SNSのツールというと、まず最初に思い浮かぶのはTwitter、Facebook、Instagramのような画像や文字を用いて他者と交流を行うツールではないでしょうか。また、Youtube、Tik-tok、17Liveのような動画を上げてコメントを貰い、他者との交流を行う動画ツールもすぐ思いつくかと思います。特に動画ツールでは、現在テレビにとって代わると言われる程、消費者の集客を行うことが可能で、各企業が広告を打ち出したり、商品紹介を行ったりとマーケティングの面で飛躍的な成長を遂げています。
一方、上記のような文字・画像ツールや動画ツールを用いたマーケティングを実施する際には、「文字や画像だけでは少し物足りない」「動画を撮るには手間や費用が掛かりすぎる」といったミスマッチが発生することがあります。そこでそのもやもやを解消するのが文字画像ツールと動画ツールの中間に値する音声SNSです。
音声SNSは流行したのが最近であり、他SNSに比べまだあまり大きな普及はしておりませんが、マーケティング要素を含んだ重要なツールになっています。
本記事では、音声SNSの利用経験のない企業のマーケターの皆様に向けて、マーケティング観点から見た音声SNSについて紹介してまいります。
音声SNSが流行した理由として、「取り残されることに対する恐怖」を捉えていることが大きな要因として考えられます。
特に2021年に流行したClubhouseは完全招待制で、参加したくても誰かに招待してもらえないと参加できない特徴があります。「誰か招待して」「私は招待された」といった承認欲求や満足感を他のSNS上で次々に投稿されることで、「自分はまだやっていない」「周りの人はみんな始めている」という焦りを感じさせ、ユーザーを増やす要因となっています。
また、録音やアーカイブといった機能がないため、その時その場に参加している人だけが聞ける、会話できるという特別感、新型コロナウイルスにより世界中の人々がステイホームを強いられたことなども、音声SNSの流行に拍車をかけた要因の一つとなります。
上述で音声SNSという言葉を何回か使用しましたが、音声SNSとは一体何ぞやと感じている方も中にはいらっしゃるかと思います。まずは音声SNSの概要や特徴について触れていきます。
音声SNSとは、声を媒体としたSNSサービスの総称です。上述の通り従来のSNSは文字や写真が中心でしたが、声による投稿は文字や写真と比べて感情やニュアンスが伝わりやすいというメリットがあります。また、声は動画と違って画面を注視する必要がなく、他の作業をしながら聞くことができます。
音声SNSでは音声を使って発信を行うため、感情やニュアンスを音声にのせることが可能です。
そのため、ライブ感を出して盛り上げたりできるほか、誤解が生まれたり思わぬ受け取り方をされて炎上してしまうなど、文章・画像ツールのSNSで起こりがちなリスクを回避することもできます。
一方で、文章ツールに比べてまとまった多くの情報を伝えづらく、画像ツールや動画ツールに比べ、イメージの速達性に劣るという点も理解しておく必要があります。
続いては他SNSとのユーザー数の比較をしていきたいと思います。
まず音声SNSで最もユーザー数が多いツールはVoicyの252,200人になります。次いで、Spoonが212,000人、stand.fmが142,000人Clubhouseが110,000人と続きます。
文字・画像SNSのユーザー数が最も多いツールはFacebookの2,930,000,000人です。次いでInstsagramが1,000,000,000人、Twitterが333,000,000と続きます。SNSの代表格とも言えるこれらのツールは圧倒的なユーザー数を誇ります。
動画SNSのユーザー数が最も多いツールはYoutubeの2,000,000,000人です。次いでTik-tokが1,000,000,000人と続きます。YoutuberやTik-tokerという言葉が流行しているように、動画コンテンツも画像、文字SNSに負けじとユーザー数を保有しております。
こうして見てみると、音声SNSのユーザー数は他SNSと比較するとマーケットの規模としては小さく、一時期話題になり大流行した割にはユーザー数は少し伸び悩んでいる印象があります。
一方で音声SNSがユーザー数を伸ばし始めたのは2021年であるため、まだまだ反転途上ではあるが使い方次第では今後のマーケット拡大は大いに期待できる環境にあると考えられます。
音声SNSは他SNSよりもユーザー数が少ないものの、今後の使い方次第ではマーケット拡大を期待できると述べてきましたが、その理由として購買意欲のフレームワーク「AIDMA」を押さえていることが挙げられます。
まずは興味(Attention )です。
音声SNSは画像や文字、動画を見るという作業が不要な為、聞くという動作のみで情報を取得することが出来ます。
その為、リスナーは「ながら作業」を行いながら配信者の発信を聞くことが出来ます。実は音声SNS の利用で一番高い理由はこの簡易性にあります。各企業のマーケターはこの簡易性を利用し、企業の情報をリスナーに伝え、商品認知のきっかけを作ることができます。
次は関心(Interest)と欲求(Desire)についてです。
音声SNSにはリスナーと密接なコミュニケーションを取るための様々な機能を搭載しており、それを活用して通じリスナーの関心と欲求を満たすことができます。
例として、音声SNSの多くにライブ配信中にリアルタイムでリスナーがコメントを投稿できる機能や、投げ銭機能がついていることが挙げられます。それ以外にも、メディアごと、挙手機能*やスタンプなど、コミュニケーションを活性化させるユニークなアクション機能が実装されています。
これらの機能を活用することで配信者とリスナーの距離は密接に近くなります。例えば新商品の紹介を行う時はコメント機能や挙手機能を使用し、リスナーからの質疑応答をリアルタイムに答えることで購買意欲の向上につなげることが期待出来ます。
*ライブ配信中にコラボ配信したいという意思をリスナーから配信者に送ることできる機能です。配信者は挙手したリスナーを配信者側に引き上げて一緒にトークすることが可能です。(Stand.fmやClubhouseで、有名人に相談をする企画などでよく活用されている機能です)
最後に記憶(Memory)と行動(Action)になります。
音声SNSはファンコミュニティの形成を行うことが出来、リスナーに記憶と行動を植え付けることが可能です。
例えば、決まった曜日の決まった時間に配信する「番組」形式を取り入れることが可能です。何度も決まった曜日、決まった時間に配信することで、企業や商品をリスナーの脳に確実にインプットを埋め込むことが可能になります。(ジャパネットたかたのテレビショッピングと同じ)
また、配信者のコアなファンを中心としたコミュニティに対して、クローズド配信専用の特典情報などを配信することで、利用頻度やエンゲージメントの高いリスナーを中心にコンテンツを届け、商品購入の働きかけを行うことが出来ます。
これまで述べてきたように、音声SNSはAIDMAというマーケティングに不可欠な要素を押さえており、コアなファンを獲得しやすいという点から、将来性のあるマーケティングツールだと言えます。
特に、商品に対する情報を、「想い」と共に共有できる点は、現在のマーケティングの潮流に沿っており、今後ますますストロングポイントとなってくると考えます。ユーザーは信頼できる情報を求めており、リアルタイムで発せられる声は、動画や文字、画像よりも、発信者の「想い」や「熱意」、「魅力」が聴き手に伝わりやすいためです。
マーケット規模では、他の各種SNSに比べ小さくまだまだ発展途上に思えますが、コアなファンが集まりやすいホビー系の業界などを中心に、マーケティングにおける利用が拡大していく可能性があるのではないかと推察されます。
弊社では、本記事にて紹介した「音声SNS」に限らず、マーケティングを支援するサービスを提供しておりますので、興味のある方は是非お気軽にお問い合わせください。
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト