企業における経営企画とは「経営陣の意向を汲み取りながら会社の中長期的な経営方針を定め、ゴールまでのプランを立案すること」を目的とした、企業の中核を担う組織です。そして、その目的を①中期経営計画の策定、②単年度の予算変成、③特命プロジェクトの推進といった業務に落とし込み、実現へ導いていくため、正しい手法や体制で複数事業を管理する必要があります。
そして経営企画における業務の進め方については、1.現状分析→2.ヒアリング→3.アクションプランの策定の3STEPで進めていくことになります。
(※上述の詳細は過去掲載の記事「中小企業における経営企画室の役割とは」と「経営企画の進め方とは」を是非ご一読ください)
しかし実際に経営企画部門を運用するにあたり、様々な課題に直面することとなります。そして、本来必要とされるファンクションを果たすことが出来ずにいることもあるでしょう。それでは、経営企画の取り組み・業務を成功へ導くためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
本稿では、中小/中堅企業の経営企画部門が実際に取り組んだ『組織変革』や『新規事業参入』の事例を参考に、経営企画が注意を払うべき重要事項を説明していきます。
早速ですが、この記事をご覧いただいている皆様は、どのような要素が経営企画の取り組みや業務に重要であり、成功に影響を与えるとお考えでしょうか?正直、企業の形は千差万別であるように、経営企画の設営目的にも様々であるため、この答えは決して一つに限って語れるものではありません。
しかし、経営企画が企業の中核を担う組織であることを念頭として考えた場合、下記の3点が重要であると私たちは考えています。
経営企画において、全体を俯瞰的にみることは重要な要素となります。もちろん、現場の想いも大切ですが、一度感情などを抜きにして、実際の数字で見て、考えてみる必要があります。そして、その問題がなぜ起こっているのかを分析し、対策を練る必要があります。
経営企画だけでは事業を動かすことが出来ません。実際に現場で業務をおこなう部署・従業員と共同する必要があります。そのために必要となるのが、コミュニケーションです。コミュニケーションを取ることで数字として出てこない課題を発見できる可能性があります。また関係の質が高まり、より良い思考・行動に結びつけていく必要があります。
企業経営はいわば舟です。例え優秀な船長でも、船員がマストを広げ、舵を切らなければ、舟は一向に進むことはできません。そのために、船員と共に航海することが求められます。経営企画は目指す先を社長から汲み取るだけでなく、それを部署・従業員に伝達し、実行していく必要があるのです。そして誰も漏れることなく実行していく必要があります。
それでは上記で申し上げた3つの重要なポイントについて、各社の経営企画の事例をみながら考えていきましょう。
事例1は組織変革について注力した事例となります。近年ではビジネスがより複雑化する中で、一つの部門だけではイノベーションが生み出せないことが往々に増えています。一部門が問題を解決するだけでは、他の部門にイノベーションは波及していかないのです。
その状況下において、一部門では出来ない組織変革を担うのが経営企画の役割となります。経営企画にはいろいろな部門を経験した優秀な人材が揃うことがほとんどですが、中立的な立場としてどの部門にも所属しない性質上、様々な立場をとることが可能です。そのため、柔軟に全社を横断した対応が可能になるのです。
この事例においては、社長やCFOなど経営陣と協議を重ねると同時に、現場とコミュニケーションをとることで現場の理解も上手に行うことができました。そのため組織変革を成功させることができたのです。
経営企画は事業を持ちません。そのため、ゼロからの思考で物事を考えることが可能であり、その制約はありません。例えば、一部署で出た問題が実は他部署でも同様の問題を抱えていた場合、経営企画は大きな役割を担うことになります。昨今のデジタルトランスフォーメーションの取り組みについても、このような経緯から経営企画がその一翼を担うことが多いようです。
事例2の担当者は元々現場の仕事をしている従業員でした。しかし、現場での活躍もあり経営企画に異動したとのことです。その際に俯瞰して物事をみることが出来るということが経営企画の大きな強みであると気づいたようです。そして、それを一部門としてではなく、全社として周りを巻き込んだことが成功に結びついたと言えます。
経営企画はただ独自にデータを収集・分析するだけではなく、その結果を活かして、企業を動かしていく必要があります。そのためには積極的な情報収集はもとより、積極的な情報の開示・共有も必要になってきます。
事例3はそもそもありそうでなかった「営業会議」の事例です。企業によって経営企画の役割は異なります。さらに要なことは他社から見た場合には、当たり前と考えられるものかもしれません。だからといって他の企業がやっていることを実施すれば必ず伸びるわけではありません。その企業によって実際に何が必要か異なるからです。だからこそ、俯瞰的に物事を見定め、企業全体でコミュニケーションを図り、トップダウンではく、ボトムアップとして実施していく必要があるのです。
ここまで見てきた3社の事例が特殊だと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれまでみてきた事例とは別に、日本総合研究所は「経営企画部門の実態」調査の中で、増益傾向の企業と減益傾向の企業とで回答を比較分析しています。そしてその結果として下記記載のように回答に差異が出たとしています。
特に経営企画の要素として見るべき点は「企業活動の時間割当」・「取得情報の扱い」・「意見提案」についてでしょう。
このアンケート結果をみても、増益傾向の経営企画部門は受け身ではなく能動的な態度で、ただの分析するのではなく分析結果を元に立案し実践していると考えられます。
経営企画はただの社長のブレインとして情報を集めた存在ではなく、経営企画自らが新規創造を率先していく存在であることがわかります。
掲載した成功3事例や「経営企画部門の実態」調査の結果を元に、中小企業の経営企画における成功要件についてまとめると下記記載の3つの成功要件と言えます。どれも経営企画を意味あるものにするための重要な要件となります。ご覧いただいている皆様も是非、これらの要件を元に本来のあるべき経営企画の取り組みを実現していきましょう。
本稿では、各社の経営企画が実施した事例を参考に中小企業の経営企画が成功するための秘訣を見てきました。本ブログでは、経営企画の経営人材不足の課題、個別業務の具体的な推進方法も掲載しておりますので、ご参考いただければ幸いです。
弊社では、経営企画が本来あるべき姿になるため、3つのステップをゼロから支援する「社長の右腕を育成して、経営企画のあるべき姿に」サービスを提供しております。「中期経営計画の作り方」「経営判断に資する情報集約の方法」、「経営人材リソースの育て方」などでお悩みをお持ちでしたら、是非とも一度お問い合わせください。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/コンサルタント
立命館大学卒業。海外でのボランティアを経て、ベンチャーにて経理・労務などコーポレート業務主任や東証一部上場旅行会社にて本社直轄店舗の所長代理、海外支店、本社内部監査部など幅広く業務に従事。当社入社後、事業戦略立案やコーポレート・ESG関連取り組みの事業支援などのプロジェクトを担当