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2021.12.17

【デジタルマーケティング】営業部門とマーケティング部門の調整が難しい?最適なマーケティング体制とは

 

初めに

マーケティング部門と営業部門の対立は定番と言えるテーマです。

営業部門とマーケティング部門は本来同じ目標を設定しており、マーケティング部門は顧客に成り得る見込み客を獲得し、営業部門は見込み顧客とのコミュニケーションを通じて売上を確保します。つまり、営業部門とマーケティング部門は協力するのが当然な関係にあるにも関わらず、対立してしまっている企業が多いのが実情です。

本稿では、営業部門とマーケティング部門の役割の違いや対立の原因を考え、そこから分かる最適な体制作りの方法をご紹介していきます。

 

営業部門とマーケティング部門の役割の違い

 

マーケティング部門の役割

マーケティング部門の役割は、見込み客の獲得、見込み顧客の育成、確度の高い見込み顧客の抽出です。

消費者の大半は、自社の商品やサービスを認知していない潜在顧客であり、その潜在顧客の中から購入や契約に結びつく見込み客をたくさん獲得してくることが目標です。

 

営業部門の役割

営業部門の役割は、商談を通して成約を得る事です。

顧客や取引先との商談で、自社製品やサービスの特徴、魅力、競合他社の製品やサービスとの違い、それがどのように顧客の悩みを解決するのかなどを説明し、製品やサービスを販売することです。

購買や契約する確率の高い確度の高い見込み客、すでに商品購入やサービス利用の経験がある顧客を対象とし、マーケティング活動によって抽出された顧客へ営業部門をかけます。

 

 

 

営業部門とマーケティング部門の対立の理由

 

営業部門がマーケティング部門に対して感じる事

営業部門の役割は、製品やサービスを顧客へ販売し、売り上げを伸ばすことで、企業によっては月ごとに営業目標が設定され、その目標を達成しようと必死になって営業活動をおこないます。

そのような中、マーケティング部門から「この新製品の営業部門も行ってほしい」と頼まれてしまうと、「目の前の営業目標を達成することで精一杯なのに、突然言われても対応する事なんて出来ない」となってしまいます。特に、「マーケティング部門は現場を知らない」といった印象を持っておられる方もおり、そんな相手から要求されるため、対立が生まれてしまいます。

さらに、今までとは異なる販売方法をマーケティング部門から要求されることもあります。毎日現場に出向いている営業部門からすると、「そんな方法では難しい」「口を挟まないで欲しい」と感じてしまいます。

営業部門からすると、商品・サービスをたくさん販売することで売上の伸ばそうとしています。一方、マーケティング部門は新しい手法を、売り上げを伸ばすことを考えている点ですれ違いが起きてしまい、それぞれの意見がぶつかってしまうのです。

 

マーケティング部門が営業部門に対して感じる事

マーケティング部門の役割は従来の販売方法の見直しや、製品に対して新製品や新機能、オプションなどを導入することです。

しかし、営業部門に対して売り上げが見込める新製品を多く販売してほしいと伝えても、目の前の営業部門で忙しいといわれてしまいます。マーケティング部門からすると、売上を向上させるために新製品や新しい販売方法などを提案しているのに、目の前の目標ばかり考えている営業部門に対して「営業部門は何も考えていない」といった不満を抱えてしまいます。

 

このような対立は、リードの獲得という場面でも起こります。

営業部門の目的は受注の獲得であり、直近の受注に繋がりそうな案件に注力します。反対にマーケティング部門の目的はリードの獲得であり、リードを多く獲得できる施策に注力します。

両者がうまく連携できていないと、営業部門は受注に繋がりそうな案件以外はフォローせず、マーケティング部門はリードの質に見向きもせずただ数だけを追い求める、という構図になってしまうのです。

 

営業部門とマーケティング部門の体制構築におけるTIPS

上記のように、営業部門とマーケティング部門の間に衝突が生まれてしまう事は珍しくありません。そこで、営業部門とマーケティング部門の連携を成功させるためにはどのような体制を構築すればいいのでしょうか。本稿では、4つの体制構築におけるTIPSをご紹介します。

 

コミュニケーションの頻度を高める(定例会の設定など)

営業部門とマーケティング部門を協力する体制を築くためには、コミュニケーションが互いに取れる環境を作ることです。コミュニケーションが無ければお互いを知ることはできませんし、理解もできません。例えば営業部門とマーケティング部門の定例会議を作り、そこで営業活動やマーケティング活動の進捗状況や、KPISLAなどのすり合わせを実施します。

 

営業部門とマーケティング部門で共通のプルソナを作成

ペルソナとはデジタルマーケティングでよく使われる分析手法の一つであり、自社にとって理想の顧客像をイメージし、そのイメージを中心に据えてマーケティング施策を展開していくというものです。

営業部門は顧客のことを熟知していますし、マーケティング部門は分析のプロです。両部門が協力し合えば市場に即したペルソナを作ることができ、マーケティング効果を高めてより多く質の高い見込み客を集めることができます。

結果として、注力する顧客層に部門間の齟齬が生まれなくなり、マーケティング部門が抽出した顧客に違和感を持つことなく営業部門が注力可能となります。

 

営業部門とマーケティング部門で役割分担と定義を明確にする(SLAService Level Agreement)作成)

SLA(Service Level Agreement)”とは営業部門とマーケティング部門の契約書のようなもので、最終的なゴールへの到達を各チームの責務を果たすために、各チームが達成する必要がある事柄と数字を明確にした文書です。

部門連携を成功させるためには、営業部門とマーケティング部門でSLAを作ることが重要になります。この合意形成によって、それぞれの部門が担う役割やマーケティング部門はどのような質のリードをどのくらいの量で営業部門に渡し、営業部門は受け取ったリードに対してどのくらいの期間をかけてどのように働きかけるかなどを双方で話し合い、決めていきます。

さらに、SLAを作成することで各チームが目標達成に向けて貢献していることを明文化し、さらに互いのパフォーマンスを追跡することも可能になります。

SLAは一度作成したら終わりではなく継続的な評価と改善を加えて、徐々に完成形へと近づけさせていくことが大切です。

 

営業部門とマーケティング部門で共通のKPI(評価指標)を設定

たとえ目指す最終ゴールが同じでも、営業部門とマーケティング部門が別のKPI(評価指標)を設定していると、部門間の摩擦や意見の衝突が生じやすくなります。

営業部門とマーケティング部門が一蓮托生のKPI設計を行うことで、それぞれが担う役割と責務、期待される役割が明確になります。具体的に数値化された共通の目標を持つことで、実現に向けた協力体制が生まれ、部門間連携の成功につながっていくのです。

 

まとめ

マーケティング部門と営業部門の対立は定番のテーマです。

マーケティング部門の役割は、見込み客の獲得、見込み顧客の育成、確度の高い見込み顧客の抽出であり、営業部門の役割はマーケティング部門が抽出した顧客に対して商談し、成約を得る事です。つまり、営業部門とマーケティング部門は連携して売上向上に貢献しなければならないのですが、実際にはうまくいってないのが多くみられるケースです。

その解決には、双方理解の為に定例会などを設定してコミュニケーションの頻度を高める事、営業部門とマーケティング部門で共通のプルソナを作成する事、営業部門とマーケティング部門で役割分担を明確にする事、そして営業部門とマーケティング部門で共通のKPIを設定する事がポイントとなります。

 

【参考】

 

吉田暁壮

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。