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ネイティブ広告(広告に見えない広告)とは

本記事の概要

 ネットで買い物している時やレストランを検索している時に口コミやレビューを参考にした経験はありませんか。近年、この口コミやレビューがサクラ・ヤラセの場合があり、これを「ステルスマーケティング(通称:ステマ)」と呼びます。ステルスマーケティングは不正行為であり、判明した場合には、ユーザーの信頼を失い、広告としては逆効果となり得ます。

 一方で、YouTubeを見ていると、動画が再生される前や動画の途中で広告を見る機会があると思います。そんな時に、広告が邪魔だと思ったことや広告をスキップした経験があると思います。この場合、広告がアピールされ過ぎており、ユーザーは広告を煩わしく感じ、無視するようになります。

 広告業界においては、これらの例のように「ユーザーの信頼性を失わないように、商品・サービスのイメージアップをする」、「広告でありながら広告であることをアピールしすぎない」という課題が存在しています。しかしながら、これらを解決できるのが、「ネイティブ広告」です。

 本記事は、ネイティブ広告の概要、種類、メリット・デメリット、運用上の注意点など体系的にお伝えします。

ネイティブ広告とは

 一般社団法人日本インタラクティブ広告推進協議会(JIAAでは、ネイティブ広告を「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す」と定義しています。

 また、先に挙げたステルスマーケティングとネイティブ広告の違いは、「広告であることを明示しているか」です。ネイティブ広告は「自然に溶け込む広告」ですが、「広告」や「PR」などの表記が入っています。Twitterのタイムライン上で「プロモーション」と表示された投稿を見たことがあると思いますが、これがネイティブ広告の一例です。

 そんなネイティブ広告はアメリカが発祥だと言われています。諸説ありますが、1974年にアメリカのWall Street Journalが送付した「Two Young Men」というダイレクトメールがネイティブ広告の発祥とも言われています。当時、売り込み色の強い広告が主流であったが、この「Two Young Men」は売り込み色が薄く物語調で書かれたネイティブ広告型のダイレクトメールでした。そして、このネイティブ広告によって、Wall Street Journalは20億ドルの定期購読を獲得したそうです。

 なお、インターネットやスマートフォンの普及によって、ネイティブ広告の市場規模は今後さらに伸びていくと予想されています。サイバーエージェントの調査によると、ネイティブ広告の市場規模は2015年に768億円あったものの、2022年には3,013億円まで成長していく模様です。

種類

 前章では、ネイティブ広告の概要について触れました。この章では、ネイティブ広告の種類について見ていきます。

 IAB(インターネットアーキテクト委員会)によるとネイティブ広告は全部で6種類(インフィード型、ペイドサーチ型、レコメンドウィジェット型、プロモートリスティング型、インアド型、カスタム型)に分類されています。本記事では、その中でも代表的なインフィード型、ペイドサーチ型、レコメンドウィジェット型の3種類についてお伝えします。

  • インフィード(In-Feed)型

 インフィード型広告は「WebサイトやSNSのフィード(Feed)の中(In)に表示される広告」です。FacebookやTwitterなどのSNSでタイムライン上に表示されているコンテンツとコンテンツの間で見かける広告が代表的な例です。テキストと画像・動画を組み合わせたものが多く、クリック課金形式であることが一般的です。また、コンテンツとコンテンツの間に表示されるため、ユーザーの目に入りやすく、クリック率も通常のバナー広告に比べて高い傾向にあります。

  • ペイドサーチ(Paid-Search)型

 ペイドリサーチ型はいわゆるリスティング広告です。リスティング広告がネイティブ広告に含まれていることを意外に思われるかもしれませんが、GoogleYahooなどのサーチエンジンの検索結果画面上に検索結果と広告が同じようなフォーマットで表示されるため、ネイティブ広告として分類されています。

  • レコメンドウィジェット(Recommend-Widget)型

 レコメンドウィジェット型は、特定のメディアに関する広告ではなく、レコメンド配信サービスを使用して、レコメンド欄のあるサイトに表示する広告です。ユーザーの興味関心に沿った広告を配信してくれるので、ユーザーによって表示される内容が異なります。そのため、配信場所の指定はできないのが特徴です。

利点・注意点

 ネイティブ広告の種類と種類ごとの特徴についてお伝えしました。この章では、ネイティブ広告の具体的な利点や注意点について触れていきます。

利点

  • ユーザーの自然な誘導

    •  ネイティブ広告では、ユーザーに違和感を与えることなく、商材・サービスの紹介ができます。バナー広告のような売り込み色が強く、コンテンツ体験を妨げるような広告とは違い、ユーザーのコンテンツ体験を邪魔しないように設計されているため、通常記事と同様に閲覧してもらえます。広告を見せられているという感覚が少ないため、ユーザーが高い興味を示したり、商材・サービスのアピールに対する信頼度が高まる傾向にあります。

    • 潜在層へのアプローチ

     ネイティブ広告を利用すれば、情報収集段階の潜在層へのアプローチが可能です。例えば、恋愛情報メディアに婚活アプリの広告を掲載したり、旅行サイトに旅先のレストランの広告を掲載したりすると商材やサービスに関連するニーズを持った潜在層にアプローチできます。また、SNSなどで記事コンテンツが拡散されたり、キュレーションメディアに取り上げられたりすると、広告が拡散されるため、潜在層へアプローチできる可能性もあります。

      注意点

       メリットやWall Street Journalの事例から、ネイティブ広告は認知や購買に対して強力な広告手法となり得ることが分かるかと思います。しかしながら、使い方によっては、逆効果にもなり得るため、注意が必要です。実際に運用する際には下記のような注意点を意識することが重要です。

      • 内容

       ネイティブ広告はユーザーが閲覧しているコンテンツに関連した内容でなければ、興味や関心を持ってもらえない可能性があります。また、売り込み色の強いコンテンツの場合、ユーザーが広告に対して不快感を持つ場合もあり得ます。なので、ネイティブ広告の配信先に沿ったクリエイティブ・内容をしっかりと作り込むために、時間や人手が掛かってしまうことも認識しておくべきです。

      • トーン・マナー

       ネイティブ広告を出稿するメディアに合わせて、トーンやマナーを合わせないとユーザーが違和感を抱いてしまいます。そうなると、ネイティブ広告のメリットである「ユーザーの自然な誘導」ができず、広告として十分な効果が発揮されない可能性が高いです。

       今回は、ネイティブ広告の代表的な注意点を2つ挙げましたが、これら以外にも細かな注意点がいくつも存在しています。なので、運用時には様々な注意点の洗い出しから始めることが大切です。

      おわりに

       本記事では、ネイティブ広告について体系的にお伝えしました。ネイティブ広告はマーケティング手法の1つですが、商材やサービスによってはネイティブ広告が最適な手法とは限りません。マーケティング手法の中で、何を選ぶのか、何と組み合わせるのかといった選択肢は無数に存在します。弊社では、そのようなマーケティングにおける戦略を立案するサービスを提供していますので、興味のある方はご連絡お待ちしております。

      参考

      森田 橋之介

      アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/コンサルタント