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リアル店舗最強の活用方法「店舗のメディア化」

「店舗のメディア化」が、コロナ後の時代の鍵に

2018 年出版の「小売再生-リアル店舗はメディアになる」では「店舗のメディア化」が取り上げられていました。外出をせずともオンラインであらゆるものが手に入ってしまう時代、顧客が店舗にわざわざ足を運ぶ機会は限りなく減っていくように思えます。しかし、著者であるスティーブン氏はそれでも顧客は実店舗に足を運ぶと繰り返し主張しています。それは、人間が「実体験」を強く求めているからです。

商品を売ることよりもそのブランド・商品のバックグランドを楽しんでもらうことのほうが重要となります。店舗は顧客がそのバックグランドを実体験する場所へと変わっていくのです。ブランド・商品のバックグランドを知ってもらうことで生じるメリットは少なくありません。もし、その場で商品を買ってもらえなくても再来店やオンラインでの商品購入を促せます。もしくは、そのブランドに好感をもち、SNSなどでポジティブな投稿をしてくれるかもしれません。これらの理由から、実店舗を従来の商品を売るだけの場所にとどめるのではなく、ブランドのバックグランドを語れる場所になるべきなのです。

店舗の需要とコロナの影響

ECの市場規模はBtoCがCAGR(年平均成長率)11.0%、BtoBがCAGR5.3%と、BtoB・BtoC 共に伸びています。

それに比べ店舗の成長率は停滞傾向にあり、今後さらに勢いづくであろうECの状況を鑑みると、実店舗には存在価値の再定義が求められているように感じます。

そのような中、コロナの影響によりECに力を入れる企業は増加し、ますます実店舗としての存在定義を問われ、コロナが店舗のメディア化を後押ししそうです。

実際20206月に「ZARA」などを展開するアパレル世界最大手インディテックス(スペイン)が、全体の16%に当たる最大1200店舗を閉め、電子商取引(EC)の売上比率は19年の14%から、22年には25%に引き上げるというる計画を明らかにしています。

 

店舗の役割は、「実体験」を提供し、高い「顧客満足度」を得る事

これまではwebやSNSで認知した商品を店舗まで買いに行くという流れが主流でした。その商品の実物を手に取って確かめなければ、購入までいけない層が一定数存在したからです。反対にこれからは、リアル店舗、もしくはオンライン接客、ライブコマースが、今までwebやSNSが果たしていた「認知」になると考えられます。

上記の通り、実店舗が物を売る場所よりも実体験を通してブランド・商品の認知をしてもらう場所になることを店舗のメディア化と言います。

店舗のメディア化において最も重要となってくるのが顧客満足度です。顧客満足度が高ければ、その場で商品を買ってくれなかったとしても、再来店やオンラインでの商品購入などにつながる可能性があります。つまり、リアルの店舗でしかできない顧客体験を提供すれば、売り上げは結果としてついてくると考える必要があります。

メディア化が進めば商品をより詳しく顧客に説明でき、顧客はそのブランド・製品を深く理解したうえで購入できます。店舗には実体験としてその商品を理解したいという人しか訪れなくなれば、レジなどの機能が不要となり接客に費やせる時間が増えるはずだからです。

 

店舗のメディア化には、「体験の定量化」が必要

店舗のメディア化には他のメディアと同様、実体験の定量化が必須となります。例えば、誰が来店して・どのくらい滞在して・どのようなやりとりを交わし・次にどこに向かったのか。さらには、その来店した人は初めて来店する人か・以前にも来店したことがあるのか・来店後SNSでどのような発信をしたのか等です。

それにより、顧客満足度はもちろんの事、その顧客の好みや趣味嗜好を把握したうえで接客につなげられるのです。顧客一人ひとりの趣向や属性などを基に、顧客に対して個別にマーケティングを行っていく方法、いわゆるワントゥワンマーケティングが可能になります。その行動や態度を認識する技術として以下のようなものがあります。

 

 

「足を運ばせるほどの魅力」を提供する難しさ

オンラインであらゆる事を済ませてしまえる世の中で、足を運んでまで実体験をしたいと思わせる店舗を作り上げるのは至難の業です。さらに、実際の商品のクオリティ・定員の接客などがより高い水準で求められます。その問題はECに限った話ではありません。最も危惧すべきは最新の技術です。VRなどによって現地に行かなくてもそこの状況を疑似体感できるというのは、実体験を売りにする店舗のメディア化の最大のライバルといえるでしょう。

実際にEPICアイルランド移民博物館は、館内のバーチャルツアーの提供を開始しています。バーチャルツアーはWebページ上で公開されており、誰でも見ることができます。もし持っていればVRゴーグルで360度見渡すこともでき、本当に博物館にいるような疑似体験ができます。これらに打ち勝っていくためには、リアルでしかできない体験というものをより深堀っていく必要があります。

 

店舗のメディア化は「現実のもの」に

店舗のメディア化を進めた企業は以下のように複数存在します。

渋谷パルコ

その中でも店舗のメディア化として代表的なのは「渋谷パルコ」です。様々なテクノロジーを駆使して、多くの実体験を生み出す工夫により高い顧客満足度を得られる場所となっています。店舗スタッフは接客に専念でき、顧客はストレスフリーに買物ができるデジタル施策の導入や、AI活用・VRなど顧客がその空間を楽しめる仕掛けがあります。

店舗面積を従来の半分にし、店頭の実在庫は戦略商品に絞り込んで、その他の商品はECで販売するという、オフラインとオンラインの融合がなされています。それによって顧客は買い物という「体験」だけに集中できます。

エスカレーターサイドに配置する大型サイネージ、ショップ内に配置するサイネージ・タブレット端末又は、自身のスマートフォンでも購買が可能となっています。さらには、自走式ロボット「temi」を導入し、離れた場所で操作しているインフォメーションスタッフが「temi」を通じて、問合せに答える実証実験が開始されます。また、コンピューターで制作した3Dコンテンツを、スマートフォンやAR対応グラスを通して、その場に存在するかのように展示するバーチャルショーケースを導入しています。その他さまざまなインパクトある実体験を生み出す仕掛けがあり、顧客は他では体験できない感動・驚きを感じられるでしょう。

また、渋谷パルコ内のJINSでは「MEGANE on MEGANE(メガネオンメガネ)」というデジタル画面が複数設置されています。このデジタル画面には、顧客がかけている眼鏡を画面上から消して試着してみたい眼鏡に自動で付け替えて画面上で確認できる機能や、その眼鏡がどの程度似合っているのかをAIにより採点する機能が備わっています。もちろん店舗内に商品自体も置いてあるため、実物を確認してから購入することも可能です。このように、顧客は店舗ならではの体験を味わうことができ、店舗はより買い物が楽しくなるような仕組みを提供しています。

 

店舗のメディア化は「必要不可欠な取り組み」に

ただ物を売るだけの場所が必要とされなくなるのは、EC需要の高まりによって明白となっています。さらにコロナ拡大がそれを後押ししました。それでも実店舗に足を運び、商品を実際に見て・触ってショッピングを楽しみたいという需要は一定数存在します。その人たちが求めているものは実体験です。その実体験を提供するため店舗のメディア化を進めた企業も少なからず出てきています。この波に乗り遅れないためにも、店舗のメディア化に対する迅速な取り組みが求められるでしょう。

 

【参考】

吉田暁壮

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。

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