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近年、企業のITシステム導入に対する意欲は増加傾向にあります。
一般社団法人JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の発行している企業IT動向調査によると、コロナ禍の影響下においても企業のIT投資は堅調である模様です。
IT 予算の増加と減少の割合を指数化した DI 値(ディフュージョンインデックス:IT 予算を「増加する」割合から「減少する」割合を差し引いた値)は31.8ポイント(19年度計画)から18.2ポイント(20年度計画)に減少しているものの、正の値であることから増加傾向であることが伺えます。
https://juas.or.jp/cms/media/2021/04/JUAS_IT2021.pdf
本記事では、今後も引き続き増加が見込まれるIT投資に付随し、ベンダー選定プロセスの概観を解説することを目的とします。
IT投資を増加しシステム導入を図ったとしても、自社にとって最適なベンダーを選定できなければ効果的にシステムを構築・運用していくことは困難です。
全体感をイメージしやすいよう、ベンダー選定の基本的な流れを取り扱いますので、参考になれば幸いです。
ベンダー選定・評価は大きく「事前調査フェーズ」「選定準備フェーズ」「評価・選定フェーズ」の3工程から成り立っており、主に以下のようなプロセスで進められます。
基本的には上記工程に沿って進められますが、事前調査フェーズに限り場合によっては省略されることもあるため、あくまで一例としてご理解いただければと思います。
当プロセスでは、以後システム導入を委託し協業することとなるベンダー候補を調査します。
自社にとって最適なベンダーを選定するためにもベンダー候補となる企業の母数が一定数必要となります。相見積もりを取る意図からも、小規模システムであれば3~5社、中・大規模システムであれば5社~を目安にベンダー候補を調査しましょう。
調査方法としては主に以下の4つが挙げられますが、近年はネットから多様な情報が得られるため基本的にはネットリサーチで十分でしょう。他の調査方法は、ネットリサーチで十分に情報が得られなかった場合の手段として捉えていただいて問題ありません。
当プロセスでは、ベンダー候補にネットリサーチより一歩踏み込んだ情報提供を依頼します。
ただし、粒度が揃っておらず背景が不明瞭な状態でベンダー候補とやり取りをしても双方にとって有益な情報交換とはなりません。
そこで、RFI(Request For Information)と呼ばれる情報提供依頼用のドキュメントを、ユーザー企業側で作成します。RFIでは、ユーザー企業・ベンダー候補双方が効果的にやり取りをできるよう、知りたい情報を項目立てて整理するのが一般的です。
事前調査フェーズを経てベンダー候補の目処がついたら、次の工程では最終的にベンダー候補を1社に絞り込むための準備を進めます。
当プロセスでは、ベンダー候補に提案書の作成を依頼する際に必要となるRFP(Request For Proposal=提案依頼書)と呼ばれるドキュメントを作成します。
RFPはベンダー候補に対して、システム導入の目的・背景や現在のシステム構成・導入するシステムに対する要求(機能要求・非機能要求)等を整理し提示することで、プロジェクトおよび提案に対する双方の認識を合わせる重要な役割を担っています。
詳細は当記事では割愛しますが、イメージを付けていただくため以下にRFPの全体像(目次)を提示します。
上記はあくまで一例であり、プロジェクトによって記載内容も変動しますのでその点はご留意いただければと思います。
RFPを作成しベンダー候補に送付した後に発生する質疑応答も、当プロセスでは重要な役割を担っています。
各ベンダー候補から受領する質疑内容によって、いかに提案に熱意を持っているのか、いかにプロジェクトを理解しているのかといった定性的な部分も垣間見ることができます。
ベンダー候補を選定するといった後続プロセスにおいても、各ベンダー候補の提案に対する姿勢・理解度は有効な指標となりえます。
当プロセスでは、ベンダー候補によるシステム導入に対する提案を評価するための項目整理・重み付けを実施します。
評価項目を作成することによって恣意的な評価を下す可能性が減り、自社にとって最適なベンダーを選定できる確率が増加します。
評価項目は、主に「システム」「プロジェクト」「会社」の3つで分類でき、以下のような項目が例として挙げられます。
■システム
■プロジェクト
■会社
プロジェクトによって設定すべき項目、重要性の高い項目は異なりますので、最適なベンダー像を分解し必要な項目を都度検討することを推奨します。
当プロセスでは、ベンダー候補から提出される提案書およびプレゼンを受けます。
小規模システムの導入であればベンダー候補の母数が少ないため、提案書およびプレゼン内容の評価をほぼ同時期に実施するケースが多いですが、中・大規模システムの導入の場合ベンダー候補の母数が多いため、提案書評価を1次選考として一定数までベンダー候補を絞り込み、プレゼンでの評価を2次(最終)選考としてベンダーを選定するケースもあります。
ベンダー選定において、当プロセスがベンダー候補の提案に対する情報を取得する最後の機会となります。
そのため、プレゼン前には提案書を熟読し理解度を高め、不明点を洗い出すことが重要です。プレゼンを通して不明点は全て解消し、最終評価に臨めるよう準備しておきましょう。
当プロセスでは、各ベンダー候補の提案を評価し、ベンダーを1社に選定します。
今後システム導入を委託するベンダーが確定するため、評価・選定は十分に吟味の上執り行いましょう。
各ベンダー候補の評価自体は、評価項目に沿って採点すれば数値として可視化できるため難しくはありません。が、数値に反映されない評価軸(プロジェクトに対する意欲、コミュニケーションのとりやすさ等)が存在するのも事実です。
評価結果及びプロジェクトメンバーの所感を厳密に認識合わせすることで、プロジェクトメンバー感で軋轢を生むことなく、自社にとって最適なベンダーを選定できる可能性が大きく向上するため、妥協なく選定に臨みましょう。
今後さらなる増加が見込まれるITシステムへの投資において、ベンダー選定は如何なるITプロジェクトにおいても重要な役割を担います。
選定するベンダーによって導入するシステムが有用なものとなるのか、無用なものとなるのかを決定づけます。システムは導入することが目的ではなく、活用し会社の利益向上に繋げることが目的ですので、ベンダーを選定する際は将来的な活用も見据えた評価を心がけることが大切です。
当社では、ベンダー選定含むITシステム導入プロジェクトをご支援させていただいた実績がございますので、ITにまつわる課題がございましたらお気軽にご連絡下さい。
【参考】
アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/アナリスト
2020年早稲田大学文化構想学部卒業。ITコンサルティング分野において、CRM/SFAシステム導入支援の実績を保有。