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採用成功に向けた原稿作成メソッド

理想人材確保に向けて

202175日に掲載した記事【採用担当者必見】オウンドメディアリクルーティング~採用における「第三の矢」~でも記載した通り、日本の採用環境は買い手市場寄りに傾いており(下記グラフ参照)、一見すると「採用がしやすい・応募を集めやすい」状況にありますが、理想人材の確保においては難易度が高いということに違いはありません。

 

 また、M&Aの視点においても理想人材の確保は、場合によっては非常に重要な課題であります。近年増加傾向にある事業承継を目的としたM&Aのケースでは、次世代人材の継続的な確保が売り手側の課題として挙がることがあり、ビジネスデューデリジェンスでの検証論点としても大きなテーマになりえます。
各社、自社のサービスを実現できる高度な専門性を持ちながらも、早期に自走できる若い人材が欲しいところですが、自社のブランド力や市場動向によるところもあり、なかなかクイックな打ち手がしにくい側面があります。

 そのような課題の解消に向けて、前回に引き続いて「採用成功にむけたメソッド」をお伝えできればと思い、今回は「どのような原稿内容を作成するべきか」を紹介します。

 原稿内容に拘るべき理由

前回はメディアミックス(複数媒体の同時利用)を紹介いたしましたが、今回はそのメディアに記載する「原稿内容」にフォーカスを当てていきます。原稿内容は、応募数・面接数・採用数を左右するキーファクターであり、原稿内容の出来栄えで結果が大きく変わるといっても過言ではありません。

 

原稿内容を拘る最大の理由/目的は、「求職者に自社で働くイメージを具体的に抱いてもらうこと」です。具体的なイメージを持つことで、「企業に対する熱意の向上・ミスマッチ/早期退職リスクの低減」に繋がり、求職者・企業双方にとってメリットが生まれます。

そのためには、「分かりにくい/伝わりにくい企業の魅力点」をしっかりと言語化・表現・伝達できるように原稿内容を拘るべきです。オウンドメディアを始めとした求人媒体は、ハローワークのように最低限の労働条件のみ記載された殺風景なモノではなく、先述した企業の魅力点(企業の雰囲気・働く人々の印象・ビジョンなど)を鮮明に反映することが可能であり、存分にアピールすることができます。

 

余談ではありますが、筆者の前職は人材会社での広告営業でした。その際の経験論として、いかに高額なプラン・枠を購入したとしても、肝心の原稿内容がお粗末だと応募数は低減しますし、仮に採用が出来たとしても離職率が高くなる傾向があります。そのため、読者の方々に置かれましてはパワーがかかる部分ではありますが、是非とも原稿内容に拘っていただければと存じます。

 

今回は、そんな原稿内容をより良く記載するためメソッドを2点紹介させていただきます。

 原稿作成のポイント

5W分析 

5W1Hとは、あらゆるビジネスシーンで活用されている分析フレームワークの一種であり、「When(いつ)、Why(なぜ)、Who(誰が)、Where(どこで)、What(何を)」これらの頭文字を取った略称です。今回は原稿内容の作成にこのフレームワークを活用していきたく、それぞれの言葉に注目していきたいと思います。

    ▶ When(いつ):勤務開始時期、面接日時など

こちらは言わずもがなですが、「いつから勤務・活躍してほしいのか」を明記することです。詳細に日程を記載することで、求職者サイドがスケジュール調整を行いやすくなります。

    ▶ Why(なぜ):募集背景

 増員/欠員募集などの背景を具体的に記載することも大切な要素の一つです。ただ背景を記載するだけではなく、中長期の企業・事業戦略や課題など、なぜその背景が生まれたのかを明記することが重要です。企業の選定にあたり「ブラック企業ではないか、経営状態は安定しているか」といった視点も思考しているため、このカテゴリーを明記することでその類の懸念・不安を払拭させることが可能です。

    ▶ Who(誰が):採用・教育担当、現場社員からのメッセージなど

 入社後のイメージをより具体的に持ってもらうためには、求職者が入社した際に対峙する関係者からのメッセージを記載することが有効です。例えば、選考において関わるであろう採用担当からのメッセージや教育を担当する配属予定の上司からのメッセージ、また入社して日が浅い社員のインタビュー(職場環境・仕事内容・ワークライフバランス・成功/失敗体験etc…)など。外部からでは入手できない生の情報を可能な限り事実に基づいて記載します。

    ▶ Where(どこで):勤務地

 勤務地の候補やアクセス情報を記載しますが、その勤務地の特徴・メリットを記載することも有効です。例えば、最寄り駅から徒歩XX分、周囲は落ち着いたオフィス街、渋谷などの繁華街へのアクセス良好、同ビル内にスポーツジム併設など、勤務地で働くことで得られる土地的なメリットを書くことがいいでしょう。

    ▶ What(何を):業務内容

 開示できる限り具体的な仕事内容を記載します。可能であれば業務フロー図などでグラフ化すると求職者に伝わりやすくなります。また、必要となる/役に立つスキルや経験・従事することで身につくスキル・入社後のキャリアなども併記すると尚良いです。

 

上記概要を記しましたが、一見すると当たり前のことしかありません。しかしながら、内部の人間にとって当然のことであったとしてもそれを見ず知らずの外部の人間に、鮮明に伝えることは容易ではありません。そのために5W分析を活用の上で客観的に自社の魅力点を分析、どの項目をどのように原稿に記載するべきかを吟味する必要があります。この過程を経ることで、次項で説明するコアコンピタンス(競合優位性)の分析・把握が可能となります。

コアコンピタンス(競合優位性)

 コアコンピタンスとは、企業・事業にとっての強み=他社に対して引けを取らないストロングポイントを指す言葉です。こちらもビジネスシーンではよく耳にする言葉ですが、採用関係においても重要な役割を担っています。それは、「求人原稿の差別化」です。求職者の視点で考えた場合、何千何万という求人原稿から応募する企業を選定する必要があります。その際に、目立たない・差別化が図られていない原稿を掲載してしますとその選定から漏れてしまう可能性が高くなり、結果的に応募数の減少に繋がります。また、仮に応募に繋がったとしても、企業の魅力点・強みに関する表現が不十分であった場合、選考辞退や早期退職にも繋がりかねません。それを防ぐために、コアコンピタンスを理解してそれを軸とした、差別化が図られた原稿を作成することが非常に重要です。

 

では、どのようにしてコアコンピタンスを発見すればいいのでしょうか。前項の「5W分析」を行った際に、採用における自社の強みをある程度把握できると思いますが、その強みを、採用においての競合(=採用競合)と照らし合わせることでコアコンピタンスの発見・確立につなげることが可能です。そして、有名求人媒体で「同事業・同エリアの求人」を検索し採用競合を発見、その採用競合の求人に記載されている強み・弱みを理解する。「5W分析」で把握した自社の強み・弱みと比較することでコアコンピタンスを確立し、差別化を図った原稿を仕上げることが可能となります。

 

まとめ

本稿では、求職者の応募意欲を上げる原稿の作成メソッド、及び原稿内容にこだわる重要性・理由合わせて説明いたしました。無論、当記事で紹介したメソッドのみで直様効果が現れるわけではなく、他に存在する様々な要素を考慮・加味した上で原稿内容を作成し、適宜の修正・変更を行っていく必要があります。求人募集を行う時期、募集する職種、募集背景、緊急性など、ケースバイケースで原稿を作成する必要があり、当ブログで継続的にその内容を紹介できればと考えています。

 

本稿で紹介した情報が、ご覧いただいている皆様の採用活動の糧になれば幸いで御座います。

是非ご活用くださいませ。

 

【参考】

髙木義万

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト