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越境ECサイトを成功へ導く方法とは?

はじめに-越境ECサイトを見据えた将来を考える-

「越境ECサイト」への注目が高まっている。日本での事業に加えて、海外の事業収入も柱となると、より安定した経営に近づくためだ。特に、「国外に拠点を持つことなく、国内から海外へオンラインで商品を販売するeコマース」といえる越境ECサイトは初期投資が少なく、コロナ禍においてリモートで商売をコントロールできる点は魅力的である。

実際に、経済産業省の調査によって、越境EC市場の拡大が明らかになっている。しかし、まだ参入していない企業も多いのも現状である。

この記事では、これから越境ECを始めようとしている経営者に向けて、デジタルマーケティング観点と運営する上でのポイントの視点で、越境ECの現状と「越境ECサイト立ち上げ成功の鍵」をご紹介する。 

越境ECの現状-越境EC市場の拡大-

「越境EC」への注目が高まっており市場規模が拡大している。経済産業省が20228月に公開したデータによれば、2019 年の世界の越境EC市場規模は7,800USドルと推計され、その値は2026年には48,200USドルにまで拡大すると予測されている。その間の年平均成長率は約 30%であり、世界のBtoC-EC市場規模の拡大を上回るペースで越境ECの市場規模は拡大すると見られている。

 市場規模の大幅な拡大が予測される背景は、越境ECの認知度の上昇、自国にはない商品への取得欲求、自国よりも安価に入手できるものがあること、商品やメーカーに対する信頼性等が挙げられる。 

越境ECサイトの市場規模が拡大しているとしても、言語の壁や異文化コミュニケーションなどによって、多くの企業がまだ参入していないように見受けられる。

越境ECサイトの立ち上げや長期経営を成功させるために、コンテンツ制作やプロモーション施策などを含めたマーケティング戦略・手法、「商品情報登録」「受注管理」「在庫管理」「出荷」「アフターサービス(カスタマーサポート)」などを含めた在庫管理手法の連携が肝心なところといえる。これらの難関を乗り越え、越境ECサイトのノウハウを把握すれば、海外事業の収入も柱にできる可能性は一段と高まる。

マーケティング戦略・手法

越境ECサイト運用におけるマーケティング業務は幅広く、Googleや各越境ECプラットフォームの検索エンジン対策、インターネット広告、アフィリエイトなどの業務に加え、SNSやコンテンツマーケティングなどの「集客施策」も含まれる。また、それらのマーケティング施策に伴うサイトの導線設計やバナーの設置、訴求力のあるページに作り変える「サイト改善」も常に念頭に置いておかなければならない。

越境ECにおけるコンテンツマーケティングでは、進出先の国のユーザーニーズをあらかじめ十分に調査した上で、ターゲット層に合った情報を定期的に配信することが大切である。現地の最新トレンドを常に把握し、提供する情報を柔軟に変化させていく必要がある。

なお、販促宣伝となるTwitterInstagramなどのSNS上で大きな影響力を持つ「インフルエンサー」と呼ばれる人たちに商品やサービスのPRを依頼するインフルエンサーマーケティング、ブログやSNSなどを運用している個人の「アフィリエイター」と呼ばれる人たちに広告を掲載してもらい、商品やサービスをPRしてもらうアフィリエイトマーケティングなどのマーケティング手法が多く使われる。Googleショッピング広告、Facebook広告、Instagram広告も一時的な販促宣伝手法としてコスパ良く運営できる。

越境EC業界はトレンドの移り変わりが激しく、新しいマーケティング手法が乱立する業界であるため、対応していくにはマーケティング業務を自動化する「MAツール」や、メール配信などで顧客と良好な関係を構築する「CRMツール」の導入を検討することも有効である。

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越境ECサイトを運営する上でのポイント

 EC運用のバックヤード業務担当者は、ECサイトの商品管理・登録作業、在庫管理や梱包・出荷など、顧客には見えない業務を行う。また、商品の受発注から返品、キャンセル、顧客の質問・クレーム対応などもバックヤード業務担当者の役割に含まれる。

 一度商品を登録した後も、頻繁に入れ替わる商品の最新情報を常にサイトに掲載していかなければならない。商品が定期的に入れ替わり、商品数が多いアパレル商材等を扱う店舗や開店初期においてはこれらの業務負荷は非常に大きい。また、日本語を正確に外国語に翻訳することも大きな負荷となる。翻訳業者にアウトソーシングする予算も膨大な金額となる。できれば、日本語と外国語が堪能な担当者を雇い、コストを削減するとともに、スピーディーにWEBサイトの更新ができ、最新のトレンドを逃さないようにすることが望ましい。また、顧客対応や顧客トラブル対応などのコミュニケーションもスムーズに実現できる。

 越境ECにはいくつかの支払い方法が利用されており、例えば、コンビニや銀行などでの振り込み決済、クレジットカード決済、代金引換、PayPalのようなプラットフォームを用いた決済などが一般的である。また、欧米や中国ではPayPalや支付宝(アリペイ)といった大規模型のペイメント・プラットフォームを利用した決済が主流となっているため、各国に対応する決済手段が万全に備えることが必須となる。

 日本国内のECサイトの運営と比べ、越境ECサイトにおける物流はさらに煩雑である。国内EC業務との大きな違いとして、関税や国際輸送に関する規制などが挙げられる。関税の手続きに関しては、法律などと同様に各国の決まりがあり、国によって輸出入できるもの、できないものが異なる。専門的な知識が必要となる部分でもあるため、アウトソーシングサービスを利用して、外部のプロに委託するケースも多くみられる。住所の記載や英語表記の変換など多くの追加業務が必要となってくる。 

まとめ

 マーケティング戦略も、運営上のポイントも、越境ECサイト運用において欠かせない観点であり、どちらか一方を怠ると、越境ECサイト上での売上が「上がらない」または「減少してしまう」といった事態に陥ってしまう。

 本記事が、越境ECサイト運営を目指す方に参考になれば本望である。

 

参考資料

令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書

マーケティングツール(MACRM)の導入において、CRMを優先すべき理由【BtoB/B2Bのデジタルマーケティング】

経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」

Exchange Wire「越境ECサイトの立ち上げを成功させる鍵とは?」

ART-TRADING「越境ECとは?メリットや始め方、注意点、成功のコツも含めてご紹介!」

Web幹事「越境ECの運営代行に強いおすすめ会社4社をプロが厳選!【2022年版】」

HIT MALL「越境ECは難しい?自社ECの新たな販路を拓くポイントを解説」

SB Payment Service「越境ECとは?立ち上げに必要な準備や注意点、メリットを解説」

Commerce Marketing Blog「【全解説】事例から学ぶ!導入すべき越境ECマーケティング」

Work Shift「越境ECビジネスでよくある課題を解決するために着目したい4つのポイント」

オープンロジ「越境ECマーケティング戦略について解説」

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馬麗芳

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。