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デジタルマーケティングで活躍するDMPを導入する際に気をつけたいこと

デジタルマーケティングにおけるデータマネジメントプラットフォームとは

Webサイトを閲覧している際に、自分が少し前に検索した物やサービスに関連した商品が広告として表示されたことがあると思います。これは、デジタルマーケティングによって顧客ごとにカスタマイズされた広告が表示されるようになっているからです。

近年では当たり前となっているこの光景が、どういう仕組みで成り立っているのかをご存じの方は多くないかと思います。

そこで本ブログでは、このような広告を実現させている仕組みの一部である「データマネジメントプラットフォーム」(以下、DMP)について、出来ることや選び方などを解説していきます。

DMPは市場規模が年々拡大すると見込まれており、価値が認められていると言えるツールの一つです。そのため、今後マーケティングを行う際に知っておきたい内容の一つになると考えられます。 

 

また、DMPの役割は一言で言うと「情報整理」にあるため、より利用者のデータが蓄積されてくるこれからの時代に必要なツールになる、とも考えられます。

そのため、本ブログはデジタルマーケティングに興味はあるがよくわからない、DMPの導入を検討しているが知見がないため判断ができない、といった企業担当者様を対象に執筆します。興味のある方は読み進めてくださると幸いです。

 

データマネジメントプラットフォームの役割

まずは、DMPがデジタルマーケティングにおいて、どのような役割を果たしているか解説したいと思います。

 

DMPは、集めたデータを分析するための役割を果たしています。例えば、自社のサイトを訪れたユーザーがどのような行動を取ったか、SNSを利用している消費者はどのような商品に興味を持っているのか、などのデータを集めたうえで、消費者動向としてまとめることが可能です。

また、これらのデータを分析した結果を活かして、自社サイトの仕様を変更したり、マーケティングオートメーションという見込み客の獲得を自動化したツールを利用したり、などの施策を実行することも可能です。特に、分析結果をレポーティングする機能がついていることもあるため、データ分析を行える人材がいない企業にとっては重宝されるツ-ルではないかと思います。

以上の機能から、DMPはデジタルマーケティングにおいて価値のある働きができるツールであると認識していただけるかと思います。

 

様々な顧客情報を分析する

先ほど紹介したDMPは、大きく分けてパブリックDMPとプライベートDMP 2種類があります。それぞれ収集できるデータや役割に違いがあるため、違いを明確にしてDMPへの理解を深めていきたいと思います。

 

まず、パブリックDMPですが、こちらは新規顧客の獲得を目指している企業が導入を検討すべきツールであると言えます。

パブリックDMPは億単位のユーザーのデータを保持しており、各ユーザーの興味関心を示すデータを活用することが可能です。そのため、マーケティング戦略の見直しや想定ターゲットへのアプローチ手法の考案などの活用方法があると考えられます。加えて、費用もプライベートDMPに比べると安く抑えられるため、これから市場に参入しシェアを奪いたい、あるいは現商品による収益の拡大を目指している、などの課題感を持っている企業の助けとなるツールであると言えるでしょう。

反対に、プライベートDMPは潜在/既存顧客との長期的な関係構築を築くためのツールであると言えます。

プライベートDMPの基本機能は社内に蓄積された顧客情報を整理し分析することによって、既存顧客の行動特性を把握することや、再購入を促進するためのマーケティングツール(MACRMなど)との連携が挙げられます。また、費用は月額制のクラウド型と、自社内で運用を行うオンプレミス型の2種類があり、仮にオンプレミス型を採用した場合には1,000万円単位の費用が発生する場合もあります。クラウド型を利用した際には数万~数十万円で済みますが、継続的にコストがかかるため、導入に際して資金を用意する必要があります。そのため、市場で一定のシェアを獲得し収益を出すことに成功したため現在のシェアを維持したい、という課題を抱えている企業がメインの利用層になってくると想定されます。

補足ですが、パブリック/プライベート上のそれぞれのデータを両方とも利用することが可能なハイブリットDMPというものも登場しており、DMPがさらに広いニーズに対応できるようになっています。なお、本ブログではDMPの概略をまとめることを目的としておりますので、興味のある方はご自身で調べていただきますよう、お願いいたします。

 

ツールの選定基準

ここまでで2種類あるDMPを紹介しましたが、実際に導入する際に何を見て評価すればよいのかが分からない方もいるかと思います。そのため、参考になるように6個のサービスを評価しました。 

 

まず、パブリックDMPから見ていきたいと思います。パブリックDMPの比較ポイントとして挙げられるのは、保有しているデータの数と、利用可能な機能の2点になります。

例えば、Yahoo!DMPは検索サイトであるYahoo!JAPANの検索データなどを保有しているため、他のDMPに比べて保有しているデータ数は多いと考えられます。機能面では広告出稿への強さをアピールしているため、総じて新規顧客の獲得につなげやすいツールであると考えることが出来ます。一方で、Jucierは保有データ数では劣ると考えられるものの、サイトの解析に強みを持っているため、単純に広告を打つのではなくマーケティングの根本から見直したい、という方に向いているツールであると考えられます。

このように、一言でパブリックDMPといっても、ツールごとに解決できる課題の差異があるため、何を目的に導入を進めたいのかを明確にする必要があります。

また、プライベートDMPにおいても同じように比較検討するポイントが挙げられ、費用と機能の2点を見るのが良いと思います。

費用は自社の予算感に見合ったツール導入が可能かどうかを測る、一番分かり良い検討ポイントになると思います。機能に関しては、各社ともに分析ツールを備えているため、何を分析したいかを明確にすることで、ツールの選定が容易になるかと思います。例えば、BIツールを用いた分析が可能かどうかによってマーケティングの戦略策定が容易になるかもしれませんし、WEB接客機能を保持していることによって顧客接点を増やすことが可能かもしれません。他にも、MAツールによる広告配信の自動化を利用して省人化を図りたい、といった課題を持っている方もいるかもしれませんし、選定基準は多くあると言えます。とはいえ、プライベートDMPの傾向として多数の機能を保持しているツールが多いと見られるので、紹介したような機能を複数挙げたうえで、並列して可視化することで評価しやすくなると考えられます。

いずれにせよ、自社の状況を明確に整理したうえでツールの選定に入るのが望ましいと言えるほど、DMPの機能は種類があることがお分かりいただけたかと思います。ぜひ、導入を検討される際には、自社の課題を明確にしてから検討を始めてください。

 

参考事例の紹介

参考として、自社の明確な課題をDMPで解決することが出来た事例を紹介します。

紹介するのは、株式会社KADOKAWA(以下、KADOKAWA)の事例です。KADOKAWAは、新たにEC事業に力を入れるため、2017年からデータを活用したデジタルマーケティングを本格的に始めました。当時のKADOKAWA14Webサイトを運営しており、ひと月で約19億の合計PV数を獲得していました。一方で、PVだけではどんな人がサイトを見たかが分からない状況にありました。そのため、KADOKAWAの課題はPV履歴と顧客情報とつなげることで、自社のWEBを閲覧しているセグメント層を特定したい、という明確な課題がありました。そこで、「Arm Treasure Data」というDMPを導入し、PV履歴と顧客情報をつなげるデータを収納することで、今まで特定できなかったセグメント層の特定に成功しました。

この事例では、前段で書いた通り自社の課題が明確になっています。特に、自社で保有しているデータの内容と、データ活用後はどんな事業展開を行いたいか、という自社の今と未来に対するハッキリとした認識があったことが特徴と言えます。

そのため、DMPの導入を検討する際には自社でどんなデータを持っているか、データを活用した後に実行したいアクションは何か、を明確にすることが肝になると思います。先ほどの繰り返しにはなりますが、導入を検討する際には正しい評価軸を持つために、ぜひ自社の課題感を明確にしてください。

 株式会社KADOKAWA HP

 

終わりに

本ブログではDMPに関する情報をまとめ、知見がない方が大まかに理解出来るように解説を行いました。その中で一番押さえてほしいポイントは、自社で導入する際に重要視することを明確にすることで、各サービスに対する評価が変わるという点です。この点を押さえることで自社に一番適したサービスの導入が可能となり、大きな広告効果のみならず顧客生涯価値の向上など、様々なメリットを得ることが可能になるかと思いますので、お役に立てると幸いです。

また、その他のブログでデジタルマーケティングの解説を行っています。こちらもご覧いただけると理解がより深まるかと思いますので、ぜひご活用ください。

 

【参考文献】

伊藤悠真

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。