情報化社会において、商品やサービスを売れるようにするためにプロモーションがますます重要になっている。
企業が企画・製作した商品がいくら優れていて、スタッフの営業力がいくら高くて、消費者に知られないとビジネスの売り上げにはならない。特に小売業にとって実店舗が存在する場合、如何にカスタマーを店舗に引き寄せるかは肝だと言われている。商品やサービスの認知度を上げるには販促物(チラシ、ポスター、POP等)の使用は不可欠であり、如何に効率的にかつクオリティーの高い販促物を作れるかは多くの企業にとって大きな課題である。
ラクスル株式会社により、販促物製作に携わる従業員全国570名を対象に実施された「販促活動に関する意識調査」の中、「販促物製作が負担」と思われる調査対象は全体の6割に上るということが分かった。業務量の見えづらさと効果の分かりづらさが、主たる課題だと思われている。
筆者はもともと小売業の事業会社で営業及び販促物の製作を担当していた。営業の立場からいうと、販促物は顧客の興味を持たせると同時に、情報の取捨選択という、かなりレベル高いことが求められている。
例えば、顧客が駅で配布されたチラシをもって来店されるとして、商品の基本的な情報はもちろん、ブランドの情報やお店までのルート、キャンペーン情報など、記載すべき情報は多くある。限れた(紙やスクリーン画面の)スペースの中で顧客にとって一番重要な情報を提供できるかどうかが肝である。また販促物の製作側として、他の営業担当から要求を受けて製作に移ることは多く、社内のコミュニケーション環境にもよるがビジュアルに関するメールや電話通信に多くの時間がかかることもしばしば。その他、過去ビジュアル素材の検索や印刷の外注工程にも、実は見えない作業がたくさん発生する。
日々業務をしていた中で、もし販促物の製作から納品まで一体化できるシステムがあったらいいなと、当時も感じていた。そこで今回は販促物の製作を効率的かつ効果的にするITシステムを紹介し、ぜひ小売業界の従業者方々に知っていただき、業務効率向上に繋げるきっかけにしていただけたらと思う。
販促物製作における主な課題点は以下と考える。
製作の発注側と受注側(デザイナー、印刷会社など)の間、メールや電話やFAXなど、複数の媒体でやり取りが必要である。例えば前月の販促物を踏襲し、少しだけ変更を加えて製作したい場合でも、その製作の指示を出す側(一般的には営業の方)は製作ソフトが使えない限りデザイナーに連絡しなければならないといった、内製的に対応が難しい場面も起こり得る。
販促物の製作側は過去使用されたデータを参照するためには当時の担当者に聞かなければならなかったり、またデータが見つかっていても書式やバージョンが異なる等で使用できない場合もある。
例えば本部(製作側)から各地域の拠点に今月のキャンペーン情報が載ったチラシデータを送り、印刷してもらうことにした際に、ある特定の地域にとってはそのキャンペーンが適切ではなかったら、結局今月はチラシ無しとするか改めて作らなければならない。
販促物製作の承認フローが機能しておらず、支店が作ったクオリティーの低い販促物が流され、企業やブランドのイメージを毀損する可能性がある。
販促物の大量印刷などによりロスが生じてしまい、処分するため大きく費用がかかる。
販促物の製作をより効率的にかつ効果的にするには、販促管理システムが勧められる。
販促管理システムとは、販促物の発注、製作、物流、在庫管理を行うシステムのことで、例えば受注側の指示を取りまとめたり、素材データを統合管理したり、リアルタイムで在庫部数を確認して配送手配まで管理したりするような機能が期待されている。
販促管理システムの機能を以下3つの観点でご紹介する。
現場販売員(営業担当)はデザインの知識がなくても直感的に作成でき、従来のデザイナーとのやり取りを省くことができる。
支店・店舗の従業員がブランドイメージを毀損しないように、デザインの一部だけの編集ができる。
本部が承認したデザイン案を直接発注にかけられる。承認できない場合、システム上で円滑にフィードバック指示がもらえる。
製作データや素材データを内部で共有するのはもちろん、専用IDなどを発行することによって外部と共有できる。
一つのシステムで販促物の種類、数量や納期などが設定、発注できる。
注文情報と在庫情報を照らし合わせ、過剰注文を防ぐ。
在庫切れが発生する前にアラートを発出できる。
発注情報に応じて物流センターと連携することで配送指示ができる。
配送伝票番号が付けられ、配送状況が調べられる。
販促物の製作におけるデータ共有及び発注管理ができるシステム。
データがクラウド上でカテゴリごとに分けられ、使いたい素材が容易に見つけられる。デザインソフトを使わなくてもシステム上でグラフィックや文字を配置し、アレンジすることができる。またアレンジしたデータを本部の承認を通すワークフローが構築されている。
発注に関して、本部は各拠点によるデータのダウンロード履歴を含む発注状況が確認でき、使用頻度の高いアイテムは上位に取り上げられる。
Connecting One® Cloud(大日本印刷株式会社):
(https://www.dnp.co.jp/biz/products/detail/20172409_4986.html)
チラシやカタログなどの印刷物アイテムの見積り、発注、在庫管理に強みを有する。本部が各拠点の必要数が集計できる機能が搭載されている。その情報を基に見積り書を作り、サプライヤーに発注するワークフローが構築されており、過剰注文や在庫不足を防ぐ。また在庫変動がリアルタイムで確認でき、在庫切れによる販促機会の損失リスクを避ける。
(https://www.kyodoprinting.co.jp/products/logismart.html)
拠点側はEC注文の感覚でアイテムを発注することができる。本部は簡単に拠点からの発注を承認し、その情報を在庫のある物流センターに共有することができる。
また料金プランとして、システムだけを導入するクラウド型とシステム・印刷・物流を統合するフルフィルメント型があり、販促物の梱包から発送、納品まで任せられる。
(https://www.spinno.com/document/casestudy/epson)
Client: エプソン販売株式会社
エプソングループ傘下の販売会社であり、プリンターやプロジェクターなどエプソン製品の販売、サポート事業を行う。実際に「SPinno」が導入されたのは当該社PMD(プロダクト・マーチャンダイジング)部。
Before:
商品の種類が膨大し、販促物が商品カテゴリによってバラバラであり、製作と管理が難しい。いいと思った販促物を新規発注したい場合、元の製作者に問い合わせないと入手できない。
また販促物の使用状況やコストが分からないため、ムダが生じる等の課題が山積していた。
After:
「SPinno」を導入することで、販促物データの一元管理ができるようになった。製作から承認までのワークフローがシンプルになり、業務効率が向上した。また社内の営業部門の間だけでなく、販売代理店もシステムを通して直ちに適宜な販促物を見つけ、注文することができるようになった。それに販促物がどれぐらい使われているかが分析できる機能は販促物の品質の改善やバリエーションの増加にも役立った。
(https://www.spinno.com/document/casestudy/parkcorporation)
Client: 株式会社パーク・コーポレーション
フラワーショップ事業の「青山フラワーマーケット」を主力事業に、空間デザイン事業、カフェ事業、スクール事業など幅広く事業展開している 。
Before:
全国に約120のフラワーショップがあり、花瓶や鉢カバーといった花器、ラッピングペーパーやリボン、商品をアピールするためのPOPなど、さまざまな資材と販促物が使用されている。システム導入前、それら資材や販促物にまつわる倉庫と店舗の間のやり取りはすべてFaxで行われ、非効率であった。
After:
POPやポスターといった印刷物だけでなく、花器や資材、オリジナル製品のフレグランスの注文まで、ほぼすべてのお取引先とのやり取りが「SPinno」に移行した。資材や販促物の注文はEC通販のように行われ、発注にかかる工数が1/5に削減できた。
業務効率が改善され、より多くの製品を販売スタッフに知ってもらい、使ってもらったため、売り上げ拡大が実現できた。
(https://www.dnp.co.jp/biz/case/detail/20173020_4968.html)
Client: 株式会社LIXIL住宅研究所
LIXILグループの中核企業として、住宅FC(フランチャイズ・チェーン)事業、リフォーム事業、リノベーション事業、さらに次世代の住宅研究開発事業を手掛ける。
Before:
販促資材の在庫状況は発注時に確認できず、在庫切れを知った時点にフランチャイズ・チェーン店に特急手配を行う状況だった。また販促資材の受注システムが社内の基幹システムと連携されていなく、かつ受発注や精算業務が属人的なため、工数が膨大であった。
After:
Connecting One® Cloudを導入することで各フランチャイズ・チェーン店からの注文管理ができ、物流センターの在庫情報もリアルタイムで確認できた。またDNPに事務所が設置されており、受注及び問い合わせを顧客の代行に対応が可能なため、業務負担が削減できた。
販促物管理システムの導入は、小売業にとって従来業務効率の改善だけではなく、ブランディングの認知度や企業の売り上げの向上にもつながる。デザイン知識の有無に関わらず、だれでも手軽にビジュアル編集ができるところは魅力ポイントであり、デザイナー側は従来繁雑な業務から解放され、クリエイティブな仕事に取り組めるようになる。販促物の製作・管理にお悩みがある方はぜひご検討いただければと思う。
アーツアンドクラフツのITコンサル部門では、このようなシステムを導入を検討される企業様への支援も行っております。
お問合せ等ございましたら、下記フォームよりお気軽にお願いいたします。
・アスピック 「販促管理システム13選。クラウドサービスをタイプ別に紹介」
・Spinno 「販促物は、「売る」ツールから「お客様にとっての価値」を伝えるツールへ~新たな価値提供の実現に向け、販促クラウド「SPinno」を導入」
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト