前編では、最前線で働くつくり手や職人たちをバックオフィスで支える三人にスポットを当て、それぞれの業務内容や役割についてお聞きしました。後編は、実際にithで結婚指輪を作ったからこそ分かるithの魅力と、それを個々の仕事でどのように伝えているのかを話してもらいました。そして、最後はithならではのスタッフの共通点など、普段あまり聞くことがないithの隠れた魅力をお伝えします。
―皆さんはithで結婚指輪を作りました。実際に体験してどのように感じましたか?
佐藤 僕ら夫婦の場合、担当のつくり手が指輪の専門的な知識を持っていて、的確にデザインのアドバイスをくれたので、迷うことなく理想のデザインまでたどり着けました。だから、他のブランドを見て検討することもなかったですね。
原田 僕も他のブランドは検討していないですね。
和田 私は、ithと他ブランドの違いに興味が湧いたので見に行きました。でも、ショーケースから気になる指輪を出してもらい、違ったら戻すというコミュニケーションを繰り返すことに気後れしてしまって。「すみません、やっぱり違いました」と指輪を返すときに申し訳なく感じてしまいました(笑)。
佐藤 お店の人が察して戻してくれるといいですけれどね。
和田 ithでは全てのサンプルリングが目の前に置かれて、ひとつひとつ試しながら気に入った指輪を残していきますよね。気に入った指輪はもちろんですが、明らかに違うと思うものを敢えて着けてみて、やっぱり違うと納得できる。とにかく全部着けてみて、好みを絞っていく過程を経たことで、自分の選択に確信が得られました。
原田 僕は絶対にゴールドと決めていたのですが、実際に着けてみたらプラチナの鏡面が気に入っちゃって…。着けたときの印象が全然違ったんです。あとは担当のつくり手が僕も気づかなかった好みや、僕と妻の共通点を見つけて整理するのがとても上手だなと思いました。
佐藤 お客様の立場で振り返ると、ithのつくり手は僕らの好みを肯定したり、共感するだけではなく、会話を重ねて関係性を築いた上で、客観的に「私はこう思います」と意見を言ってくれるんですよね。すでに信頼関係ができているので、僕らもそれを素直に受け止められる。つくり手がその場をリードしてくれることが、とても重要なんだと思います。
原田 僕はビジネスの“コーチング”に近いと思いました。というのも、妻がピンクゴールドとイエローゴールドで悩んでいたとき、それぞれのよさを伝えた上で「どちらがあなたにとっていいですか?」と考えさせてくれたんです。だからこそ、自分でちゃんと選んだという納得感がありますよね。
和田 それ、すごく分かります。私も自分で選んでおきながら、途中でどういう理由で選んだのか、分からなくなってしまって…。そうしたら、つくり手がそれぞれの指輪が選ばれた理由を明確に教えてくれて、私も考えを整理することができたので前に進めました。
佐藤 お客様は無意識にヒントを出しているんです。つくり手はそれを汲み取り、的確なアドバイスとしてまとめてお客様へ伝えます。だから、つくり手には聞く力と伝える力がないとダメだし、それを両立させるには知識が重要なんですよ。
―皆さんがお客様の立場で感じたithのよさを、今の業務でどのように伝えていきたいと考えていますか?
和田 私は、外部の方にとって自分のひとつひとつの対応が、ithのブランドイメージを左右することを意識しています。たとえば、インターン生とのメールのやりとりひとつとっても丁寧に、気持ちを込めるようにしています。それでith全体の印象がさらによくなって、ithに入社してくれたらすごく嬉しいし、たとえ他の会社に就職しても、結婚や出産などのタイミングでithを思い出してくれたら、とっても嬉しいんです。
佐藤 ithは、お客様がお客様を呼んでくださいますからね。指輪のクオリティはもちろんですが、つくり手の接客のクオリティが高ければ、“あのブランドはよかった“と人を介してithのよさが伝わっていきますからね。
原田 僕は、アナログのような人間味が感じられる仕掛けをデジタルに取り入れたいと思っていて、すでにシステムの一部に導入しています。たとえば、つくり手が日々使っている社内システムにログインすると、時間帯によって「おはようございます」「こんにちは」などメッセージを変えているんです。本当に些細なことですが、あえて少し面倒なことをやっていますね(笑)。
和田 あえて面倒なことをするって、それこそが真心なのかもしれないですね。
―皆さんから見て、ithで活躍している人の共通点はありますか?
佐藤 僕は時間がかかっても、形にするための努力を怠らないことが重要だと思っていて、それができる人が活躍していると思いますね。たとえば、前堂さんというつくり手は、定期的に吉祥寺の工房に通い、自ら手を動かして実際に指輪を制作し、身に付けた知識と経験を接客に活かしています。彼女の接客を聞いていると「もはや職人じゃないか」と思うほど。仮に、それが自分のための努力だとしても、結果的にお客様に還元できるなら素晴らしいと僕は思いますね。入社後にいろいろな研修が用意されていて、ithには常に知識をアップデートしていくための仕組みがありますが、やっぱり自分から学びに向かう姿勢がとても重要だと思います。
和田 私にとっては、他者のことを考えられる人でしょうか。活躍しているつくり手たちはお客様の意図を職人や生産管理スタッフに分かりやすく伝えることを意識していますし、バックオフィスのスタッフたちもお客様や外部パートナーのことも考え、それぞれの業務に取り組んでいます。
原田 僕は、自分の好きなことと得意なことが分かっている人ですかね。それらができるポジションにいれば、自然と人は努力するし、自然と気を使うと思うんです。まずは自分のやりたいことを理解し、それを上手に主張できる人がうまくいくのかな。
佐藤 ithには魅力的な人がたくさんいると思います。だから、つくり手は指輪やジュエリー業界の知識だけではなく、まず社内のことをよく知り、それをithの魅力としてお客様にお伝えしていけたら、ブランドとしても会社としても深みが増すし、共感が広がると思います。
写真左:和田さん[戦略企画室]
写真中央:佐藤さん[ブランド推進部]
写真右:原田さん[ITシステム部]
【プロフィール】
佐藤さん[ブランド推進部]
2015年に吉祥寺アトリエで結婚指輪を制作。その後、奥様の一言がきっかけとなり、2017年にithに転職。ithにとって、初めてお客様を経て入社したつくり手であり、初の男性つくり手でもある。銀座アトリエの主任を経験後、名古屋栄アトリエなど複数のアトリエ主任を務め、現在はブランド推進部に所属し、新卒、中途入社社員の教育業務を担う。
和田さん[戦略企画室]
2017年から派遣社員としてithに勤め、2019年に正社員に。入社後はithのお客様情報やつくり手の研修スケジュールなど、さまざまな管理業務を担当。ブランド推進部発足後は、コンサルタント事業部のサポートも行うなど、担当業務は多岐に渡る。入社後に自身の結婚指輪をithで制作。
原田さん[ITシステム部]
2020年入社。前職のWeb制作会社ではさまざまなWebサイトを制作したが、自社コンテンツを持つメーカーへの転職を希望し、ithへ。現在は、ithのWebサイトの制作・運営のほか、社内外のシステム開発にも携わる。入社と同時に自身の結婚指輪を制作。