近年、BPRという言葉が盛んに叫ばれるようになってきました。
BPRとは、「Business Process Re-engineering」(ビジネスプロセスリエンジニアリング)の略称で、日本語では「業務改革」と呼ばれます。
BPRは1990年代から提唱されている概念で、組織をビジネスプロセスの側面から根本的に改善することを指します。
近年よく耳にするようになった背景としては、大きく3点あります。
働き方改革関連法が、2019年4月から順次施行されています。社員の多様な働き方の実現や労働環境、長時間労働の解消等を課題としており、当然各企業においても”如何に生産性高く仕事をできるようにするか”が問われる時代になってきました。
次に「2025年の崖」とは、このまま組織のDX化が進まない状況が続くと、2025年には国の経済の停滞が発生することを指す言葉です。DXを推進することは、ビジネスを抜本的に見直すBPRが不可欠です。
テレワークについては、2021年12月現在新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきたとはいえ、未だ完全収束の兆しはなく、またテレワークの生産性の高さから、テレワーク導入のためのBPRを推進した企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、よく混同される「BPR」と「業務改善」の違いや、BPRを推進する際のポイント、重要な原則をご紹介致します。
BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)と近い言葉として、「業務改善」があります。
業務改善とは、BPRのように抜本的な改革を実施するまではいかず、組織の一部の業務にスポットを当て、不要なプロセスや業務を取り除く等、業務効率化を図るための活動を指します。
BPRと業務改善の違いを、一例として以下に示します。
BPRでなくとも、業務改善の観点から効率化を図る方が望ましいケースも当然ありますので、双方の違いを理解し、組織の現状や目的に合わせ、選択することが肝要です。
業務改善は比較的一社員の声から活動をスタートさせて推進し易いため、BPRに不慣れな組織や社内での権限が無い方は、まずは業務改善からのスモールスタートを検討してみると良いでしょう。
BPRのオーソドックスな進め方を、下図にまとめました。
中でもポイントとなる点を下記に記します。
まず、なぜBPRを推進したいのか、またこのBPRのプロジェクトは何をもって完了とするのか、定量的に示します。
たまに起こる失敗例として、いわゆる”手段の目的化”を起こすことがあります。
例えば、「レガシー化しているシステムを刷新したいから新たなERPパッケージシステムを導入したい、だからBPRします」といった判断が”手段の目的化”に該当します。
ERPパッケージシステムの導入は組織を改善するための手段でしかないことに気づかず、本質的な問題点を探り当てないうちに導入してしまい、効果が全く発揮されずに数百、数千万のコストが無駄に発生してしまうという恐ろしい事態を引き起こす可能性があります。
必ず、目的、目標を明確にした上でBPRを進め、手段は特定していきます。
また、設定した目的、目標はプロジェクト関係者へ必ず共有し、同じゴールを目指していく共通認識を持つようにします。
関連する部署の洗い出しと各部署の重要な関係者(ステークホルダー)を明確にします。
また、計画は通常業務との兼ね合いを鑑みながらバッファを持ってスケジューリングし、必要に応じて柔軟に調整できるようにしておきます。
できるだけ関係部署全ての現状を把握します。
手法は直接的なヒアリングや、アンケート等があります。
現場の実態を上長が把握しきれていないことは往々にして有り得ますので、ヒアリングを行う際は、部署の上長だけでなく、実務を担当している社員にもヒアリングするようにします。
また、一部署をモデルとして現状把握した後、振り返りを行い、より最適な現状把握方法はないかを該当部署へFBをもらいながら再検討することも効率的なプロジェクト進行に繋がります。
把握した現状から、問題点、課題点を洗い出し分析し、それぞれどうすれば組織的な解決に向かうことが出来るのかを検討します。
ここで重要なのは、部署ごとの観点ではなく、全社的な観点での問題、解決手段に落とし込むことです。横断的な解決が図れず部署別の解決手段を実行するのは大変非効率で、無駄なコストが発生し、何より組織内の横連携を分断することになり、組織の一体感がより薄まる原因になります。
また、ここで洗い出される解決手段は一部署内の簡単な調整で実現できるものもあれば、外部から開発ベンダーやコンサルタントを招いて業務構築をする、システムを導入するといった大小様々な案が出て来るはずです。
以下、一例です。
導入を検討する際は、自社にノウハウが無い場合は外部コンサルや開発ベンダーへ依頼することで、導入後の効果が大きく見込めるようになります。
※ERPパッケージ導入に関する過去記事はこちら
「ERPパッケージ導入前に必ず行うべき『Fit&Gap(フィット&ギャップ)分析』の重要性」
※SFA/CRMシステム導入に関する過去記事はこちら
「CRM/SFAシステム(顧客管理/営業支援)の特徴と導入を失敗しないためのコツ」
こちらもシステム導入と同様、RPA開発のノウハウを持つ外部の組織に導入を依頼することで、より効果的な業務自動化ができます。
※RPA導入に関する記事はこちら
※ExcelVBAに関する紹介記事はこちら
「ノウハウ無しでも実現できる”ExcelVBA”を使ったローコストな業務自動化」
自社内、あるいは一部署で完結可能なことが多いです。
BPOとは「ビジネスプロセスアウトソーシング」の略称で、その名の通りビジネスプロセスを外部にアウトソースすることで、自社の業務を一部切り出し他社に任せる経営手法を指します。
ただ任せるだけでなく、自社と同じように機能してもらう点が強みで、単に業務を遂行してもらうだけではなく業務の改善等もスコープに含まれます。人手不足を一気に解消してくれる手法と言えます。
シェアードサービスとは、各部署、あるいはグループ企業に分かれて存在する共通の機能を、一か所に集約させて効率化を図る経営手法です。
洗い出された解決手段を棚卸しして実行優先順位を付けていきますが、QCD(Quality・Cost・Delivery)の観点から考えると正確性が上がります。
・Quality(効果):実行するとどのくらい効果が出るか(目標達成に近づけるか)
・Cost(コスト):実行するにあたりかかるコストはどの程度か(人件費も含む)
・Delivery(時間):実現まではどのくらいの期間が必要か(実現可能性も含む)
前述の通り解決手段は大小様々で、且つ一つ一つがかなり重たくなることがあります。
焦らず、スケジュール計画を見直しながら失敗のないよう柔軟に進めていきます。
業務改善やシステム導入等を解決手段とした場合、それが現場でしっかり定着して活かされているか、定期的なモニタリングを行います。
大きな組織であればあるほど、形骸化して器だけが残ってしまうことになりかねませんので、定着できていない様子があれば適宜各部署のステークホルダーとコミュニケーションを取りながら、是正に向けてアクションします。
ここでのモニタリングを疎かにすると、これまでせっかく取り組んできた活動が全て無に返るといってもいいほど重要なポイントですので、必ずモニタリングの手法、スケジューリング、担当者も明確にした上で対応します。
当初の目的、目標を達成しているか、評価します。
達していない場合、問題点、解決手段の洗い出し漏れがないか、実行した手段の進め方に問題が無かったか等、これまでの取り組みを振り返り、今後の改善に活かします。
ここまで具体的な進め方を紹介して参りましたが、ここでBPRでも業務改善でも、取り組むにあたって持っておくべき「ECRS(イクルス)の原則」を一つご紹介致します。
こちらを前提に、業務の見直しを行います。
業務を見直そうと考えたとき、人によって観点は様々ですが、それをフレームに落とし込んでブレの無いよう思考を統一してくれるのが、ECRSの原則です。
重要なのは、E⇒C⇒R⇒Sの順番で検討することです。この順序は、より改善効果の高い順番で並べられており、優先順位を付ける際もどの概念に当てはまるのかを明確にすると、より精緻な優先順位を付けられるようにもなります。
必須の原則というわけではありませんが、頭に入っているのとそうでないのとでは、改善の質が大きく変わってきますので、是非ご活用ください。
本記事では、主にBPRの進め方やポイントについてご紹介して参りました。
BPRは実行しようとすると多くのステークホルダーを巻き込みながら、長期的な視点で根気強く取り組んでいく必要がありますが、その分組織を大きく飛躍させてくれる取り組みです。
自社に何か問題点を感じておられるようでしたら、本記事を参考に取り組みしていただけたら幸いです。
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【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/システムエンジニア。
ネットワーク監視・保守プロジェクトの実務及びマネジメント業務を5年間経験した後、人材派遣会社の企画職を経て当社へ参画。主にITコンサルティング、業務コンサルティング分野にて、ERPやCRM/SFAシステム導入支援、それに伴うBPRの領域にて実績多数。