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2021.12.28

オーダーメイドを民主化させたFABRIC TOKYOに見る”D2C”とは

 

FABRIC TOKYOとは

皆さんは、FABRIC TOKYOというブランドをご存知でしょうか。FABRIC TOKYOは「FIT Your Life」をコンセプトに掲げており、ライフスタイルや価値観に沿ったビジネスウェアを提供しているブランドです。

このブランドの創業者である森さんは、スーツとシャツのサイズ選びの難しさや街のテーラーの敷居の高さを感じており、これらを課題感を解消するためにFABRIC TOKYOを立ち上げました。

2020年に発生したコロナウイルスの影響で多くの業界の売上が縮小していく中、FABRIC TOKYOはカジュアルジャケットの売上を伸ばしていくことに成功しているため、まさに新進気鋭のブランドであると言えるでしょう。

さて、そのFABRIC TOKYOはD2Cブランドであるため、スーツを始めとしたビジネスウェアを安価に提供できる所に特徴があります。一体どのような体制でオーダーメイドを安価なものにしたのでしょうか。

FABRIC TOKYO

 

オーダーメイドの民主化を実現した手法

FABRIC TOKYOはブランドを運営する上で、「HI-JOY」「HI-TECH」「HI-SUSTAINABILITY」の3つを大切にしています。このうち、オーダーメイドの民主化を実現する土台となった思想は「HI-JOY」、実現する手段となったのは「HI-TECH」の部分です。

 

「HI-JOY」では、FABRIC TOKYOのものづくりに対する姿勢を見ることが出来ます。この中で一番重要なのは、好きな服や着心地のいい服を着ること、つくり手の想いを届けること、などのパーソナルなニーズを汲み取る姿勢になります。これらを達成するためには、従来のブランドに見られる既製品を大量販売することにフォーカスされた販売方法を採ることは出来ません。

この想いこそが、D2Cブランドという新しい形態を生み出す原動力となっており、ブランドの魅力的なポイントに直結しています。

このブランドづくりを行う手段として、初めて「HI-TECH」が登場します。この「HI-TECH」の最たる例として、FABRIC TOKYOでは「SMART ORDER」というシステムを導入しています。

このSMART ORDERは、店頭で体型データを測定することで、スマホからオーダーメイドのビジネスウェアを注文できる仕組みとなっています。また、測定した体型データがある場合は、データを元に来店不要で新規オーダーを出すことが可能です。

このシステムのおかげで、オーダーメイドという非日常的な体験と、スマホからの注文という手軽さを両立しています。また、近年ではZOZOスーツのようなテクノロジーもある中、あえて採寸の手間を残していることがブランドの特徴です。この手間によって、顧客とブランドとのつながりを強固にし、顧客からの熱い指示を得る結果に繋げています。

余談ですが、「HI-TECH」の例として、スマートファクトリーの稼働に向けたプロジェクトも進行しており、購買者に向けた製造プロセスの可視化を盛り込むと発表しています。単なる効率化に留まらず、購買者にも製造プロセスを見てもらう仕組みも、従来のブランドでは成し得なかった体験です。これも、テクノロジーを活用したからこそ実現させられるものです。

オーダーメイドの実現として挙げたテクノロジーの活用は、もはやD2Cブランドの価値を高めるための基礎的な要件になるのかもしれません。

 

民主化を通して提供している価値

これらの取り組みから、FABRIC TOKYOによるオーダーメイドの民主化によって、大きく2つの提供価値が生まれていると考えられます。

①消費者の購買体験の向上

既存のアパレルブランドは、生産後に商社や卸、小売といった中間流通業者を挟むことが一般的であるため、各業者に対して中間マージンが発生してしまいます。そのため、消費者が購入できる頃には様々なマージンが上乗せされた価格設定になります。

一方で、D2Cブランドでは、生産者と消費者の間に入る業者がいないため、既存のブランドと比較して価格を抑えることが可能です。

 

また、D2Cブランドは消費者との接点を直接持つことが可能であるため、ニーズを汲むことに長けています。ことFABRIC TOKYOにおいては、テクノロジーを活用することにより、消費者への販売活動を行うブランド企業と生産現場の距離をゼロに近づけました。

結果として、生産現場にニーズを反映させるコミュニケーションが可能となり、オーダーメイドを低価格で提供できる仕組みを整える結果につながりました。

その他にも、ポップアップストアを出展した際のリピート率が良かったことをベースに、リアルでしか体験出来ない「手触り感」を大切にしています。これこそが、先述したZOZOスーツのようなテクノロジーを使わずに実店舗で採寸を行う理由の一つとなっています。

これらの顧客満足度を高めるポイントはFABRIC TOKYOの代表から語られるポイントとなっており、便利な時代だからこそ手軽さだけでなく顧客満足を追求する、という考え方があると推察されます。ブランドビジネスを行う事業者にとっては、利便性だけでなく顧客満足を高めることが大事である、という視点は参考になるのではないでしょうか。

 

②日本全体の産業の再興

FABRIC TOKYOの特徴は「HI-TECH」のコンセプトを土台とした、あらゆる場面でのテクノロジー活用の姿勢にあります。その結果として、日本のあらゆる場所にある工場とリアルタイムに提携することや、中間業者を取り除くことに成功しています。そして、両企業にとって適正な価格でのビジネスを行うことが可能となっています。

先程の図を別の視点から見ると、従来のブランドとD2Cブランドが同額で出品した場合、中間業者が介在しないD2Cブランドの方が生産現場に還元できる金額が大きくなる、という特徴もあります。また、D2Cブランドにはオーダーメイドという付加価値が乗るため、同じ原価だとしても同額で販売した際に一定の優位性を保つことが可能となります。

このことから、D2Cブランドの仕組みを利用することで、日本各地に存在する高い技術を持った生産現場に対して、より多くの利益をもたらすことが可能となるわけです。

経営者の視点からすると、自らの取り分を減らしてまで生産現場に還元するのは愚行と言われるかもしれません。ですが、D2Cブランドを立ち上げる際の社会的意義の一つとして、関係企業に対する還元という側面があるのも、一つ確かなことです。

FABRIC TOKYOはもちろんのこと、knotMOTHER HOUSEといったD2Cブランドでも、HP上で提携先工場の情報を載せており、高い技術力を評価して提携した旨を記載しています。

高い技術を持った企業に利益がもたらされず廃業となるのは、日本全体の産業から見ると大きな損失であるため、今後の日本の立ち回りとして意識すべきポイントであると考えられます。

そういった意味では、これからのD2Cブランドに求められる要素として、提携先工場への利益還元を通じた、日本の産業の再興という文脈も入るのではないか、と考えられます。

 

D2Cブランドに求められる存在意義

FABRIC TOKYOは、テックの力でオーダーメイドの民主化を実現し、顧客満足度を高めつつ生産現場にも利益が行き渡る構造を実現させました。そのブランド形態であるD2Cは、直接的な顧客である消費者だけでなく、提携先の生産現場にも還元できる手法であるため、社会的に大きな存在意義があると言えます。FABRIC TOKYOの事例からは、テクノロジーの活用によって、ブランドと人、あるいはブランドと企業が繋がり、多方面に価値を提供することが可能であるという示唆が得られます。

本稿を参考に、誰にどんな価値を提供できるか、に着目してブランドを立ち上げ、成功への糸口を見つけてくださると幸いです。

 

【参考文献】

伊藤悠真

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。大手/中小企業での新規事業策定支援、営業戦略に関する実行支援、M&Aにおけるソーシングなど、幅広い支援実績を保有。


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