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Googleのデジタルマーケティング戦略、ビジネスモデル

1.Googleの使命とは

 Googleのデジタルマーケティング戦略を分析する前に、まずは、Googleについて理解を深める必要があります。ほとんどの方は、Googleの名前を知っているのはもちろんのこと、日常的にGoogleを使用している方が大多数でしょう。もっといえば、このページにたどり着いたのも、Googleのおかげかもしれません。もうご存じの方がほとんどだと思われますが、少しだけ紹介させていただきます。

 現在、多岐にわたるサービスを提供しているGoogleですが、自身の使命を以下のように宣言しています。

 

Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。」(※1

 

 Googleは情報のやり取りのおける交通整理員のような働きをすることを目指しているわけです。これは、Googleの成り立ちにも大きな関りがあります。

 Googleの歴史は、1996年に当時スタンフォード大学のコンピューターサイエンスの大学院生であったラリーとサーゲイによる「BackRub」と呼ばれる検索エンジンの開発から始まります。(※2)現在においても、Googleの持ち株会社であるAlphabetは売上の多くを広告に頼っており、2021年の検索エンジンなどの広告売上高は、全体の約70%に及びます。(※3)

 つまり、Googleは設立から現在においてまで、検索エンジンの会社であることがわかります。

 

※1:https://about.google/ 

※2:https://web.archive.org/web/20120401005940/http://www.google.com/about/company/history/

※3:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2110/27/news075.html 

 

2.検索エンジンとは

 先ほど、Googleは検索エンジンの会社であると述べました。では、検索エンジンとはどのようなものでしょう。検索エンジンとは、「あるシステムに存在するデータファイルを取得して内容の索引付けを行い、利用者がキーワードや条件を入力して検索できるようにしたシステム。そのような機能に特化したソフトウェアなどのことを指す場合と、Web上の情報を検索するサービスやWebサイトを指す場合がある」(IT用語辞典 e-Wordsより※4)となっています。

 Googleの検索エンジンの20221月の世界シェアは91.9%(※5)と圧倒的です。Google以外にも、bingYahoo!Baiduなどがありますが、いずれもシェアは数%です。よって、検索エンジンといえば、Googleとなっているのです。

 

※4:https://e-words.jp/w/%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3.html  

※5:https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share#monthly-202101-202201 

 

 

3.Googleのデジタルマーケティング戦略、ビジネスモデル

 デジタルマーケティングとは、「サイトのSEO、アクセス数、CV(コンバージョン)率を重視するWebマーケティングに加えて、SNSTwitterFacebook)、メール配信、リアル店舗での顧客との接点も活用しながら、新規顧客と既存顧客に対してマーケティングを行っていく手法」(※6)のことです。

 そもそも、Googleは検索エンジンのシェアが90%を超えているので、SEO、アクセス数は意識していないでしょう。となると残るは、CV(コンバージョン)率になります。要は、いかに広告をクリックしてもらうかです。この戦略に注目すると、Googleの二つのサービス、「リスティング広告」及び「ローカル検索広告」が、浮かび上がってきます。

広告主及び検索エンジンのユーザー双方にメリットのある広告表示手法として、リスティング広告(検索連動型)というものがあります。20022月にGoogleが始めたサービス(※7)で、検索キーワードに応じて表示広告を決定するというものです。これは、広告主にとっては、「能動的で購買に直結、しかも少額予算から可能」というメリットがあり、検索エンジン利用者にとっても、知りたい情報に関連したものとして、受け入れられているといえるでしょう。検索キーワードに応じた広告なので、クリックされる(コンバーションの)可能性も高いといえるでしょう。

Google広告には、クリック課金型と、表示回数課金型がありますが、どちらのタイプでも、ユーザー満足度や広告主のメリットがリスティング広告にはあります。そして何より、検索エンジンのシェア圧倒的トップだからこそ、この領域で大きな利益をあげられるのでしょう。

 

 このリスティング広告を発展させたものが、ローカル検索広告です。ローカル検索広告とは、Google Map上に配置される広告です。

 例えば、「ラーメン屋」とGoogle検索すると、Googleマップで近くのラーメン屋がいくつか紹介されます。これがローカル検索広告です。クリック課金型の料金体系で広告主にも検索エンジン利用者にもメリットのある広告です。通常、知りたいのは近くのラーメン屋であることが推測されることから、近くのラーメン屋の広告を表示するのは、理にかなっています。

 

 一方で、インターネットの広告は「気持ち悪い」、「うざい」などの負の感情を感じる人も一定数存在します。

 私自身も、見たい画面を表示させる前に全面に展開される広告や、誤タップを狙っているとしか思えない広告にうんざりしています。

 しかし、本当に欲しい情報の際は、広告とは感じません。コンテンツとして見ています。

要は、広告の出し方、見せ方、広告を出すターゲットの選別が重要なのです。

 とはいっても、嫌な広告があるのは、事実なわけで、検索エンジンの満足度を下げてしまうこともあるでしょう。そこで、GoogleChromeAppleSafariをはじめ、多くのブラウザでは、広告ブロックの機能が付いています。Google Chromeの拡張機能で広告ブロックできるものは、AdBlockAdBlock Plusがあります。Googleは、負の感情をできるだけ感じさせないよう、自身の収益源である広告のブロックも行っているのです。

 

 Googleは検索やブラウザであるChrome、デバイスのOSであるAndroidなどのインターネットプラットフォームの企業でした。その一方でGoogleの持ち株会社であるAlphabetは、様々な企業買収や新規事業によって、多角化を進めています。自動運転、ヘルスケア、ドローン、スマートホームなどの分野に参入し、広告事業が収益の柱であった状況から脱却しようとしていると思われます。

 これは、インターネット自体はイノベーションの最先端ではなくなり、当たり前の存在になったことによるでしょう。Alphabetは、「次のインターネット」に当たるイノベーションに挑戦をしているのではないでしょうか。

※6:https://www.arts-crafts.co.jp/post-5170/

※7:https://dmlab.jp/web/history.html 2022/2/20

 

4.まとめ

 Googleは、検索エンジンの会社ですが、その検索エンジンを武器として、コンバーション率を高める広告が出稿できるようなリスティング広告、ローカル検索広告サービスを行っています。そのようなデジタルマーケティング戦略は、まさにGoogle社の使命に通じるところがあり、検索エンジンのユーザー、広告主双方に有益な体験を提供しているといえるでしょう。

 

【参考】

小池 佳寛

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト