KNOWLEDGE & INSIGHTS

[ith10周年インタビュー#5]産休・育休経験者が語る、仕事復帰と育児の両立で見つけた大切なこと -前編-

 

ブランド設立から10年を迎えた今、ithは国内外にアトリエ15店舗を展開し、たくさんのスタッフがものづくりに携わるようになりました。これからもスタッフが安心して長く働けるように、新たな取り組みとして職場の環境づくりにも力を入れています。今回は産休・育休の取得経験のある代表の高橋さん、大宮アトリエのつくり手・松岡さん、そして戦略企画室の矢野さんを迎えて、産休中・育休中に抱いた職場復帰の思いや、仕事と育児を両立するための心構えなどをお聞きしました。

復帰を後押しした、家族の理解と周囲のサポート

 

―出産前、子育てしながら働くことに不安はありましたか?

松岡さん(以下、松岡) 私が産休に入るときは、そもそもつくり手の産休取得者が一人しかいませんでした。その方は育休が明けるとの業務に復帰したので、当時はつくり手として復職した前例がなく、不安はありました。でも、再びつくり手として働くことが叶うと分かり、嬉しかったですし、好きな仕事なのでワクワクしました。

 

矢野さん(以下、矢野) 私も不安はありました。変化のスピードが早い会社なので、新しいことに対応できるだろうか、仕事と育児を両立できるだろうかと心配でした。でも、復帰してみたら、家族も同僚たちも助けてくれるので、復帰前の不安はなくなりました。

 

松岡 私は大宮のアトリエにつくり手として週3日勤務していますが、矢野さんと同じように周りのスタッフたちが全面的にサポートしてくれるので助かっています。

 

高橋さん(以下、高橋) 会社としても性別に関係なく、育休取得から復帰に向けてサポートしてくれるし、それぞれの状況は理解してくれますよね。

 

松岡 そうですね。だから、今後、後輩のつくり手が育休から復帰したら、今まで助けてもらった分、次は私が助ける番だと思っています。

 

―復帰にはご家族の協力が欠かせないと思うのですが、皆さんの場合はいかがですか?

 

高橋 私と夫は元々働き方のサイクルが違うので、家で過ごせる時間は基本すれ違いなんです。だからこそ、出産のタイミングを機に子どもが生後6カ月くらいまで、夫も同時期に育休を取り、家族三人の時間を作りました。復帰後は、どうしても子どもともしくは私の二人ずつで過ごす時間が多くなるので、なるべく夫婦で休みを合わせて、家族三人の時間を作るようにしています。

 

矢野 私は土日休みを希望しているので、バックオフィスからithを支える業務異動しました。最近になって、平日日中に限り、オンライン接客も担当することになり、久しぶりにお客様とお打ち合わせして楽しさとやりがいを感じています。夫は勤務地が遠いことを心配しつつも、基本的に自分のやりたいことをしてほしいというスタンスです。今は料理以外の家事を手伝ってくれるなど、お互いに協力し合っています。

 

松岡 我が家も気づいた方が家事をするという方針です。たとえば、私が子どもを寝かしつけている間、夫が掃除をしてくれたり。

 

高橋 我が家も明確なルールは設けていません。ただ夫が料理や掃除が好きなので、進んで家事をしてくれるので助かっています。

   

復帰して気づく“社会とのつながり”と“子どもとの時間”の重要性

 

―産休や育休の間、ithのことや仕事のことを考えることはありましたか?

 

松岡 お客様からのお問い合わせメールは、スタッフが代理で対応してくれていましたが、それでも気になっちゃって…。ときどき、メールのチェックはしました。

 

高橋 私はメールを見たら気になってしまうので、任せているのだから見ないと決めていました(笑)。

 

矢野 私も育休中はあまり不安になることもなく、育児に専念させてもらいました。

 

 

―仕事と家事を両立するために意識していることはありますか?

松岡 家事を先取りしてやることですね。夜のうちに洗濯も掃除も終わらせて、次の日のご飯も作って寝るようにしています。

 

高橋 私は逆に無理をしないことかな。全部を完璧にこなすのは絶対に無理だし、心も身体も壊れちゃうので、今は楽な手段をとることも大事だと自分に言い聞かせています。それで余った時間は子どもと遊ぶようにしています。

 

矢野 私も一人で頑張りすぎないことは意識しています。諦めることも大事ですよね。

 

松岡 お二人と違って、私は平日の午前中に自由時間があるので。そこで家事をして、余った時間で娘の洋服を作るのが、ストレス解消につながっていますね。

 

 

 

仕事を再開してから、お子さんと過ごす時間で心がけていることはありますか?

 

松岡 子どもとの時間を楽しもうと思って、たくさん会話するようになりました。

 

高橋 私は子どもとの時間を大切にしたいので、家では仕事をしないようになりました。あとは子育て論になってしまうのですが、自分の意思を持てる子になってほしいので、必ず「これとこれ、どっちがいい?」と聞いて、最後の決断は子ども自身が行えるようにしています。

 

矢野 私は一緒にいるときは愛情を伝えるように心がけています。そして、最後まで話を聞く(笑)。途中で突っ込みたくなることも多いのですが、とりあえず最後まで聞くようにしています。

 

子育てを経験する中で、新たに実感した仕事と指輪への思い

 

―仕事復帰してよかったと思うことはありますか?

 

松岡 子どもとずっと話していると、常に子ども目線で会話を続けることになります仕事を再開してから、自分にとって大人同士同じ目線で話すことが大事な時間なんだと気づきました。

 

矢野 私はみんなに「おかえり」と言ってもらって、ここにも私の居場所があると感じられたことが嬉しかったですね。あとは子どもと過ごす時間が短くなった分、その時間がより大切に感じられるし、楽しいと思うことが増えました。

 

高橋 私も家族の時間と仕事の時間のメリハリがついたかな。

 

―これまで指輪づくりをサポートしてきた皆さんに改めて尋ねますが、妊娠・出産と大きな人生経験をした今、改めて結婚指輪はどのような存在になっていますか?


矢野 私はお守りのような存在です。結婚指輪を身に着けていることで、一人じゃない、家族なんだという実感が得られています。宝物が増えていくような感覚ですね。

 

松岡 私も同じような気持ちです。あと私は結婚指輪のほかに、娘が20歳になったときに渡すアニバーサリージュエリーを着けています。娘は今すぐにでも欲しいみたいですが(笑)、私は今からそれを渡す日を楽しみにしています。

 

高橋 私は結婚指輪を作った当時のことをよく思い出します。私たち夫婦だけの生活では「いいよ〜」と大抵相手を尊重できていたけれど、子供に対することや家事の優先など、家族が増えて考え方が違うことに気づかされる場面も増えました。結婚指輪を見て、謙虚さを失わない自分でいたいと思っています(笑)。

 

…後編へつづく

 

 

写真左:高橋さん[ithブランド代表]

写真中央:矢野さん[戦略企画室]

写真右:松岡さん[大宮アトリエ]

 

【プロフィール】

高橋さん[ithブランド代表]

2014年、ジュエリー職人としてith吉祥寺アトリエを構え、接客と指輪づくりの両方に携わる。現在も週末は自らアトリエで接客を行うなど、ithを最前線で体現する。指輪は「着ける人こそが主人公」ということを大切に考えており、オープン当初からお客様のために何ができるかを常に考え続ける姿勢は変わらない。2021年8月から産休を取得し、2022年6月に復帰。3歳の女の子の母として、現在はワークライフバランスを取り入れた働き方へのシフトチェンジを模索中

 

矢野さん[戦略企画室

2018年9月入社。幼少期からウエディング業界に興味があり、お客様の幸せに寄り添う仕事がしたいと、フリーペーパーの広告企画営業からithへ転職。横浜元町アトリエでつくり手としてキャリアをスタートし、吉祥寺アトリエの主任を務め、実績を重ねる。2020年1月より産休を取得し、2024年4月に戦略企画室の一員として復帰。3歳の男の子と1歳の女の子の育児と仕事の両立を図る。

 

松岡さん[大宮アトリエ

元々顧客としてithを訪れ、ブランドの思想や温かな接客、雰囲気を気に入り、結婚指輪をオーダー。その後、自身もお客様とともに大切な結婚指輪をつくり上げる仕事を志望し、2018年11月入社。趣味は洋服をハンドメイドすること。2020年7月より産休を取得し、2022年10月にithでは初めてとなるつくり手として現場復帰。現在は4歳の女の子の子育てをしながら、週3日アトリエに勤務している。