プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、一般的に取り組む期間が定められたうえで何らかの目的を達成させるための業務を、効率的に管理することを指します。このため、プロジェクトマネジメントが必要とされる業務は業界を問わず存在すると言えます。
一般的にプロジェクトマネジメントの業務は以下のもので構成され、プロジェクトを推進するメンバー・組織のことをプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)と呼びます。
- 企画
- 主にプロジェクトを計画し、提案することを指します。この段階ではプロジェクトの遂行にあたって必要な人材を配置して、クライアントにプロジェクトを進めるイメージを持ってもらったうえで検討して頂くことになります。
- 費用の見積もり・修正
- プロジェクトを進めるにあたって必要な工数や期間から、費用の見積もりを計算します。また、プロジェクトを進める中で後から発生した業務に対して、必要な費用の見積もりを計算することもここに含まれています。
- 費用を計算するにあたっては、発生しうる作業を可能な限り精緻に整理しておくことで、追加の要望を受けた際にも幾分かは対応しやすくなります。
- 費用以外の人的、物的リソースの確保
- 費用の見積もりとも関係しますが、工数や想定される期間に応じて人的・物的リソースを確保することが求められます。このような業務もプロジェクトの業務に含まれます。
- WBS(Work Breakdown Structure:タスクのスケジュール)の作成
- 工数や費用、期間について合意が得られてプロジェクトが開始されれば、タスクのスケジュール(主にWBSと呼ばれます)を管理していきます。
- 大まかなスケジュールは企画の段階で提案することもありますが、状況に応じてそれぞれのタスクを調整することもあります。
クライアントへのヒアリングは何回行うか、クライアントに何日間で確認して頂きお戻しを頂くかなどを可能な限り精緻に整理しておくことで、クライアントがプロジェクトの進行をイメージしやすくなります。
近年では、スケジュールを管理するためのツールもあり、別項で主なツールを紹介していきます。
- プロジェクトメンバーへのタスクの割り振り
- WBSを作成することとも関係しますが、ここではそれぞれのタスクを誰が担当するかを細かく割り振っていきます。
- それぞれの業務において、複数のパートナーが引き継いで進めていくこともあるため、これらを整理していくことが求められます。
- 進捗管理・議事録作成
- プロジェクトを進めていく中でクライアントからフィードバックをうけ、今後の業務をどのように進めていくかを整理しながら進めていきます。
- 「決定事項となったことは何か?」、「どのようなことを議論したか?」、「クラアントからどのようなフィードバックをうけたか?」といったことを記録するために議事録を作成していきます。議事録についても別項で説明します。
タスク管理のお役立ちツール
近年では、タスクを管理するために便利なツールがいくつか提供されています。本項ではその一部を紹介します。
- Excel(スプレッドシート)
- タスク管理においては、最も簡単に使うことができるツールです。使い方次第でどのようなものにも対応できる点が、Excelの強みです。
ただし、スケジュールを調整する際に調整したスケジュールに応じて他のタスクと連動して調整することができなかったりするため、それぞれのタスクを手動で調整する必要があります。
- 他にも、それぞれのタスクに対して粒度が細かい情報を記録する場合は見づらくなってしまうことがあります。
図 スプレッドシートのイメージ
- Backlog
- 国内シェアNo.1を誇るプロジェクト管理システムで、業界を問わず幅広く利用されています。
各課題に対してコメントや詳細な情報を記述する欄があり、必要な分だけ情報を記録しておくことができます。
図 Backlogのイメージ図
https://support-ja.backlog.com/
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- また、ガントチャートを使用してプロジェクトの進行を管理していくこともできます。
図 Backlogのイメージ図
https://support-ja.backlog.com/
- Smartsheet
- 当該ツールも、Backlogと同様にタスク管理ツールです。
下図のようにそれぞれのタスクをカレンダー上で管理でき、開始や終了をずらずと自動的に前後のタスクが調整されます。
- Backlogのように個別の課題を精緻に管理する機能はありませんが、月額料金はかなり安いためタスクスケジュールをピンポイントで管理したい場合などはSmartsheetの方がお得なのかもしれません。
図 Smartsheetのイメージ図
https://jp.smartsheet.com/
議事録作成とそのお役立ちツール
プロジェクトを進めていくにあたって、何度もミーティングを行ってクライアントや関係者との方針のすり合わせを行う必要があります。ここで議事録をとって記録しておくことが重要になってきます。また、内部で実施するミーティングも必要に応じて議事録として記録すると良いでしょう。
- 基本的には、下記のような構成で記載していきます。
最後の詳細パートを各担当者が確認することはあまりないですが、決定事項や発生したタスクの根拠となる情報を整理しておくことで、担当者がどのような方針でタスクを進めるかを確認しやすくなります。
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- 出席者、日時、場所
- 決定事項、発生したタスク(ToDo)
- 会議の目的
- 使用した資料
- 詳細パート
議題
決定事項、発生したタスク(ToDo)
上記の決定に至る理由
その他共有すべき情報
- 発言した内容はそのまま書くのではなく、簡潔に記載しておく必要があります。
一般的な議事録の場合は、発言をそのまま記録しておくことがありますが、これでは関係者が後で見返した時に確認すべき情報が分かりづらくなってしまいます。多くのステークホルダーが関係するプロジェクトである場合は、専門用語が出てきた場合でも、可能な限り誰でも理解できるように言い換えて記述するなどの配慮が必要です。
また、クライアントが提供するサービス名などは、WEB検索したうえで正式なサービス名を確認しておくのが無難です。
他にも「今日」や「来週」、「月曜日」といった発言に対しては、●/×(月)、●/×週といった具合に日付で記録しておくと認識齟齬が起こりにくくなります。
- PMOの場合は、これらとは別にクライアントから指摘された内容を個別に記録しておきます。繰り返しの指摘や、早急に対応すべき指摘である場合は、関係者にリマインドしておくことでミーティングの品質向上に貢献できます。
- なお、プロジェクトを進めていくにあたって記録すべきでない内容(プロジェクトと無関係な話、関係者に対する悪口、不満、その他誤解を与えかねない内容)などは、クライアントに共有するのであれば記録しない方が良いでしょう。
あるプロジェクトでは、クライアントの中で考え方が合わない人がいるために、意図的に会議体から外すべきだと意見を言う人がいましたが、このようなことは決定事項にならない限りは書くべきではないでしょう。(※このプロジェクトでは、件の外されそうになった人は進行になくてはならない人という判断になり、最終的には深く関与して頂くことになりました。)特定の人物に対する悪口や不満などが書かれている記録に残っていると、後々望まないトラブルに発展する恐れがあります。
- また、最近ではAIにより議事録を自動で作成するツールも提供されています。
- Googleドキュメントでは、音声を自動で書き起こす機能があります。
オフライン上でも編集可能ですし、オンラインでは書き起こされたドキュメントに対して複数人が共同で編集することが可能です。
また、Googleアカウントさえあれば誰でも無料でできるのが非常にありがたい点と言えます。ただし、発言者や時間の情報は記録されません。
図 Googleドキュメントのイメージ図
https://workspace.google.com/products/docs/?utm_source=docsforwork&utm_medium=et&utm_content=learnmore&hl=ja
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- スマート書記では会議の音声を録音し、先ほどのGoogleドキュメントと同様に発言者の音声を自動で書き起こす機能があります。
当該ツールでは、発言者に対してそれぞれマイクを設定することで誰が発言したかも自動で記録されます。
編集画面では、発言の間に文章を差し込んで議事録を作成していくことができます。下記の画面では表示されていませんが、発言にはそれぞれタイムスタンプが記録されているのでいつ発言したことかも確認できます。
発言を文字として入力するために雑音がない場所でピンマイクを準備する必要があるほか、認識する精度は80~90%であるようですが、使い方次第では効率よく議事録作成が進められると思われます。
図. スマート書記の編集画面
https://smartshoki.jp/#plan
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- なお、これらのツールは現状では発言録として文字起こしを行う機能に留まります。
このため、議事録の書き方として取り上げた文字の言い換えや発言を整理する作業は別で実施する必要があります。(それでもスマート書記のように90%近くの音声を文字に起こせるのであれば、作業負荷が大幅に軽減されることは間違いありませんが)
ケーススタディ
プロジェクトを進めるにあたって、クライアントから受ける要望によっては急な対応や当初の想定を大きく上回る要望を受けることがあります。ここではそんな時のとっさの対応(ケーススタディ)について取りあげてみましょう。
- 契約から外れた要望を受ける
- 基本的には追加費用が発生する業務であると回答しますが、追加費用が発生する理由はクライアントに理解して頂けるように説明する必要があります。クライアントとしては追加費用が発生しても解決しなくてはならない課題があることから、複数ある要望の中から優先順位を整理したうえで何をすべきかを決めていくことが多いかと思われます。
- 先述の通り、ここで発生する業務に関しては工数や期間を可能な限り精緻に記録して合意を得て、クライアントとの認識齟齬が生じないようにする必要があります。
- 決定事項を覆す必要がある
- 「決定事項であれば本来覆すようなことはあってはならないのでは?」と思われるかもしれませんが、プロジェクトの進行の都合上、やむなく裁量の決定権のある人が後から参画して決定事項を変更するよう指示が出ることがあります。
このような背景があったとしても、基本的には決定事項は変えないようにクライアントに伝える必要がありますが、やむなく変更する場合は追加の稼働で発生する費用があることや、期日を遅らせる必要があることを理解して頂いたうえで進めることになります。
- また普段から認識齟齬が生じないように、クライアントのキーパーソンが決定事項を把握できていないようであれば、繰り返し伝えていく必要があります。
- もっとも、PMOが把握している限りで余裕のある段階からこのような事態が予想される場合は、それが発覚した段階で早めに関係者と調整を進めておく必要があります。決定事項が覆されてプロジェクトの進行が大幅に遅延しないように、PMOは早め早めに対応しておくことが求められます。
- プロジェクトの期間を延長する必要がある
- 関係者の稼働の影響で、特定のタスクだけ後に遅らせるといったことがあります。
あるWEB制作のプロジェクトでは、実装を担当している会社の稼働を数カ月空けることができないために、この会社が対応できる時期まで待って改めて作業を再開するといったことがありました。
- 一方、クライアントからのお戻しが想定より多く発生して期間を延長する必要があることもあります。こちらもPMOが可能な限り期限までにプロジェクトが遂行されるように対応する必要があるものの、その一方でクライアントから想定以上の品質を要求されていないかどうかも確認しておく必要があります。
- このようなことから、想定される「品質」「期間」「作業範囲」を整理してクライアントに対して真摯に説明し、どのような成果物を目指すかを協議していきます。
まとめ
このように、多くの関係者と調整を進めながらプロジェクトを進めていくのがPMOの役割であるといえます。多数のスタッフが参画するプロジェクトにおいて、各チームがそれぞれのタスクをどのように進めているかの管理を、作業するスタッフが行うことは非常に困難です。
そんな時にPMOがプロジェクトを円滑に進めていけるように調整することで、関係者はそれぞれが担当する作業に集中することができ、クライアントにとってより良いものを提供することができます。
【参考】
ヌーラボHP「Backlog」
Smartsheet HP
Google HP
EPIC BASE HP
TECH CAMPブログ「【初心者向け】プロジェクトマネジメントの基本をわかりやすく解説。必要なスキルやおすすめの本も紹介」
藤本光佑
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。得意分野は決済事業、IoT、エネルギーなどの事業戦略の提案や、それに伴う調査