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AI時代にRPAはまだ導入する価値はまだあるのか?AIの発達がRPAにもたらす脅威と機会

去年の年末から、ChatGPTをはじめとしたAIが最も熱くなっている先端テクノロジーといえるでしょう。「高度言語モデル」として開発されたChatGPTは精度高く言語を理解し、様々な質問を答えたり、文章を作成したり、など多種多様な領域で活用されています。最近公開したChatGPT4という最新バージョンはさらなる高度な機能が装備されるようになっているようです。AIの普及により、生産効率が劇的に上がると期待されています。一方、「業務効率化」のために生まれたツールとして、近年急成長して来たRPAがあります。それでは、ChatGPTのような高度なAIの普及により、RPAは今後どうなるのでしょうか?AIが盛んな今、まだRPAを導入する価値はあるのでしょうか?本文はAIRPAそれぞれの特徴を分析しながら、今後AIRPAの関係性について考えて行きます。

業務効率化におけるAIRPAの共通点と違い

RPAは元々バックオフィス業務をメインとした業務を効率化するために開発されていたツールですが、AIも業務効率化に活躍できると言われています。ただし、この二種類のツールは実現できることに関して共通点もあれば、異なる点もあります。

【共通点】

① 従業員の業務負荷軽減:

RPAAIは、それぞれ異なる特性を持ちながらも、バックオフィス業務の効率化が実現可能です。どちらも人間が手作業で行っていた業務をシステムで処理をすることにより自動化を図り、従業員の業務負荷を軽減することができます。

② コスト削減:

RPAAIも、特定な業務を人間よりはるかに早く処理することができるため、従来人間が複数人分の作業がRPAAI一つで対応できる場合もございます。業務効率化すると共に、人件費や時間コストが削減され、企業全体のコスト効率を向上させます。

③ ミスの低減:

人間が行う作業には、頻度の問題はあるが、不意なミスが生じることがほぼ回避不能です。RPAAIなどのシステムが業務代行することや人間の作業アウトプットをチェックすることにより、特に大量重複作業などに置いて、人的ミスを極力減らすことができます。

④ 業務リードタイムの短縮:

RPAAIともシステムとなっているため、人間とは違って、365日×24時間で稼働することはできます。それによって、元々深夜や休日など、いわゆる「勤務時間外」で対応できなかった業務も実現することが可能となり、一部業務のリードタイムを短縮させることができます。

【異なる点】

① 得意領域:

RPAは規定の条件に基づいて、特定なソフトウェアの操作やデータ処理を繰り返し、いわゆる大量重複な「定形業務」が得意です。一方、現時点ChatGPTなどのAIは、機械学習や深層学習などの技術を用いて、人間の認知能力を模倣することができ、アルゴリズムで大量の情報や複数条件を解析及び判断し、複雑な判断に基づいた結果を出力することができます。

② 判断能力:

RPAは規定ルールに従って動作しています。条件設定可能であれば、複雑なものでも理論上実現可能だが、その条件が「Yes or No」など明確でなければならないため、「文章を要約する」など曖昧な条件では動作できません。それに対して、AIは人間と類似する形で、パターン認識や自然言語処理などの高度な機能を持ち、大量かつ複雑な情報から有効な情報を識別した上で必要に応じて反応することができ、複雑な判断や問題解決にも対応できます。もちろん、現時点ではまだ人間ほど完璧にできないが、ChatGPTなどのAIツールはすでに技術の進化を示しています。

③ 運用・メンテナンス:

RPAは定められたルールや手順に基づいてタスクを実行するため、ルールが変更される場合、プログラム改修して、ルールを再設定しなければなりません。一方、AIは自己学習能力を持ち、データやフィードバックに基づいて自動的にアルゴリズムを一定範囲で条件の変更に適応できると思われます。

④ 導入ハードル:

RPA市場はすでに成熟されており、使用の難易度が低いツールや格安ツールなど選べる種類がとても多く、導入コストを含めて考えると低いといえるでしょう。一方、AIの導入ハードルはパターン分けて考える必要があります。例えばChatGPTなどのような既存AIの活用のみであれば利用難易度も費用もそれほど高くないかもしれません。ただし、自社のニーズに合わせてカスタマイズする(例えば自社のシステムを操作するなど)際に、高度な専門家がいないと実現できない上、費用も跳ね上がると推測できるでしょう。

⑤ 利用の難易度:

RPAはどちらかというと「開発ツール」になるため、ある程度の学習が必要です。もちろん使いやすいツールも近年出ており、学習するのもそれほど高くはないでしょう。ただし、AIの場合、どのような形のAIにもよるが、例えばChatGPTのような言語モデルの場合、人間の言語が理解できるため、「会話方式」で指示出しすることが可能のため、利用難易度がとても低いとも言えます。例をいうと、RPAにExcelファイルの特定列にSum関数を記載してもらいたい場合、まず利用者がその関数の書き方がわからないとできないでしょう。ただし、AIの場合、実現したい機能、つまり「この列の合計値の関数を書いて下さい」と指示を出せば関数を書いてくれるので、やり方を「教えてくれる」のです。

主な違いとまとめると、以下の表がになります:

 

RPAAIの使い分け

上記RPAAIそれぞれ特徴から見て、少なくとも現時点ではAIはRPAの代わりではなく、異なる性質のツールだと言えるでしょう。以下は参考程度に過ぎないが、業務効率化において、RPAAIそれぞれの活用シーンは以下の例が挙げられるかと思います。

RPAの得意業務例:

① データ入力・転記:

RPAは定型的なデータ処理業務に特化しているため、ExcelCSVなど定型的かつ繰り返しのデータ入力やデータ転記作業を効率化するためにRPAがとても適任です。例えば、請求書や注文書のデータをデータベースや会計ソフトウェアに入力することや、複数のファイルから特定情報を抽出、フォーマット変換などの業務もRPAAIより簡単に実現可能でしょう。

最近、「Microsoft 365 Copilot」というAIツールがExcelなどにも組み込む予定という情報が発表され、また状況が少し変わるかもしれないが、Microsoft 365 Copilotどのような機能が実現できるかが楽しみです。

② 複数システム間の連携:

バックオフィス業務では、複数システム間の情報連携がよく発生します。例えば勤怠システムと人事給与システムの連携やワークフローシステムと会計システムの連携などが日常的に発生しています。システム導入時に自動連携を考慮していなかったため、手動で対応している場合も少なくありません。このようなUI操作などが多数発生するシステム連携を実現するには、RPAはやはり簡単かつコストの低い選択肢ではあるでしょう。

③ 定例メールの送受信・処理:

一定ルールに基づいて、特定時間に定形メールを送信することや、メールより特定の情報を切り取ってExcelに転記、添付ファイルを指定フォルダに保存するなどの作業はRPAが活躍できます。もちろん、該当業務AIも実現可能ですが、運用のコストからすると、RPAのほうがよりコスパがよいでしょう。

④ レポート作成:

定期的に複数システムやファイルより必要データを収集し、定形フォーマットに変換した上でレポートを作成するなどの業務もよく発生します。例えば月次レポートや損益速報など、数字は毎月更新するが、フォーマットはほぼ変わりません。この場合、複数システム間の情報収集が必要であり、RPAのほうが低コストで実現できると思われます

AIの得意業務例:

① 複雑な情報を要約:

業務上の必要で長い文章やメールを読む場面がとても多いが、実際要点さえ分かればよい場合がとても多いです。このような長い文章やメールから要点をまとめてリストアップすることはAIがとても適任でしょう。逆に、非定形の文章から不特定の情報を抽出するのは、RPAはそもそも実現不可能です。

② 画像や非定型文からの情報抽出:

「①」と類似する部分はあるが、現在のAIは文字のみならず、画像や音声から必要な情報を抽出することも可能です。ここで言っている画像はOCRのみならず、例えば写真や映像が映っている内容を文字で表現することなども実現可能になっています。

③ 異常検出や予測分析:

AIRPAと異なり、データを解析し、異常の検出や一定の予測分析もできます。例えば、勤怠など、イレギュラーで入力している社員を検出するなどのことを初め、損益速報情報から経営意思決定に影響する問題点や損益の予測などを含めたレポートを作成することもできます(現時点では、特に予測分析の部分については参考程度としてご利用することをお勧めします)。

RPAAIを組み合わせた業務効率化例

そして、RPAAIそれぞれの得意業務を上手く組み合わせると、さらなる高度な業務効率化が実現できるでしょう。以下は過去業務効率化の案件を元に想像している例になるが、理論上は実現可能なRPAAIを組み合わせた業務効率化事例を説明しようと思います。

請求書処理業務はどの会社でも発生しています。今までRPAツールでは請求書受領してから支払いデータ作成までのプロセスを対応しようとしている企業も多いが、最終的には一部の請求書や業務フローの一部分でしか対応できない場合が多いです。その理由は様々ですが、よくあるのは以下のものがあげられます:

  • 取引相手は紙/紙でスキャンしたPDF請求書でしか対応できない
  • 電子化請求書はもらえるが、相手によりフォーマットが異なり、種類が多すぎる
  • 社内ポリシー上、請求内容のチェックが必須

上記のいずれもRPAで対応するのは非常に難しいでしょう。ただし、言語を理解できるAIが加わると状況が変わります。仮に紙でスキャンした請求書を数十社から異なるフォーマットでメールで受領している会社がいるとして、RPAAIの活用は以下のように設計できると想像できます。

ステップ1: 請求書の受信とデータ取得 → RPA

RPAは定型的なタスクの自動化に適しており、メールの監視やファイルの取得・保存などの繰り返し作業を効率的に行うことができます。そのため、RPAで特定キーワードや添付のあるメールから、請求書のPDFや画像ファイルを取得することはできます。

ステップ2: 請求書の情報抽出 → AIRPA

通常のOCRだと非定形の画像を正しく識別することは難しいが、AIの学習機能があると精度を大幅に向上することができます。実際近年でも「AI OCR」機能搭載のOCRツールも少なくありません。

ステップ3: 請求書のチェック →  AI

識別した請求書の内容がただしいのかをチェックするのはAIが適任でしょう。例えば必要な項目が正しく記載されているのか、金額に誤りがあるのか、請求書内容に不備があるのかまで、AIが請求書内容を解析した上で判断することは可能でしょう。実際ChatGPTモデルでもある程度の請求書をチェックすることが可能なことは検証されています。今後ChatGPTを活用した、請求書チェックに特化したAIがあると、とても高い精度でチェックすることはできるでしょう。もちろん一部どうしても人間の判断が必要な部分があるとおもわれるのですが、それでも手作業の業務負荷が大幅に軽減されると思われます。

ステップ4: 請求書データの入力・整理 → RPA

チェック済の請求書情報を整理した上で特定のシステムに入力することは言うまでもなく、RPAの得意分野になり、今でも多くの企業に活用されている部分でもあります。

【ステップ: 支払データ作成】 →  RPA

こちらも同じく、上記一連の流れで整理した請求書情報を持って、特定形式の支払データ(例えば全銀データなど)を作成することもRPAで簡単に実現できます。最後支払い前のチェックや承認は人間が必要でしょう。

上記のように、特に請求書チェックの部分、元々RPAだと実現するのはほぼ不可能で、どうしても人間の介入が必要だったが、精度高く言語を理解できるようなAIがあれば実現が可能、あるいは大部分が実現可能となるでしょう。

終わりに

全体から見て、RPAAIも業務効率化領域に活用されることがあるが、それぞれの特徴がことなるため、元々片方がもう片方の代替えになるようなことではありません。むしろ、RPAAIは互いに補完し合う形で発展していくと考えられます。AIは、複雑な判断や問題解決を行う能力がありますが、すべての業務プロセスに対してAIを適用することはコストや効果の観点から現実的ではない場合があります。一方、RPAは単純で繰り返しの多いタスクに適しており、低コストで効率化を図ることができます。

今後、AI技術がRPAに組み込まれることで、RPAはより柔軟で知能化された自動化技術へと進化し、より高度な業務効率化が実現可能でしょう。技術の進歩が楽しみです。

王 立云

アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
2016年上智大学大学院経営学部卒業、大手量販店入社。2018年当社入社、Consulting & Solution事業部にて戦略コンサルティング案件、BRP、RPAを始めた業務改善に伴うITコンサルティングなど、豊富な実績を有する。社内効率化のために、最適なソリューションをご提案いたします。