M&A(エムアンドエー)とは『Mergers and Acquisitions』の略です。
M&Aの意味は、資本の移動を伴う企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。
広義的な意味では、事業の多角化などを目的とした資本提携(資本参加、合弁会社設立など)を含む、企業の経営戦略を指す場合もあります。
M&Aの主な目的としては、譲渡企業側は、事業承継などの後継者問題の解決、従業員やノウハウの承継、事業の整理等が挙げられます。譲受企業側の目的としては、新規事業への参入、既存事業の強化、スケールメリットの獲得等が挙げられます。
「M&A(合併・買収)は、企業が成長戦略を実行する上で重要な手段の一つとされています。近年、特に日本においてはM&Aの件数は、リーマンショックや東日本大震災などの大規模災害などを由来とする一時的不況のタイミングを除くと右肩上がりに増加している傾向にあります(2022年には過去最多件数である4,304件のM&A事例を記録しています)」(引用:arts&crafts(2023)「【基本を知る】M&A推進に際して―仲介業者・金融機関との連携のあるべき姿」
このように現代の経営環境において、重要な手段と位置付けられるM&Aに関するサービスに関して、本稿では掘り下げていきたいと思います。
M&Aサービスの具体例としては、
が挙げられます。
M&A仲介サービスは売り手と買い手の間に立ち、M&Aの成立をサポートするサービスです。M&Aアドバイザリーサービスは、売り手と買い手のいずれかと契約し、戦略立案や交渉などのサービスを提供するものです。また、マッチングサイトは、売り手と買い手のマッチングに特化し、インタネットで利用するサービスが中心のものです。
M&A仲介及びM&Aアドバイザリーに関しては、中小企業庁が、「M&A支援機関登録制度 登録機関データベース」を整備しており、
2023年9月12日時点で、登録数が2,933となっています。このデータベースでは、事業形態(法人/個人)、FA/仲介業務の別(FA業務のみ、仲介業務のみ、仲介・FA業務両方)、支援業務提供都道府県、M&A支援機関の種類、M&A専従者の従業員数、本店所在都道府県、M&A支援業務開始時期で検索、絞り込みができるようになっています。ただし、各登録者の得意業界などは、このデータベースからはわからないので、初期的にサービサー候補を抽出するのに用いる形となるでしょう。
ここで、中小企業庁のM&A支援機関登録制度 登録機関データベースに登録されている企業の例として、法人でM&A専従者の従業員数が50名以上の登録企業について紹介します。
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:1997年7月
M&A支援業務専従者の人数:177名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:仲介
M&A支援業務開始時期:2023年3月
M&A支援業務専従者の人数:168名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
※データベースに重複のため、更新日時が新しい情報を記載
種別:仲介
M&A支援業務開始時期:2005年10月
M&A支援業務専従者の人数:159名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2007年6月
M&A支援業務専従者の人数:105名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2010年4月
M&A支援業務専従者の人数:100名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2017年8月
M&A支援業務専従者の人数:99名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2018年4月
M&A支援業務専従者の人数:87名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA
M&A支援業務開始時期:2002年4月
M&A支援業務専従者の人数:70名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2007年1月
M&A支援業務専従者の人数:60名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2003年3月
M&A支援業務専従者の人数:59名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2018年1月
M&A支援業務専従者の人数:57名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA&仲介
M&A支援業務開始時期:2021年10月
M&A支援業務専従者の人数:54名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
種別:FA
M&A支援業務開始時期:2001年4月
M&A支援業務専従者の人数:54名
支援業務提供都道府県:全国
特長:
続いて、マッチングサイトについてです。
マッチングサイトは以下の3つに分類できます。
一般的なM&Aマッチングプラットフォームは、売り手と買い手にマッチングの場(プラットフォーム)を提供するだけで、基本的にはM&Aの交渉や手続きの支援には関わりません。そのため、M&A仲介サービスなどと比べて低コストで利用できます
アドバイザー紹介型のM&Aマッチングプラットフォームは、まずはサイト上で売り手・買い手とアドバイザーのマッチングが行われ、次いでそのアドバイザーを介して相手企業にアプローチしていくという流れになります。一言でいえば、アドバイザーの選定と交渉相手の選定をセットにしたサービスです。
特定の仲介会社が提供するマッチングサイトは、仲介会社がサービスの一環として提供しているサイトです。このタイプのマッチングサイトで出会った相手と交渉を進めるためにはその仲介会社との契約が必要になります(あるいは、マッチングサイトを利用する前の段階で仲介会社との契約が求められるケースもあります)。
これまでM&Aのサービスとして、
の3つを見てまいりましたが、この章では、相談すべきサービサーに関して述べていきたいと思います。
まず、M&Aは通常業務と並行して行うものですが、自社のリソースで、どこまでできるかが、重要な観点となります。自社のリソースで、①M&A目的の設定・明確化、②買収先(売却先)の選定、➂対象会社とのコンタクト、④PreDD、⑤DDの実施、⑥契約クロージングまで実施できるのであれば、マッチングサイトの利用が最もコストがかからず良いでしょう。
ただ、自社のリソースで最初から最後までM&Aに関するプロセスを踏めるケースはまれだと思われます。
そこで大事になるのが、どこまでの範囲を仲介業者・アドバイザリーに任せたいかを明確にすることです。仲介業者、アドバイザリーの中には、M&A実行後のフォローまで手掛けている業者もあり、サービス範囲は多種多様です。このため、どの範囲を任せたいかで、相談したいサービサーが異なってきます。
また、サービサーには特定業界に強いなどの特徴があるところもあり(例:既出のCBコンサルティングは調剤薬局に特化)、M&A先を見つけやすい、また、より良いM&Aにするための知見を有しているなどがあります。
残念ながら中小企業庁のデータベースでは、得意業界などの検索はできないため、デスクリサーチを行い、自社の想定する業界に強い仲介業者、アドバイザリーを選定するのが良いでしょう。
ここまで、M&Aの仲介業者、アドバイザリー業者、マッチングサイトと紹介してきましたが、多種多様な事業者が存在しているため、事業者・サービスの選定が大事になってきます。この記事が事業者・サービスの選定に役立つと幸いです。
【参考】
日本M&Aセンター(2023)「M&Aとは/M&A成功のために」
Fundbook(2023)「M&Aとは?M&Aの意味・流れ・手法など基本を分かりやすく【動画付】」
M&A SUCCEED(2023)「M&Aのおすすめサービス15選 各サービスの特徴を徹底解説」
M&A SUCCEED(2023)「M&Aマッチングサイトのおすすめ16選【徹底比較】」
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト