し噛み砕いて考えてみると、それは<言葉とその意味のつらなり>ということができるのではないかと思います。

私たちは指輪というオブジェクトに、意味と言葉を与えることで私たちなりの価値を生み出してきたと思っていますが、音楽というものが音の重なりや歌詞(言葉)に意味を与えることで価値を生み出すものだとすると、それぞれ実は似たところのある、近い行為なんじゃないか。

アーティストの知名度だけにあやかるようなコラボではなく、ストーリーある指輪、ストーリーある音楽という共通点を前提にした取り組みを通じて、ithだけでは得られない価値づくりを、ということでプロジェクトがスタートしました。

 

共創で生み出すまだ見ぬ可能性

もうひとつ別の側面から、今回のコラボレーションによってithらしさを深め、増幅させられる可能性も感じていました。

ithの指輪はお客様と一緒につくることを大事にしています。

自分たちだけでithの指輪が完成しているのではなく他の誰かと共創することで他にはない価値を生み出しています。それと同じように、ithというブランド自体や大切にする価値観も、他の誰かの解釈や創造の力に委ねることでより広がりや普遍性を持つものになるのではないか。

私たちが指輪づくりを通じて大事にしてきた「One Story.One Ring」というメッセージをmonogatary.comの小説家たちがそれぞれの解釈して小説を生み出す。その作品の中からさらにyamaというアーティストが音楽を生み出す。

多くのクリエイターたちとの共創によりもっと本質的な何かが掘り下げられることで、私たちがまだ表現しきれていない価値や可能性を見出す大きなきっかけになるではないかという期待を込めた取り組みでもあります。

指輪もブランド自体も真ん中の芯はどっしりとしているんだけれども、その解釈や表現の仕方はお客様やクリエイターたちの数だけ多様性を受け入れながら成長していく。そんなあり方もithやArts&Craftsらしさなのではないかと思っています。

新しい、今のウェディングソングを。

何度かディスカッションを重ねながら、ith、yama、そしてmonogatary、それぞれの考えやイメージを掘り下げていきました。

当たり前ですが、ほとんどのお客様が幸せのカタチとして指輪を作りにいらっしゃいます。私たちは日々、その幸せのストーリーを指輪にしていきますが、その中でも、愛のカタチはひとつではない、ということを感じることがあります。

顔カタチや好みはもちろん、国籍、性別、本当に人の数だけの愛のカタチが存在していますが、今回、小説や音楽を生業とする人たちと議論するなかで、日々接している目の前の幸せのカタチをもうひとつ深く掘り下げてみたくなってきました。

<本当はそこに至るまでにはいろんな思いがあったんじゃないかな。>

<もしかしたら、嬉しいや楽しいだけではない何かを乗り越えてここに辿り着いたんじゃないかな?>

幸せや愛を<幸せ><愛>という記号の中に閉じ込めるのではなく、その輪郭やそこに刻まれた皺や傷みたいなものまで想い描くことができたなら、そこにもっと豊かな指輪の価値が広がるのではないか。

小説や音楽という、いつもと違う表現フォーマットを通すからこそ、<幸せのカタチ><愛のカタチ>のもっと深いところ、それぞれの心の中にあったかもしれないもっと幅広い感情や想いを含んだ結婚指輪づくりの意味を考えることができるような気がしたのです。

そこから生まれたお題動画がこちらです。

https://youtu.be/2Cxwz06zClM?si=VuxMqb9QNtykH-lx

 

このお題動画自体が私たちにとって少し攻めた内容のものになりましたが、監督・脚本である佐久間 鑑さんの熱量に導かれて制作に至りました。この作品自体もクリエイターとの共創の産物だと思います。

このお題動画に基づき、monogatary.com での小説募集を行いました。

約1ヶ月の間に約300作品の応募があり、本当に多様な<One Story.One Ring.>の物語が生み出されました。選考の過程においてもさまざまなことを考え、感じることができました。そしてつい先日、大賞とその他優秀賞の発表が行われました。

モノコン2024「ith×yama賞 ~One Story.One Ring.~」大賞作品発表 - monogatary.com
運営からのお知らせを表示します。

コンテストに参加頂いた方を中心にコメントも多数頂きました。応募期間、1次審査、大賞発表それぞれのタイミングで、PRとしての拡散効果も得られたように思います。

 

 

 

これから大賞作に基づいた楽曲の制作が始まります。

小説として綴られた<One Story.One Ring.>の物語をyamaさんがどのように解釈し、音楽として回収するのか。そして私たちithはそこから何を受け取るのか。

来年へと続くこのプロジェクトの行き先がとても楽しみです。

「∞」のマークを巡る意味

最後に今回のお題動画のなかにも盛り込んだ「∞」のマークについて。

これはマリアージュマークと呼んでいて、ithの指輪の内側にずっと刻んできたマークなのですが、それぞれの小説のなかでこのマークの意味や解釈を描いていただくことで、私たち自身もこのマークの意味を改めて問い直すことができました。

 

少しづつかたちのちがうふたつ。

そのふたつが重なり合うこと。

 

その奇跡を尊び大切にしていくことが、これまでもこれからも私たちの為すべきこと。

 

10周年の折り返しに改めて思うことです。

 

吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、イノベーション・プロデューサーとしてB2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。
著書『ふるくてあたらしいものづくりの未来– ポストコロナ時代を切り拓くブランディング ✕ デジタル戦略』クロスメディアパブリッシング