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介護業界の未来を変えるAI/IoTの活用方法とは?

介護業界におけるAI/IoTの活用

 

近年、さまざまな業界でIoT化や業務効率化が叫ばれ、ツールや技術が開発されています。それは介護士等の人によるサービス提供が主として行われている介護業界でも例外ではありません。本記事では、介護業界が抱える課題や、課題解決に有効なIoT/AIを用いたツール(見守りシステム)について紹介していきます。

介護業界における課題

業務効率化のためのツールは介護業界においても必要とされていますが、背景として「2025年問題」や「介護難民の増加」、「介護人材の不足」等の課題が挙げられます。

2025年問題

2025年問題とは、「団塊の世代」と呼ばれる世代の人たちが、75歳以上の後期高齢者となることで生じる問題です。「団塊の世代」とは1947~1949年に生まれた世代の人々を指し、この世代だけで約800万人という非常に多い人数となります。
2025年問題では、以下のような問題が顕著になると考えられています。
・社会保障費、医療費の増加
・介護士等、人材不足の加速

介護難民の増加

「介護難民」とは、身体に問題を抱えており介護が必要であるにも関わらず、介護施設や介護士の不足等を理由に、十分な介護サービスを受けられない人々を指します。
介護難民の数は、毎年増加しており、2025年には全国で約43万人の方が介護難民になると推測されています。
また、介護難民の多くは首都圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)に集中しており、全体の約3割を占めると言われています。

人材不足の深刻化

高齢化の影響で、介護を担う人材不足の深刻化が加速している一方で、少子化も進んでおり、生産年齢人口の減少も介護業界の人材不足を急速に加速させる要因となっています。
厚生労働省が発表した、介護職員の必要人数の試算では、2025年には約32万人、2040年には約69万人もの介護人材を追加で確保する必要があるとしています。
また、介護労働安定センターの調査によると約70%の介護施設が、「介護職員が不足している」との回答を寄せています。
介護の現場で、必要な人材が確保できないことが、介護難民問題へも大きな影響を与えていると考えられます。

課題解決へ向けた介護業界におけるAI/IoT活用

前述で説明したように、介護業界では人材不足が深刻化しており、これは今後も急速に加速していくと考えられます。
この問題に対し、業務の一部においてAI/IoTの活用をすることで、人材不足を補えるツールが出ています。
AI/IoTにより業務効率化が実現することにより、介護士職員等のスタッフの業務負担の軽減や、介護サービスの質の向上へと繋がります。
介護業界において、様々なAI/IoTツールが存在しますが、本章では「見守りシステム」について説明します。

介護業界におけるAI/IoTの活用方法(見守りシステム)

近年、多くの施設で、介護スタッフの負担軽減を図るため入居者の観察が可能な見守りシステムの導入が進んでいます。
カメラやセンサー等のIoT機器からの情報や、体温や心拍数等の生体情報をAIにより処理することで、施設入居者の様子を24時間モニタリングすることが可能となります。
施設スタッフの見回り業務をAIが担うことで、スタッフの業務負担軽減だけでなく、施設入居者の安全性向上へも繋がります。

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AI/IoT活用のメリット

介護現場にAI/IoTを搭載した見守りシステムを導入するメリットは主に3つ存在します。

①介護職員の業務負担を軽減させることができる

AIやIoT機器を活用し、施設内の見回り業務を効率化することにより、介護職員の身体的・精神的負担を軽減することができます。

②介護サービスの質を向上させることができる

介護職員の負担が軽減されると、人為的なミス等の削減が期待できたり、AI/IoT機器による24時間体制のモニタリングにより、緊急時に素早い対応が期待できる等、介護サービスの質の向上へと繋がります。

③介護施設のスタッフの定着率を向上させることができる

介護職員にかかる負担が軽減されることで、職員の離職率が下がり、定着率が向上するとも考えられています。
介護業界の課題である「人材不足の深刻化」が懸念されていますが、定着率を上げることで、この問題の解消へと繋がる可能性も存在します。

 

AI/IoT活用のデメリット

前述のように、メリットは多く存在しますが、以下のようなデメリットや導入までの課題も存在します。

①導入や設備の維持にコストがかかる

AI/IoT機器を活用した見守りシステムを導入している介護施設は、まだ多くありません。その理由として、新たな設備の導入にコストがかかってしまうことが挙げられます。また、導入時のコストだけではなく、機器のメンテナンスや維持にも費用が生じます。

②各施設が抱える課題に合ったシステムを選定するのに手間がかかる

見守りシステムはカメラの映像で高齢者の様子をモニタリングするものや、赤外線センサーでモニタリングするもの、または生体情報(体温、心拍数)から高齢者の様子を判断するものなど、様々なシステムが存在します。弊社の調査では、見守りシステムは国内製品だけでも約20種類のシステムが存在することが分かっています。
カメラの映像でモニタリングを行うシステムは、鮮明な映像で施設入居者の様子を確認できる一方、入居者の生活のプライバシを侵害してしまう可能性を抱えていたりするなど、施設や入居者の状況に沿った見守りシステムを選定するのは困難であると言えます。

③施設の職員が機器を使いこなせない可能性がある

せっかく見守りシステムを導入したとしても、施設の職員が使いこなせなければ効果が期待できません。施設の職員の中にはIoT機器の操作になじみがない世代も存在します。
機器の操作や活用方針を施設で策定し、教育体制を整えなければ十分な効果が発揮できないといった問題も生じます。

 

AI/IoT見守りシステム製品と導入成功例

国内では、様々な見守りシステムが存在します。本章では、代表的な見守りシステムの紹介と、実際に見守りシステムの導入を行った施設の成功事例について紹介します。

AI/IoT見守りシステムの代表的な製品

弊社が独自調査を行った結果、見守りシステムは、国内製品だけでも約20種類存在します。その中から、4つの製品を以下でご紹介します。

他にも多くの製品が存在しますが、各製品の特長やメンテナンス体制、使いやすさ等は様々です。各施設の課題に沿った製品を選定する必要があります。

 

AI/IoT見守りシステムの導入へ向けた成功事例

介護施設に見守りシステムを導入することのデメリットについてご説明した通り、見守りシステムの導入は簡単ではありません。しかし、実際に導入を行い、十分に活用をできている施設も多く存在します。

その施設の導入における懸念点は、先述したデメリットの通り主に2つ存在していました。
・介護スタッフがIT機器を使いこなせるかどうか
・導入にかかるコストが高額になるのではないか

しかし、その対応として以下のような取組を実施することでスムーズに導入を進めることができ、結果として見守りシステムの導入を成功させました。

①介護スタッフへのIT機器の教育と定着

該当施設では、100床近い部屋数を保有しており、前述の具体例で説明した製品Bの導入を検討していました。しかし、すべての部屋にいきなり見守りシステムを導入すればスタッフが混乱し、かえって負担となってしまう可能性があります。
そこで、価格の安価な製品Aを5台程度導入し、使い方や活用方針について策定・教育を行い、介護スタッフがIT機器に順応する期間を半年間設けました。
介護スタッフがIT機器の操作に慣れ、定着が確認できた段階で、製品Bを段階的に導入し、現在では50床近い部屋で見守りシステムが運用されています。

このように、介護スタッフがIT機器の操作に慣れる期間を設けることで、各施設の課題に沿った見守りシステムをスムーズに導入することが可能となりました。

 

②補助金の利用

見守りシステムは1台当たり10万円程度のものから50万円程度のものまで、様々な製品が存在し、その導入数が多いと高額なコストが生じる場合があります。しかし、介護に用いるAI/IoT機器等の導入時には、市や県から補助金を受け取り、導入を進められる場合が多く存在します。

該当施設では、このような補助金を有効に使い、コスト面での課題も乗り越えたことで、導入が可能となりました。

まとめ

介護業界で用いる見守りシステムには多くの製品が存在しますが、その特徴も様々です。
各施設の課題に沿った製品の選定や、スタッフの教育、活用方針等の策定にも労力がかかり、導入したものの結果として十分に活用できていないといった施設も存在します。

見守りシステムの導入を行う場合は、十分に計画を練った上で、時間をかけた導入を進めていくのが良いといえるでしょう。

見守りシステムの導入について課題を感じていることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

【参考】

 

川上雄也

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/システムエンジニア。

ネットワーク監視・保守プロジェクトの実務及びマネジメント業務を5年間経験した後、人材派遣会社の企画職を経て当社へ参画。主にITコンサルティング、業務コンサルティング分野にて、ERPやCRM/SFAシステム導入支援、それに伴うBPRの領域にて実績多数。