目次
世界的に猛威を奮った新型コロナウイルス。日本においても全国に発令された緊急事態宣言に伴う外出自粛、営業休止など各業界に与えたダメージは計り知れないものです。新型コロナウイルスにより良い影響を受けた業界もありますが、ほとんどの業界は悪い影響を受けたといっても過言ではありません。例えば、小売業でいうと実店舗の営業時間短縮や営業休止などの影響で売上高が減少しており、百貨店においては4月の前年売上同月比は83%減、アパレルにおいては47%減という数字がでています。このような業界は従来のビジネスモデルでは通用しないことが明確となり、強制的にパラダイムシフトが発現したといえるでしょう。ECサイトの新規立ち上げやWeb接客などDXに取り組む企業の記事がすでに散見されており、各企業の意識変化が起きています。今回はその中でもWeb接客、特にチャット型接客について紹介したいと思います。
そもそもWeb接客とは、Webサイトを訪れた顧客に対しWeb上で適切な対応・案内を行うことです。言い換えると、実際の店舗に訪れた顧客に対して、店舗スタッフが行うような対応や案内をWeb上で行うこととも言えるでしょう。これらWeb接客を行う上でのツールは「ポップアップ型」と「チャット型」の大きく2種類に分けられます。さらに、チャット型ツールは「オペレーター(人)が直接対応する」「ロボット(AI)が対応する」「オペレーター(人)+ロボット(AI)が対応する」という3パターンに分けることができます。
有人チャットはオペレーターによって柔軟な対応ができるというメリットはありますが、その分人件費がかかるというデメリットがあります。また、ロボット対応のみの場合、カバーしきれない複雑な質問に対しては必ず人での対応が必要となってきます。そのため、現在はロボットが部分的に対応しそれ以外を担当者が対応するような仕組みが注目されています。
ポップアップ型の接客ツールとは、ユーザーの属性に応じたキャンペーンバナーなどを表示して、一方方向の情報を提供するタイプです。普段はユーザーからは隠されていて、任意のタイミングでセールやクーポンの情報を出現させることができます。また、ユーザーの行動によって発信するメッセージを変えることができるため、よりユーザーに合った対応をするWeb接客を実現することが可能です。
チャット型の接客ツールとは、チャットを画面上に常駐させ、ユーザーと担当者の双方向のやりとりを実現するタイプです。サイトの閲覧者が何か不明点を感じたとしても、一般的な電話やメールの問い合わせでは面倒なため質問せずに離脱することが多く購買機会を失うことが多いです。しかし、このチャット型ツールを活用することで、閲覧者は気軽に質問することができ、顧客満足度向上や購買に促すことが可能です。
次に、チャット型接客ツールを導入することで得られる具体的なメリットについて紹介します。チャット型接客ツールを導入することによる主なメリットは以下の4つが挙げられます。
ここまで、チャット型接客ツールのメリットについてお話ししました。しかし、どのようなツールにもデメリットは存在します。デメリットについてもきちんと把握した上で、限りなくデメリットの影響を抑えて導入することで効果的な運用が可能となります。ここでは、チャット型接客ツールを導入するにあたってのデメリットについて紹介します。
現在多数の企業が様々なツールを提供していますが、導入する際はその中でも自社に適したツールを選択することが重要です。コストに関して言うと一般的にチャット型の接客ツールは月額費用料が数万円~数十万円かかることが多いです。また、ユーザーには安心して簡単に使用してもらえるような設計であることも重要です。その中で、ここでは「月額費用」と「安心感・使いやすさ」の観点から2つのツールを紹介します。
1つ目は、チャットプラス株式会社が提供している「Chat Plus」です。特徴はなんと言っても価格の安さです。初期費用0円、月額1,500円から使用することができ業界内でもトップクラスの安さを誇ります。また、IDの即時発行&即時利用が可能であり4分あればサイトを訪問したユーザーとやりとりができるようになります。
2つ目はLINE株式会社が提供している「LINE BRAIN CHATBOT」です。特徴は企業のLINE公式アカウントのトーク画面内でユーザーの質問に答えるという点です。今やLINEは国内利用者数8,400万人以上となり多くの人が日常的に使用しています。いつも使用しているアプリから気になる点を気軽に質問できる仕組みはユーザーにとっては楽になるかもしれません。
https://www.linebrain.ai/chatbot/
チャット型接客ツールを導入することでいくつかの導入効果を期待できます。以下主な導入期待効果を紹介します。
最後に、実際の導入事例として株式会社JUNを取り上げたいと思います。アパレル事業として有名なJUNですが、公式オンラインショッピングストアにて店舗スタッフによるチャット接客サービスを開始したと発表しました。これまでアパレルというのは対面接客が基本であり、来店した客に対しショップスタッフが1対1で接客するというのがスタンダードでした。しかし、今回の新型コロナウイルスに伴う外出自粛や営業休止による影響を考慮し、アパレルでは珍しいオンラインでの接客に取り組み始めた形となります。チャットで受け付けている質問は多種多様で、洋服に関する質問「身長153cmなのですが着丈はどうなりますか」「このスカートにあうトップスはなんですか」などから、「1万円でプチプラコーデお願いできますか」「友達への誕生日プレゼントにおすすめの雑貨はありますか」などの質問まで幅広く対応しており、今まで面と向かって聞きづらかった内容までも気軽に聞けるというメリットがあります。
これは現代に非常にマッチしたサービスだと思います。SNSの発達により特に若年層は電話よりテキストでのやり取りがメインとなっているのではないでしょうか。電話では言いづらいことでもテキストなら伝えやすい、FacetoFaceではないので緊張せず自分のタイミングで聞きたいことが聞けるなど、現代人の特性に非常にマッチしていると言えます。これにより、消費者の購買機会損失の減少、さらにスタッフのやり取り次第では新規ファンを獲得することも期待できると思います。
約1か月半にも及ぶ緊急事態宣言が解除され、全国的に「ニューノーマル」への第一歩を歩み始めました。「3密」を回避し「ソーシャルディスタンス」を確保するといった新しい生活様式において、各企業には従業員、顧客、パートナー企業、地域社会とのつながりを再構築し事業を再始動するという大きな挑戦が待ち受けています。そのような中で、非接触型であり、かつ気軽に行えるオンライン上でのやりとり、特にテキストでやりとり可能なチャット型接客は現在のSNS時代において非常に有効であり、今後のビジネススタイルの基本となっていくのではないでしょうか。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。得意分野はホテル・宿泊業界を中心としたシステム導入、BPR