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マーケティングの観点から見たメタバースとは

マーケティングに対するメタバースの恩恵とは?

昨年Facebook社がMetaに会社名を変更してから、メタバースという言葉をよく耳にするようになったと思います。メタバースがどのようなモノなのかは、ある程度想像できるかと思いますが、メタバースが実現した場合、どのような恩恵があるのかは、想像しづらいのではないでしょうか。そこで、本記事では、マーケティングの観点から、メタバースがもたらす恩恵と、メタバース内でマーケティングを実施する際の注意点についてお伝えします。

*尚、今回の記事でもメタバースの概要については触れますが、メタバース内のマーケティングを中心に考察するため、メタバースがどういったモノなのかを、詳しく知りたい方は、弊社の以前の記事をご参照ください。

本記事におけるメタバースの定義

現在、メタバースの定義は定まっておらず、様々な解釈が存在しています。なので、本記事を進めるうえで知っておくべき前提として「メタバース」について、軽く説明します。今回はSynamon社の取締役である西口雅幸氏が説明している「3DCG技術でバーチャルな世界を構築し、複数人が同時にそのバーチャル空間にアクセスしたうえで、様々な活動を出来る仕組み」という定義を前提に進めていきます。

また、同氏は、メタバースの特徴を下記の様に説明しております。

  • 場所・空間、人数等の物理的な制約がない
  • 非現実的・非日常的な体験
  • 他者と気軽に交流可能

そして、これらの特徴によって恩恵を受ける領域の1つがマーケティングだとおっしゃっています。そこで、これらメタバースの特徴が、具体的にどのようにマーケティングに良い影響があるのか、メタバース内におけるマーケティングにはどのような注意点があるのかを深掘り、お伝えしていきます。

従来のマーケティングの特性

メタバース内でのマーケティングが従来のマーケティングとどう違うのかを説明する前に、従来のマーケティングがどのようなものなのかを説明します。マーケティングを実施する際には、マーケティングの目的に照らし合わせて、「マーケティングチャネル」を考慮する必要があります。「リアル」または「デジタル」のどちらのマーケティングチャネルで施策を行うべきなのかをそれぞれの特性を考慮して決定します。

下記は、企業目線でのリアルマーケティング、デジタルマーケティングそれぞれの主な特性です。

  • リアルマーケティング:消費者にリアルな場面で商品・サービスをアプローチするマーケティング手法です。例として、街頭 サンプリング、集客イベント、宣伝広告等が挙げられます。
    • 特性
      •  消費者に商品機能等を直接伝達可能
      • 大量の消費者にアプローチ可能
  • デジタルマーケティング:インターネットを利用して、集客や販売促進を行うマーケティングを指します。SNSやWebサイト等を用いたマーケティングがあります。
    • 特性
      • 視聴率や購買率等の効果測定が可能
      • 場所を問わずに消費者にアプローチ可能
      • 動画、画像、文面等様々なコンテンツを提供可能

見て頂ければわかると思いますが、リアルマーケティングとデジタルマーケティングの双方は異なる特性を持っています。しかしながら、メタバースの特徴を活かすことで、上記2つのマーケティング手法のそれぞれの特性を同時に生かすことができます。次の章では、メタバースの特徴を活かした具体的事例を紹介しながら、リアルマーケティング、デジタルマーケティングそれぞれの特性をどのようにして生かしているのかを説明していきます。

具体的事例から見るメタバースマーケティングの優位点

メタバースマーケティングは、インターネットを用いた仮想空間内でのマーケティングを指します。実例として下記の2事例を紹介します。

  1. BMWJoytopia」の事例

    • 事例概要:BMWは、自社メタバースのJoytopiaを発表しています。ユーザーは、同空間内をアバターで移動し、他のユーザーとの交流やイベントモーターショーの参加が可能です。また、BMWのイノベーションへの取組等も紹介しており、メタバースは、ユーザーとの新しい対話方法の扉として、体験型マーケティングにより、顧客のブランド理解を促進させることを目指しているそうです。2021年9月25日には、イギリスのバンドであるColdplayが同メタバース上でライブを行っており、ユーザーはアバターで参加することで、ダンスをしたり、ステージに近づいて好きな角度からライブを鑑賞できました。このようなイベントを開催し、新たな顧客体験を創出することで、普段BMWと接点のなかった新たな層へアプローチをかけ、BMWとユーザーの接点を増やしたり、会社や商品への理解を得ることに注力しています。

この事例では、下記のようなメタバースの特徴を活かし、リアルマーケティング、デジタルマーケティング双方の特性を享受できます。

  • 特徴
    • 空間、人数等の物理的な制約がない
      • リアルマーケティング:大量の消費者にアプローチ可能
      • デジタルマーケティング:場所を問わずに消費者にアプローチ可能
      • 非現実的・非日常的な体験
        • デジタルマーケティング:動画、画像、文面等様々なコンテンツを提供可能
    1. BEAMS「バーチャル店舗」事例

      • 事例概要:アパレル会社であるBEAMSは、メタバース空間にバーチャル店舗を出店しています。同店舗では、ユーザーがメタバース内にてアバターで着用可能な3D商品や、現実世界で着用可能な商品を販売しています。現実の商品は、アバターで試着することで実寸等を確認してから購入することができ、新たなECの形として注目を浴びています。また、BEAMSのスタッフがバーチャル店舗内で接客しており、コミュケーションを取ることもできるため、従来のECでは伝えきれなかった詳細な商品説明もできます。

     

    こちらの事例では、下記のようなメタバースの特徴を活かし、リアルマーケティング、デジタルマーケティング双方の特性を享受できます。

    • 特徴
      • 場所・空間、人数等の物理的な制約がない
        • リアルマーケティング:大量の消費者にアプローチ可能
        • デジタルマーケティング:場所を問わずにアプローチ可能
      • 他者と気軽に交流可能
        • リアルマーケティング:消費者に商品機能等を直接伝達可能

    以上のように、様々な企業がメタバースを利用した独自のマーケティング施策を実施しています。メタバースの特徴を理解し、有効的に活用することで、リアルマーケティングとデジタルマーケティングの特性を生かすことで、効果的なマーケティングを行っています。

    メタバース内でのマーケティングにおける注意点

    前章のように、メタバース内でのマーケティングは、企業にとって様々な恩恵があります。しかしながら、メタバースで効果的なマーケティングを実施するためには注意すべき点も存在しますので、この章では注意点について着目して述べていきます。

    • 注意点①:アプローチ可能な先に偏りが発生する可能性あることを考慮すべき
      • メタバースの定義の部分でも触れましたが、メタバースはインターネットを用いた仮想空間内で構築されています。そのため、インターネット等に馴染みのない世代のユーザーが、比較的少ない可能性があります。マーケティングの目的とメタバース内のユーザー層を踏まえたうえで、企画中のマーケティング施策をメタバース内で実施するべきなのかを考慮する必要があります。
    • 注意点②:費用対効果を考えてプラットフォームの選択すべき
      • マーケティングを実施する際に、重要視する観点の1つとして費用対効果が挙げられます。メタバースでのマーケティングで費用対効果を高めるには、同じマーケティング費用を使う場合に、より多くの人に対してアプローチが可能なプラットフォームを選ぶべきです。実際に、KDDI社が有するメタバース内で、2020年5月に開催したサッカー日本代表のバーチャルパブリックビューイングでは、100万人超の訪問者を記録しています。このように、プラットフォームによっては、大量の消費者にアプローチが可能ですので、どのプラットフォームを選ぶべきなのかをしっかりと考慮すべきです。

    おわりに

    上記で見てきたように、メタバース内でのマーケティングには、様々なメリットがある一方で、考慮すべき点もいくつか存在します。しかしながら、メタバースは、近年注目され始めたために、メタバース内におけるマーケティングのノウハウが充実している企業は多くないと思います。

    弊社では、メタバース内でのマーケティング戦略の策定やそれに付随する調査を始めとしたコンサルティングサービスを提供しておりますので、少しでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、ご連絡下さい。

    【参考】

    森田 橋之介

    アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/アナリスト