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「メタバース」の可能性とは~今後展開されるビジネスモデル~

はじめに(身近なメタバースについて)

最近よくニュースやネットでも目にするようになった“メタバース“を皆さんご存じでしょうか。メタバースとは、人々が自由に活動・交流できる仮想空間を指します。直近では新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世界でバーチャル空間への注目が一気に高まりました。例えば、巣ごもり需要の中で自分の分身となる「アバター」を使ってバーチャルの世界で交流したり戦ったりするゲームが人気を集めており、米エピックゲームズの「フォートナイト」や任天堂の「あつまれ どうぶつの森」は世界的にヒットしています。また、米Facebookが社名をMetaに変更し、仮想空間メタバースに注力していくと、創設者であるマーク・ザッカーバーグ氏が明言したことで一層注目されるようになりました。
本記事では、そんな仮想空間技術である”メタバース”とは何か、今後のビジネスシーンにどのような影響が起きるのか、今後の展望と課題について解説をしていきます。

 

メタバースとは何か

メタバースの語源は米SF作家のニール・スティーブンソン氏が小説「スノウ・クラッシュ」で1992年に描いたものがモチーフと言われ、「超越」を意味する「メタ」とユニバース(世界)の「バース」を結びつけた造語です。メタバースの定義は諸説ありますが、多くのメタバース関連記事で挙げられているのは投資家Matthew Ball氏が提唱している下記の考えです。

  • 1: 永続的である(Persistent
  • 2: 同時性&ライブ性(Synchronous and live)
  • 3: 同時参加人数無制限(No cap to concurrent participants)
  • 4: 参加者によるモノの制作・保有・投資・売買などが可能(Fully functioning economy)
  • 5: デジタルと物理、両方の世界にまたがる体験(Both digital & physical worlds)
  • 6: 今までにない相互運用性(Unprecedented interoperability)
  • 7: 数多くの企業/個人がコンテンツや体験を生み出す(Wide range of contributors)

メタバースの条件が上記なのであれば、現在のインターネット上での活動も入ると考えられます。メタバースという言葉が出てくる以前にも仮想空間において提供されてきたサービスは存在してきました。代表的なもので2007年頃日本で流行した仮想空間のなかで経済活動も行えるゲームである「セカンドライフ」や、仮想空間で自身のアバターを作成してコミュニティを作れる「アメーバピグ」などが一世を風靡しました。

今、再びメタバースが注目されている理由は、テクノロジーの進化が関係しています。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(混合現実)といった技術のおかげで、仮想空間をリアルに感じることができるようになりました。パソコンの描画性能も高くなり、「VRヘッドセット」または「VRゴーグル」と呼ばれる顔に装着するディスプレイも、メタバースに活用されています。メタバースに活用される世界のAR/VR関連ソフトウェアサービスの市場規模は最新の「情報通信白書*1によると、2020年の32億ドルから2021年の38億ドルに成長し、2022年には51億ドルに達すると予測されています。

総務省: 情報通信白書(令和3年版)世界のAR/VR市場規模等の推移及び予測https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd105210.html

メタバース関連市場、関連ビジネスの成長が期待されていますが、今後どのようなビジネスに繋がっていくのか見ていきましょう。

メタバースのビジネスモデル

昨今の技術革新によりメタバースをビジネス化するためのVRの普及や、バーチャルキャラクターであるVtuberの登場、感染症拡大に伴う社会情勢の変化から、各種イベントの中止・延期、人々の移動制限などが起こり、「バーチャル空間をどのようにビジネスに活用できるか」について、大企業・ベンチャー企業問わず様々な企業が模索しながらビジネス展開を進めています。

現在メタバースの活用事例として挙げられているのは主に展示会、株主総会などのイベント利用ですが、現在一部の観光業や小売業においても活用されています。今まで対面でしかできなかった商品の販売や、観光地の景色なども、VRなどの技術を用いて、現実さながらの3DCG商品を自身のアバターを通し試着できるショッピングや仮想観光を通した実際の観光客の集客を狙うといったビジネスも広がってきています。世界中でメタバースを活用できる技術が発達してきており、各業界におけるメタバースの活用が広がりを見せています。

そこで、現在各企業が進めているメタバースを通じた具体的なビジネスモデルを3例ご紹介致します。

BEAMS バーチャルショップ】

BEAMSは、アバターなどのさまざまな3Dアイテムや、リアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできる世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」に出店を行っています。VR技術により、実際に店舗に行ったような感覚を得られ、現在普及しているネットショッピングとは一味違う体験ができます。バーチャルショップではNetflix映画「浅草キッド」に見る昭和の浅草を再現したバーチャル浅草を体験できるほか、各種コラボレーション商品、今季のBEAMSスタイルを纏ったオリジナルアバターも加わり、リアル商品と3DCG商品の両方を揃えたVRならではのショッピングを楽しむことができます。出店中はBEAMS社員が交代でショップスタッフのアバターを操作し、店内を案内します。BEAMSオリジナルアバターは今回初の試みとして、実際の今季(2021年秋冬)のルックをそのまま纏ったアバターを販売し、店舗に展示されるアバターに触れるとBEAMS公式オンラインショップが表示され、アバターが着用しているアイテムの実物が購入可能となっています。

バーチャルマーケット2021 パラリアル渋谷にあるBEAMSバーチャルショップhttps://robotstart.info/2021/11/29/beams-vr-shop-vrmarket2021.html

 

【株式会社あしびかんぱにー バーチャルOKINAWA

株式会社あしびかんぱにーは、沖縄発のメタバース参画企業として、アフターコロナを見据えた沖縄観光地と仮想空間が連携した沖縄体験を「バーチャルOKINAWA」内で展開しており、現在公開中の「国際通りエリア」に続き「首里城エリア」へと展開を広げ、アフターコロナの沖縄の観光業発展と活性化を目指しています。最近では沖縄の世界遺産「首里城」をバーチャル上で体感できるプロジェクトの始動を、沖縄のDXが集結する見本市「ResorTech EXPO in Okinawa*1」にて発表しました。

「バーチャルOKINAWA」は仮想空間上で沖縄を再現し、新たな交流の場として活用しながら、バーチャルを活かした様々なイベントをリアルイベントとも連携し実施しています。

沖縄美ら島財団監修のもと、首里城の再現を行っており、2022年春頃に首里城エリアの公開を予定しています。

2022年公開予定の首里城エリアhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000062459.html

CYZYSPACE バーチャル空間での展示会スペースの提供】

CYZY SPACEは、VRヘッドセットのほか、PCやタブレット端末、スマートフォンのブラウザを使ってだれでもアクセスできるオリジナルのVR空間を活用できる企業・団体・店舗向けに複数人数が簡単にアクセスできる三次元バーチャル空間でのイベントや展示会、発表会などを1万円からの低料金で運用できるサービスを提供しています。3DVR空間で立体展示が可能で、空間的な演出や雰囲気作りが可能です。訪問者からの質問を受け付ける、AIコンシェルジュ機能(AIチャットボット・アバター)がついており、スタッフの居ない夜間や休日でも、簡単な案内をしてくれます。

自社に合わせた展示会やプレゼンテーション会場、催事会場、ショールームなどの新たなスペースをオンライン上で構築することが可能であり、「新しい生活様式」が求められるなかで、これまでとは異なる顧客交流や取引先開拓の手法にチャレンジする企業も今後増えていくことを考え事業者の利用シーンを想定し、低価格にてサービス提供をしています。

CYZYSPACEが提供する3DVR空間https://cyzyspace.io/

今後の展望と課題

上記ではメタバースにおける具体的なビジネスモデルを挙げてきましたが、発展途上であるメタバースにはいくつか課題が存在しています。

その1つは、仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの整備です。例えば日本の民法は原則的に、物理的なモノにしか所有権を認めておらず、メタバースでのトラブルやアカウント停止で自分の仮想アイテムがなくなっても、運営者などにその返還を求めるのが難しくなるといった問題があります。そういった問題に対応するために現在KDDI東急らが「バーチャルシティコンソーシアム」を立ち上げ、メタバース運営に関するガイドラインを策定しており、仮想空間で行われる商取引などに関するルールを整理することを目的としています。

その他にもAR/VRの普及も課題です。(デバイスが大きくなじみがない)普及に時間がかかっていたり、VRヘッドセットをわざわざ購入して楽しむためのコンテンツが登場していないなどの問題も挙げられます。そもそものAR/VR領域での有識者が不足しており、技術者だけでなく業界知見を持ちビジネス企画ができる上流の人材も不足しているといった声も挙げられています。

今後の展望として、メタバースを一般消費者に普及させていくためにガイドラインの整備、VRデバイスの普及、キラーコンテツの登場、などを進めていくことがメタバースのビジネスを拡大させていくのに必要だと考えます。現在ではスマートグラスといったディスプレイ内蔵型のメガネも販売されており、インフラ設備の保守点検、収穫時の作物選定などに活用されています。VRデバイスは技術的に進んでいる傾向があり、今後日常での使用シーンも増えていくと思われます。メタバースをビジネスとして活性化させるためにも、VRデバイス普及に関する今後の技術動向にも注目が必要です。

 

 

 

 

*1: 総務省が提供する情報通信の分野における産業の現況や政策の動向などを取りまとめて年次で刊行している文書

*2: 沖縄で開催されるデジタル社会の実現を図ることを目的とした社会・経済DXを推進する取組み

 【参考】

MoguraVR「最近話題の「メタバース」ってなに? 言葉の意味から業界動向まで解説」(2021https://www.moguravr.com/future-tech-meetup-6-report/

NHK「本気のメタバース 広がる先にはビジネスも」(2021

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211122/k10013357101000.html

マイナビニュース「Meta(旧Facebook)が注目するメタバースって?」(2021

https://news.mynavi.jp/article/womansns-58/

ロボスタ「BEAMSバーチャルショップがファッションのメタバース化を提案 世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット2021」に出店」(2021

https://robotstart.info/2021/11/29/beams-vr-shop-vrmarket2021.html

PRTIMES「沖縄発のメタバース「バーチャルOKINAWA」にて、首里城の復元が決定!」(2021https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000062459.html

CYZYSPACEhttps://www.value-press.com/pressrelease/261591

総務省「情報通信白書」(2021

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd105210.html

日本経済新聞「メタバース、迫られる法整備

仮想空間での商取引、トラブル防ぐ 運営側の責任抑制的に」(2021

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78120570T01C21A2TCJ000/

KPMG「【報告書】令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業)」(2021

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/report/kasou-houkoku.pdf

近藤 慧

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト


5F, 1-3-18 Hiroo, Shibuya-ku, Tokyo
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