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ith10周年の取り組みを通じて (1)記念リング

10周年記念リング

2024年6月、ithは10周年を迎えました。

節目となるこの一年に、いくつかの記念プロジェクトを進めてきました。

私たちが何を大事にし、何を積み重ねてきたのか。

そしてそのうえに何を築き、どこへ向かおうとしているのか。

私たちのこれからにとってとても大事な手掛かりとして、それぞれのプロジェクトを通じて感じたことや見えてきたものについて考えてみました。

 

10周年の記念リング

まずは、10周年を記念してつくった三組のセットリングについて。

この企画の一番最初に考えていたことは、このタイミングにおいて10年の歩みをどう表現するかなということです。代表・高橋のちいさなアトリエから始まった私たちが、葛藤したり、挫折したりしながらも、お客様や社内外の仲間を少しづつ増やしながらここまで歩みを進めてきたこと。

そのことを思い起こしながら、記念リングを通じて伝えたかったこと。

積み上げてきたものづくりの力

私たちが大切にする、<たくさんよりもひとつをたいせつに>という言葉を愚直に信じて指輪作りに向き合うために、私たちは本当に多くの苦労と努力を重ねてきました。一口にものづくりの力とくくって語るのは簡単ですが、職人の技量、生産管理技術、パートナー開拓、接客方法の見直し、システムの改善・・・、多岐に渡るすべてがつながっていかなければ実現できない理想のものづくりのあり方。その理想を追うがあまりに、関係するたくさんの方々にかけたストレスや苦労。私自身、「もう無理かも」と感じたことは一度や二度ではありません。けれども諦めずにコツコツ、本当にコツコツと皆で改善と努力を重ねてきた結果として、今我々が現実として蓄積しているものづくりの力があります。

それはつくりの精度であったり、貴金属やダイヤモンドのクオリティや価値であったり、表現の完成度であったり、と多岐に渡るものでもあります。

こういったことを指輪のかたちのなかで表現するために、日本を代表する製造メーカーのひとつ、株式会社光・彩が独自開発した<光彩TANZOU®︎>という独自の鍛造製法を採用しリングづくりを行いました。

光彩TANZOU®︎の特徴は、正確で美しいフォルム(機械+職人の融合)を実現しながらも、最高水準の硬度のためキズが付きにくいこと。ithの結婚指輪が大事にしてきた、結婚指輪としての長く使いづつけるための強さ。そして手仕事の繊細で有機的なのびやかさ。このふたつは実は両立させることが難しい要素なのですが、それを併せて表現し得る製作技術として、この製法を採用しました。

 

お客様と一緒につくる(完成させる)ためのデザイン

ithの指輪は、代表の高橋が試作をつくりながらデザインしていきますが、最大の特徴はそのデザインに、お客様のああしたい、こうしたいが重なって初めて完成するデザインだということです。

そういう意味でithのコレクションはお客様の理想に近づくための叩き台なのですが、だからこそ手を抜かずデザインし、ひとつひとつに名前をつけ愛着を込めて世に送り出しています。この10年間お客様のオーダーメイドに向き合うなかで、私たちなりにつかんだお客様の想像を掻き立てるカタチを具現化することで、ithらしいオーダーメイドを表現できるデザインを目指しました。

こういったことを念頭において、10周年リングの設計においても一番こだわったのは、お客様の想像意欲を掻き立てるデザインということです。もう少し噛み砕くと、お客様がこの指輪を見て「ここをこうしたい、ああしたい」とイメージを膨らませられるかということです。

試作段階の後半、コンセプトやこだわりを詳しく説明する前の段階で営業のマネージャーがパッと見て「こういう感じがアレンジされやすいですよね」と呟いたときに<これはうまくいってるかな>と少し自信を持った記憶がありますが、実際に販売を開始してからの動きをみても、やっぱりその感覚は間違いではないなと思っています。

お客様の想像を駆り立てるからこそ支持される指輪作りは、これからも私たちの大事なポイントになります。

 

指輪と指輪づくりに込めた私たちの想い

これまでもひとつひとつの指輪に心のなかの景色を込めて、それぞれの指輪を通じて伝えたいストーリーを大切にしてきました。綺麗、かわいい、これらはもちろんジュエリーにとても大切な要素ですが、それだけでなく、カタチを通じて人の心に何かをもたらすものとして指輪をとらえたいという想いからです。

今回の指輪においては、お客様が主人公であるというithらしいあり方を踏まえたうえで、<日本の庭先から私たちの日々暮らしをそっと見守るような、日本の花々を名前にしよう>と思い至り、ハナミズキ、ハナツバキ、フジハナと名付けました。

花々はその美しさ、佇まいで私たちの心を勇気づけたり、癒してくれたりすると思います。お客様の心に何かを与えられる存在であるためには私たち自身が努力し、研鑽し、何かを与えられる存在であり続ける必要もあると思います。

ハナミズキ、ハナツバキ、フジハナ。

どの花言葉にも、お互いを想い合う気持ちや、時間を超えてずっと一緒という永遠への憧憬の念が込められていますが、その花言葉のとおりの想いを、指輪作りを通じた私たちの願いとして込めたつもりです。

 

2000年代の後半に大ヒットした一青窈さんのハナミズキという名曲をご存知の方も多いと思います。

10年の節目の年に、お客様、社員・スタッフ、そして世の中へとithの指輪と指輪作りを通じて届けたい想いを表現するのに、名曲の中のこの一節に勝るものはないと思い引用させて頂きます。

 

君と好きな人が百年続きますように

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吉田貞信

アーツアンドクラフツ取締役/ブランド事業部長。NTTデータ、フロンティアインターナショナルにて、IT、広告・マーケティング領域を中心に、イノベーション・プロデューサーとしてB2B/B2Cを問わず新市場の開拓、新規事業の立ち上げなど多数のプロジェクトに従事。
著書『ふるくてあたらしいものづくりの未来– ポストコロナ時代を切り拓くブランディング ✕ デジタル戦略』クロスメディアパブリッシング