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2021.05.05

【対談インタビューvol.2】夢を実現した2人のスペシャリスト -活躍の道は、ひとつじゃない-

アーツアンドクラフツは、『つくるの力で、世の中をもっと豊かに』をヴィジョンに、さまざまなものづくりに関わる人々とテクノロジーの力を掛け合わせ、これまでも多くの『ともに、つくる。』を提案してきました。その活動の一環として、このたび、新たなプロジェクトが始動。それは働く女性を応援するもので、2021年夏、その取り組みの一つとして1冊の絵本を制作することになりました。

「好き」を諦めない。夢に向かって頑張る女性たちを応援する絵本プロジェクト開始します!

ウーマンクリエイターズカレッジ代表 松本えつを × ith代表 高橋亜結

今回共同での絵本づくりに携わっていただいたウーマンクリエイターズカレッジの代表である松本えつをさんと、アーツアンドクラフツが運営するブランドの一つであるオーダーメイドの結婚指輪工房『ith』の代表・高橋亜結が対談し、それぞれに幼少期からの夢を叶えた2人の仕事観や絵本に込めた想いを3回にわたって紹介していきます。

第1回は、「ウーマンクリエイターズカレッジ」を主宰する松本えつをさんと、「ith」の代表を務める高橋の仕事の原点をご紹介しました。今回はそれぞれの分野の第一線で活躍する一方、学校やブランドの代表として重責を担うことについて話をうかがっています。また働き方が多様化する中、好きなことを続けていくための秘訣も聞いてみました。

 

守るべきものが増えたことで感じるプレッシャー

2009年、松本さんはもっと多くの人が表現するスキルを身につけられる場を作ること、そして、もっと多くの人が表現したいものを自由に発表でき、積極的に社会に出られる機会を作りたいと、信頼できる仲間たちと「ウーマンクリエイターズカレッジ」を設立しました。

「ウーマンクリエイターズカレッジ」は、『働きたいを叶えるプラットフォーム』として、さまざまなサポートを行っています。絵本を作りたいと思う人に向けて、絵の技術的なことはもちろん、企画立案から編集・コピーライティング・デジタルソフトを用いたDTPなどの制作技術・営業活動、さらには契約や著作権などの法務関連まで、プロのクリエイターとして活躍するための一連の流れを丁寧に指導していきます。またフリーランスは思った以上に孤独を感じるもの。松本さんは同じクラス内での交流はもちろん、卒業生たちが代をまたいで交流できるように積極的に懇親会や情報交換の場を設け、クリエイター同士の繋がりを促しています。その繋がりは、お互いの悩みや不安を共有するとともに創作活動の励みとなり、のちに仕事となって花を開くことも。

 

松本さん(以下、松本)

「フリーランスとして独立したときと同じく、学校設立時も不安やプレッシャーはありませんでした。あの頃は社会に対する怒りでいっぱいで、それが原動力でした()。むしろ、今の方が不安やプレッシャーを感じているかもしれません。それはたぶん規模感の違いですが、設立当時は仲間数人とそれぞれの責任下でそれぞれの仕事をこなしてきた。関わる人の範囲も限られていましたし。でも10年が経ち、卒業生を始め、外部のクリエイターや講師の方々など関わる人たちが増えていき、今はその全員が自分の好きな仕事を続けていけるように、私はその礎をしっかり守っていかなくてはいけないと思っています。設立当時と比べると、今は守るものが自分の力量以上に多いように感じています」

独立したことで自分の得意・不得意が明確に

松本さんが現在の拠点である東京・四谷に「ウーマンクリエイターズカレッジ」を移したのと時を同じく、2014年に高橋もジュエリーメーカーを辞め、独立を果たしました。

高橋

9年近く職人として働いてきて、20代のうちに独立したらどうなるんだろう、どうなるかやってみようかなと思って独立しました。一人で会社を設立し、現在ith吉祥寺があるビルの一室を借りて仕事を始めました。私もそれほど不安は感じていませんでした。ただ、私は自分の作ったものを発表したり、お客様を集客する、いわゆる営業がとても苦手で…。だから、独立はしたものの、やっていることはメーカーに勤めているときとほとんど変わらず。でも、会社員とは違って作業しなければお金が入らないわけですから、当時は忙しいだけで金銭的な余裕はまったくありませんでした。独立してから2年くらい経ち、このままではどうにもならないと思いました。そのころが一番不安だったかもしれません」

ちょうどそのころ、ビルのオーナーである「アーツアンドクラフツ」から「一緒にやらないか」と声が掛かりました。それは、高橋が思い描く「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」というスタンスを変えることなく、より多くの人たちに世界でたった一つの指輪を提案していこうというものでした。

 

高橋

「最初にその話を聞いたときは警戒しました()。こき使われたらいやだなと思って()。でも、そうは思いつつも、もうお金も尽きていましたし、この話に乗らなかったら、このままでは生きていけないとも思っていたので、よし、やってみようと思ったんです」

 

こうして、2016年、アーツアンドクラフツの一事業としてオーダーメイドのブライダルジュエリーブランド「ith」が誕生しました。今では全国に11カ所のアトリエを構えるに至り、アトリエでは高橋がこれまで築き上げてきたスタイルを受け継ぐつくり手が数多く活躍しています。そんなつくり手の模範となり、お客様への接し方やデザイン提案のアドバイスを送るのも、代表である高橋の大事な仕事の一つになっています。

 

高橋

「私も松本さんと同じように、今の方がプレッシャーを感じていますし、常に戦っている感じがしています。失敗はしましたが、独立して一人でやっていたときのよさも知っているので、今は少しずつスタッフが増えていく中で代表としてやっていくことの難しさも感じています」

 

 

自分の好きなことを副業に。多様化する働き方

ここ最近は「働き方改革」やコロナ禍の影響もあり、働き方そのものが見直されつつあります。多様化が進む働き方の中には、本業のほかに自分の好きなことを仕事にする、いわゆる、副業・ダブルワークもあります。「ウーマンクリエイターズカレッジ」の卒業生の中にも、日中は企業で会社員として働き、空いた時間を利用して創作活動する方もいるといいます。

 

松本

「大人になると、捨てられるものと、簡単には捨てられないものがあると思います。今の時代は自由に個人で発信したり、作品を発表することができますから、本業があっても創作活動は可能です。何かのタイミングで副業が本業に変わりつつあるとわかったら、そこでワークバランスを変えていけばいいのです。ときに私たちは、0100かと極端に考えがちですが、それは危険。会社はいつでも辞められますから()。職場環境や人間関係が嫌だからという理由だけで辞めるのは、本当にもったいないと思いますよ」

 

高橋

「副業でも続けていけるのであれば、それは会社を辞めるよりもずっといいことだと思います。会社を辞めたら自分の好きなことに専念できると思いますけど、実際はそんなことは全然ないので()。長く続けていると道が拓けたり、周りが声をかけてくれることもありますから」

 

松本

「そうですね、ある程度、精神的に安定したものがないと余裕もなくなるし、それが作品にも反映されてしまいます。誰だって精神的に追い詰められた絵本やジュエリーは嫌ですよね()。そういう意味でも、絵だけではなく、デザインやDTPのスキルがあると仕事にもなるし、自分の作品づくりにも役立てられるのでおすすめなんです。でも、そこはあまり認知されていないんですよね

 

vol.3へ続く

vol.1  “好き”を天職にする

<高橋亜結プロフィール>

自身のアトリエから生まれたオーダーメイドの結婚指輪工房「ith」のブランド代表。15歳から金属工芸全般(彫金・鋳金・鍛金)を学ぶ。山梨県立宝石美術専門学校卒業後、宝飾メーカーの工房で8年半修業を経て独立、吉祥寺にアトリエを開く。高橋自らデザインし、試作を重ねた結婚指輪のコレクションは、シンプルなものから個性的なものまでバリエーションは幅広く、その数は70種を超える。ブランドコンセプトである「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」という想いをもとに、これまで手掛けた婚約・結婚指輪の数は1000組以上にも上る。現在は、新作の商品開発の他、新たに加わったつくり手たちの指導にも関わるなど、ブランドの顔として社内外に向けた活動している。

<松本えつをプロフィール>

女性絵本作家、イラストエッセイスト。日本大学芸術学部卒業後、編集プロダクション勤務、牛乳配達員を経て、1998年10月 サンクチュアリ出版入社。1999年2月 同社副社長に就任。その後、編集部内で主に女性向けイラストエッセイ等を手掛ける傍ら、いくつかの出版社より自著を出版。また自著に登場するキャラクターの定例個展や描きおろしイベントを開催。2005年 役員を降り、フリーランス契約に。2007年 完全独立し、デザイナー・筆者・イラストレーター・出版プロデューサー等の領域で本づくりにおけるマルチプレイヤーとして活動。
2009年9月、絵本作家の養成+プロモーション活動の担い手である「ウーマンクリエイターズカレッジ(旧東京クリエイターアカデミー)」を設立。専属講師に就任。現在までに卒業した女性クリエイター、アーティストは60名以上にのぼる。絵本で世界を変えられると本気で信じるアーティストたちを率い、創作活動に励む日々。

5F, 1-3-18 Hiroo, Shibuya-ku, Tokyo
150-0012 Japan

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