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2023.06.09

デジタルマーケティングってコンサルティングファームでもできるの?

 はじめに:コンサルのデジマ領域進出

 近年、急速なデジタル化の進展により、ビジネスの世界でも大きな変革が起きています。特に、デジタルマーケティングは、企業が消費者とのつながりを構築し、ビジネスの成果を最大化する上で不可欠な要素となりました。従来のマーケティング手法ではなかなか到達できなかった広範なオーディエンスに対し、効果的に情報を伝え、商品やサービスを促進する新たな手段が提供されています。

  デジタルマーケティングは、データドリブンなアプローチとオンライン上でのプレゼンスの重要性に基づいています。企業はデジタル広告、ソーシャルメディア、検索エンジン最適化(SEO)、コンテンツマーケティングなど、さまざまなデジタルチャネルを駆使して、顧客との関係を築き、ブランドの知名度を高め、成果を上げる必要があります。しかし、多くの企業がデジタルマーケティングの専門知識とリソース不足を課題としており、外部支援を求めているのが現状です。

 マーケティングの支援と言えば、その領域を専門とする広告会社に依頼することが一般的ですが、デジタル化の潮流に合わせて、”コンサルティングファーム”もデジタルマーケティングという新たな領域への参入を図っています。

 コンサルティングファームというと上流部分の戦略策定や意思決定の支援のみのように思われますが、近年では広告会社を買収するなどして、戦略策定よりも後の具体的な「実行支援」、例えば、システム開発や広告の運用を提供するコンサル会社が増えています。つまり、広告会社が提供してきたマーケティング戦略の実行領域にも、スコープを広げてきているのです。

 今後もこの動きは進み、広告業界とコンサルティング業界の境界線は、ますます曖昧になっていきます。

 本稿では、そんなデジタルマーケティング領域の全体感を述べたうえで、コンサルティングファームのデジタルマーケティング支援について説明していきたいと思います。

 

デジタルマーケティングの全体感

Webマーケティングとデジマの違い

 デジタルマーケティングの全体感について理解する前に、まずはデジタルマーケティングとWebマーケティングの違いについて触れていきます。

全体像に関する詳細内容や、デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いについては、別の記事でも取り上げているため、詳しくは以下のブログをお読みください。

デジタルマーケティングに欠かせない”ターゲティング”とは

デジタルマーケティングに欠かせない”事業や課題の理解”とは何か

 

 Webマーケティングとデジタルマーケティングは、両者とも中心となる技術がインターネットであり、Web上で施策を展開する点も共通しているため混同されやすくなっています。しかしながら、デジタル技術を活用したマーケティングには変わりありません。Webマーケティングはデジタルマーケティングのうちの1つという理解で問題ありません。

 

 

デジタルマーケティング

 デジタルマーケティングは、デジタル技術を活用したマーケティング手法のすべてを指します。インターネットやアプリ、IT技術、AI技術など、種類は多岐にわたります。

Webマーケティング

 Webマーケティングは、Web上で展開するマーケティング手法です。WebサイトやWebサービスを活用して消費者を集客し、商品・サービスの購入を促します。具体的には、SEO(検索エンジン最適化)やリスティング広告・ディスプレイ広告などの広告運用を実施します。その後は、取得したデータでアクセス解析や効果測定をし、さらに改善施策を打ち出す流れが一般的です。

 

BtoB領域におけるデジタルマーケティングの流れ

 BtoB領域におけるデジタルマーケティングの全体像として、大きく3つのステップが存在します。製品を知らない人に様々な媒体を利用して認知してもらう「リードジェネレーション」、製品を知った見込み顧客に対して、より詳しい情報を提供して関心を高める「リードナーチャリング」、見込み顧客と商談を行う「フィールドセールス」です。

 またそれをさらに細分化すると「情報収集→情報発信→問い合わせ→ニーズ/課題把握→提案→クロージング」という流れになります。

 

 

外部支援の領域

 

 デジタルマーケティング実施の際、社内組織で対応できない場合は、外部の支援会社を積極的に活用していくことで事業の立ち上がりを早くすることができますが、一概に支援会社といっても、それぞれで得意領域が異なります。

 デジタルマーケティングでは、そのフェーズごとに支援できる領域が分かれており、外部支援会社は、大きく分けて、コミュニケーション領域を支援する会社とテクノロジー領域を支援する会社に分類することができます。

 


コミュニケーション領域

 コミュニケーション設計・運用は、システム導入後にマーケティング施策を企画立案し、実運用に落とし込んでいく業務で、通常、広告会社やマーケティングエージェンシーが得意とする領域です。コンテンツ制作会社やデザイン制作会社を別機能として切り分けていますが、1つの会社ですべて対応できる支援会社も存在します。

 さらに広告会社やマーケティングエージェンシーの中でも、その対応領域の違いから以下の3つのパターンに分類することができます。

  パターン①は上記で言及したコミュニケーション領域に加え、テクノロジー領域までのすべてに対応できる支援会社です。パターン②はツール導入を中心に、リードナーチャリングに対応することができる一方で、リードジェネレーションとなる広告までは対応が難しい支援会社です。パターン③は、パターン②とは逆で、リードジェネレーションには対応できる一方で、ツール導入やそれを活用したコミュニケーション設計は不得意とする支援会社です。

 コンテンツ制作会社やデザイン制作会社は、読んで字のごとく、それぞれコンテンツ制作とデザイン制作を中心に支援を行う会社です。コンテンツ制作には、業界有識者などによる寄稿などを計画的に行える体制が必要となるため、このような支援会社を利用する場合があります。

 

テクノロジー領域

 MAシステムの導入から、BtoBデジタルマーケティングを始める場合、ツールベンダーと実装・運用を行うシステム開発会社の選定から始めることになります。

 一般的にツールベンダーはライセンス収入をメインにしているため、システムの運用や実装までは行わないというところが多く、ツールベンダーの認証を受けたシステム開発会社が実装や運用を行います。

 

外部支援会社の落とし穴

 内部リソースが不十分な場合、上記のような外部支援会社を利用するのが一般的ではありますが、紹介してきたように支援会社ごとに役割が異なるため、プロジェクトの全体感を把握してのソリューションは提供されません。また、支援会社の多くはデジタルマーケティング関連の施策立案や運用にしか目を向けておらず、そもそもの企業課題/ニーズを捉えられません。

 このような場合、デジタルマーケティング全体の流れの中の部分最適となってしまい、全体としては思うような結果が得られないことがしばしあります。

 前提として、マーケティング戦略策定のプロセスには①環境分析②戦略分析③施策立案という3ステップが存在し、デジタルマーケティングでは、環境分析や戦略分析を踏まえ施策立案までを全般に行うことが重要です。(マーケティング戦略策定のプロセス詳細については、こちらの記事を参照ください。)

 一方で③の施策立案(主に販促)のみを行うのがWebマーケティングであり、上記のような支援会社は、そもそもデジタルマーケティングの支援ではない、とすら言えてしまいます。

 

 さらに、複数のデジタルマーケティング支援会社の機能を包括的に1つの会社で対応できる広告代理店等であっても、同様のことが起こる場合があります。複数領域の支援対応ができる一方で、広告会社は、いわゆる多重下請け構造を基本としている点が不安要素として存在するからです。

 多重下請け構造とは、発注者から委託された業務を、二次請け、三次請けへと下請け企業に案件を流していく構造のことで、下請けが何重にも重なることから、多重下請け構造と言われています。

 広告発注者が大手企業ばかりに業務を委託する傾向にあり、大手企業がリソースを確保するために下請けに案件を出したり、中小企業が利益を確保するために元請けから案件を得ようとしたりなど、多重下請け構造にならざるを得なかったという背景もあり、広告業界は多重下請け構造となっているのです。

 なぜ、多重下請け構造によって部分最適となってしまうのか、それは、多重下請け構造は依頼者の現状(課題)把握を難しくするからです。

 企画、出稿、運用、分析とフェーズごとに担当する下請け業者が異なる場合、コミュニケーションの出戻りや齟齬が発生するだけでなく、依頼者の要望に対してもスピーディな対応ができなくなります。発注者と下請け会社の層が厚いと下請け会社は発注者の意図や課題感を汲み取れず、期待する結果とならない可能性があるのです。

 

コンサルティングファームが提供できるデジタルマーケティング支援

 広告会社が全体感を把握してのソリューション提供を不得意とする中、コンサルティングファームはむしろそれを強みとしています。

 コンサルティングファームは元来より、企業のビジネス目標やニーズを分析し、戦略を立案することを得意としているうえ、冒頭でも述べたように具体的なマーケティング実行支援までスコープを拡げているため、マーケティング戦略策定プロセスの環境分析から施策立案までを一貫して対応できるようになっています。

 もちろん、マーケティングに関する経験という観点では広告会社に劣るかもしれませんが、実行支援までスコープを拡げていく中で、主に広告会社のやり方である、常に市場と対話しながら戦略をチューニングする「リーンスタートアップ」や「アジャイル型」のアプローチとプロセスは、コンサルティング業界内でも定着し始めています。

  また、広告会社が担ってきた、経営者に寄り添ってアイデアベースでユニークな解を出すような「デザイン思考」の領域も、そうしたスキルを持つ人材の獲得の動きとして強化が図られています。

 

 デジタルマーケティング支援を依頼する企業の多くは「デジタル化」「デジタル導入」という言葉が先行し、マーケティングで本来なすべき営業貢献、受注につなげるという概念が後回しになっていることが多々あります。

 コンサルティングファームでは、デジタル化を進める目的は何か、そのための戦略、組織、人材の現状はどうなっているかという分析のところから始まり、その上で、企業の中長期的な経営目標と照らし合わせて、各事業や製品ごとに何が必要で、何が足りていないかを精査していきます。したがって、デジタルマーケティング関連の施策立案や運用にしか目を向けず、そもそもの課題を特定できないという心配もありません。

 また、場合によっては、顧客が戦略策定・施策実行に注力できるよう、定型的な分析・調査作業や、イベント企画や実分析など、実際の業務にてお客様に伴走しながらスキルやノウハウを根付かせることでデジタルマーケティング人材を育成していく、といった支援が可能です。

 

おわりに:アーツアンドクラフツとしての支援

 当社では、コンサルティング事業部として上記のようなコンサルティングファームの機能を有しており、デジタルマーケティング関連の戦略立案と実行を含め、様々なプロジェクト実績があります。コンサルティング事業に加えて、自社事業であるブランド事業部にて広告運用も行っているため、顧客目線での最適なご提案が可能です。

 業界・業種問わず各種ご支援をさせていただいておりますので、お悩みなどございましたら、是非ともお問い合わせください。

 

中小企業の売上に直結するデジタルマーケティング

 

 

【参考文献】

櫻井直緩

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト