これまで5回にわたり、ithのスタッフのブランドへの思いや働き方を紹介してきました。今回は、つくり手からマーケティング開発部へキャリアチェンジした永田さんが聞き手となり、つくり手時代をともに過ごした同期や後輩たちにインタビューを決行。ithに入社したきっかけから、お客様と接していく中で学んだこと、改めて、世界でたったひとつの指輪を作るという、つくり手としての喜びや責任をたっぷり語っていただきました。
永田さん(以下、永田) 僕は、学生時代の結婚式場のアルバイト経験から、ブライダルの仕事に携わりたくて、新卒からブライダル関係の会社を数社経験し、2018年にithへ転職しました。畑中さんと雨宮さんは、2021年新卒入社でしたよね? 就活のために学んだことやチャレンジしたことはありますか?
畑中さん(以下、畑中) 私は職人になりたくて宝飾専門学校に進学しましたが、当時はコロナ禍で求人数は例年よりも少なくなると言われ、視野を広げることにしました。その後は就活を意識し、会社経営や競合他社を学ぶゼミなどに参加しました。今振り返ると、コロナ禍がきっかけでしたが、ithに入社し、天職と思える仕事に巡り合うことができました。
雨宮さん(以下、雨宮) 私はウエディングプランナーを目指して、ブライダルの専門学校に通っていました。でも畑中さんと同じく、コロナ禍で採用数が激減したため、視野をブライダル全般に広げて就活しました。だから、最初はオーダーメイドの指輪指輪の制作に携わるとは全く思っていなかったんです。でも、お客様と一緒に対話しながら指輪を作るithの接客スタイルや、「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」という理念に共感し、入社を志望しました。
佐藤さん(以下、佐藤) 僕は2018年に中途採用で入社したので、永田さんとは同期です。その後、2023年にもっと広くウェディングに関わりたいと思い、一度退職しました。転職後は、ブライダルメディアでお客様の結婚準備をトータルサポートしていましたが、紹介だけで終わる業務に少しずつ違和感を抱くようになりました。ithを離れたことで、改めて、お客様の思いを指輪として形に残す、つくり手の素晴らしさを改めて実感して、昨年、復職しました。
永田 皆さんは入社前と後で会社にギャップを感じたことはありますか? 僕は、WEBなどで見るアトリエのイメージとは違い、研修の多さに驚きつつ、きちんと教育体制が整っていることに安心感を抱きました。あと会社の成長や変化のスピード感は想像以上でした。次々と新しいアトリエがオープンするし、それに合わせて社内異動はあるし。最初はそれについていくのが大変でした。
畑中 私はつくり手個人の裁量が多いことに驚きました。一般的なジュエリーショップでは、店頭で販売員が商品を紹介しますが、ithではつくり手がお客様を導きながらすべてを判断していきます。指輪制作を学んだ私でも大変だったので、雨宮さんはもっと大変だったのではないかと思います。
雨宮 確かにプレッシャーは大きかったですが、先輩や職人が助けてくれたので、私は目の前のお客様に集中するだけでした。今も楽しく働けているのは、その環境のおかげだと思います。その中で私が感じたギャップは、つくり手には話す力だけではなく聞く力のバランスが必要だということです。お客様の話を伺った上で、どんな言葉で何をお伝えするか。その取捨選択のプロセスが奥深く、難しさと楽しさがありますね。
佐藤 僕のキャリアは営業からスタートしています。前職では、各人がコミットすべき数字を与えられ、結果が求められる環境でした。一方、ithでは商品を売る感覚よりも、お客様の悩みや思いを汲み取りつつ、ithでできることを反映させながら指輪を提案する感覚が強く、お客様と向き合うスタイルが全く違いましたね。
永田 つくり手はいわゆるジュエリー販売員に見られがちですが、お客様のストーリーや漠然としている指輪の要望を汲み取り、希望を引き出す力が求められるので、カウンセラーのような側面を持ち合わせているところがありますしね。
永田 佐藤さんはithに復職し、畑中さんと雨宮さんは4年目に主任になりました。これまでの仕事で印象的なエピソードはありますか?
畑中 2年ほど前に、指輪を探し始めたばかりのお客様が表参道アトリエにご来訪されたのですが、そのときはデザインの方向性を決めて、「またいつか絶対に来るので覚えておいてください」とおっしゃって帰られたんですね。半年後に本当に再訪してくださり、「前回相談したデザインが頭から離れなくて」と、初回時のデザインで結婚指輪を作られたんです。さらに、先日そのお客様が結婚式の映像を持って、わざわざ異動先のアトリエまで私を訪ねてくださったんです。アトリエ内で試写会をし、その映像を見た私は感動して号泣してしまいました(笑)。
佐藤 そのエピソードは全スタッフで共有しましたね。
畑中 はい、報告する機会があったのでお話しました。お客様にとって指輪選びは、一生でとても貴重な機会だということを実感しましたし、すごく素敵な仕事に携わらせてもらっていると思いました。
佐藤 僕は、担当したお客様の結婚式でリングボーイを依頼され、バージンロードを歩いたことがあります。このお客様は、お二人で別々のブランドの指輪を購入することも考えていたそうなのですが、「佐藤さんがいるから二人ともここに決めた」と教えてくださいました。お二人がお式を挙げるタイミングで依頼され、上司からもせっかくだからと勧められてお引き受けしました。ちなみにとても緊張して、そのときの記憶がほとんどありません(笑)。
雨宮 私は、ithの10周年撮影イベントで、2年ぶりにお客様に再会したのですが、お子さまとご一緒の姿がとても幸せそうで……。私はその場限りの接客はしたくなくてithのつくり手になったので、こうしてお客様の未来まで見届けられることが嬉しくて、号泣してしまいました(笑)。お客様は私が泣いている姿を見て笑っていましたし、スタッフからも「泣きすぎ!」と言われました(笑)。
永田 これまでithで働いて、仕事の壁を感じたことはありますか?
僕は、一時期、名古屋と東京との転勤で役割が変わるたび、新たな課題が生まれる気がしました。その壁を乗り越えるには、自分の弱さを一人で補うのではなく、周囲に頼ることも大切だと知り、そのバランスの取り方を少しずつ学びました。
佐藤 それはよく分かります。僕も多くの仕事を兼任していて、上手にコントロールするのが難しかった時期がありました。とにかくたくさんの人に相談することで、乗り越えることができました。
雨宮 私は、2年目ぐらいに、お客様と一緒にデザインで悩んでしまい、理想に導けない接客が続いてしまったことがありました。お客様に同調しすぎて、状況を客観視する判断力が不足していたのです。それに気づいてからは、先輩方からアドバイスを受けたり、お客様が指輪を着けた姿を一緒にイメージすることで対応できるようになりました。
畑中 私がすごく悩んだのは、表参道アトリエに配属され、フルオーダーやリメイクも手がけるようになったときです。物理的に作れるかどうかだけでなく、長く着けていく結婚指輪としてのクオリティを保てるか、つくり手だけでは判断できない時もあり、大変でしたね。職人や代表の高橋さんに相談しながら、少しずつ知識を得る事で克服していきました。無事に完成した指輪を見たお客様から「担当が畑中さんで良かった」と言ってもらえたことで、とても前向きになれました。
写真左:永田さん[マーケティング開発部 コンテンツ&コミュニケーショングループ
写真中央左:佐藤さん[銀座アトリエ]
写真中央右:雨宮さん[横浜元町アトリエ]
写真右:畑中さん[柏アトリエ]
【プロフィール】
雨宮さん[横浜元町アトリエ]
2021年新卒入社。ウエディングプランナーを目指し、2年制ブライダル専門学校に入学。しかし、コロナ禍で企業の採用が減少したため、ブライダル全般へと視野を広げる。その中で、形として一生残る指輪に興味を持ち、ithのつくり手としての在り方や大切にしている想いに共感し入社。現在はアトリエの主任として、接客業務のほか、新卒採用などに携わる。
畑中さん[柏アトリエ]
2021年新卒入社。4年制宝飾専門学校で、彫金など伝統工芸の技法やジュエリーデザインなどを学ぶ。学生時代から「誰かに贈るものを作りたい」という気持ちが強く、また接客業のアルバイト経験があったことから、ithのつくり手に興味を抱く。ithの理念に感銘を受けるとともに、学校で得た知識と技術を活かせると考え、入社。2024年、アトリエ主任に就任。
佐藤さん[銀座アトリエ]
2018年中途入社。営業職に就いていたが、さらなるやりがいを求めて転職を決意。ithの求人を見て、男性では珍しい職種であることに加え、お客様とともにデザインを考え、一生物の指輪を作ることに魅力を感じ、ブライダル業界未経験で入社。2023年に一度、ブライダルエージェントの会社へ転職するも、お客様の思いを指輪として形に残すつくり手の魅力を再認識し、2024年に復職。現在はつくり手として実績を重ねる。
永田さん[マーケティング開発部 コンテンツ&コミュニケーショングループ]
2018年中途入社。前職では、ブライダル写真、映像の会社に勤務し、よりエンドユーザーとの接点を体感できる仕事を求め、転職を決意。栄アトリエのオープンメンバー募集の求人を見つけ、自社工房を持ち、制作から販売まで自社管理するithに魅力を感じ、地元・名古屋のアトリエ勤務からつくり手のキャリアをスタート。5年経験を積んだ後、マーケティング開発部に異動し、コンテンツ制作を通じてithの魅力を広めている。