KNOWLEDGE & INSIGHTS

PMOにおけるコミュニケーション事例

【執筆のきっかけ】

若手の自分がうまくプロジェクトを回すことができるのだろうか。。。

クライアントと円滑なコミュニケーションが取れるのだろうか。。。

 

特に複数ステークホルダーとのコミュニケーションが必要なプロジェクトに参画した時に、円滑なコミュニケーションをとることができるのかということは不安要素として挙がってくると思います。

コミュニケーションは人と人とがやり取りをするうえで必ず発生するものではありますが、当たり前のようであるものの奥が深く、想像以上に大切なことだと筆者は考えます。

現在、筆者が参画しているプロジェクトでは、クライアントはその道30年近くの大ベテランの人で、プロジェクトの対象領域については会社の中でもトップクラスに熟知しており長年その業務をこなしてきた人です。対して、筆者は社会人歴も業界に対してもクライアントには及びもしません。しかし、コンサルタントとして、PMOとしてプロジェクトを成功に導くためにそれは言い訳にはなりません。年齢の若さや経験の浅さをカバーするための要素として、円滑なコミュニケーションを実現することで、クライアントの要望や期待を取りこぼすことなく吸い上げ、クライアントに価値を提供して満足していただけるのではないかと思います。

 

こちらの記事では、若手としてプロジェクトに参画している方や、コンサルタント業界(特に弊社)への転職を検討している方へ向けて、若手でもコミュニケーションの取り方の工夫ひとつで、クライアントへ与える安心感や感動をより与えることができる自信に繋がるきっかけとなることを目的で執筆しております。

 

以下では筆者が参画したプロジェクトでの経験をもとに、コミュニケーションがカギとなった事例と実際の工夫、その結果を紹介していきます。同じ状況でもその行動が100%正解とは言い切れないですが、参考になる部分があれば幸いです。

 

【案件概要】

冒頭で少し触れましたが、参画プロジェクトのクライアントは大手医療機器メーカーです。製品開発の一部領域のPMOを担当する案件であり、プロジェクト体制は、クライアントが2名、そのほか協力会社が数社参画しています。

その中でもクライアント会社の担当者(以下Aさん)は会社一筋勤続30年近くであり、プロジェクトの対象領域については長年担当しているため、社内でもトップクラスの知識・経験をお持ちの方です。

業務としては、会議のファシリテーション、協力会社の作業進捗確認、プロジェクトスケジュール作成の補助、資料作成を行っています。

ルーティン業務の中にクライアントから突発的に依頼されたことへの対応もあります。

 

PMOとは)

そもそもPMOとは何なのかご存知でしょうか?

一般社団法人日本PMO協会によると、PMOとは『プロジェクトマネジメントオフィス(Project Management Office)』の頭文字をとった略語であり、プロジェクトを進めていく上で発生しうる業務の支援を行う役割とされています。

 

PMOという役割は、自社内の人材に担わせるほかに外部人材を雇って担わせることもあり、コンサルファームへの依頼を行われることがある役割です。外部人材を雇う理由としては、単純なリソース不足(社内での人員不足・PMOをできる人材が不足)のほかに、プロジェクトを成功に導くための横断的かつ俯瞰的な視点を補完することが理由として考えられます。

 

その他、コンサルタントにはPMOに求められる情報整理やスケジュール管理のみならず、戦略策定や調査分析などの多彩なスキルがあるため、単純なまとめ役以上の活躍が見込めます。

 

実際に、PMOの受託を行うサービスやクラウドソーシングでの案件依頼も確認することができるため、コンサルタントを始めとした外部人材のニーズが高まっていることが伺えます。

 

PMOの役割や詳細については、弊社の記事である「PMOとは何か?その役割と成果を上げるためのコツを解説」をご参照ください。

 

【事案と工夫の紹介】

ここからは、筆者が実際に経験した事案と、乗り越えるための工夫を紹介していきたいと思います。

似たような状況は多々あるかもしれませんが、人と人とがやり取りするため、100%の正解はないと思っており、相手の性格や癖、その場の状況に応じて臨機応変に対応していくことが重要でもありますので、ご参考程度にしていただけますと幸いです。

 

(ケース①:クライアントとの認識合わせ)

Aさんからとある取り組みに対する効果指標管理シートの見直し依頼がありました。初めの依頼では、今までの算出指標が各取り組み別に定められていたため共通したものがないことから標準化を行い今後使用者が変わっても同等の水準で運用できるようにしてほしいという内容でした。

 

しかし、定例会議内で報告を行うごとに依頼内容が少しずつ変わっていきました。

依頼内容が変化してくることは何も珍しいことではないのですが、伝え方の問題でお互いの認識に食い違いが発生していました。もとより変わった後の依頼内容であったと認識しているため、ただ依頼を聞いているだけでは認識の齟齬が発生してしまったり、Aさんの期待値に応えられなくなってしまったりするのではないかと感じました。

 

Aさんの反応に対して「自分は依頼内容に対して応えている」と主張することは簡単にできてしまいますが、それがクライアントであるAさんに対して価値を提供できるのかと言ったらできないと私は考えました。

そこで私がとった行動は以下です。

  • 報告を行うときは、依頼内容の整理を行ってから作業報告を実施
  • 複数回に渡って依頼内容が変化しているのであればその経緯も説明
  • 報告後Aさんからのコメントをもとに次に何をすべきなのかの認識合わせを実施
  • 会議後決定事項と次のアクションをチャットにて報告

この4点を徹底しました。

 

当たり前のように感じてしまうかもしれませんが、とても大切なことであるにもかかわらず、実は完璧にできていないことを痛感しました。

 

まず、なぜその報告を行うのかを明確にすることが重要です。

もちろん依頼した本人が分かっているものだと思うかもしれませんが、本人もすべてを覚えているわけではありません。時間が経てば考え方や方針が変化してくるのは当たり前です。最終着地点と作業の目的を再確認することでその後の報告でも認識のずれを防ぐことができます。

さらに、複数回に渡っての変化の経緯を確認することでクライアントに安心感を与えることができます。

今回の依頼内容の変化は

算出項目の標準化をしてほしい⇒現状の算出項目をベースに計算フォーマットを作成してほしい⇒そもそも今の効果算出表は以前作成したものであり、現在の内容に合わせて項目の設定および数字の見直しを行いたい。と変化していきました。最終的な目標である今後誰が使用しても同等の水準で運用できるようにしたいということは変わってはいません。

恐らく、この状況で「依頼に対して作業を行い、最初の依頼と今言われたことは変わっています」なんてことを素直に言っていたら、Aさんと揉めてしまいプロジェクトの成功ないしAさんへの価値提供はできていなかったでしょう。

 

(ケース②:質問の工夫)

続いてはAさんとの直接のやり取りでのケースです。Aさんからチャットや口頭で作業依頼をもらうことは多々あります。しかし、一度のやり取りで目的や中身を全て理解することが難しい場合があります。「これってどういう意味?」」「何について言っているんだ?そもそも目的は何?」となった時に単に聞き返したとしても相手からは「なんでわからないんだ」「そもそも何も分かっていないのではないか、実力不足ではないのか」と思われてしまうことがあります。

今回の場合相手はベテランであり、前提や内容も理解できていますが、私自身も同様の理解をして認識を合わせなくてはいけません。

そこで私がとった行動は

  • ただ聞き返すのではなく「これはこういうことすることで合っていますか?」と自分の認識を提示した上での確認質問
  • 「目的は○○で合っていますか?」といった風に、前提条件を確認してお互いの認識をそろえる

この2点を意識しました。

 

「これってなんですか?」といった聞き方をすると「自分で考えて」「何も分かってないね」と思われてしまうことがあります。これではクライアントからの期待値は大きく下がってしまい、作業をしても不安を残させてしまいます。

自分の中で依頼内容を咀嚼したうえで、確認の質問をすることで相手も伝えきれなかった部分があることの再認識や、一方的ではなく双方でのやり取りを行うことができます。

しかし、全てそういうわけでもなくクライアント内独自の言い回しや固有名詞については、率直に聞き返すこともあります。(これは相手に聞かなくては絶対正解が出てこないからです)

 

前提条件の確認は必ずすべきことだと筆者は考えています。

前提条件を確認しないと何が起こるのかというと

  • 作業自体がズレてしまい、クライアントの期待に応えられない
  • ただの作業員になってしまう

この2点です。

 

クライアントは言葉に出さずとも、依頼をするときは必ず目的があります。同じ作業内容だとしても、目的を理解していなければ作業内容がズレてきても気づくことはできません。

結果として、クライアントの期待に応えられず評価は下がってしまいます。

しかし、目的を理解していることで、作業内容がズレてしまっても目的と照らし合わせることで作業のズレに気づくことができるため、早い段階での修正が可能となります。

 

次に、作業員にならないことです。コンサルタントとしてプロジェクトに参加しているため価値を提供していかなくてはいけないと考えています。そもそも「価値」とは何なのか。

依頼内容に応えてアウトプットを提出するだけでは「価値」とは言い切れないと思っています。クライアントからの期待値以上のモノを出せてこそ「価値」ではないでしょうか。

実際に「価値」を出すことは簡単なことではありません。しかし、それを意識するかしないかで自分自身の動きもですが、相手に伝わる印象というのも変わってきます。

意識するかしないかは自分自身ですし、難しいことではなくコミュニケーションの取り方で解決できることです。

 

 

ケース①と②の結果、Aさんからの印象は良い方向に行ったと感じています。

学んだことは

  • お互いの認識を揃えるために綿密な確認を実施する必要がある
  • 作業の報告をする場合は、依頼に至った理由と今までの経緯をお互いに確認し作業目的を確認する
  • 質問をするときは、ただ聞き返すのではなく自分の理解も提示した上で確認を行う

 

プロジェクト参画当初は「若いね」なんて言われ、直接言葉にはされていないにしろ、少なくとも不安を与え、期待値は低かったのではないかと感じました。その要因もあり初めは依頼を受けて作業し報告をしても「ありがとう」「これで大丈夫」といった反応でした。しかしコミュニケーションの取り方を工夫したことで作業の報告時や日常の会話でも「さすがだね」「なるほど、そういう見方もできるね。助かる」といった反応に変わっていきました。

もちろん、プロジェクト成功に導くことにもつながりますが、自分の自身ややりがいにもつながっていきました。

 

同じ内容でもコミュニケーションの取り方次第で相手からの信頼や期待というのは変わってきます。そこに年齢も経験値も関係ありません。そのことを今回のプロジェクトで実感しました。

 

【最後に】

筆者は年齢も社会人歴もコンサルタント歴もまだまだ浅いです。対するクライアントの担当者はほとんどが自分よりも年齢は上で、社会人歴も経験も豊富です。

しかし、プロジェクトに参画するうえでは、年齢も歴もいいわけにはなりません。

若手という立ち位置にいる方や、コンサルタント業界への転職を考えている人でもそこを不安に感じている人は少なからずいるのではないでしょうか?

もちろん経験値というのは一朝一夕でどうにかなるものではありません。年齢なんてなおさらどうにもできません。

たった一回のやり取りの仕方を工夫するだけでも相手からの印象というものは変わります。

コミュニケーションの取り方はすぐにでも意識することができます。

そこに年齢も経験も関係ないと筆者は考えています。

 

20代後半の若手コンサルタントでも勤続30年近くの大ベテラン社員を相手に仕事ができているというのは、振り返るとすごいことではないのでしょうか?

むしろ、そんな経験ができているのが貴重なのではないでしょうか?

 

今回紹介した事例は、一例でありコミュニケーションの取り方は様々です。

対する相手の性格や癖、状況に応じても変わってきますが、少しでも参考になれば幸いです。

 

ちなみにではありますが、弊社ではそういった状況でも内部でサポートできる環境が整っています。

コンサルタント業界への転職や、弊社へ興味を持っている方への後押しもなったらいいなとも思っております。

 

福田 裕基

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/コンサルタント