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2024.08.27

中期経営計画の作成方法~実際のプロジェクトを基に解説~

中期経営計画について

中期経営計画とは

この記事では中期経営計画の目的から実際のプロジェクトを基にどう作成していったのかを解説していきます。また中期経営計画の作成をコンサルティング会社に依頼する利点についても述べていきます。

まず中期経営計画とはどのようなものなのかを簡単に触れておきます。

中期経営計画とは、企業の理念・存在価値や中・長期のビジョン(ありたい姿)を35年後の具体的なロードマップへと落とし込んだものです。またそれらの達成プロセスを具体的な数値で表し、目標に対しての施策を決めていきます。

経営計画にはほかにも、毎年の目標を立てる短期経営計画と10年前後の目標を立てる長期経営計画がありますが、短期も長期も中期経営計画に含まれることが多いです。

 

中期経営計画の目的

中期経営計画とはどのようなものかを理解した上で、ここでは中期経営計画の目的について述べていきます。中期経営計画の目的は主に3つあります。

目的1 曖昧になりがちな事業の方向性や目的を明確にできること

なんとなく方向性が見えていたとしても、その曖昧のまま事業を進めてしまうと事業の方向性をどこかで見失ってしまいます。自社の現状(強み、弱みなど)、市場・競合の現状から自社にとって最も取り組む必要性のある課題を設定する中期経営計画を作成することで、事業の各フェーズでの計画を基に、方向性をずらすことなく進めていくことができます。

 

目的2 社員や株主、取引先などの複数のステークホルダーに対して、企業の将来の方向性、目標を掲げ、ステークホルダーの信頼を獲得すること

企業が存続し、成長していくためには社員、株主、取引先などの複数のステークホルダーの存在が重要で、そのステークホルダーに企業の向かうべき方向性やゴールを示す必要があります。中期経営計画の提示は株主、取引先からの信頼性を向上させることや社員のモチベーション向上にも寄与すると考えられます。

 

目的3 企業の行動指針として具体的なアクションプランを策定し、目標への道筋を決めること

あるべき姿、目標を定め、そこから逆算して計画を立てることによって、その目標に対してどのようなアクションを取っていくべきかを定めることができます。アクションプランの中には社外への取り組みだけではなく、社内リソースの整備もあります。ヒト、モノ、カネ、情報という社内リソースを効率よくどう活用していくのかということも、アクションプランに組み込む必要があります。

 

実プロジェクトの紹介

プロジェクトの概要

ここからは実際のプロジェクトを基に、コンサルティング会社がどう中期経営計画を作成していったのか、作成の流れを説明していきます。

プロジェクトの期間としては3か月間で、1か月目で中期経営計画の骨子を確定、2か月目で中期経営計画の具体化、3か月目で株主、社内への共有及び修正というスケジュール感で進行。

基本的にはコンサルティング会社が主導で、中期経営計画を作成していきます。進め方としては、クライアント企業様へのヒアリングを通して、中期経営計画の資料を作成し、週1回の定例会で発表しフィードバックをもらうという流れで進めていきました。コンサルティング会社が主導で行っているため、調査、資料化はすべてコンサルが行いつつも、要所要所でクライアント企業様の確認をもらう形で、2か月ほどで内容の具体化が終わり、残り1か月で修正をしていきました。

 

中期経営計画の項目

今回のプロジェクトにおいては、クライアント企業様の経営者の入れ替わりが多いため、企業の軸となる方針が定まっていないという現状がありました。そのため、クライアント企業様のふわっとした思いや方向性を言語化し、企業としての軸・具体的な指針を設定していきました。その軸や方針を基に、どんな目標(数値目標)を掲げ、具体的にどのようなことを行うか(事業内容)を策定していきました。

今回のプロジェクトにおける中期経営計画の主項目は以下の通りです。

  • 事業に影響する社会変化
  • 市場動向、競合の動向
  • 目指す姿(現状からの変化)
  • 価値観と行動指針
  • ポジション
  • 事業内容
  • 数値目標
  • 人員計画、資金計画 

 

中期経営計画の作成

上記ではプロジェクトの概要をお伝えしましたが、ここでは具体的に私たちコンサルティング会社が実際にどう中期経営計画を作成していったのかを上記の中期経営計画の項目ごとに述べていきます。

1 事業に影響する社会変化

事業に影響する社会変化とは、取り組む事業領域においての今後の社会変化、社会課題のことです。では、なぜこの社会変化を中期経営計画に載せたのか。その理由としては、事業内容を決めていく際に、クライアント企業様ができること、持っている技術を起点に考えるのではなく、社会変化や社会課題を起点に考えていったためです。

実際に行ったこととしては、クライアント企業様に関わる全ての課題をピックアップし、見やすいようにその課題をグルーピング化して、資料作成することです。また2050年の姿から鑑みたときに、親会社の方針に沿っており、解決する必要性の高い社会課題を別資料にまとめました。

2 市場動向、競合の動向

市場動向と競合の動向は中期経営計画に入れるべき重要な項目です。3C分析にもあるように、自社、競合、市場の3つの目線から事業を語ることで、自社の立ち位置、差別化、ターゲットとする市場が明確になります。

市場動向についてはCAGRを算出し、今後どれほどの成長があるのか、また現時点での魅力がある市場なのかをグラフ化していきます。

競合の動向については、まず競合は何になるのかから考えます。競合は同じ業界の企業だけとは限りません。クライアント企業様が取り組む事業領域において、どんな企業がどのような取り組みをしているのか、また何を狙っているのかということまで分析していきます。

3 目指す姿(現状からの変化)

目指す姿とはその企業が最終的に目指していく将来像やゴールのことです。現状を踏まえた上で、目指すべき姿を提示することで、現状からの変化も示すことができます。

今回のプロジェクトでは、最終的に誰に対して、どのような取り組みでどう貢献していくのかという軸で目指す姿を検討していきました。クライアント企業様が子会社という立ち位置も念頭に置き、貢献先は親会社と設定。また現状と目指す姿を対比させることで、貢献方法がどのように変わっていくのかについても明確に示しました。

4 価値観と行動指針(Value & Behavior)

価値観とは、組織が持っている中核的な信念のことです。ビジネスを左右する原則やその理念、そこで働く人に期待される行動などが含まれます。

行動指針とは直訳すると、行動をするための基本方針ですが、ビジネスにおいては行動を起こす際に、どうするべきかの判断基準として使われることが多く、企業、もしくは企業に属する社員が行動する際の指標となっています。

今回のプロジェクトではクライアント企業様の思い・考えを尊重し、その思い・考えを具現化していきました。行動指針は行動から鑑みることができるため、考えやすいのですが、価値観については抽象的な概念であるため、ピンポイントの言葉を見つけることが難しいです。そのため、価値観についてはできるだけ目指す姿に紐づけて検討すると、まとめやすいです。

5 ポジション

ポジションとは、市場において企業の立ち位置を定め、どの領域にアプローチしていくのか、どのような提供価値を与えるのかを示すものです。

今回のプロジェクトにおいては、競合との違いではなく、他の子会社との違いを分かりやすく図にまとめました。ここで重要な点としては、取り組んでいく領域、会社規模、親会社への貢献の仕方など比較軸をどの軸に設定するかという点です。

6 事業内容

事業内容は言葉の通り、どの事業をどうやって取り組んでいくのかを示したものです。

今回のプロジェクトにおいては、取り組む領域や課題を定めるというよりも、どう取り組んでいくのかを具体化していく必要があります。プロジェクトにおいても、クライアント企業様のことを深く知らない人に対して、客観的にみて何をどう取り組んでいくのかがわかるような資料作りを意識しました。

7 数値目標

数値目標とは、目標達成の基準となる数字の指標を設定することです。数値目標を検討する際は、まず最終的な目標を定めた後、途中評価指標であるKPIを設定していきます。KPIを設定し、より具体的に数値目標を掲げることは親会社や株主等のステークホルダーへの信頼獲得にも繋がります。

KPIの設定においては競合の指標をベンチマークとして、どの指標を用いるかを定めていきます。親会社や株主等のステークホルダーに納得してもらえるような定量的な指標を設定する必要があったため、シュミレーションロジックを用いて高度な分析をおこないました。

8 人員計画、資金計画

資金計画とは、事業に必要な資金をどこから調達し、そしてどのように運用していくのかという計画を示したものです。人員計画とは、企業が掲げる経営目標や事業計画を達成するために必要な人員配置や採用活動に関する計画のことです。

人員計画と資金計画は、数値目標と紐づけて設定する必要性があります。人員計画については人員の獲得方法も明記し、資金計画については実際のPLの勘定科目を基にして、実際にクライアント企業様の支出に応じた計画を策定していきました。

 

コンサルティング会社に依頼する利点

中期経営計画をコンサルティング会社に依頼する利点を2つ紹介していきます。

利点1 競合や市場についての将来的な分析をおこなうことができること

中期経営計画を作成するうえで、内部環境分析(=自社の強み、弱みなど)はクライアント企業様自身で分析しやすいものではありますが、外部環境分析(=機会、脅威)、市場、競合についての分析はなかなか厄介な分析です。ましてや中期経営計画のため、現状や過去ではなく、未来・将来の市場や競合の分析を行う必要があります。その分析について、コンサルティング会社は普段から企業や市場についての調査や分析をおこなっている強みを生かし、競合よりも早く深い将来の展望を知ることができます。

実際に、本プロジェクトでは現事業における競合の動向を把握するのはもちろんのこと、今後同事業領域に参入するであろう、その準備を始めている企業についても調査しました。この調査によって、クライアント企業様は競合とどのような差別化を図っていくべきか、またどのように市場優位性を確立していくかの方針も決めることができました。

 

利点2 中立的な立場で迅速に議論を進めていくことができること

クライアント企業様内だけで、将来についての目標や計画を議論すると、なかなか意見がまとまらず、議論が一向に前に進まないということがあります。これは過去の案件でもよく起きていていました。

そこで、コンサルタントが中立的な立場から議論をまとめ、時には新たな論点を提示することで、議論がより活発化し、議論が前に進んでいきます。ビジネスの知見や調査した内容を基に、決断を下していき、クライアントに最適な選択肢を提示していきます。密度のある中期経営計画をより早く作成するために、コンサルティング会社に依頼するというのも1つの選択肢だと考えています。

実際に、本プロジェクトではあるべき姿を検討する際、クライアント企業様のふわっとした思いや方向性を言語化し、わかりやすく可視化していきました。抽象的な言葉であってもその言葉を上手く具体化させ、会議参加者全員に伝わる言葉に直すことで、全員のイメージも一致させることができました。

また数値目標においてクライアント企業様内で意見が分かれ、ペンディングになることが多くありました。そこで、我々は分かれた言葉だけで議論を交わすのではなく、比較できるように実際に2つの数値目標を作成しました。そうすることで、客観的なデータを用いて、建設的な議論を交わすことができ、議論が前に進んでいきました。

 

最後に

この記事では実際のプロジェクトを基に、コンサルティング会社がどう中期経営計画を作成していったのかを述べていきました。先の競合分析にしろ、ここに書かれている業務はほんの一部の業務であって、実際にはこれ以上の業務が存在します。コンサルタントの仕事はかなり泥臭く、多大な時間をかけた調査のほんと氷山の一角が資料の1文字1文字に記載されています。その資料の1文字1文字に多大な時間をかけることができるほどの真剣さと丁寧さを弊社は持っております。

弊社は事業を持つコンサルティング会社として、大手企業だけではなく、中小企業の中期経営計画作成も手掛けたことがございます。そのため、多くの知見と実績がごさいます。

中期経営計画の作成を検討している、もしくは興味だけあるという方でも是非ご連絡お待ちしております。下のフォームから回答できます。

 

【参考】