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2023.11.22

ERPとは?種類と導入効果についてわかりやすく解説

ERPは業務効率化における重要なキーワード

業務の効率化を進める方にとって、ERPシステムという言葉は聞き馴染みがあるのではないでしょうか。しかし、ERPはCRMやSFAと混同されるケースも多く、そもそもどのようなシステムなのか分からない方も多いと思います。

本記事を読むことで、ERPとはどのようなシステムなのか、またCRMやSFAと何が違うのかについて理解することができます。

 

ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の持つ資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理し、最適な運用を行うことで業務を効率化する考え方、あるいはそれを実現するシステムのことを指します。

ERPを直訳すると「企業資源計画」となりますが、元々は「Material Requirements Planning」(資材所要量計画)という生産管理用語が語源となっており、生産管理における資材を、企業全体のヒト・モノ・カネといった経営資源へ置き換えて考えられた手法です。

導入することで、人事・給与管理、販売管理、営業管理など、部署ごとで情報が個別化されて蓄積されることの多い情報を一元管理することが可能となります。

 

ERPの搭載機能

ERPが搭載する機能として、主に以下の7つが存在します。

財務・会計管理

経費精算

販売管理

生産管理

資産管理

債権・債務管理

人事管理

各機能について、順番に説明します。

 

財務・会計管理

財務・会計管理機能は、会社法や金融商品取引法などで定められる財務諸表の作成や、自社の経営を可視化するための管理会計を実施するための機能です。

決算書である貸借対照表や損益計算書の作成、仕訳の登録や総勘定元帳、各種元帳などの作成を行うことが可能です。

また、管理会計機能では、企業内のすべてのデータを一元的に管理するというERPの性質を活用して、経営判断に必要な販売実績や在庫状況、生産進捗などの各種情報をダッシュボードにて確認することも可能となっているケースが存在します。

 

経費精算

経費精算機能は、自社で発生する備品の購入や従業員の立替精算、旅費交通費の支払い等に対応するための機能です。個別に手動で経費を登録し、上長承認のもと指定された従業員口座へ振り込みを行うといった基本的な機能や、法人向けクレジットカードの明細から自動で経費精算を行う機能を備える製品も存在します。

 

販売管理

販売管理機能は、自社の製品やサービスの販売状況を管理するための機能です。商品・サービスの見積書作成から受注管理、在庫確認や出荷情報の登録、請求書の発行など、販売に関する一連の流れをシステムで対応することができます。

また、売上実績と販売予算の対比、月次や支店別の販売状況など、販売に関する各種レポートを作成できる製品も多く存在します。販売管理で蓄積されたデータを元に、BIツールを利用することで、より柔軟にレポーティングを行うことも可能です。

 

生産管理

生産管理機能は、主に製造業で利用される機能です。生産計画の作成に始まり、材料の仕入れや作業人員の配置、仕掛品の管理まで、製造工程に関する各業務を支援することが可能です。

製造業においては、製品が適正な原価で製造できているかを計るために、標準原価計算などを用いて原価管理を行いますが、そのために必要な原価計算機能や、原価計算に必要となる配賦機能などを利用することもできます。

 

資産管理

資産管理は、自社の固定資産を台帳化し、減価償却を行うための機能です。多くの製品では、経費精算機能や調達管理機能と連携し、自社が購入した固定資産を自動で登録する機能を備えています。

各固定資産に対して種別を登録したうえで、自動で財務会計機能と連動して減価償却を行えるように設計されています。また、途中売却や廃棄などによる減損処理などにも対応しており、製品によっては、資産の写真や図面、設置場所といった設備のメンテナンスに必要な情報を合わせて登録することも可能です。

 

債権・債務管理

債権・債務管理機能は、主に売掛金の管理や入金による債権消込の実施、および請求書に基づく銀行振り込み等を行うための機能です。

債権管理機能は販売管理機能と連携し、販売実績に基づき自動で債権建てを行える仕組みを備えています。インターネットバンキングなどと連動し、自社口座への振り込み実績データを元に、金額や取引先等の情報から自動で債権消込を行う機能を備える製品も多く存在します。

また、債務管理機能は、調達管理機能などと連携し、購入した備品や材料などを自動で自社の債務として登録することも可能です。

 

人事管理

人事管理機能は、自社の従業員情報を管理するための機能です。組織の設定や異動情報の管理、給与計算などに必要となる扶養情報、通勤経路情報、自社内の役職・ランク情報などを登録することが可能です。

人事管理機能は、勤怠管理機能や給与計算機能に対して、各機能が処理を行うために必要となる人事関連の情報を提供する役割もあります。また、タレントマネジメントとして従業員のスキルや保有資格、研修等の受講状況などを管理する機能を備えるERP製品も存在します。

 

ERPの種類

統合型ERP

統合方ERPは企業のデータを一つに統合し、幅広く経営資源を管理することが可能なERPです。

現場の状況や経営状況をリアルタイムで確認できるため、経営層はより迅速に的確な判断を行うことが可能となります。

業務を統合することで、異なる部署間の連携が可能となるため、工数を削減し業務の効率化が実現できます。

製品例: Microsoft Dynamics 365 Business Central

 

コンポーネント型ERP

コンポーネントERPは、既存の業務システムの最適化および効率化を目的としたERPです。

必要な機能を都度追加しシステムの拡張を行えるため、費用を抑えた上で開発期間も短縮することが可能となります。

また既存システムとの連携も可能なため、導入することで業務の効率化が図れます。

製品例:Oracle Netsuite

業務ソフト型ERP

業務ソフト型ERPは管理会計システムや発注管理システムなど特定分野の業務に特化しているERPです。特定分野の業務を対象に、情報の一元管理を実現します。また、他のERPと異なり特定分野のみが対象となるため、導入期間が短く、コストを抑えて導入することが可能です。

製品例:マネーフォワード クラウドERP

アプリケーション型ERP

アプリケーション型ERPは機能やアプリを選択し、カスタマイズすることが可能なERPです。自社の業務に合わせて必要な機能を追加し構築することが出来るため、独自の業務フローが存在する企業に適しています。

製品例:SAP Business One

ERP導入のメリット

情報の一元管理

ERPを導入する一番のメリットは、情報が一元管理可能となることです。

他部署や支店間との連携も可能となり、業務が標準化されることでヒューマンエラーや業務の属人化防止にも貢献するでしょう。

 

内部統制

ERPを導入することで、内部統制も容易となります。

一元管理されている情報の確認、データの比較が容易となるため、社員の不正や業務フローの確認に掛かる手間が少なく、徹底された内部統制の実現が可能です。

 

経営資源の可視化

経営資源が統合されることで可視化され、素早い経営判断へ繋がります。可視化された経営資源および情報を基に、新規事業の開始や不測の事態に対して、スピーディーな対応が実現可能です。

 

ERP導入のデメリット

コストが高い

ERPは総じてライセンス費用が高く、コストが肥大化しがちです。導入を検討する際は費用対効果を算出し、導入に見合う成果が得られる事を確認した上で進めていく必要が有ります。更に、自社の業務に合わせた追加開発が必要となるケースも多いため、ベンダーへのイニシャルコスト、運用保守コストが発生する可能性も高いです。

 

導入期間が長期

ERPはカバーする業務の範囲が広いため、導入期間が長期化します。導入を検討する際は、追加開発の必要性や業務移管についても整理した上で、長期化することを前提に計画を立てる必要が有ります。

 

機能のアンマッチ

ERPは対応可能な業務の範囲が広いですが、各業務の詳細な機能については対応していないケースも存在します。自社の業務フローが一般的ではない場合、業務に対応するために度重なる追加開発が発生し、ベンダーへのイニシャルコストおよび運用保守コストが肥大化します。

導入を検討する際は、まずは自社の業務および必要な機能について丁寧にFit&Gapを実施した上で導入の判断を行うべきです。

ERP導入におけるFit&Gapの重要性については、以下の記事で詳細に解説しているのでご参照ください。

 

リンク:ERPパッケージ導入前に必ず行うべき『Fit&Gap(フィット&ギャップ)分析』の重要性

 

CRM・SFAとの違い

ERPはCRMと混同されがちですが異なっており、ERPは在庫管理や会計を含む業務全体の統合管理を行うのに対し、CRMは業務の中でも顧客管理に関する様々なデータを管理します。

また、CRMから派生し営業支援に特化しているものがSFAとなるため、ERP・CRM・SFAはそれぞれ目的が明確に異なります。

 

ERPの導入事例

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は2018年7月23日、SAPジャパンのERP「SAP S/4HANA」とカラム型インメモリDBプラットフォーム「SAP HANA」を、新しい全社経理情報基盤として導入しました。

 トヨタ自動車は、業務やビジネスにより効果的かつ効率的に利活用できる情報連携の仕組みを構築すべく、数年前から「全社情報高度化」を推進しており、特に財務会計の領域で、既存業務の効率化とともに、昨今のさまざまな経営環境変化に迅速に対応できる変化対応力を向上させるべく、グローバルに標準化された会計システムの導入を進めました。

 システム選定では、さまざまな産業で採用実績があり、40年以上の歴史を持つSAPのERPのアーキテクチャと、SAP S/4HANAの先進性や将来性が評価され、今回の導入に至ったとのことです。

株式会社三井住友フィナンシャル

株式会社三井住友フィナンシャルグループは2021年5月11日、業務プロセスの抜本的改革の一環として、会計業務の共通化に、日本オラクル株式会社のERPソリューション「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)」を採用しました。これにより、グループ会社を対象にしたシェアード・サービス導入を推進しております。

SMBCグループでは、従来グループ各社毎に、異なる経理業務プロセスで独自のシステムを運用し業務を遂行していましたが、全グループ会社における業務プロセスの標準化に向けて、ビジネスとともに進化し続ける単一の会計基盤を必要としていました。複数のERP製品を検討した結果、「Oracle Fusion Cloud Procurement」と「Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Management(EPM)」を含む「Oracle Fusion Cloud ERP」を選択しました。

「Oracle Fusion Cloud ERP」と「Oracle Fusion Cloud Procurement」を採用することで、全グループ会社における会計と購買・経費管理業務の効率化、コスト軽減および統制の強化を行い、「Oracle Fusion Cloud EPM」を活用することで、SMBCグループ全体の予実・採算管理が行えるようになり、グループ全体での経営戦略立案と最適な意思決定の支援が可能となります。

「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)」 は、2023年4月からSMBCグループ会社へ段階的に導入が行われます。

 

終わりに

今回は、ERPについてご紹介させていただきました。

アーツアンドクラフツでは、ERPの導入支援やERPによって肥大化したコストの削減をサポートしております。

詳しくは弊社HPよりお問い合わせください。

髙橋 尚義

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/ITコンサルタント